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SEPTEMBER 2001 32
――大規模な自動倉庫などを備えた物流センターの大
型案件が減っていますね。
「これまでに当社は二、三〇〇件に上る物流センタ
ーの構築を手掛けてきました。 計画から設計、施工、
試運転までをすべてを担ってきましたが、実は九〇年
代前半ごろまでに手掛けた案件というのがすごく多い
んです。 とくにメーカーの物流センターが多いのです
が、当時は大半のメーカーが、そのとき作っているの
と同じような商品を、五年後にも作っていると自信を
持って公言できた時代でした」
「ところが九〇年代の後半ぐらいから、物流センタ
ーをとりまく状況が大きく変わってきました。 はたし
て物流インフラは現状のままでいいのか、もっと違う
選択はないのか、と考えざるを得なくなってきた。 も
ちろん、メーカーと小売りの相対的な力関係が変わっ
たということもあります。 そのため、多くのクレーン
やコンベヤを導入する重装備の物流センターの案件が、
非常に少なくなった」
――かつての自動化路線を転換した花王などは、その
象徴的な事例ですね。
「そうですね。 多くの企業が、その方が自社のビジ
ネスにメリットがあると判断するようになったんです。
同じような話を当社は九〇年代の前半から、お客様を
通して耳にしてきました。 そして、その頃から、こう
した変化を定性的につかんでレポートして欲しいとい
う要望も増えてきたんです」
「我々としてもそういうニーズを強く感じましたの
で、当社の資源の一部をコンサルティングにシフトし
ました。 最近では、こうした案件がとくに増えていま
す。 そういうコンペで競合するのはアクセンチュアだ
とか日通総研、日立物流など。 ゼネコンでもなければ、
マテハンメーカーでもありません」
適切な要件設定がムダを省く
――ゼネコンは従来からコンサルティング事業のノウ
ハウを持っていたのですか。
「お客様から最初に話をいただく段階というのは、昔
から手書きでちょろちょろっと要件に関するメモがあ
るだけというケースが少なくありませんでした。 最終
的に四〇、五〇億円の投資をしたあるお客様の場合
も、初めはA4版の便せん一枚に書いたメモだけでし
た。 四八時間かかっている配送サービスを二四時間に
短縮したい。 そのためには現在の中央集約的な物流を
見直して、分散体制を構築する必要があると考えてい
る。 本当にそうなのかを検討したうえで、最終的には
新たな物流センターを作りたい――そんな具合です。
逆に言うと、この図面の通りに物流センターを作って
くれ、というところまで出来上がっているプロジェク
トに、我々の出番はありません」
――センターの設計を図面化するまでのプロセスにこ
そ、御社のような企業の出番があるわけですね。
「図面にする前提となるさまざまな条件があります。
ロケーションはどこなのか、保管する品種は何なのか、
期間はどれくらいなのか。 一言で商品と言っても、水
より安いものから、医薬品のような高額のものまであ
って、それぞれに適する自動化のレベルも異なります。
場合によっては、商品をデリバリーするというサービ
ス面の要請に応えるため、どうしても人手では処理し
きれないから自動化するというケースもあります。 そ
れを妥当な投資範囲に収めるためにはどうしたらいい
のか、とかね」
「こうした雑多なニーズを汲み上げたうえで、この
部分は自動化、ここは手作業、この作業はアウトソー
シングといった具合に考えていくわけです。 つまり、
「機械ではなく“機能”を買う」
90年代に入って大規模な自動倉庫を建てる案
件は激減している。 台頭する3PLも、もはや単
一機能で高効率の物流センターを望んではいない。
ユーザーは機械ではなく、10年後も有用な“機
能”を求めている。
大成建設舘康太郎エンジニアリング本部計画グループ
(ロジスティクス)グループリーダー
Part ? マテハン機器Interview
33 SEPTEMBER 2001
最初の条件を作ることが、第一ステップとして非常に
大切なんです。 これが後で、物流センターの成功、不
成功を左右する大きなポイントになる」
――具体的にはどんな作業から始めるのですか。
「多くはお客様の物流とかロジスティクスの現状を、
あからさまにするところからスタートします。 そして、
そのお客様の経営方針、たとえば五年後にこういう企
業になりたいといった方針に照らして、物流面でのギ
ャップが何なのかを明らかにしていきます。 さらに、
どうすればそのギャップを埋めることができるのか、
経済的に有利な方法は何なのかといった切り口でそこ
に向かうステップを作り、検証していくわけです」
――その次のステップに進む場合、御社は元請け業者
になるわけですか。
「基本的にそうです。 プロジェクトをマネジメントし
て、そのシステムの保証まで手掛けるケースがほとん
どです。 私はこの仕事に何十年間と携わってきました
が、成功のポイントは、お客様の投資目的にあった設
計条件を設定するというのが一つ。 そして、それを正
確な表現でマテハン機器メーカーに伝えることも大切
なポイントです」
「要件設定があいまいだと、機器メーカーとしても
自信を持ってコストを弾くことができません。 場合に
よっては、隣接するシステムの間に抜けがあったり、
逆に重複したりというムダが発生してしまいます。 こ
うした部分の正確なスペックを作るというのは、当社
のノウハウの一つです」
担当者個人の能力まで評価する
――プロの視点でみるマテハン機器の選び方を教えて
ください。
「やはり機械を買うのではなくて、機能を買うとい
う視点が大切です。 機能というのは、エンドユーザー
さんが商売を続ける限り、存在し続けなくてはならな
いものです。 場合によっては多少は導入コストが高く
ても、一〇年間でみればランニングコストも含めて安
いという判断が必要なこともあります。 これを一回の
コンペで選ぶのは難しいんですがね」
「当社は、どういった機種の場合に、稼働後にどん
なケースが起こり得るかということを経験的につかん
でいます。 それを踏まえてエンドユーザーさんに提案
するわけです。 場合によっては、安いからこっちにし
ようよと押し切られる場合もありますが、本質はそう
ではない。 お客さんにとって何が一番得かを明らかに
するためには、いろいろな要素を入れて評価する必要
があります。 数多くの要素を提供できるというのが
我々のノウハウです」
――例えば、どんな要素があるのでしょうか。
「一つにはサービス性というのがあるでしょうね。 マ
テハンメーカーのサービスステーションが近くにあるとかね。 実際の運用では大きく影響します。 また、別
のユーザーのところで、まったく同じような使い方を
長年してきた実績というのも重視すべき要素です。 同
じような機械でも、実績が証明されているのか、いな
いのかでは評価は大きく違ってきます」
「もっと判断しにくいところでは、エンジニアの能
力というのもあります。 これだけの規模のシステムで
あれば、こんな能力を持ったエンジニアが必要だが、
それが担保されているかどうか。 さらに突っ込んで、
このプロジェクトには誰々さんしかいない、その人を
担当者として付けてくれるか、といったところまで考
えます。 優秀かどうかというのもありますが、同じよ
うなタイプのセンターをハンドリングしてきた経験が
豊富だとかね。 やはり最後は人ですよ」
特集
マテハン機器/トラック車両
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お客様
当 社
(たち・こうたろう)七二年東京理
科大学卒業、同年大成建設入社し
エンジニアリング本部に配属、九
一年ロジスティクス施設計画室長、
これまでエーザイ北房物流センタ
ー、第一製薬新大阪物流センター、
近畿コカ・コーラボトリング千里
丘物流センターなど数多くのセン
ター構築に携わってきた。
PROFILE
出典:大成建設
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