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NOVEMBER 2001 34
独立後に仕事が急増
――日産のリバイバルプラン以降、日本の自動車部品
業界の物流が転機を迎えているように見えます。
「従来の日本の商習慣が変わりつつあるのだと思い
ます。 昔から欧米では、セットメーカーが部品を取り
に行くのはごく当たり前の話でした。 誰が購入しよう
と部品代は同じで、物流費によって購入価格に差がつ
くという仕組みになっています。 ところが日本では違
いました。 部品代に輸送費が含まれていたからです」
「今回の日産の調達改革の考え方は、欧米なみに部
品の単価を明確にしようというものです。 輸送費をき
ちっと分離して部品代を明確にすることで、どこの部
品が一番安くて品質がいいのかを見極めることができ
る。 そこに狙いがあったと私は理解しています」
――調達物流費が平均三割ダウンしたと聞いています。
「日産が三割減という数字を言ったわけではないは
ずです。 その三割というのは我々のリサーチの結果、
出てきた数字に過ぎません。 入札するにしても、自分
達の原価を積み上げるだけでは勝ち目はない。 まして、
かつてのように当社の株主でもありませんからね。 我々
は事前にリサーチして、このエリアは二割、このエリ
アは一割、もしくはこのエリアはもっと下げなければ
とれそうにないから入札を止めよう、といった判断を
したんです。 入札する前に、半年ぐらいかけて一生懸
命に調べましたよ」
――ところが仕事を失うと思って臨んだ入札で、逆に
だいぶ仕事を増やすことになりました。
「そうなんです。 取れちゃったんですよ。 当社がこれ
なら商売できるだろうと提案した金額で予想以上に取
れてしまった」
――日産のすべての調達物流のうち、どの程度をバン
テックが受注したのですか。
「六五%ぐらいです。 基準となる荷量とか売上高は
日産にしかわからないため推測ですが、このプロジェ
クトをやる前にバンテックが扱っていた日産の調達物
流は、全体の二五%ぐらいと言われていました。 僕は
このうち半分ぐらい取れればいいかなと思っていたの
が、蓋を開けてみたら六五%も取れたんです。 つまり
倍以上に増えた」
――日産が調達分野でやったことを改めて整理したい
のですが、ミルクラン方式による取りに行く物流が一
つの柱になったと考えてよいのでしょうか。
「ミルクランの部分はごくわずかです。 一番量が多
いのは、トヨタと同じように直送です。 日産は調達
改革のために三つの物流メニューを用意しました」
「一つは物量が多い部品メーカー向けの直送メニュー。
二つ目は物量の少ない部品メーカーが各工場への納
品分をトラック一台にまとめてロジスティクス・セン
ター(Lセンター)に納品し、ここから先は共同便
で方面別に納品するというメニュー。 そして三つ目
が、部品メーカーに日産から取りに行くミルクランで
す。 いずれも物流の視点がなければ出てこない仕組
みです」
――Lセンターという機能は以前からあったのですか。
「今回の改革ではじめて作りました。 もともと日産
とバンテックの手掛けていたプロジェクトで、九八年
十二月に栃木工場で立ち上げたものがあったんです。
これが上手くいったため、『これはいける』とリバイ
バルプランの入札のときに全国八カ所に新設しました。
このうち結果としてバンテックが六カ所を担っていま
す。 あるセンターの車両数は、入庫が四トン車と一〇
トン車で約七〇台あります。 これに対して出庫は四〇
〜五〇台ぐらい。 つまり、この車両台数の差がLセン
第2部調達物流で稼ぐ
「物流なくして調達改革は成功しない」
今年1月、バンテックは日産自動車との資本関係を自ら絶っ
た。 ところが昨年8月から日産が進めてきた大がかりな調達物
流改革では、バンテックが日産から請け負う仕事は倍増した。
日産の生産の仕組みを熟知していることに加え、自動車部品
に関する物流ノウハウの蓄積が受注拡大の決め手になった。
バンテック大崎健一運輸業務部 主管
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特集
ターでの合理化の成果ということになります」
――ミルクラン調達の場合、まず日産から取りに行け
と指示されるのでしょうか。
「指示はすべてオンラインで出されます。 まず最初
に、日産の生産システムが部品メーカーに対して、こ
れだけの部品を、いつ納めてくださいという情報を発
信します。 これに対して部品メーカーが荷揃えが完了
したと日産に返すと、荷揃え完了データとして日産の
ホストコンピューターに飛びます。 これを当社が出荷
指示データとしてもらい、荷量計算をして取りに行く
という手順です」
強さの秘訣はデータベース管理
――部品メーカーに取りに行き、それをバンテックが
生産ラインの横まで納入しているのですか。
「ライン横までは置いていません。 いまは日産の工
場内の検収場所、荷下ろし単位場所までです。 そこか
ら先は日産の工場内物流の役割です」
――自動車部品の物流に関して他にバンテックが持っ
ている強みとしては、どのような業務がありますか。
「日産の調達改革では、地域ごとに代表幹事会社一五、
六社を選びました。 このうち日産からの出荷指示デー
タを、作業指示とか配車情報に結びつける部分をデー
タベース上で管理しているのは我々だけしかいません。
うち以外は部品メーカーから、フォーマットとルール
の決まっているA4版一枚の用紙に、部品別の荷量
の?山数〞(T
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パレット二段重ねで一山)を書いて
もらい、ファクスしてもらっています」
「この情報を元に各幹事会社は、翌日の物量がどれ
くらいなのかを判断し、どういう順番でどこを回るか
を決めます。 場合によっては、このルートは積載効率
が低いから、もっと何かを積まなければダメだなと調
整するわけです。 一方、バンテックの場合は、メーカ
ーの部品番号からどれだけの荷量だったら何山になる
のかを自動的に算出でき、しかもデータで管理するこ
とができる。 これがミルクラン調達の輸送をコントロ
ールするうえで重要な役割を果たしています」
――それは他社には真似のできないものなのですか。
「自動車部品に関するノウハウがないと作れません。
単純にデータベースで部品番号単位の荷量を体積に
置き換えても、それが何山になるのか分からないはず
です。 部品ごとの物流特性と荷姿を知っていることが
大きい。 荷姿というのはいろいろあって、ポリケース
だけで日産の場合一七種類ありますからね」
「しかも部品のデータだけでは、物流管理には使え
ません。 部品は一点一点違いますから。 すべての部品
について、現場で写真を撮り、LWH(幅・奥行き・
高さ)をきちんと測って、部品番号単位に幾つ積めば
一山になるかを一つずつチェックする必要があります。
この係数をきちっと把握するわけです。 しかも、これだけやっても狂うことがある。 こうした場合には、そ
の都度、何がおかしいかをチェックして、精度を高め
る作業を繰り返す必要があるのです」
――物流業者がルートを組み替えて、効率化を進める
余地はあるのですか。
「バンテックの担当している六五%については、徹
底して合理化を進めました。 初めは運賃が安くて赤字
だったのですが、ようやく商売になるところまでこぎ
つけました。 当初の車両台数というのが一三〇〇台
(一日当たりの稼働延べ台数)あって、これに対する
月間売り上げは約六億円だったんです。 それが現在で
は約八億円の売り上げに対して、車両台数は一一五
〇台。 一車両あたりに積載する部品の量は、平均して
六立米(六パレット=三山)増えている計算です」
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