ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年11号
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福山通運

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2001 68 ちょうど今から二年前の十一月に、 福山通運は日立物流との戦略的アライ アンスを構築した。
インターネットの 普及によるEコマースの拡大や、荷主 側のサプライチェーンマネジメントの 展開による在庫圧縮、流通経路の合 理化推進などを背景に、既存の物流概 念に大きな変化が訪れる兆しが見え始 めていたというのが当時の物流業界を 取り巻く環境だった。
一方で、規制緩 和や新規参入による価格競争の激化で、 いくつかの事業者が疲弊し始めてきた のを受けて、生き残りをかけた事業戦 略が必要不可欠であるとの指摘が各方 面から叫ばれていた時期でもあった。
両社のアライアンスは「お互いの得 意分野を分担し、対等の立場で事業の 強化を目指す」とのコンセプトだった。
福山通運の小口配送のネットワーク力 に、日立物流の情報システム力、国際 物流・重量品輸送ノウハウなどを付加 することによって、競争力の強化を図 ることを目論んでいた。
それをきっか けに、西濃運輸と山九などの提携も相 次ぎ、物流業界のアライアンスの第一 幕が切って落とされたのは、周知の通 りである。
業界の構造改革を担う企業 の一つとして、株式市場で評価が高ま った時期でもあり、四〇〇円台だった 株価は八〇〇円超にまで上昇した。
収益に物足りなさ さて、その後の経緯だが、まず日立 物流とは営業拠点の相互利用や国内 航空貨物取扱会社を新設した。
国際 物流部門ではドイツのビルカート社と の業務提携、軽貨物事業ではジャパン ブリッジとの業務提携に漕ぎ着けた。
事業展開は進んでいるように見えるが、 事業強化の目標である収益向上という 点ではその結果にやや物足りなさを感 じてしまう。
福山通運の過去のピーク営業利益 水準(単独ベース)は九三年度の約二 五〇億円である。
その後、景気後退に 伴う輸送量減少と過当競争を背景に した運賃水準の下落により収入拡大が 図れず、人件費抑制の遅れや過剰設備 投資などによるコスト負担増加で、九 七年度には六〇億円台に低迷した。
積極的な合理化施策の導入やアライ アンスを通じた収入確保などもあり、 一時は利益回復が順調に進むかに見え た。
しかし、九九年度の決算以降、再 び業績が下向きに転じ、将来の施策を 打ち出すことにも苦慮しているようだ。
株価も株式市場全体の低迷という要 因はありながらも、再び四〇〇円台に まで下落している。
業界内ではいち早く「旧来型の路線 トラック事業者からの脱却」を志向し、 経営の舵を大きく切ってきた企業であ る。
にもかかわらず、ここまで苦戦し ているのは何故か。
?業界全体の構造 的要因、?経営面での課題――の両面 からの説明が必要であろう。
業界全体の構造要因というのは、熾 烈な価格競争が終焉しない最大の要因 である供給過剰状態、すなわち事業者 数の多さが現存していることである。
もちろん、今年に入り業界大手や中堅 企業の経営破綻が相次ぎ、事業者の 淘汰は今後、加速していくように思え る。
ただし、「誰かがやれば、俺もやる」 といった日本企業特有の後手にまわる 体質は物流業界も同様であり、業界の 再編を担う旗振り役が存在しないのは 大きな問題である。
これまでのアライ アンスの成果について、資本市場から 厳しい評価しか得られないのも、収益 責任という事業の結果を背負う経営者 が不在に見えてしまうからなのかも知 れない。
第8回 福山通運 「脱・路線業者」の方針を打ち出して、日立物流やジャパ ンブリッジなどとの戦略的アライアンスを進めてきた。
この 施策への期待感から株価は一時八〇〇円台にまで回復したが、 現在では再び四〇〇円台にまで落ち込んでいる。
アライアン スの効果を検証して、既存の事業を取捨選択する時期に差し 掛かっている。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト られる。
効果が出やすいもの、出にく いもの、可能性があるもの、ないもの などについて、さらに徹底するか、逆 に撤退するか、選択を迫られる時期が 訪れるだろう。
一定のガイドラインを基に、事業を 取捨選択する仕組みがないと、投下資 本に対するマイナスのリターンが蓄積 されるリスクも出てこよう。
アライア ンスが拡がるに従って、管理が一段と 重要になるということである。
場合に よっては、業務提携なのか、資本提携 なのか、現在のパートナーで良いのか、 それ以上の候補者が必要か、など、 様々な分岐点における判断基準やケー ススタディが必要であろう。
第三に、物流業界のステイタスを向 上させるという期待を込めていえば、 一段と経営スピードを加速させること が重要である。
言い換えれば、サービ ス品質に見合う料金収受が可能な収 益体質への改善と、価格支配力の構 築である。
運賃交渉で不利益をこうむ る物流業界の企業体質から脱却し、株 式市場からも認知される企業へ変質を 遂げることが求められる。
小丸成洋社長、小原伸専務ともに、 経営者としての活力が漲っている年齢 である。
それを武器に企業再生を図る ことが出来るか否かは、物流業界の蘇 生を占うという観点からも、注目に値 すると判断している。
69 NOVEMBER 2001 一方で、路 線トラック事 業自体の存在 意義が問われ ているのも、構 造的な要因といえる。
荷主 企業が物流コ ストを調達か ら販売までの トータルで捉え ようとしている のに対し、物 流事業者は未 だ に 、 路 線 、 区域、倉庫な どのテリトリー ごとにしか解決 方法を示唆で きないと見られ がちだ。
同時に、大 口貨物の長距 離輸送のニー ズも低くなり、 それを得意と してきた路線 トラック事業 者の事業領域 が、既に縮小 していることに 気づいている経 営者が少ないように思える。
さらに、 全国エリアにターミナルや大型車両な どのインフラを抱え、装置産業と化し た路線トラック事業は、いったん収入 減に追い込まれると、それに見合うコ スト構造に変質するのに、想定以上に 時間を要する事業だということへの認 識不足も否めない。
提携の意味を再チェック 次に経営面での課題について、いくつかの点を指摘しておきたい。
福山通 運の場合、第一に、将来の事業環境の 認識や業績前提を再考する必要がある と思われる。
少なくとも、他の事業者 に比べて、路線事業に拘泥せずに、経 営スピードが早いと見られてきたにも 関わらず、成果が見えてこないのは、 従来以上に事業環境の悪化スピードが 早いということにほかならない。
景気動向や荷主のニーズ、競合他社 の動向などを敏感に感じることのでき るアンテナの高さが必要なことはいう までもなく、その状況を合理性、納得 性をもって従業員や株主、荷主に説明 し、理解を求めることも経営者の役割 であろう。
こうした説明責任(アカウ ンタビリティ)の前提となる諸条件の 変化について、手綱を引き締める意味 も込めて、再考する必要があろう。
第二に、アライアンスの結果責任に ついて明確にする仕組みづくりが求め 福山通運の過去5年間の株価推移 (円) (千株)

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