ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2001年10号
FOCUS
国土交通省の物流二法見直し協議規制温存を狙う奇妙なロジック

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2001 80 九〇年に施行された物流二法は、ト ラック運送事業の参入規制を免許制か ら許可制に、運賃規制を認可制から事 前届出制へと緩和する一方で、民間を 活用した適正化事業を行うなど社会的 規制を強化する内容だった。
貨物運送 取扱事業については、同じ法律で規定 し、事業規制を整えた。
両事業規制は法律施行後、運用面で も徐々に緩和が進められ、とくにトラ ック運送事業では毎年二〇〇〇社が新 規参入し、五〇〇社が撤退するという 厳しい競争が繰り広げられるに至って いる。
今年三月に閣議決定された規制改革 推進三カ年計画では、トラック運賃の 事後届出制への緩和、トラック営業区 域の見直しのほか、第一種利用運送事 業の許可制から登録制への緩和、貨物 運送取扱事業運賃の事後届出制への緩 和が求められており、今回の見直しで はこれらの制度見直しにとどまらず、 事業の健全な発展のために必要な方策 を合わせて検討する、という方向性が 示されている。
検討に当たって国土交通省では、学 識経験者のほか物流事業者、労働組合、 荷主らで構成する懇談会を立ち上げた。
今年十二月上旬にとりまとめを行い、 来春の通常国会に物流二法改正案を提 出するというスケジュールになってい る。
事業規制が安全を担保する? 懇談会とその下に設けられた部会で の議論では、トラックの運賃規制や営 業区域規制はもはや形骸化していると の見方が大勢で、本音ベースでは「役 所の規制などあってもなくても同じ」 といった雰囲気。
ただし、少なくとも トラック運送事業者サイドから見れば、 さらなる規制緩和で競争が激化すると荷主からのさらなる運賃引き下げ機運 につながりかねず、現下の経済情勢で はマイナスにこそなれ、プラスには働 かない。
このため、トラック事業者委 員は業界を代表している立場もあって 「一定の規制は残す必要がある」と主 張している。
物流事業、とりわけトラック運送事 業は現在、事故防止をはじめとする安 全面、排ガスが大気汚染の一因になる という環境面で、社会から様々な取り 組みを要請されている。
ここで問題と なるのは、トラックなどの事業規制は、 安全面、環境面をも担保する機能を持 っている、とのロジックだ。
曰く「営業区域規制は適切な運行管 理を行うために必要で、安全性を担保 している」、「安全・環境規制を守るた めには、運賃が基本」といった論理だ。
そして、行政もこれまで、この論理で 規制の堅持を図ろうとしてきた。
これ に対して、学者委員は「運賃と安全問 題、環境問題は関係がない」と反論す る。
経済学的に見ると、彼らの主張には 確かに飛躍がある。
「運賃規制」と「安 全」の間に「市場」と「経営者のビヘ イビア」が欠落しているのだ。
もちろん、安全で環境にやさしい運 送事業を実現するには、金が掛かるこ とも事実だ。
しかし、もはやそれを規 制に頼る時代ではない。
運賃規制や参 入規制、営業区域規制は純然たる経済 規制として捉えるべきだし、事故が起 きないように安全面を担保するために は、安全規制の強化や取り締まり強化 で対応するのが筋で、しかもそのほう がすっきりとしていて分かりやすいは ずだ。
多くの市民が望んでいることを実現 するのに、仮にトラック運送業者にだ け経済的なしわ寄せが及ぶのであれば、 その時に政府や自治体が支援すればよい。
安全・環境規制を守らない事業者が 安い運賃で請け負う→運賃水準が下落 する→まじめな事業者も安全面などに 投資できなくなる→事故が増える、と いった悪循環を断ち切るためにも、社 会的規制を守らない悪質な事業者を市 場から追放する必要がある。
そのため には取り締まりや公的支援を含めた ?守らせるための制度〞が必要なので はないだろうか。
FOCUS 国土交通省の物流二法見直し協議 規制温存を狙う奇妙なロジック 国土交通省が、施行から十余年を経過した物流二法 の見直し作業を行っている。
トラック運送事業と貨物 運送取扱事業の規制見直しとあわせて、今後の両事業 のあり方を探っているものだが、シナリオなき見直しの 議論の行方は‥‥ 81 OCTOBER 2001 港湾コンテナターミナルでのゲート 通過待ちトラックの行列をみたことが あるだろうか? 現在、ゲートのオープン時間は港湾 運送労使間の協定などから原則として 「平日の昼間」と「土曜の午前中」の み。
このため、荷主側はゲートオープ ン時間内でのコンテナ搬出入を強いら れている。
特にゲート開閉時間の前後 に搬出入のトラックが集中。
その結果、 付近道路の混雑やトラックの回転率低 下を招いている。
中には三時間のゲート待ちを余儀な くされるケースもあるという。
その時 間を他のコンテナの輸送に充てること ができれば‥‥。
ゲート待ち時間の短 縮は各港湾の急務の課題と言われてい る。
ゲート混雑の解消策として今、注目 を集めているのがコンテナターミナル の予約情報システムである。
同システ ムはコンテナの外に設置したストック ヤードとシャトル運送を活用し、事前 予約によって待ち時間なしでコンテナ ターミナルへの搬出入を行うもので、 輸入コンテナの搬出照会システムが付 加されたシステムもある。
導入効果は、待ち時間短縮化のほか、 トラックヘッド・シャーシなど設備の 有効活用が図られる点など (表1) 。
各 港によってシステムの構造は多少異な るが、既に横浜港、博多港、北九州港 で導入が進んでいる (表2) 。
先行する博多港 ストックヤードと照会システムを併 せ持つ博多港のケースを紹介しながら、 予約情報システムの仕組みを解説しよ う。
「博多港コンテナ貨物ITシステム」 (HiTS)は、「搬出照会」と「搬出 入予約」の機能を持つ。
「搬出照会」は誰でも無料でアクセス可能。
香椎・ 箱崎コンテナターミナル内に保管され ている輸入コンテナ貨物の搬出許可に 関する情報(通関状況、搬出可能日な ど)を事前に取得できるので、貨物の 搬出時のゲート処理を円滑に行うこと ができる。
照会方法はインターネット と携帯電話のiモードの二種類。
「搬出入予約」は、香椎コンテナタ ーミナル(CT)とこれに隣接するス トックヤード(SY)間に専用のシャ トル便を運行させ、そのシャトル便で 運ぶ搬出入コンテナ貨物をインターネ ットで事前に予約するシステム。
同機 能には、事前に登録した事業者のみア クセスが可能だ。
利用者は予約センタ ーに登録したシャトル便の運行時間帯 までに、SYに搬入コンテナまたは搬 出用シャーシを準備しておけば、並ぶ 必要もなく、CTのゲートオープン時 間に左右されず貨物の搬出入を行うこ とができる。
利用数の底上げがカギ 各港における同システムの導入効果 をみると、博多港ではゲート待ち時間 コンテナターミナルの予約情報システム トラックのゲート待ち時間解消に期待大 港湾コンテナターミナルでのゲート通過待ち時間の解 消策として「予約情報システム」が注目を集めている。
既に導入済みの博多港では待ち時間の大幅短縮に成功 した。
国土交通省もその効果を目の当たりにして、シス テム高度化についての検討を開始した。
同システムの目 下の課題は運用コストをカバーするための利用者確保 だという。
表1 予約情報システムの構成 《基本サービス》 ・ 通関済コンテナ情報 ・ 道路渋滞情報  ターミナルとトラック間 《付加サービス》 ・ 電話/FAX予約 ・ インターネット予約 ・ イントラネット予約 ストックヤードとターミナル 間のシャトル便輸送 ※ストックヤードを設けず、直接  ゲートのトランスファーポイ  ントに行くシステムもあり 照会システム 予約システム ストックヤード OCTOBER 2001 82 FOCUS が三時間から一時間程度に短縮(ただ し、ターミナル分散、滞留コンテナ減 少による効果も含まれる)されており、 他港でも一定の効果が得られていると いう。
ただし、課題がないわけではない。
各港とも予約システムの利用状況が少 なく、横浜港では実に全体の一〇%程 度。
予約システムの運用が採算ベース に載るにはある程度の利用数が必要で、 その運営コストをどう確保するかが課 題となっている。
予約情報システムはここに来て新た な展開も見せている。
今年度から港湾 の二四時間フルオープン化に向けた検 討を開始した国土交通省は、混雑解消 などとは別の視点から、同システムに 注目。
フルオープン化の検討と並行し て、これを補完する高度な予約情報シ ステムの開発について検討を開始した。
同省は、システム導入によって生じる コスト削減効果により、フルオープン 化に伴う追加コストをカバーリングで きると期待している。
現在、東京港は予約情報システムの 導入準備を進めており、青海公共埠頭 コンテナターミナルで八月と九月に二 度のトライアル(五日間)を実施した。
既に導入済みの横浜では、コンピュー ターネットワーク化計画を検討中で、 貨物量の変化に対応した新たな方向性 を打ち出そうとしている。
博多港はH iTSの第三の機能「配車」を現在開 発中だ。
産声をあげたばかりの予約情報シス テムは今後さらに機能面で進化し、導 入港も順次拡大していくと見込まれて いる。
大手旅行会社の今年六月の国内航空 券販売額は、前年同月比で二〇〜三 〇%減少した。
最大手のJTBは二 二・七%減、近畿日本ツーリストは三 〇・五%減と軒並み落ち込んだ。
国内線の輸送人員数は減少していな い。
にもかかわらず、旅行会社の販売 額が前年割れとなったのは何故か。
航 空会社の中抜き政策によって利用者の 旅行会社離れが進んだため、という見 方が一般的だ。
航空会社による旅行会社の中抜きが 顕在化したのは昨年三月、日本航空が e割」という新サービスを導入してか らだ。
「e割」とは、同社の直販サイ トで申し込んだ航空券に限って最大二 航空券のネット直販拡大の余波で 貨物フォワーダー中抜きの日も近し? 航空券のネット直販拡大で、従来は蜜月の関係にあった航空 会社と、販売代理店として機能してきた旅行会社との溝が深ま りつつある。
中抜きによる収益改善を目論む航空会社は、インタ ーネットを利用した販売チャネルへの参加を求める旅行会社の主張に聞く耳を持とうとしていない。
旅客部門での直販化の動きが 貨物部門に波及する可能性も出てきた。
表2 現在導入されている予約情報システム 横浜(大黒・南本牧) 博多(香椎) 北九州(太刀浦) 1998年10月 2000年11月 2000年12月 イントラネット ストックヤード 照会システム 事業主体 港(埠頭) 導入時期 予約方法 (社)神奈川県トラック協会 海上コンテナ部会 博多港埠頭(株)、 (社)九州トラック協会他 (シャトル便運行、 ストックヤード管理は 事業者負担) 関門コンテナターミナル(株) 電話/FAX インターネット (照会は携帯電話 のiモードでも可) ○ ○ × × ○ ○ 航空各社は航空券の直販化を進めている 日本航空のホームページ 九%を割り引く、ネット利用者だけに 向けたサービスだ。
航空券のネット直販は急拡大してい る。
例えば日本航空では、一九九六年 にネット直販を始めて以来、その販売 額が前年同月比三・五倍程度で拡大し てきた。
日航の国内線総予約件数に対 するネット予約の比率は現在一〇%。
来年にはこの比率を倍増させる目標を 掲げている。
全日空、日本エアシステ ムについても、日航と同様に拡大する 傾向にあるという。
反発する旅行業界 ところが、こうした動きに対して旅 行会社一三一九社が加盟する業界団体、 日本旅行業協会が反発。
日本航空に 「e割」を旅行会社でも扱えるよう要 望書を提出した。
「航空会社がサ ービスを始めた ばかりの頃、旅 行会社は航空 需要の発掘に相 当な貢献をして きた。
航空会社 が航空券の発券 システムを構築 したら、システ ム使用料と称し て相当な投資を 行ってきたのも 旅行会社だ。
こ れまでの貢献度 を加味する上で も、航空会社の ネットサービス に旅行会社も参 加できる環境を 整えて欲しい」 と古木康太郎 83 OCTOBER 2001 日本旅行業協会副会長は訴えるが、現 在のところ日本航空側からは明確な回 答が寄せられていないという。
昨年一〇月には、航空会社と旅行会 社の関係者が集まり、ネット直販に関 する協議の場を設けたことがあった。
しかし、その場で具体的な意見交換が 行われることはなく、「今後も引き続 き両業界で話し合いを続けるというこ とで終わった」(日本旅行業協会広報)。
もっとも、今のところ次回協議の日程 は未定のままだ。
さらに追い打ちを掛けるように、航 空各社は今年六月、予約後六日以内と していた国内航空券の受取期限を事実 上撤廃した。
利用者はあらかじめ旅行 会社に出向いて航空券を受け取らなく ても、空港で搭乗二〇分前までに手続 きを済ませればいい。
同じく六月、インターネットや電話 でカード決済すれば、運賃を二%割り 引くサービスも新たに開始した。
消費 者の利便性確保を大義名分にして、中 間流通の中抜きをじわりじわりと進め ている。
従来は蜜月の関係にあった航 空会社と旅行会社の溝は深まるばかり だ。
航空貨物にも余波が‥‥ 航空会社が旅行会社の主張に聞く耳 を持たない姿勢を貫いているのは、直 販化を収支改善の足がかりにしたいと いう思惑が航空会社側にあるからだ。
一般に航空会社は旅行会社に対して国 際線で航空運賃の七%、国内線で五% の販売手数料を支払っていると言われ ている。
それを利用者への直接販売に よって事実上ゼロにする。
運賃値下げ 競争でただでさえ利幅が薄くなりつつ ある航空会社ではネット直販化の動き を、航空業界の事業構造の抜本的な見 直しを進め、ひいては業績回復をもも らたしてくれる追い風と受け止めてい る。
ただし、こうした中抜きの動きは旅 客部門に限ったことではなさそうだ。
「今後は旅客航空だけに止まらず、航 空貨物業界にもインターネットを利用 した直接取引が広がるかも知れない」 (日本航空関係者)という声も囁かれ 始めている。
航空機の貨物スペースを代理販売す る航空フォワーダー各社は旅行会社と 同じく中間流通を担う立場。
いわば一 昔前の旅行会社と同じく、航空会社と は蜜月の関係にある。
それだけに旅客 部門での直販化の動きは他人事ではな い、と危機感を強めている。
これまでような?持ちつ持たれつの 関係〞が今後も続くかどうかは不透明 だ。
むしろ、ネット化の波は航空貨物 の世界にも着実に押し寄せてくるもの であると心構えしておいたほうがいい だろう。
旅客部門での中抜きの動きが貨物部門に波及する可能性も出てきた ●日本通運資料より

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