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SEPTEMBER 2001 30
三〇年前に自動化を見直した米国
――日本と米国ではマテハン機器に対する考え方がだ
いぶ違うようですね。
「三〇年前に私が米国の物流視察にいったとき、エ
イボン化粧品の物流センターでは『Aフレーム』とい
う小物のピッキング機械を使っていました。 また、ジ
ャイアントフードという会社には『オーダーマチック』
というケース単位の自動ピッキングシステムがありま
した。 ところが、それから一〇年後に行ったときには、
主流はピック・ツー・コンベヤという半自動の仕組み
に変わっていた。 棚から手作業で商品をピッキングし、
ラベルを貼ってコンベヤに流し、仕分け機で店別に仕
分けるシステムです」
「そして、さらに一〇年後にまた視察したときには、
今度はピック・ツー・パレットになっていたんです。
卸売業者のフレミングをはじめ、大手の流通業者はか
なりの割合でこの方式を採用していました。 私は、三
〇年前に最先端の自動化機器をみたとき、映画の『二
〇〇一年宇宙の旅』のような衝撃を受けたんです。 と
ころが、二〇年後にはずっと単純なピック・ツー・パ
レットになっていた。 『猿の惑星』に来たのかと思い
ましたよ(笑)。 しかし、きちんと分析してみると、コ
ストパフォーマンスとか人間工学の面からみて正しい
ことが分かったんです」
――その後の一〇年間の状況はどうですか。
「変わっていませんね。 もちろん一部には変化もあ
りますが全体のトレンドは変わっていません。 米国の
物流センターでは、二〇年、三〇年前に導入した自
動倉庫や仕分け機を、いまだに使い続けています。 ス
タッカークレーンを変えたり、情報システムを一部だ
け手直ししたりしてね。 モーターを変えれば処理スピ
ードを早くすることは可能ですから」
――日常的なメンテナンスはどうしているのですか。
「米国では、かなりの部分のメンテナンスを自分達
でやっています。 物流センター内に技術者がいて、部
品も自分達で持っている。 国土が広いうえ、マテハン
会社が頻繁に変わるため、メーカーに頼んでもメンテ
ナンスがうまくいかないからです。 自分達の手に負え
なくなると、仕方なくマテハン機器を買い換えるとい
う状況です」
環境変化が自動化を難しくする
――日本では最近、やみくもに自動化を追求するので
はなく、人手と組み合わせた柔軟なシステムが増えて
います。 欧米の最近の状況はどうですか。
「日本と欧米の物流センターを比較すると、やはり
日本より上の点が多いんです。 自動化のレベルが違い
ます。 ピッキングのためのロボットでも、ヨーロッパ
の方がずっと進んだ使い方をしています。 ただし、い
ま世界中で、人件費の安いエリアにどんどん生産拠点
が移りつつあります。 空洞化していく先進国は失業率
が上がるため、機械よりも人間の方がコストが安いと
いうことになる。 そうすると物流の設備投資も減って、
物流システムは人と道具とコンピューターだというこ
とになってきます」
「他にも自動化を難しくしている原因の一つに、世
界的な『多品種少量化』の進展があります。 例えばス
ウェーデンの物流には、『モジュール化』といってパ
レットに合わせて商品の荷姿を決めるという考え方が
あります。 角砂糖はパレットのサイズから決めるなん
ていうぐらいね。 それが多品種少量化によって対応で
きなくなっています。 商品や荷姿がどんどん変化して
いるからです。 もう一つ、パレットのサイズという問
「日米欧で違う自動化の前提条件」
日本と欧米では物流センターを自動化する際の前提条件
が異なる。 欧州では人間工学に基づく設計が欠かせず、米
国では豊富な労働力を活用できるシステムを構築している。
ただしマテハン機器の技術レベルでは日本も負けていない。
結局、物流センターの生産性は、人間を使うセンター長の
マネジメント能力で決まる。
サン物流開発鈴木 準代表
Part ? マテハン機器Interview
31 SEPTEMBER 2001
題もあります。 こうした多品種少量化やパレットサイ
ズの不統一は、作業の自動化を難しくします。 その点、
人手に依存するシステムには柔軟性がありますから
ね」
――米国の状況はどうなのでしょうか。
「米国にはもともと自動倉庫は多くありません。 し
かも、昔のやつをそのまま使っています。 自動倉庫が
少ない理由を、私は?流通〞が違うせいだと考えてい
ます。 日本の流通はピース単位ですが、米国とヨーロ
ッパではケース単位です。 さらに同じケース単位の物
流でも、米国のようにパレット単位で動かそうとする
と、作業の過程に人間が介在する局面が増えてしまう。
もちろん、ロボットなどを使えば自動化できますが、
基本的にパレットに乗って出てきたケースを取り上げ
るのは手作業です」
「ところがケース単位の物流に徹すると、ある段階
までは、まったく人手を介さずに管理することが可能
になります。 これはヨーロッパ、とくにドイツで多く
見られるやり方です。 例えば、トラックから降ろして
コンベヤにのせる。 あとはバーコードラベルを貼って
おき、これを読んでフリーロケーションで保管してお
く。 もしピッキングエリアで補充棚の商品がなくなっ
たら、それをコンピューターが感知して自動的にケー
スを搬出し、ピッキング棚の近くまで搬送していくよ
うな仕組みになっています」
――欧米ではピース単位の物流はどうやって処理して
いるのですか。
「米国でもコンビニエンスストアなどの業態ではピース
ピッキングをしていますが、そこではデジタルピッキン
グが増えています。 これに対してヨーロッパでは、カ
ートピッキングが増えています。 もっとも日本のそれ
とは違って非常に重装備で、ドイツでは自走式のカー
トです。 作業者を乗せたまま移動して、ある棚の前に
くると、どこから何をいくつ取れという指示が出され
る。 労働組合の問題もありますが、これはもう文化の
違いですね。 儲けることの追求と同時に、人間工学に
基づく人に優しい物流をやろうということです。 こう
した傾向は、とくにドイツ、スウェーデンあたりで顕
著です。 それがヨーロッパでは当たり前なんですよ」
機器メーカーの力を引き出す
――少し話を変えて、実際に物流センターを構築する
ときにユーザーがすべきことを教えて下さい。 まずプ
ロジェクトを作る必要がありますね。
「当然です。 ただし兼任ではダメです。 専任のメン
バーでプロジェクトを組む必要がある。 それから一番
重要なのは、プロジェクトのなかに稼働後の施設のセ
ンター長になる人間を必ず入れておくということです。
これをプロジェクトメンバーと別にすると、稼働後に
問題が起こっても責任のなすり合いが始まりかねませんからね」
――実際にマテハン機器を選ぶ段階での注意点は。
「簡単ですよ。 実際にはやっていないところが多い
のですが、同じカテゴリーのなかで必ず三社以上のマ
テハンメーカーを呼んで話を聞くことです。 機器メー
カーの営業マンは他社の情報をたくさんくれます。 こ
れは凄い情報ですよ。 場合によっては、営業マンだけ
ではなく技術者も呼びます。 そうやって情報を集めて、
なおかつ一番安いところに発注する」
「ポイントは、とにかく時間を惜しまずに複数の機
器メーカーの話を聞くということです。 もちろん、自
分達の側からも情報をどんどん出す必要があります。
これを囲い込んでいては、いい情報など入ってくるわ
けがありません」
特集
マテハン機器/トラック車両
ユーザー満足度調査
(すずき・じゅん)五八年東京経済大学卒
業、六二年セーラー万年筆入社、七〇年長
崎屋入社、物流部長、電算部長、システム
本部副部長、物流子会社社長を歴任。 九二
年サン物流開発を設立し代表取締役に就任、
マイカルの物流システム構築、テクノポー
ト総合物流センターの計画と建設、寿屋八
代物流センターの建設など多くの案件を手
掛けてきた。 物流効率化法による共同物流
システムの構築事例も多い。
PROFILE
物流改革の意志決定
メンバーの構成
・担当重役(権力のあるナンバー2・後継者)
・リーダー(指導力・カリスマ性・人的ネットワーク)
・メンバー(物流・営業・商品・製造・購買・情報)
・社内よりアンケート・現状の問題点・
将来の方向などについて整理、ランク付け
・抜本的改革を目指す
・何のための建設か、どのように使うのか、
目的を明確にし、P/Tメンバーに徹底
する
・調査票を作成し、調査し、分析する
・調査結果からセンター内フロー、サイズを
決める
・IQ分析・Q分析・マトリックス分析・パ
レート分析
・問題点を明確にし、物流センター建設の改
善点を網羅する
・帰納法・演繹法
・建設設計・レイアウト・設備・作業・人員・輸配
送などの基本構想を作成する
・作業方法を文章化する
・マテリアルフローを図面に落とす
・情報システム
・作業システム
・物流機器の決定
・物流コストの試算
・サービスレベル
・物流品質
・投資額
・一件複数業者見積り
・見積り比較表
・各工事ごとに
・初期トラブルの原因は熟練不足
・新センターに興味と希望を持たせる
・総合テスト
・事前に問題点を発見し、ダメ工事をする
・検収は慎重に
・竣工式
・P/T、業者
プロジェクトチームの
発足
経営トップの意志決定
現状の問題点の整理
新センター建設目的
の明確化
調査・分析
データ収集と予測
問題点の摘出
改善点の明確化
基本構想の作成
基本政策の決定
作業システムと
物の流れを確定する
新物流センターの
詳細設計
見積り依頼
業者決定・発注
基本設計のチェック
と承認
従業員の教育
協力会社の教育
工事中の管理
完成テスト
引き渡し検査・検収
稼働開始
稼働後の評価
プロジェクトチームの作業フロー
出典:サン物流開発
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