ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年9号
特集
マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 物流プロジェクトのマテハン選びユニークな評価法で合理性を追求

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2001 16 拠点ごとに導入コンペ イオン(旧ジャスコ)は現在、大規模な物流プロジ ェクトを進めている。
今後三年間に全国一九カ所三 九施設の物流センターを稼働し、小売業者として自ら 中間流通を整備する。
これまで卸売業者に頼らざるを 得なかった商品調達を直接管理下に置くことによって、 欧米の大手流通業者に対抗できるコスト競争力を身 に付け、世界の小売業のトップテン入りを目指してい る(本誌七月号特集参照)。
物流センターへの投資額は今後三年間で八五〇億 円を予定している。
投資そのものは全国六社の物流パ ートナー(日立物流、センコー、日本トランスシティ、 福山通運、ニチレイ、日本水産)が自らのリスクで行 う。
ただし、センターの立地や導入するマテハン機器 などの決定権はすべてイオンが握っている。
当然、物流パートナーからは、自社と付き合いの深 いマテハン機器メーカーの採用を望む声があがる。
し かし、物流プロジェクトのリーダーを務めるイオンの 高橋富士夫情報・物流本部統括部長は「我々は客観 的な事実を積み上げて、最適と判断できるマテハン機 器を選んでいる。
これに対して、付き合いが長いなど という感情論だけでモノを言うのであれば、物流パー トナーそのものを降りていただいても構わない」と妥 協を許さない。
すでに今年六月、プロジェクトは全国で第一号とな る仙台の物流拠点を稼働させている。
東北地区のイオ ングループの店舗に対して、仕入れ価ベースで年間六 五三億円の商品供給を予定している。
同拠点は常温 の在庫型一括センター(仙台RDC)と、生鮮品を 扱う定温センター(仙台PC)の二施設からなる。
簡 単な搬送システムだけしか使わないPCに対して、R DCには多くのマテハン機器を導入している。
仙台RDCは三層式の倉庫棟と、四八六〇パレッ トの収納が可能な自動倉庫棟で構成されている。
倉 庫棟の延べ床面積は二万三五三八平方メートル。
庫 内には店舗別仕分けのために一〇二本の仕分けシュー トを備えた大規模なソーター、ネスティングコンテナ 二五〇台、ピッキングカート一〇台などのマテハン機 器が配備されている。
自動倉庫はコスト面で競争力の ある提案を出してきた住友重機械工業を採用、仕分 け機にはダイフクの製品を導入している(一八ページ 囲み記事参照)。
イオンはこの仙台RDCと同じようなタイプの在庫 型物流センターを、二〇〇二年に三カ所、二〇〇三 年に五カ所、そして二〇〇四年に一カ所稼働させる 計画だ。
各拠点に導入するマテハン機器は、稼働一 年前をメドに施設ごとにコンペを開いて決める。
「当初は、仮に全拠点をまとめて発注した場合に、ど の程度のコストメリットがあるのかマテハンメーカー 各社に打診した。
だが現在のマテハン各社の売上高は 最盛期の七掛けとか八掛けになっており、個別の案件 でも喉から手が出るほど欲しがっている。
むしろ、個 別にやった方が安くなるという感触を掴んだため、各 拠点ごとに選定するという方針を固めた」と高橋部長 は説明する。
メンバー六人による合議制 全国一九カ所の物流センターの設計については、す でに概略を固めている。
RDCの主な機能は、保管の ための自動倉庫と、店舗別に仕分けるソーター、それ にピッキングシステムの三つ。
さらに、売れ筋ではな い回転率の低い商品を在庫する「関東や大阪のセンタ ーでは、ピースソーターも導入するつもりだ。
一つの 物流プロジェクトのマテハン選び ユニークな評価法で合理性を追求 イオン(旧ジャスコ)の物流プロジェクトでは、導入するマテ ハン機器を担当者6人による採点で選んでいる。
独自の「評価表」 で各社の提案を点数化し、ここに当該機器の既存ユーザーへのヒ ヤリングを加味して評価点を算出する。
プロジェクトリーダーと いえども6分の1の議決権しか持たない。
合議制と情報公開によっ て、合理的なマテハン選定を実施している。
Part ? マテハン機器User Report イオン(旧ジャスコ) 17 SEPTEMBER 2001 拠点に入ってくる機器メーカーはだいたい四系統に分 かれる。
採用メーカーの数も四、五社になる」(高橋 部長)という。
マテハン機器に求められる具体的なスペックは、導 入する拠点で処理する物量や、リードタイムなどの諸 条件によって自ずと決まってくる。
そこから弾いた詳 細な仕様に対して、各マテハンメーカーは提案書を出 す。
前提となる仕様が固まっているため、よほど評価 が拮抗しない限り、機器 メーカーのプレゼンテーシ ョンは一社につき一回だけ。
これをイオンが各社横並び で採点し、最も評価の高 い機器を選び、社内稟議 にかける。
冒頭でも述べた通り、こ うした機種選定はイオンが 行うものの、実際の投資 とセンター運用はすべて物 流パートナーが手掛ける。
パートナーの納得できない 機器選定を押し通せば信 頼関係が崩れる。
そのため プロジェクトメンバーによ る?合議制〞というユニ ークな制度で、マテハン選 定の合理性を確保してい る。
現在、イオンの物流プ ロジェクトには、リーダー の高橋部長を含めて一三 人のメンバーが所属してい る。
このうち物流センター関係の担当者は五人。
それ ぞれに複数の担当拠点を管理しながら、マテハン担当 や物件担当といった役割を兼務している。
同社の機器 選定は、この担当者五人に高橋部長を加えた六人に よる協議で成り立っている。
導入機種を評価する際のメンバーの持ち点は平等だ。
プロジェクトリーダーといえども、この春にプロジェ クトに加わったばかりの担当者と同じ六分の一の決定 権しか持っていない。
高橋部長は「私にだって二〇年 来の付き合いのあるマテハンメーカーの担当者に、仕 事をとって欲しいという気持ちはある。
しかし、私に ナンボ頭を下げられてもダメ。
意志決定権者ではない んですから。
これだけは皆さんにハッキリと申し上げ ている」と苦笑する。
各メーカーを「評価表」で採点 具体的な選定手順はこうなる。
まず六人全員が同 じマテハン機器に関するプレゼンを聞き、あらかじめ項目を設定してある?評価表〞に点数を書き込む。
こ の評価表は物流プロジェクトのメンバーが物流部門の 社員の力を借りて作成したもので、基本的に横軸には マテハンメーカーの該当機種、縦軸には評価項目とし て「時間当たりの処理量」「フォローアップ体制」「価 格」「会社の安定性」「納入実績」などが並ぶ。
導入 期間の制約など、特別な条件がある場合には、あらか じめ重視すべき項目にウエートをつける。
プレゼンを聞いた六人全員が評価表の記入を終える と、持ち寄って一覧化し、互いの評価点の違いを確認 しあう。
「ある項目について極端に評価点の分かれる ようなケースでは、メンバー全員で徹底的に理由を議 論する。
たいていはプレゼンの内容を聞き漏らしてい たり、誤解している。
議論を通じて納得した担当者は 特集 マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 取引先 取引先 取引先 取引先 ASN 請求情報 ASN 発注 請求情報 支払い案内 発注 支払い案内 NDC HOSTcenter メインフレーム PSS MMS Store system データ・ウエアハウス イオンRDC/PC TMS DC WMS PC/RS AS/RS 品質検査 デジタルピッキング システム 保  管 ピッキング 梱包出荷 荷受・検収 荷受・検収 検  収 ITF仕分 ASN/SCM システム 荷受・検収 保  管 ピッキング 製造・加工 出  荷 XD 店ゾーン別 カート積付 店ゾーン仕分 カート配送 XD XD XD 店舗(ジャスコ) 店舗(マックスバリュー) 店舗(メガマート) 店舗(グループ) 発注 発注 発注 発注 ASN 出荷支持 出荷支持 ASN AEON AEON AEON AEON ASN 「最適なマテハン選びは、さほど 難しいことではない」とイオンの 高橋富士夫部長 SEPTEMBER 2001 18 評価点を訂正する。
こうした過程を経ることでメンバ ー全員の共通認識を醸成しながら、各マテハン機器の 評価を進めている」と高橋部長はいう。
プレゼンの評価点を集計して候補機種を絞り込んだ うえで、さらに次は対象機機の既存ユーザーへのヒヤ リング調査を行う。
プロジェクトメンバーが実際に既 存ユーザーを訪ね、機器の稼働状況や購入後のメンテ ナンスへの対応、ユーザーの感じている不満などにつ いて調べる。
これを持ち帰ってさきほどの評価表に加 えれば、ようやく最終の評価点が決まる。
あとは社内 稟議にかけるだけだ。
採点結果は、コンペに敗れたメーカーにも返してい る。
そして「御社は他社に比べて、この項目が劣って ました。
次の施設についてはここが高い点になるよう なご提案を期待しています」と注文を付ける。
こうし たメーカーも次のコンペでは、すでに導入実績のある メーカーとまったく同じスタートラインに立つ。
機器 メーカーの競争意識を促すことで、イオンにとって有 利な条件を引き出そうという狙いだ。
選定メンバーには?素人〞を起用 緻密なルールに基づいて運営されているイオンのマ テハン選定だが、実はプロジェクトメンバーの大半は 物流マンとしてのキャリアを持っていない。
物流分野 の専門コンサルタントも使っていない。
「既存の物流 の考え方に引っ張られることのないよう意識的にそう した」という。
現在一三人いるメンバーのうち、従来 の物流部門から参加しているのはリーダーの高橋部長 とナンバー2の担当者だけ。
残りの十一人は公募やス カウトによって社内から集められた。
その一人、マテハン機器の担当者はプロジェクトに 参加する以前は、新規営業本部の管理課に所属して 今後3年間で構築する全国物流センター配置図 札幌RDC/XD/PC 北東北XD/PC 秋田XD/PC 仙台RDC/XD/PC 新潟XD/PC 信州XD/PC 北陸XD/PC 西東海XD/PC 中部NXD/RDC/XDPC 大阪NDC/NXD/RDC/XD 京都XD/PC 西部RDC/XD/PC 四国XD/PC 中国RDC/XD/PC 東東海RDC/XD/PC 関東NXD/RDC/XD/PC 山形XD/PC 沖縄RDC/XD/PC 九州 RDC/XD/PC 2002年稼働 2001年 6月稼働 2003年稼働 2004年稼働 ●NDC(ナショナル・ディストリビュション・センターの略) ●NXD(ナショナル・クロスドック・センターの略) 季節商品並びに商品回転率の遅い商品等全社 的に在庫を集中した方が効率的な商品の保管 と全国のクロスドック・センターを経由して 全国の店舗に商品を供給 商品在庫保管機能は有さず、全国に供給する 経由形商品を集約し、全国のクロスドック・ センターを経由して全国の店舗に供給 ●RDC(リージョナル・ディストリビュション・センターの略) ●XD(クロスドック・センターの略) 商品回転率の速い商品の保管と担当エリアの店舗に担当 エリアのクロスドック・センターを経由して商品を供給 商品の在庫保管機能は有さず、NDC/NXD/RDCから の供給商品と所在エリア商品の荷受けと店配送 ●PC(プロセス・センターの略) 生鮮食品の製造加工並びにインストアー商品の原料 を併設のクロスドック・センターを経由して供給 展開施設のタイプ 1:入荷商品を自動倉庫に格納する 入荷バースはクロスドック向けの10バースと、DC向けの7 バース。
入荷時には必ずハンディターミナルで検品作業をする。
在庫する商品はすべてパレットに積み付け、自動倉庫に格納。
管 理ソフトは蘭マーク社のWMSパッケージ「MARK」。
2:自動倉庫から必要エリアへの搬出 自動倉庫に格納した商品は情報システムの指示によって自動 的に搬出される。
そのまま無人の有軌道台車に積み替えられ、必 要な作業エリアへと自動搬送される。
イオングループ 仙台RDC (宮城県岩沼市) 特集 マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 19 SEPTEMBER 2001 いた。
物流センターから店舗に入荷する商品の検品や、 在庫管理などを担当しており、物流部門ではないもの の商品の流れを理解できる立場にいた。
こうしたメン バー選定に対して高橋部長は、「従来の当社の物流の 考え方をまったくの白紙に戻した。
そうすることで、 これまで現場で感じていた、こうあればいいなという 視点が活きてくるはず」と期待を寄せている。
もちろん、プロジェクトに参加した時点で、メンバ ーには物流に関する基礎知識を一通り学ばせている。
日本ロジスティクスシステム協会が主催する「物流技 術管理士」に派遣したり、外部の講師を招いた勉強 会も実施してきた。
その程度の基本さえ抑えておけば、 「最適なマテハン選びはさほど難しいことではない。
評 価軸をきちんと定めておけば誰にでも評価できる。
逆 にしがらみや先入観のないほうがいい」(高橋部長) という。
実際、?素人〞のメンバーからプロであるは ずの物流業者の方が脱帽するような発見が出ることも 少なくないという。
現在、プロジェクトでは、来年の七月から一〇月に かけて稼働予定の物件について、物流センターの仕様 やレイアウトの最終調整を進めている。
この八月末の 社内報告会で最終案が固まれば、すぐに具体的な導 入機器の選定に入っていくことになる。
これまでの経験から高橋部長は、マテハンメーカー にこう注文をつける。
「一社一社のマテハンメーカー は確実に仕事をこなしてくれるため特に不満があるわ けではない。
ただ、あっと驚くようなアイデアが欲し い。
自分達の得意分野にしがみつく視点ではなく、ユ ーザーの視点に立った提案が欲しい。
たとえ一時的に メーカーの売上減につながるような話でも、いずれは 合理的なほうが普及するはず。
旧来のやり方にしがみ ついていても意味はない」 (岡山宏之) 3:ケース出荷のためのラベル発行 自動倉庫または入荷コンベヤから搬出されたケース商品に、作業者 がコンピュータ画面の指示に従って発行した出荷ラベルを貼付する。
ケース商品はコンベヤ上を流れ、ピースピッキングを施した専用コン テナと合流して仕分けソーターへと向かう。
4:カート式の ピースピッキング まず折り畳みコンテ ナにある番号をハンデ ィーターミナルでスキ ャンする。
続いてカー ト上のコンピュータ画 面の指示に従って商品 をピッキング。
各商品 のJANコードをすべ てスキャンしながらコ ンテナに投入していく。
コンテナが一杯になっ たら作業者は自分でS CMラベルを発行して 貼付、コンベヤに投入 する。
5:店舗別・カテゴリー別の仕分け 仕分けソーターは2系統で全102シュート。
1時間あたり 10000ケースの仕分け能力を持っている。
大型店向けには各6 シュートを使ってカテゴリーごとに商品を仕分ける。
ただし中 小規模の店舗向けのカテゴリー仕分けに使うのは2〜4シュート で、店舗の規模によってカテゴリー数を変えている。
6:専用カートに積み付け出荷検品 最終的に1店舗あたり8〜12のカテゴリーごとに専用カートに積み 分ける。
その際、商品のSCMラベルとカートのバーコードをハンデ ィターミナルで読み取り、カートと商品をヒモ付けする。
管理してい るソフトは日立製作所の「HITLUSTER」。

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