ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年11号
FOCUS
荷捌き場不足の解消なるか国交省の物流バリアフリー構想

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2001 80 大型店舗や高層ビルなど多数の人が 出入りする建築物では、「人流」の視 点から来客への配慮がされている。
し かし、商品などを搬出入する「物流」 の視点からすると、?出入りする物量 に比べて荷捌きスペースが足りない? 地下駐車場の通路が狭くてトラックが 入れない――といった問題点が少なく ない。
このため、物流事業者が非効率な荷 役作業を余儀なくされているケースが 多い。
さらに、これによって納品順番 待ちのトラックなどが路上にあふれ、 周辺地区に渋滞の恒常化や騒音、排ガ スといった「二次災害」まで引き起こ している。
物流というのは経済・社会の裏方的 存在である。
しかし、裏方として苦労 を強いられているからといって「二次 災害」を放置して、社会に負の影響ま で与えているのを看過することはでき ない。
そこで国土交通省では、学者や百貨 店の物流担当者、建築設計事務所、物 流事業者、不動産会社の開発担当およ び行政担当者で構成する調査委員会を 立ち上げて、物流円滑化への阻害要因 の改善・解消、すなわち「バリアフリ ー」化に取り組むことにした。
行政担当者は、物流関係のセクショ ンだけでなく、建築基準法を担当する住 宅局建築指導課、都市内の道路を担当 する都市・地域整備局街路課、荷捌き 場なども担当する同局市街地整備課と いう旧建設省系の各課からも参画して いる。
まさに統合省庁である国土交通 省らしい連携体制が整ったことになる。
調査委員会では、実際に物流を阻害 している事例や改善事例などについて、 物流事業者、とくにトラック運送事業 者に対してアンケート調査を実施し、 阻害要因を整理・分析したうえで改善策、解消方策を探る。
来年三月末を目 途にとりまとめを行い、関係者に対す る指針を策定する予定だ。
物流の重要性を再認識 物流を阻害している代表例は、荷捌 きスペースの不足。
大規模な店舗でも、 商品の搬入バースが一つしかなく、納 品車両が二〜三時間も路上で待たされ るようなケースだ。
結局、渋滞や騒音 などのかたちで周辺地域に多大な影響 を与えてしまう。
車高の高さ制限はビルの地下駐車場 でよく見かける。
乗用車しか入れず、 本来ならまとめて配送したい場合でも 小さな車両で何回にも分けて運ばなけ ればならない、といったケースが多い。
これもやはり渋滞や環境問題の一要因 となる。
また、高層ビルでは、荷捌きスペー スから各階のテナントへのいわゆる 「縦持ち」部分について、エレベータ ーが不足しているなどの物流阻害要因 もある。
量販店などでは、大店立地法の施行 で荷捌きスペースの確保などに配慮す るとの規定が置かれたため改善しよう という意識が見られるが、そもそも店 舗を設計、建築する際に物流への配慮 が欠けているという実態も指摘されて いる。
物流の「バリアフリー」に向けた対 策は大きく分けて二つあるという。
一 つは建築物の構造というハード面から、 もう一つは限られた荷捌きスペースな どを効率よく使うためのソフト面から の対策だ。
ハード面では建築設計段階 からの物流への配慮を求め、ソフト面 では納品時間をずらしたり、あるいは 他の場所で荷捌きをしてから共同配送 や納品代行するような効率化策を促す ことが考えられる。
物流阻害要因の解消に向け策定する指針は、「強制的なものではなく、あ くまでも誘導するためのガイドライン」 (国土交通省貨物流通施設課)との位 置づけだが、こうした異業種の関係者 が一堂に会して少しでも物流を円滑に しようと話し合うこと自体初めてのこ とであり、その意義は小さくない。
物 流が重要なライフラインの一つである という認識を新たにしてもらうために も、真剣な検討を期待したい。
(芹江亜太郎) FOCUS 国土交通省が物流の「バリアフリー」化に向けた調 査を開始した。
バリアフリーといえば高齢化社会のキー ワードともいえる言葉だが、一体、物流の「バリアフリ ー」とはいかなるものか? 荷捌き場不足の解消なるか 国交省の物流バリアフリー構想 KEY WORD 物流行政 81 NOVEMBER 2001 米国経済の減退を考慮すれば、今年 一〜六月の荷動きは比較的堅調に推移 してきたといえるだろう。
ただし、九 九年から二〇〇〇年にかけて発注され た五〇〇〇TEU(二〇フィートコン テナ換算)超の大型コンテナ船が続々 と竣工してくる今年後半以降が、コン テナ船社にとって本当の正念場となる。
船腹量の増加率は解撤などを考慮して も、二〇〇一年から二〇〇二年に約一 〇%、二〇〇二年から二〇〇三年には 約十一%と予想されており、需給悪化 は避けられそうにない。
予想される供給過剰に備え、船社は 北米、欧州の東西基幹航路で、相次い で船腹削減計画の検討に乗り出した。
北米東航 (アジア→ 北米)を 管轄する協議協定、太平洋航路安定化 協定(TSA)は、メンバー船社がボ ラ ン タ リ ー で 船 腹 を 削 減 す る 「 Tonnage Rational System 」を十一 月から来年三月まで実施する案をまと めた。
一方、欧州航路を管轄する運賃 同盟、欧州同盟(FEFC)も船腹調 整策「Vessel Withdrawal System 」 を一〇月から来年三月まで実施するこ とを決めた。
船腹削減は新造船のドック入り期間 延長や既存船の転配時期の前倒し、極 端な場合には投入船の入れ替えやサー ビスループの休止によって実施される。
また、スペースを削減した船社が他船 社のスペースを借り受ける際には、相 場よりも廉価にチャーターできるとい うインセンティブも盛り込まれる。
共通運賃の設置など海運協定のカル テル行為は全世界で独占禁止法の適用 除外となっているが、協定は不当に競 争制限的な状況を作り出していないか 常に当局の監視を受けている。
船腹削減計画についても、実施にあたっては当 局の承認を得る必要があり、船社協定 は船腹削減が作為的にスペース不足を 作り出し、運賃値上げを図るための行 為でないことを示さなければならない。
TSAの場合、新協定は監視機関で ある米連邦海事委員会(FMC)に、 発効の四五日前にファイルしなければ ならない。
四五日間のうちに特にお咎 めがなければ新協定が発効する手順。
FEFCについては、協定内容がEU 競争法の適用除外を与えられるか否か、 欧州連合(EU)の欧州委員会・競争 総局の判断を仰ぐ。
欧州委は九九年、二〇〇〇年の一〜 三月にFEFCの船腹削減を認めた実 績がある。
ただし、今回は実施期間が 六カ月と長いことから、過去の船腹調 整で与えた競争法の「一括免除」には 該当しないと判断。
委員会が協定を厳 正に審査したうえで適法か決める「個 別免除」の申請を行うよう同盟側に求 めた。
FEFCは九月にロンドンで開催し た緊急船社会合で、欧州委による個別 免除の審査結果を待たず、予定どおり 船腹削減を一〇月一日から実施するこ とを確認した。
欧州同盟は既に同協定 の個別免除申請を行っているので、後 になってから欧州委から違法判定が下 されてもその時点で速やかに同協定を 中止すれば、罰金課徴を回避できるか らだ。
一方、TSAは、協定としての船腹 削減計画のFMCへの申請を事実上取 りやめた。
船腹調整については、各社 や船社間アラインアンス(戦略的提携 関係)で、個別に実施することになっ た。
どの船社がどれくらい船腹を削減 するといった具体案がまとまらなかっ たことや、FMCへの四五日間の事前 通告期間を待てなかった船社がいるな ど、船社間の思惑が一致しなかったた めとみられている。
こうして、東西基幹航路で船社は船 腹削減を実施に移したが、船腹過剰は 一時的なものとみる船社関係者も多い。
ただし、米国同時多発テロの影響で、 船社は荷動き予測のさらなる下方修正 を迫られており、予断を許さない状況 は続く。
超大型コンテナ船時代の到来 を目前に控え、コンテナ船社は苦しい 試練のときを迎えている。
米国経済減速と大型船大量竣工で 「正念場」迎えるコンテナ船市況 九九年、二〇〇〇年と史上空前の活況を呈した 定期コンテナ船市況だが、二〇〇一年に入ると需 給に陰りが見え始めてきた。
マーケットの巨大な 牽引役であった米国経済に急ブレーキがかかり始 めたからだ。
船社は船腹調整という対策を打ち出 したが、米国同時多発テロの影響で荷動きがさら に悪化する可能性も出てきた。
KEY WORD 外航海運 1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 年 計 1999年 14.3% 15.2% 9.1% 10.3% 12.0% 2000年 14.4% 12.5% 18.0% 11.5% 14.1% 2001年 3.9% −0.6% ― ― ― 北米東航(アジア→北米) 荷動きの対前年同期比伸び率の推移 NOVEMBER 2001 82 貨物重視の 24 時間空港 中部国際空港「セントレア」は伊勢 湾常滑沖に位置する。
名古屋中心部か ら南に三五キロ、所要時間は三〇〜四 〇分。
四七〇ヘクタールの敷地内に三 五〇〇メートルの滑走路を一本設置す る。
二四時間空港ということもあり、 現在の名古屋空港に代わる中部圏の新 たな航空拠点として期待されている。
事業主体は中部国際空港。
総事業費 は七六八〇億円で、トヨタ自動車など のほか、愛知県や名古屋市が出資する。
税関や通関手続きのオンライン化によ り、成田空港などに比べリードタイム を短縮できるのが大きな特徴で「どち らかと言えば、貨物に比重を置いてい る」(同社)という。
中部地区にはトヨタをはじめ、その 系列部品サプライヤー、それにソニー、 松下グループなど世界的な家電メーカ ーの工場が多く集まる。
電子部品など は航空貨物で取り扱われるため、中部 国際空港が「輸出入の拠点となる可能 性は高い」(トヨタ幹部)と期待され ている。
現在、中部地域を生産地とする輸出 貨物の取扱比率は成田五七%、関西二 六%で、名古屋一五%。
一方、中部地 域を消費地とする輸入貨物の取り扱い は成田四九%、関西二九%で、名古屋 二〇%にとどまっている。
中部国際空 港では二〇二〇年以降、国内・国際線 航空旅客二〇〇〇万人(名古屋空港の二〇〇〇年実績は一〇八九万人)、国 内・国際線航空貨物五一万トン(同二 〇〇〇年実績一八万トン)と予測する。
注目される着陸料 わが国の国際空港の着陸料が世界一 高いことは世界的に知られている。
国 土交通省がまとめた世界主要空港の国 際線着陸料(B747-400 、 395 トンクラ ス)によると、成田は九四万八〇〇〇 円、関西国際空港は九〇万八五〇〇円 となっている。
これに対して、JFケ ネディ空港(米)は三八万二〇〇〇円、 シャルル・ド・ゴール空港(仏)は二 七万六〇〇〇円、アジア地域でも香港 三八万九〇〇〇円と、成田や関空の半 分以下の水準だ。
中部国際空港の着陸料については 「開港一年前ぐらいに決まる」(国土交 通省航空局)という。
その水準に関し て、ある関係者は「名古屋空港の着陸 料(四八万四〇〇〇円)を下回ること はない」と話す。
また、日本総合研究 所の岡田孝研究員は、関空より割高に なることは考えられないとしながらも 「関空への配慮があるため、大きく引 き下げるのは難しいのではないか」と 懸念する。
これに対して、国土交通省 は「成田、関空の着陸料が一つの目安 だが、両空港への配慮はない。
どれだ け下げられるか検討している」(航空 局)としている。
従来、わが国の輸送インフラは政治の 副産物として整備されてきた。
そのた め、メーカーや物流業者の使い勝手な どの視点を欠いている。
空港は港湾同 様、通関・税関の手続きが諸外国に比 べて劣っているとともに、中心部との アクセスも悪い。
技術大国でありなが ら、肝心なところにIT化が立ち遅れ ている、との指摘もある。
シンガポールでは数年前、港湾取扱 料収入を増やすため、港湾施設を拡充した。
使用料が割安なこともあって、 現在、アジア地域における海上輸送の 国際ハブとして君臨している。
一方、 日本は港湾、空港ともに料金は世界一 高いと言われる。
国内の他施設への配慮も結構だが、 それよりも国際的な競争力という視点 で、高コスト体質にメスを入れること が肝要なのではないだろうか。
そうし ないと、国際物流の空洞化に歯止めは 掛からない。
(宮崎 台) FOCUS 中部新国際空港の建設計画が実現に向けて動き始めた。
計画 通り二〇〇五年に開港すれば、中部圏の新たな物流拠点になる と期待されている。
しかし、焦点の着陸料については国際競争 力のあるレベルに設定できないのではとの悲観的な見方もある。
建設中の中部国際空港に悲観論 着陸料に高止まりの懸念 KEY WORD 航空貨物 中部国際空港の建設予定地 83 NOVEMBER 2001 インターネット専業銀行は、リアル の店舗を持たないことで営業コストを 抑え、既存銀行より高い預金金利を設 定することを強みとする。
従来には無 かった新しいタイプの銀行だ。
日本で は二〇〇〇年一〇月に三井住友銀行系 のジャパンネット銀行が国内第一号と して開業した。
これに続いて、二〇〇 一年六月にソニー銀行が、同七月にイ ーバンク銀行がサービスを開始。
今年 十一月にIYバンク銀行がネットサー ビスを始めることによって、ネット専 銀四行の顔が出揃うことになる。
ジャパンネット銀行は、銀行業務の 三本柱である「預金」「融資」「運用」 という既存銀行のビジネスモデルをネ ットに合わせた形で展開していると考 えていい。
「普通預金」をはじめ、ネ ット上で口座開設やさまざまな変更が 可能な「ネット定期預金」「メール定 期」「カードローン」を展開している。
ソニー銀行は、「資産運用のコンサ ルティング会社」を経営コンセプトと していることからも分かるように、資 産運用を中心とした事業を展開してい る。
ジャパンネット銀行と同様にカー ドローンや入出金の決済機能を持つ総 花型の経営スタイルだが、中心業務は あくまでも個人利用者の資産運用だ。
異色の存在が、複数の投資家から資 本金を集めて開業にこぎ着けたベンチ ャー、イーバンク銀行だ。
決済業務だ けで収益の九割以上を稼ぐ予定で、基 本的にローンなどの融資、金融商品の 販売などは行わないという。
イーバンクは「預金をあまり預から ない」という、従来にはないコンセプ トのもとでビジネスモデルを築いた。
一口座当たり五〇万円以上の預金は保 険による保障の対象外として、五〇万 円以内の預金に限って既存銀行に比べ て〇・五%程度の金利上乗せをする。
つまり、利用者に対して五〇万円まで の預金を推奨する態度を明確に打ち出 しているわけだ。
預金者に金利を支払 う負担を軽減するための施策だ。
IYバンク銀行は、親会社のヨーカ 堂にとって、グループ店舗への集客力 をアップさせるためのひとつのツール と位置付けられる。
あくまでもグルー プの本業であるリテールをサポートす るという独自のスタイルを貫く。
実際、 これを裏付けるプロジェクトをグルー プでスタートさせている。
IYバンク のキャッシュカードにクレジットカー ド、デビットカード、ポイントカード の各機能を付加して、金融機能を軸に 集客力を向上させる計画だ。
「早けれ ば来年春には実現する」(宮地信幸 企 画部広報担当調査役)という。
物流業者が銀行業へ参入 ?? ネット専銀の将来性は必ずしも明る くはない。
「決済」や「資産運用」な ど比較的ニッチな金融機能に特化する ネット専銀のビジネスモデルを疑問視 する声が少なくないのだ。
「インターネ ット専業銀行が既存銀行のように数百 億円規模の業務純益を稼ぎ出せるよう になるとは、到底考えられない」(某 金融アナリスト) 米国の事例をみると、 13 四半期連続 黒字を果たし、例外的な成功を収めて いると言われるネットバンクでさえ、 四半期ごとに一億円前後の黒字を出す 程度だ。
そもそもネット専銀は、大成 功しても、その程度の事業規模でしか ないのかも知れない。
既存銀行のように本格的に融資業務 を展開すれば、事業規模を拡大できる と考えられる。
しかし、お金を貸すの は簡単でも、回収業務は一筋縄ではい かない。
営業コスト抑制でビジネスモ デルを確立しているネット専銀にとっ て、人手を要する回収業務をいかに確 立するかは難しいところだ。
異業種から銀行業務へ参入する事例 が増えるなか、物流業界でも宅配便事 業者などがネット銀行業へ参入すると いう噂もチラホラ聞こえてくる。
先行 する米国で成功しているネット専銀は 二行だけである。
米国の事例を単純に 捉えると、日本でもネット専銀が成功 する可能性は思った以上に低いだろう と考えられる。
慎重な判断が必要にな る。
(石井教子) 物流事業者の進出は厳しい? 苦戦予想のネット専業銀行 二〇〇〇年一〇月に国内初のインターネット専業銀行であるジャパ ンネット銀行が開業した。
これにソニー銀行とイーバンク銀行が続いた。
そして、今年十一月にイトーヨーカ堂系のアイワイ(IY)バンク銀 行がネットサービスを始めることによって、国内のネット専業銀行四行 が出揃うことになる。
一方で、物流事業者の銀行業進出の噂もチラホ ラと聞こえてくる。
しかし、異業種の銀行業参入で先行する米国を見 ると、成功を収めるのは至難の業のようだ。
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