ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2001年11号
メディア批評
汚れたバブル紳士礼賛を繰り返す『日経』に金儲け以外の視点なし

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 87 NOVEMBER 2001 リフレッシュした『JN』(『実業の日本』) が一〇月号で「これでいいのか !? 日経新聞」 という特集を組んでいる。
?ビジネスマンのバイブル〞を「徹底検証」 ということだが、「土地バブル、ITバブル を誘発した日経の罪は軽くないですね」と、 他紙へ移った日経の元記者が言えば、「ニュ ースステーション」でおなじみの森永卓郎は 「アングロサクソンの経済原理を手本にする 新聞です。
いわば資本主義社会の機関紙」と 断定する。
私は「株式会社・日本の社内報」と規定し たことがあるが、今年の三月二五日、中部電 力次期社長に中野淳司常務が内定と報じたの に、はずれて川口文夫常務が昇格したのは致 し方ないとしても、その誤報を「日経テレコ ン 21 」のデータベースから削除してしまった のは、?社内報〞とはいえ、あまりにひどい のではないか。
「官庁に食い込んでいるようで食い込まれ ている」という指摘もその通りだろう。
日経記者の覆面座談会では、「どうしても 官僚の代弁者になる危険性がある」ことにつ いて、A記者がこう自己批判している。
「住専処理に関する報道に示される通り、 うちの論調は旧大蔵省、銀行寄りだった。
銀 行経営陣の責任を厳しく問うという姿勢に欠 けていた」 社長人事等を他紙が抜いた時は大変で、その企業の広報に、日経の記者から、 「いつもオタクが書いてほしいっていうこ とを書いてやっているのに、なんなんだ」 と怒鳴り込みがくるという。
「ネタは最初に日経に流すのが当たり前だ と思っている」とか。
皮肉なことに、その日経の最終面、文化欄 が充実しているのは定評が ある。
『日本経 済新聞』では なく『日本文 化新聞』と名 称変更した方 がいいのではないかと思えるくらいである。
特集の最後で田原総一朗が「情報の裏側を 知りたいのに表の情報しか伝えない」と批判 しているが、それこそ「文化的」視点がない から、そうなるのだろう。
ここに一九八三年から八五年にかけて、日 経に載った人物コラムをまとめた『日本の一 〇〇人』という本がある。
磯田一郎、田淵節 也というバブルの張本人を大絶賛しているだ けでなく、関本忠弘、真藤恒と晩節を汚した 経営者も高く持ち上げている。
政治家でも金丸信を取り上げたりしている が、自分の領域の経営者で、これほどハズレ ているのは、やはり、その視点に欠陥がある からだろう。
端的に言えば、金儲け以外の視 点がないのである。
リクルートの江副浩正を登場させたのは、 一九八四年七月二十三日。
この?無色透明の 「就職商人」〞によるリクルート事件が発覚 するのは、それからわずか四年後である。
ダンスの好きな江副から、やはり、ダンス の好きな日経の社長(当時)森田康がリクル ートコスモスの未公開株をもらい、失脚する ことになったわけだが、リクルートの商売に ついて、日経の記者は何も疑問を持たなかっ たのか。
日経に「日本の一〇〇人」の一人として江 副が取り上げられる前年の『潮』一九八三年 十一月号で私はリクルートの「理念なき膨脹」 を批判した。
それで、それこそリクルートのお抱えのようなライターたちに?カマトト評論家〞など と罵倒されたのだが、いまも日経は日々、第 二、第三の江副を礼讃しつづけているのでは ないか。
日経の前記の江副ロンは「東京・銀座の本 社ビル地下の自社バー。
音痴と言われながら も、閉店後、ピアニストだけを残して深夜ま でニューミュージックを歌う。
『和』と『努 力』。
気障といえば気障だが、江副の真骨頂 でもある」と結ばれる。
多分、「ITバブル の旗手たち」もこうした調子で持ちげたに違 いない。
汚れたバブル紳士礼賛を繰り返す 『日経』に金儲け以外の視点なし

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