ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年12号
FOCUS
ハードによる差別化はもはや限界燃費走行支援を事業化するいすゞ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2001 88 燃費管理では得られない効果 「当社はこれまで目に見えるものしか 売ってこなかった」――。
一〇月二日 の記者会見の席上、いすゞ自動車の境 野皓造専務は驚くほど率直な言葉で同 社の過去を振り返った。
そして、今後 はソフト面を重視していくという姿勢 を明確にしながら、来年一月にスター トする運行診断サービス「みまもりく ん」の持つ意義を強調した。
同サービスは、いすゞが従来から扱 ってきたデジタル・タコグラフ(デジ タコ)などによる運行管理システムの 延長線上にある。
ただし既存のシステ ムが、法規制への対応や、事務処理の 効率化を主目的としてきたのに対し、 新サービスは?燃費〞を最大のテー マとしている。
個々のドライバーに、 燃費走行のためのアドバイスを個別か つ具体的に与えることを目的としてい る。
従来の運送業者による燃費管理には 限界があった。
「さまざまな要因を含 む燃費という指標は、車両運行の結果 でしかない。
そのため、どんなにきめ 細かく燃費データを管理しても、現実 にコスト改善につなげるのは簡単では なかった」(いすゞ自動車プロセス改 革室CRM推進部みまもりセンターの 前園昇氏)ためだ。
いすゞの新サービス「みまもりくん」 では、従来の燃費管理と は比較にならないほど詳 細な運行データを活用し て、コスト改善のための ポイントを探る。
エンジ ンを電子制御するコンピ ューターから、燃料消費 量や車速、アクセル操作、 ブレーキ操作、シフトア ップ時の回転数などの運行データを入手する。
一 カ月単位で車両からパソ コンにダウンロードしたデ ータに、さらにいすゞの 担当者が専門的な視点か ら分析を加える。
こうして得られた結果 は、ドライバーが見たと きに理解しやすいよう図 表化してから、ユーザー にレポートとして提出する。
総合評価 を一〇〇点満点で採点することによっ て、ゲーム感覚で省燃費運行に取り組 める工夫も凝らしてある。
新サービスの販売予定価格は契約期 間六カ月で五万円(基本契約料と月一 回のレポート代を含む)。
以降は一レ ポートにつき三〇〇〇円をいすゞに支 払う。
「価格設定については社内でも 意見が分かれた」(前園氏)という。
し かし、省燃費によってユーザーが得る メリットよりコスト高では普及は望め ないという判断から、上記の価格に落ち着いた。
ハード競争からソフト競争へ 最近のいすゞは、?車両に関するト ータル費用の削減〞を標榜し、ユーザ ーである運送事業者がトラックを購入 してから手放すまでの「ライフサイク ルコスト(LCC)」を減らすという アプローチでサービスのレベルアップ 模索してきた。
同社が実施したアンケート調査によ FOCUS いすゞ自動車がソフト事業を強化している。
二〇〇二年 一月に本格販売をスタートする大型トラック向けの運行診 断システムでは、個々のドライバーに対して、省燃費運転 に関する具体的なアドバイスを与える。
従来のハード偏重 のビジネスから脱却し、国内トラック市場での生き残りを 狙う。
ハードによる差別化はもはや限界 燃費走行支援を事業化するいすゞ KEY WORD IT 89 DECEMBER 2001 ると、トラック購入時のユーザーの関 心事の上位三項目は、?燃費(五八%)、 ?最大積載量(五五%)、?価格(五 三%)。
当然、エンジン性能の高度化 による省燃費にはいすゞも熱心に取り 組んできたのだが、ライバルがしのぎ を削るハード開発で明確な差別化を図 るのは至難の業。
そこで着目したのが ソフトの強化だった。
いすゞには、四年前から「E&Q走 行会」という燃費走行セミナーを主催 して、すでに延べ五〇〇〇人にのぼる 参加者を集めてきた実績がある。
運送 事業の経営者や運行管理者に燃費走行 を広めることによって、いすゞファン を増やそうという試みである。
しかし 現実には、セミナー参加者が所属企業 に戻って燃費走行を広げようにも、具 体的なアドバイスの与えようがないと いうケースが少なくなかった。
こうした状況を打破するために「み まもりくん」は開発された。
同サービ スの対象車種は二〇〇〇年二月以降に 発売された大型トラック「ギガ」シリ ーズで、すでに約二万台が市場に出回 っている。
必要なハードは標準装備さ れているため、新たに専用ソフトを付 加しさえすればサービスを利用できる。
まだ実証実験の段階に過ぎないが、「商 品化にあたってヒヤリングを行ったデ ィーラーの反応は上々」(前園氏)だ った。
正式発売前のモニターを依頼した、 いすゞ車ユーザー一五社の反応も悪く なかった。
なかには「このサービスを 応用すれば、車両の運行状況を人事評 価に反映させることも可能かもしれな い」といった前向きな感想もあったと いう。
もっとも、本当に効果のある使い方 がユーザーのあいだで定着しない限り、 「みまもりくん」は絵に描いた餅でしか ない。
いすゞの投じた一石がトラック メーカーのビジネスモデルにどういう 影響を及ぼすのか。
一年後には明らか になっているはずだ。
(岡山宏之) 破綻寸前の高速道建設 高速道路は、国が建設費をすべて負 担すると膨大な税金がかかるため、借 入金により建設し、利用者の料金でこ れを返済していくという仕組みで整備 が進められてきた。
現在の供用延長は 六九五九キロメートルに達し、これま でに要した事業費は二八兆円に上る。
このうち既に三・七兆円の税金が投入 されているが、仮に税金だけで整備し たとすると東名・名神高速道路が開通 していた程度(約七〇〇キロメートル) にとどまる。
まさに、高速道路は利用 者負担によって建設されてきたわけだ が、それも先進国に比べ立ち遅れた高 速道路整備の早期実現には、やむを得 ない方策だった。
ところが全国ネットワークの整備が 一巡し、地方の横断道路など採算性の 維持が難しい路線の整備が増えたこと で、年間三〇〇〇億円に上る国費負担 (税金による負担)と、値上げを伴わ ない利用者の料金負担だけで整備を続 けることが困難になってきた。
国土交通省の試算によると、現行の 整備計画九三四二キロメートルを一〇 〇%整備するためには、毎年一兆円強 の投資を二〇年間続け、毎年三〇〇〇 億円の国費を投入して五〇年かけて償 還する必要があり、通行料金のほかに 計六兆円もの税金を投入しなければな 高速道路整備計画の見直し問題 「火中の栗」避けた諸井委員会 拡大一辺倒で突き進んできた高速道路整備の計画見直しが注目を 集めている。
全国ネットワーク整備が一巡し、今後は交通量の見込め ない地方の横断道路や、土地代が高く建設費が嵩む大都市の環状道 路の整備が予定されているが、このまま計画通り建設を進めてよいの か、という問題提起がされている。
KEY WORD 物流行政 DECEMBER 2001 90 らないという。
つまり、日本道路公団 による高速道路建設は、利用者の料金 負担だけでは立ち行かないところまで きており、もはや破綻しかけていると いっても過言ではない状況なのだ。
整備計画の見直し論では、小泉純一 郎首相が国費投入ゼロ、償還三〇年で の整備を主張したが、国土交通省はそ の条件では今後の整備がまったくでき なくなると反論した。
九三四二キロメ ートルの整備計画のうち、未供用区間 は二三八三キロメートル。
このうち、 東京外かく環状道路など大都市圏環状 道路が三五キロメートル、第二東名・ 名神が四三八キロメートル、 このほかの北海道縦断道・ 横断道や日本海沿岸東北道、 北関東道、中部横断道、中 国横断道といった地方路線 が一九一〇キロメートルと なっている。
残事業費は、 大都市環状道路が一・五兆 円、第二東名神が八・五兆 円、地方路線が一〇・六兆 円の合計二〇・六兆円だ。
料金値下げが先決 一〇月下旬、国土交通省 は今後の高速道路の整備の あり方を検討するための委 員会(座長=諸井虔太平洋 セメント相談役)を立ち上 げ、道路整備計画の見直し に着手した。
だが、諸井座 長は「まず道路公団の民営 化を検討する」と述べ、整 備計画の見直しそのものは 棚上げして結論を来夏に先 送りした。
どこにどれだけの金をかけ て作るか、というプライオリテ ィーの問題なのだが、大都市 にだけ金を注ぎ込めば地方が 黙っていないし、採算性を無 視して地方にこれ以上高速道 路を作り続けることもできな い。
地方を抑え込むために、第 二東名の建設凍結案も浮上し ているが、どの路線を優先するかの調整は容易ではない。
こ うした事情もあって、諸井委 員会は火中の栗を拾うことを 避けたわけだ。
これに対して、扇千景国土 交通相のスタンスははっきり している。
「地方によっては、 空港の方が必要だというとこ ろもある。
地方のすべての希 望を満たすことはできない。
九 三四二キロメートルは譲れな いと守旧派はいうが、平成維新であれ ば、どこまで建設できるかを見直さな ければならない」と述べているが、ま さしくそれが正論だろう。
諸井座長も 「残りの二三八三キロすべてを建設す ることは不可能」と話しており、整備 計画の見直しは必至だ。
利用者の料金負担による高速道路 整備が限界の域に達しているのであれ ば、道路公団による新たな整備は凍結 し、どうしても整備が必要な路線につ いては国と地方が税金で負担する仕組 みとすべきだ。
無論、財源は道路特定 財源だ。
高速道路のヘビーユーザーで あるトラック運送業界でさえも不採算 路線の新たな建設の凍結を求める時 代である。
デフレ経済下、「世界一高 い」(扇大臣)といわれる我が国の物 流コストを引き下げるためにも、道路 特定財源を投入し、通行料金を値下 げすることが先決ではないか。
(芹江亜太郎) FOCUS 整備計画(未供用)区間の内訳 道路の整備効果・特色 大都市圏の交通渋滞を緩和する 大都市圏環状道路 三大都市圏間の連結強化と 交通を円滑化する道路 国際空港・港湾と接続する 連絡道路 災害の発生時等においても 交通道路を確保する代替道路 活力ある地域づくりを 推進する道路 路線の例 東京外かく環状道路、 名古屋環状2号線 第二東名高速道路、 第二名神高速道路 北海道縦貫自動車道、日本海沿岸東北自動車道、 常磐自動車道、東九州自動車道など 東北中央自動車道、北関東自動車道 中部横断自動車道、中国横断自動車道など 北海道横断自動車道、東北横断自動車道、 近畿自動車道紀瀬線、四国横断自動車道など 延長(km) 35 438 1,910 2,383 残事業費(兆円) (平成4年度以降) 1.5 8.5 10.6 合  計 20.6 日本道路公団の投資(償還)可能額の比較 ※有料国費投資投入額建設終了時まで一定額、その後は徐々に低減  交通需要の増加:あり、将来金利:5.0%、建設投資:1.21兆円/年の場合 【参考】平成13年度末供用延長(予定):6,959km(未供用延長2,383km)     原稿整備計画9,342kmの残り事業費(H14年度以降):20.6兆円 有料国費投入額※ 償還年数 30年 0億円/年 1,000億円/年 2,000億円/年 3,000億円/年 0.0兆円(0%) 2.1兆円(10%) 3.2兆円(16%) 4.3兆円(21%) 6.9兆円(33%) 9.2兆円(45%) 11.5兆円(56%) 13.8兆円(67%) 11.1兆円(54%) 14.3兆円(69%) 17.8兆円(86%) 20.6兆円(100%) 40年 50年 91 DECEMBER 2001 日本の港湾の港湾諸手続き(港湾手 続・輸出入手続)は煩雑で、多くの行 政機関に膨大な書類・資料を提出しな ければならない。
港長(海上保安庁) への航路通報、入出港届け、さらには 港湾管理者(地方公共団体)への岸壁 けい船浮標使用願の提出など、聞くだ けで気が遠くなりそうだ。
一方、輸入貨物では税関(財務省)、動・ 植物検疫(農水省)などの申請が必要に なる。
重複する情報を複数の機関にそ れぞれ提出しなければならない現状は、 行政のスリム化という観点からみても無 駄が多すぎるといわざるを得ない。
日本の産業界は経団連などを通じて、 これら港湾諸手続のワンストップ化と ペーパーレス化を政府に要望し続けて きた。
これに対して、政府も九七年に 閣議決定した「総合物流施策大綱」の なかで、港湾入出港・輸出入手などの 行政手続きで、情報化によるペーパー レス化とワンストップサービスの実現 に取り組む姿勢を示した。
九九年には大蔵省(現・財務省)の 海上貨物通関情報処理システム(Sea ―NACCS)と運輸省(現・国土交 通省)の港湾EDI(電子データ交 換)システムが稼動。
さらに次の段階 として、二〇〇一年度中にSea ―NAC CSと港湾EDIシステムの接続が予 定されている。
ただし、単にシステムを電子化し、 システムに互換性をもたせ るだけでは、産業界が求め る一つの端末、一回の操 作で全ての申請が終了す るという、いわゆる「シン グルウインドウ・システ ム」は実現しない。
同シス テムの実現には、事業者に 義務づけられている膨大な 申請・提出資料の整理・一元化という根源的な問 題解決が不可欠だ。
にも かかわらず、各機関の書簡 官庁が多岐に渡るといった 理由から、申請の見直しはこれまで 遅々として進まなかった。
手続き簡素化実現は二〇〇三年 しかし、「縦割り行政」の弊害を指 摘されてきた行政もようやく重い腰を 上げた。
今年一〇月に「港湾輸出入手 続き関係府省連絡会議」を発足。
同会 議の下に港湾手続、輸出入手続きなど テーマごとに諸申請の簡素化を検討す る省庁横断の作業グループを設け、本 格的に申請の簡素化に着手した。
今後、各種申請の書式・申請のタイ ミングなどの統一化について、簡素化 することを前提に検討。
また、多機関 に参考資料として提出しているものに ついては一元化や廃止も視野に入れて いく方針だ。
「シングルウインドウ・システム」の 具体的な姿も見え始めた。
国土交通省 が一〇月にまとめたシステム構想は、 ?インタネットを利用した「オープン ネットワークシステム」、?申請に係 る料金は無料もしくは最低限の利用料 金、?申請手続きの負担を軽減する「申請支援ソフト」を開発し利用者に 無料配布、?国際標準メッセージ(U N/EDIFACT)の採用、?シン グルウインドウ化を前提とした手続き の見直し――を骨子としており、二〇 〇三年度中の実現を目指している。
ある海運関係者は「IT化はあくま で手段であって、目的はスムーズな物 流である」と話す。
至言である。
この 方向を決して見失わず、一日も早いシ ステム完成が望まれる。
「シングルウインドウ・システム」構想 港湾諸手続の煩雑さ解消へ一歩前進 近年、港湾施設の国際競争力強化という言葉が、わが国の物流戦略の キーワードになっている。
豊かな後背地、基幹航路の就航やフィーダ輸 送面で有利な立地条件という地理的要因が、港湾の競争力の最も重要な ファクターとなる。
その一方で、安い港湾コスト、二四時間・三六五日 稼動といったいわゆるソフト面の差が、港湾の競争力を左右することも もはや常識となっている。
港湾諸手続きの簡素化(ワンストップ化)の 進展度合いも、ユーザーが港湾を選ぶうえでの大きな要素となっている。
KEY WORD 港湾 港湾手続きのシングルウインドウシステム (国土交通省のイメージ図を基に作成) Bto B ネットワーク 荷主 船舶代理店/船社/輸入代理店/通関業者 海貨業者/倉庫業者 インターネット 港湾 管理者 港長 入国 管理局 税関 食品 検疫所 動物 検疫所 植物 検疫所 経済 産業省 行政手続き 申請システム 専用回線 シングルウインドウ・システム 港湾手続 輸出入手続 入力データの 記録・転送 上陸許可手続き 入出港手続き 港湾施設使用手続き 輸出入許可手続き 通関手続 検疫手続 DECEMBER 2001 92 近鉄エクスプレスでは電子部品を中 心とした国際貨物取扱量の減少が続き、 二〇〇〇年十一月から二〇〇一年一〇 月まで十一カ月連続ダウンを記録した。
同社の場合、売り上げのほとんどが輸 出入航空貨物で、そのうち七〇%がI T関連の品目だ。
同社では「米国の不 況、テロへの報復攻撃が長引けば、当 社の収益に大きな影響を及ぼすことに なる」と話す。
また、郵船航空サービ スの今上期の取扱い実績は、前年比で 二五%も減少しているという。
物流最大手、日本通運でも今年九月 の国際航空貨物取扱量実績は「業界全 体で三〇%減少しており、当社もその ぐらいは落ちる」(広報担当者)とい う。
同社は二〇〇二年三月期に営業減 益を見込んでいるが、ここ数年は連続 して期中に業績を下方修正しており、 市場関係者から「コスト管理が甘い」 などと批判を受けている。
米国の景気 低迷が長引けば、今期も再び下方修正 する可能性がある。
日本航空など航空各社は航空保険料 の値上がりに伴い、国際旅客便で五ド ル、国内旅客便で五〇〇円(いずれも 旅客一区間あたり)、日本発の国際貨 物で一運送状当たり五〇〇円の特別料 金を設定した。
日航はこの理由につい て、米路線を中心とする国際線の需要 減で、二〇〇一年度単体で一一〇〇億 円規模の減収を見込むほか、航空保険 料の値上がりに伴う追加負担や保安体 制強化による費用もかさむため、とし ている。
これに対して、JTBなど旅行各社 は来年三月出発分までのパック旅行に ついて、航空料金値上げ分を転嫁しな いことを決めた。
それに関して、兼子 日航社長は「旅行会社に理解していた だくことでお願いせざるを得ない」と 話す。
一方、日通や近鉄エクスプレスはす でに荷主に対して、この特別料金を上 乗せしているが、郵船航空サービスは、 「急なことで荷主も混乱しないように」 (広報担当者)との考えで、特別料金 分は同社が吸収することにしていると いう。
同社は、今上期二五%も取扱い 量が減少。
少しでもコストを削減した い時に、この特別料金は頭痛の種にな っている。
関係者によると、成田発米国行きの 航空貨物(輸出)に関して、九月は金 額ベースで前年比六〇%減少したとい う。
あるシンクタンクでは「荷主企業 の取引がグローバル化しており、サプ ライチェーン・マネジメント(SCM) を進めていることを考えると、航空貨 物は将来的に有望な事業分野だ。
(航 空貨物輸送業者の業績改善は)世界経 済の回復を待つしかないが、それまで フォワーダー各社の体力が続くのか心 配だ」と懸念する。
日航と全日空は、九月一一日から一 四日まで米国内の空港が閉鎖したこと で減収となった三三億円(日航二五億 円、全日空八億円)について、国土交 通省に補償を求めている。
「政府によ る運航停止命令があったために生じた 被害だから」(全日空)というのがそ の理由だ。
これに対して、国土交通省は「米国 の支援については、各社が全路線を停 めたのであり、太平洋など特定の路線 を運休した日本の航空会社とは事情が 異なる」(航空局)とした上で、民間 航空会社への補償として税金を使うこ とに関しては、国民のコンセンサスが 必要との考えを示した。
ただし、「欧 州委員会にしても、テロの影響による 損害の一部を補償することに関しても、 まだ決定したわけではない」(同)とし ながらも、「欧州委員会が補償を認め れば、その流れに従わざるを得ない」(同)と打ち明ける。
ある消費者団体では、こうした航空 会社への支援を過保護と見ている。
「狂 牛病問題で痛手を被っているレストラ ンなどはどうなるのか。
航空会社への 肩代わり補償が実施されれば、今後納 税者である国民の目が、航空会社に対 して厳しくなるだろう。
その分各社の 『自助努力』も厳しく進めなければな らない」(消費者団体)といった声も 聞かれる。
(宮崎 台) FOCUS 米国の景気後退の影響で、電子部品を中心に輸出入航空貨物 の取扱量減に拍車がかかっている。
近鉄エクスプレスでは、国際 貨物取扱量が十一カ月連続して前年実績を下回ったほか、郵船航 空サービスの今上期の取扱い実績は、前年比で四分の一も減少し ているという。
さらに、テロ事件による保険料の値上げに伴い、 航空各社が一〇月下旬から特別料金を設定。
旅行業者や物流業 者のコストアップ要因になっている。
米国不況直撃の航空フォワーダー お上のキャリア支援が批判の的に KEY WORD 国際航空 93 DECEMBER 2001 国内の住宅ローン市場は特殊法人で ある住宅金融公庫の独壇場である。
国 内の住宅ローン融資残高約一八〇兆円 のうち、公庫は約七四兆円と四割近く を占める。
民間金融トップの三井住友 銀行でさえ十二兆円弱に過ぎない。
「長期・固定・低利」――。
公庫の 市場シェアが高いのは民間には真似の できなかったこの三つの要素が揃って いるからだ。
例えば、東京三菱銀行の 住宅ローンは二〇年固定金利が年四・ 八〇%。
これに対して、公庫は最長三 五年固定で当初一〇年間二・六〇%、 十一年目以降四・〇%と、東京三菱に 比べてかなり有利な条件となる。
これまで公庫に対抗する民間の商品 競争力は皆無だったと言える。
実際、 住宅購入者が長期ローンを組むときに は、まず公庫融資を利用し、不足する 分を民間のローンで補完するというケ ースが一般的だった。
もっとも、公庫の低金利は国から年 間数千億円もの「補給金」を得ること によって実現してきたものだ。
そのた め、「公庫は民業を圧迫している」と して現在、公庫の廃止・民営化の議論 が進んでいる。
これを受けて、公庫融 資の受け皿となる住宅ローン商品を民 間で用意する必要が出てきた。
こうした状況の下で誕生したのが 「グッドローン」だ。
住宅ローンを組ん だ経験のある人なら、三〇年固定で 二・九五%という金利がど んなに有利な条件かわかる だろう。
そもそも従来は、 「公庫の金利を民間で実現す るのは自殺行為に等しい」 (某金融アナリスト)とさえ 言われてきたのである。
史上稀な低金利を実現し た同社のビジネスモデルのポ イントは、「証券化」と「I T(情報技術)活用」にあ る。
証券化の手法は、同社 が国内で初めて実用化した もので、金融業界の注目を 集めている。
具体的には、同 社の住宅ローン債券をまと めて「証券」の形にして、金 融市場で生命保険会社など の機関投資家に売却するという仕組み だ。
これによって、市場から資金を調 達できるうえに、貸し倒れリスクを投 資家に委ねることになり、同社の経営 リスク自体を最小化できるわけだ。
米 国では二〇〇兆円ほどある住宅ローン の半分以上が証券化されているほど一 般的な手法だ。
もうひとつのポイントは、低利を実 現するためにITを活用してローコス トオペレーションを実現していること だ。
ローンの申し込みや審査などにイ ンターネットを活用し、一般の金融機 関であれば店舗や従業員にかかるコス トを削減している。
現在、同社の社員 は一〇人にすぎず、「既存銀行と比べ ると運営コストは一〇分の一に抑えて いる」(円山法昭取締役)という。
持たざる経営に徹することが、同社 のビジネスモデルの前提となる。
労働 集約産業である物流業界には無縁の話 に思えるが、そうではない。
保守的な 金融業界のなかで、誰も実践してこな かった米国型のビジネスモデルを導入 した同社のフロンティア精神について は、物流業界でも見習うべきではない だろうか。
(石井教子) 金融ベンチャーが住宅金融公庫に対抗 物流業者が見習うべき精神とは ソフトバンク系の「グッドローン」という会社が今年五月、国 内の民間金融機関で初めて最長三〇年返済の固定金利住宅ローン を扱い始めた。
現在の金利は二・九五%。
二〇年以上の返済計画 を組むのであれば、住宅金融公庫より返済総額が割安になる仕組 みだ。
この低金利を生み出すビジネスモデルには、物流事業者の とって見習うべきポイントが隠れている。
KEY WORD IT

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