ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年11号
特集
在庫リスクを回避する VMI入門 セットメーカーを起点に考える

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2001 30 SCMが生んだ日本型VMI ――アルプス物流が目指している日本型VMIとは、 一体どのようなものなのでしょうか。
「生産革新をサプライチェーン・マネジメント(S CM)の視点でみたとき、部品メーカーに負担を押し つけているだけではダメです。
どうやってリードタイ ムを短縮し、在庫を圧縮し、部品メーカーからセット メーカーに至るトータルコストを下げるか。
調達と生 産をくっつけて考えて、いかに生産リードタイムを短 縮するかが重要です。
いわば我々の考える日本型VM Iは、生産の仕組み作りなんです」 ――VMI倉庫におく在庫の量は、誰が判断するので すか。
「セットメーカーの生産部門と、VMI倉庫と、部 品メーカーが、それぞれに考えて決めます。
まずセッ トメーカーからどれだけの部品が必要かという要求が 出され、これに対して部品メーカーがどれだけ納入す ればいいかを判断する。
そして、この両方のニーズを 満足させようというのが、我々の目指しているVMI 倉庫のコンセプトです。
これを実現するには物流業者 もメーカー指向を持たなければ通用しません」 ――御社はここ一、二年、とくにVMI倉庫に注力し ています。
そこに踏み込んでいくきっかけは何だった のでしょうか。
「我々にとってのお客様、つまりお金をいただいて いるのは部品メーカーです。
しかし、部品メーカーか らみると、そのまた先に納品先のセットメーカーがい る。
セットメーカーのニーズが何かを考えない限り、 振り回されてしまうんです。
SCMの進展にともない、 セットメーカー各社はコック方式だとかJIT納品な どいろいろな要求をしてきました。
しかも、それぞれ にやり方が違う。
これを全部聞いていたのでは部品メ ーカーはたまりません」 「いま電機業界には電子部品メーカーが約一六〇〇 社ありますが、このうち当社と取引のある会社が一一 六〇社あります。
これに対して日本国内のセットメー カーの数は約一〇〇社。
この圧倒的に数の少ないセッ トメーカーのニーズを起点に考えれば、部品メーカー の仕組みを共通化することができるんです」 全国各地で進行中のプロジェクト ――日本型VMIを展開するために、情報面ではどの ような取り組みをしているのでしょう。
「セットメーカーと一緒にシステム開発をしていま す。
従来、我々はセットメーカーとの取引はなくて、 納入するだけでした。
しかし、SCMの流れというの は部品メーカーから出てきたものではありません。
セ ットメーカーから出てきたものです」 ――しかし、取引のなかったセットメーカーが、御社 の方から仕掛けた提案に耳を傾けてくれますか。
「そこが、まさにSCMの世界なんです。
我々が昔、 商売をする際に会うのは物流の担当者でした。
対象と する領域も点から点だったため、いきおい輸送費はい くらになるんだという話にならざるを得なかった。
と ころが今は違います。
リードタイムの短縮とか在庫圧 縮というのは、もはや重要な経営課題です」 ――どういう立場の人達と話をするのですか。
「購買部門の部長クラスの方や、あるいは部品メー カーでも取締役クラスの方です。
最近ではセットメー カーの社内にも、SCMを推進するセクションやプロ ジェクトが増えていますので、基本的にはこうした部 門の方々と一緒に取り組むことになります」 「それぞれのセットメーカーごとにやり方というのは 第2部調達物流で稼ぐ 「セットメーカーを起点に考える」 従来、部品メーカーの視点で電子部品業界の物流効率化を 進めてきた。
しかし、最近のSCMブームはセットメーカー を調達分野の改革に走らせ、部品メーカーの物流にも大きな 影響を及ぼしている。
これに対応するためアルプス物流は、セ ットメーカーを巻き込んで日本型VMIの構築を進めようと している。
アルプス物流草部博光社長 31 NOVEMBER 2001 特集 違いますから、我々がニーズを確認して、それぞれに プロジェクトを組み、そこで情報系や運営の仕組みを 作っていくことになります」 ――進行中のプロジェクトは何件ぐらいあるのですか。
「大手が多いため数十件というわけにはいきません が、同時にあちこちの営業所で対応しています」 ――将来的には、プロジェクトの数だけ新たなVMI 倉庫が生まれることになるのでしょうか。
「VMIというのは、大きく言えばセットメーカー の生産システムに近いものです。
基本的にはA社、B 社という二つのセットメーカーがあれば、それぞれの 会社のVMI倉庫は別になります。
もちろん、当社の 倉庫に双方の機能を同居させることも可能ですが、情 報システムなどが違うため、そう簡単に一体化できる ようなものではありません」 問われるのは現場の運用力 ――VMI事業を本格化するにあたり、どういうスキ ルが求められるのですか。
「やはりシステム力ですよ。
情報システムとか現場 の運用力という意味でのね。
それから企画力も欠かせ ません。
一つは大きなアイデアが必要ですし、これを 実際の仕組みに落とし込んで、現実に運用する力が必 要です。
精度の高い仕組みを構築するため、情報シス テム力や企画力、運用力といったものを集大成して対 応する必要があります」 ――現場の運用力というのは具体的には何ですか。
「我々はすでに物流のシステム商品というものを持 っています。
保管上のシステムだとか、輸出入のシス テムなど、当社が独自開発したシステムがありますの で、これで対応していくということです」 「ACCS(アルプス・カーゴ・センター・システ ム)という保管システムがあるのですが、当社の大き な武器の一つです。
これを使うことによって精度の高 いピッキング作業だとか、先入れ先出しだとか、レベ ルの高い在庫管理が可能になる。
そうした仕組みをも っていなければ、VMI倉庫は運用できないのではな いでしょうか」 ――それはバーコードを使った管理システムですか。
「いや、当社はほとんどバーコードは使っていません。
もちろんバーコードを使うことのメリットは理解して いますが、あまり頼り過ぎると、かえって保管効率を 落とすことがあるんです。
もっと棚の仕切り方だとか、 モノの置き方といったノウハウの方が大きい」 「例えば、私どもの倉庫に入ってきた貨物は、あら かじめ番号の付けてある棚に、フリーロケーションで 入れていくわけです。
このとき一般的にはAという商 品は、みな同じ棚に入れます。
しかし、そうすると先 入れ先出しができなくなりますし、商品によっては毎 日物量が変わりますのでスペース効率にムダも出てきます。
そこで我々の仕組みのなかでは、同じ商品でも 日付の違うものは分けるような管理になっています。
そして必ず古い順に商品をとるように管理することで、 先入れ先出しを可能にしています。
これは当社の管理 システムの一例です」 ――VMIならではの運用技術はないのですか。
「最初はカートン単位で管理するということになる と思いますが、だんだんニーズが高まってくればピー スレベルになってきます。
このときにピースレベルで 電子部品を扱える物流業者がいるかといえば、ほとん どいません。
その点、我々はピースレベルで管理する パワーを持っています。
将来的には工場内でやってい た生産ラインに納品する前のKIT化などの作業も、 VMI倉庫で手掛けるようになるはずです」

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