ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年12号
SCC報告
ITコラボレーション時代の次世代SCM構築戦略

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2001 68 皆さんご存じのように、ビジネスモデルと は事業の設計図であり、基本的には、市場か ら上ってくるディマンドチェーン、そしてデ ィマンドチェーンに沿って顧客に製品やサー ビスを届けるサプライチェーン、この二つの 組み合わせとして構成されています。
ディマ ンドチェーンを含めてサプライチェーンだと する定義もありますが、ここではあえて分け て考えてみたい。
ディマンドチェーンの今日 的な重要性を理解するためです。
もともと日本企業は受注したものを「QC D」すなわちクオリティ、コスト、デリバリ ーする力は強い。
不要な在庫を落として、財 務的なムダを減らすのはSCMの基本ですか ら、こうしたQCDは確かに重要です。
しか し現在のようなデフレの時代に、最も大きな ボトルネックとなっているのは、実は営業な んです。
SCMの基本理論に「セオリー・オ ブ・コンストレイント(制約理論)」という のがありますが、今現在の日本企業の制約は 営業にある。
だからこそディマンドチェーン が大事なのです。
とりわけサプライチェーンを動かす時の製 品仕様の管理は今日、大変重要な問題になっ ています。
受注あるいは営業活動の段階で、 ディマンドチェーン上できちっと製品仕様を 管理していかない限り、結局は「いきなり持 ってこい」ということになってしまう。
とこ ろが、モノ作りはかけ声だけでは動きません。
全ての部品が揃わないと作れない。
そのため にサプライヤーと、ディマンドに関する完全 な情報を共有してコラボレーションする必要 第9回 十一月一日、SCCの年次総会である第3回「Supply Chain World Japan, 2001 」が開催された。
その冒頭 に行われたパネル・ディスカッションの内容を今回と次 回の二回にわたって報告する。
前編となる今回は、四 人のパネリストによるプレゼンテーションを紹介する。
Supply Chain World Japan, 2001 ITコラボレーション時代の 次世代SCM構築戦略 前編 東京大学大学院 松島克守 教授 「日本企業の『制約』は営業にある」 東京大学大学院 松島克守 教授 NEC 市原直人  生産推進部生産システム開発センター マネージャー 日本ビジネスクリエイト 安達龍治        取締役ビジネスモデル統括本部長 i2テクノロジーズ 西本広之        ソリューション営業本部 本部長 パ ネ リ ス ト 東京大学大学院 松島克守 教授 69 DECEMBER 2001 があるわけです。
最近はB2Bマーケットプレースという選 択肢も出てきています。
ウェブ上に確定した 注文の購買をかけて、サプライヤーに手を挙 げさせ、一番安いところから買う。
別にそれ が悪いこととは思いませんが、戦略的にはあ まり意味を持ちません。
他社と差別化できな いからです。
競争とは差別化です。
差別化して競争に勝 とうと思うなら、(B2Bマーケットプレー スを利用するのではなく)むしろ特定のベン ダーと有利な条件で供給契約を結んでおくほ うがいい。
もちろん著しく業界水準よりも劣 っている会社がB2Bマーケットプレースを 利用することで、やっと業界水準になれると いうメリットはある。
しかし、それでは全く 競争にならないわけです。
ベストプラクティスの導入にも同じことが 言えます。
他社の良い事例を真似ても、差別 化にはならない。
この場合も自社のビジネス プロセスが著しく劣る場合に、とりあえず業 界水準まで向上させるという点では意味があ るけれど、業界水準を達成したところで他社 と差別化できるわけではない。
そう考えてい くと、ビジネスモデルというものもまた、自 分で戦略を立てて、それを自分でキチッとデ ザインして、しかも実装するところに差別化 のポイントがあると言えそうです。
最近のSCM関連のソフトウェアなど個々 のツールは、いずれもよく出来ています。
し かし、ソフトウェアを入れることに戦略的な 意味はあまりない。
また経理、人事、総務、 購買といった分野では「ASP」が注目されています。
しかし、ASPにしても差別化と いう意味では同じです。
業界水準に持ってい くことができるだけ。
そもそもASPの目的 は事務処理の効率化であって、本来それほど 差別化のできる分野ではない。
何十億円投じてERPを導入したが、いま だに管理会計上の日次決算ができない。
日々 の経営管理ができないという日本企業が少な くありません。
私の知っているケースではE RPに数百億円かけた企業がありますが、そ れでも連結決算がツライなどと言っている。
もともと付加価値のない部分なんですから、 これは全くのムダと言うしかない。
課題は「コネクタブル」 仮に企業一社で垂直統合しているのなら、 サプライチェーンとディマンドチェーンを考 えるのも比較的易しいでしょう。
しかし、実 際のサプライチェーンは様々な種類の会社が 複数集まって構成されています。
それぞれの システムもバラバラです。
そこで重要になる のが、「コネクタブル・カンパニー」というコ ンセプトです。
異なるシステムをコネクトするために、シ ステムの仕組みの中にまで手を入れると大変 なことになりますから、実際にはシステムの 間にコンバーターを入れることになります。
そのツールとして現在、「XML」という言 語が登場しています。
XMLが可能にするの は、アプリケーション間の緩やかな連携です。
アプリケーションとアプリケーションの間で 変換やマッピングをする。
変換が人手を介さ ずに済むわけです。
また、こうしたITによるコネクトも大事 ですが、それ以上に重要になるのが、システ ム間で協調するというコンセプトです。
サプ ライチェーンのパートナーは、互いにサプラ イチェーン全体のリードタイムや誤差、コス トを分け合っていると考えることができます。
この時、パートナー間で交差している部分が 仮に半分になれば、全体のコストは四分の一 になる。
納期も同じことです。
これまで日本企業は、この交差の部分を 「なあなあ」で済ませてきました。
パートナー間でファジーな人間系で、融通しあってきた。
それをシステムでできるようにする。
それが システム間で協調するという意味です。
シス テムが自動的にコラボレーションするかたち にするわけです。
簡単なことではありません が、それにチャレンジする必要がある。
そのための前提条件が二つあります。
一つ は計画精度、販売納期、原価といった管理制 度をもっと向上しないとダメです。
この制度 が悪かったら、どんなに優れたソフトを入れ ても機能しません。
もう一つは納期のリードタイムです。
もち ろん短いほうがいいわけですが、そこで重要 になるのは、「バイヤー協調度」です。
「バイ ヤー協調度」というのは私が作った造語です が、従来のように単に価格を叩き合うのでは DECEMBER 2001 70 なく、もっとバイヤーとの良い協調をしてい かなくてはならない。
それも人間系ではなく、 モノ作りの完全なスペックを共有してシステ ムで協調する仕組みにしなければなりません。
キーワードになるのは「アジリティ(Agility )」 です。
予定が変更された時の柔軟性です。
そ のために完全な情報共有と深い信頼に基づい た協調がいるわけです。
最後になりますが、どうも最近、「Made In Japan 」の強さの原点である品質が落ちてきたように感じています。
個人的な体験からも 車のステアリング、カメラ、ビデオがすぐ故 障する。
明らかにクオリティが落ちています。
日本企業は、モノ作りの原点である品質とい うものを、もう一度ビジネスモデルの中に組 み込む必要があると考えています。
(談) 「当社のSCMは進んでいるのか」。
我々のよ うなSCMを担当するものが経営トップ層か ら常に投げかけられている言葉です。
何をも って進んでいるとするのか自体、答えるのが 難しい問題ですが、具体的にこれまで我々が SCM推進というテーマで行ってきたのは、 まずは工場の改革でした。
生産リードタイム の短縮や生産性の向上、棚卸改善に取り組ん できました。
この部分では既に大きな成果を 挙げています。
さらに新しいモデルの開発。
パソコンを始 めとするコンピュータ系の事業では「BTO ( Built To Order: 受注生産方式)」を導入 しました。
これによって製品在庫は劇的に減 り、納期の遵守率も向上した。
情報システム ではERPおよびSCMシステムを導入して 計画サイクルを短くした。
また、その計画情 報を共有できる状態にまではもってきました。
さて、ここまでは既にできているわけです が問題は、果たしてこれで当社の競争力が向 上したのかどうか。
当社は現在の「ITスラ ンプ」に対応できたのか。
その効果は経営指 標のどこに、どのように表れているのか。
こ うしたことが今、問われてきています。
これまでのような工場の改革であれば、棚 卸が目に見えて減ってくるので効果も分かり やすい。
しかし、その段階を経た今、次に何 をすればいいのか。
それをじっくり考える時 期にきているわけです。
同時に、パソコン系事業のSCMは進みま したが、当社が今後一番のメーンとしていか なくてはいけないシステム品のビジネスでは、 まだまだパソコンレベルのSCMにはなって いないという問題があります。
この当社のシ ステム品のSCMについて、少し具体的にお 話したいと思います。
当社のSCM軸には、「営業」「調達」「生 産」「物流」「保守」という一連のプロセスが あるわけですが、そこにもう一つ「製品開 発」という軸が加わってきます。
このサプラ イチェーンの軸と、製品開発の二つの軸を協 調させる。
とくに営業と工場を協調させる部 分に三つの課題があります。
一つは「?需要予測と部材投入意志決定」 です。
需要予測が実態となかなか合わないと いう問題です。
二つ目は「?棚卸から見た製 品ライフサイクル」。
製品ライフサイクルをも っと短くしないと全体の棚卸が減らない。
そ れから三つ目は「?開発・生産・営業間のイ ンターフェース(IF)」です。
このうち、まず需要予測精度の問題ですが、 今回の「ITスランプ」で当社は大変な痛手 を受けました。
現在、とくに海外のビジネス では顧客の計画サイクルが非常に短くなって います。
当然、顧客の要求リードタイムも短 くなる。
しかし、当社自身は従来と同じよう なやりかたで需要を予測し、部材を調達し、 投資を行ってきました。
その結果、部材の調 達リードタイムが市場の変動に追い付かなく NEC 市原直人 生産推進部生産システム開発センター マネージャー 「メーカーが直面するSCMの課題」NEC  市 原 直 人   生 産 推 進 部生産システム開発センター マネージャー なってしまった。
システム品の調達では高額な部材ほどリー ドタイムも長いという傾向があります。
その ため顧客から確定受注もしくはそれに準ずる ようなコミッションを頂くより、ずっと前の 時点で部材を仕込んでおく必要がある。
こう して確定受注より前に調達した部材は、その まま当社の棚卸リスクになります。
少額品な らまだしも、システム品に使用するLSIや 特殊部品ともなると非常に高額で、モノによ っては原価の七割を占める場合もある。
当社のシステム品事業は、こうした棚卸リ スクを背負ったビジネスになっています。
と ころが、そうした意識がまだ十分に社内に浸 透していない。
リスクを減らすために、ビジ ネスモデルを変えていく。
リードタイムを短 くするための最大の努力をするといったとこ ろが十分ではない。
市場の変動に比べて、当 社の変化はずっと遅い。
その問題が非常に大 きく顕在化しています。
(リスクを回避するために)サプライヤーと のコラボレーションによってリードタイムを 短くする。
このビジネスのなかで勝っていく 仕組みをサプライヤーと一緒に考えていく。
それから営業面では、今までのように数週間 に一度というペースの顧客情報だけではなく、 もっと密に情報があがってくる体制にしなけ ればなりません。
そうしないと市場の変化に ついていけない。
それがビジネスモデル上の 大きな問題になっています。
「?棚卸から見た製品ライフサイクル」と 71 DECEMBER 2001 いう観点からいきますと、今までのSCMと いうのは受注を受けて、それに対して顧客に 「QCD」を完備したものを出すというとこ ろを中心としていました。
そのため基本的に は製品在庫、そして当社で「活性部材」と呼 んでいる、その時点の売れ筋製品の部品、こ の二つの在庫圧縮には非常に大きな効果が得 られました。
補修部分の在庫が顕在化 ところが、これだけ製品のライフサイクル が短くなってくると、寿命を迎えた製品につ いての部材をどこまで最後まで使い切ってい るかという点が目立ってくる。
製品のライフ サイクルが短くなると、部品のライフサイク ルも短くなります。
部品そのものが製造中止 になるため、当社では保守のために部品在庫 を抱えなければならない。
ほかが圧縮された 結果、こうしたモノの在庫の比率が目立って きました。
結局、その部分が大きいから、全 体で見たときに棚卸が減らない。
この問題は とくに営業、そして設計の役割が大きい。
こ うした問題をクリアしてSCM全体の中でど うやって資産効率を上げていくかというのが 重要になってきています。
もう一つの大きな問題が垂直統合型につい てです。
これまで当社のみならず多くの日本 企業が垂直統合型のモデルをとってきました。
それを水平分業型にどう展開していくのかと いう問題です。
これまで当社では事業部ごとに設計と生産 と営業の間のインターフェースを非常にファ ジーな形で融通しあってきました。
ところが 昨今は当社のサプライチェーンに新たに「E MS(電子機器の製造受託サービス)」が入 ってくる。
また社外の設計のスタッフが入っ てくるということになってきた。
もはや事業部の中だけの閉じた文化ではや っていけません。
コラボレーションできない からです。
社内だけを見ても事業部が違った だけで大きなギャップがあるのが現状です。
そこでこうした曖昧なところを社内で一度整 理した上で、社外ともやり取りできるような 形にしていく、ということが大きな課題にな っています。
以上をまとめますと、現在のような非常に市場変動の大きな時代に、変動のリスクを回 避するためには、とにかくリードタイムを短 縮するしかない。
まずはそれを実行しました。
もちろん供給サイドからは市場予測をもっと 当ててくれという、悲鳴に近い要請があるわ けですが、すぐにはどうにもできない。
また、それだけを追っていれば済むわけで もない。
営業、工場、開発のさらなる連携を しない限り、つまり製品在庫と活性部材を圧 縮しているだけではダメなのです。
とくに商 品ライフサイクルが短く、リードタイムの短 縮が難しい、特殊部品をたくさん使うような ビジネスでは、工場と開発、設計との連携が 必要かつ重要になっています。
さらに垂直統合型から水平分業モデルに移 行するには、まず社内の責任分担と責任を明 今、コラボレーションビジネスへの転換と いうことが起きているわけですが、まずその 背景について簡単にまとめてみます。
IT改革の舞台が現在、目まぐるしい勢 いで変わってきています。
これまでのパソコ ンやITの領域から、ブロードバンド、通 信にシフトしようとしている。
一方でグロー バリゼーションがどんどん進んでいる。
しか も展開のスピードというのが非常に速くなっ てきた。
このスピードについていくことがビ ジネスモデルの条件になってきている。
さらには、垂直統合型から水平分業型へ のシフトが進んでいる。
新聞を見ても、今ま ではコンペティターだった企業同士が、急に 手を組んで一緒にやるという話がたくさん 出てくる。
こうした状況の中で、企業は強 者連合型のサプライチェーンを作っていかな ければならなくなっています。
もう一つ。
IT改革によって顧客が「情 報リッチ」になっています。
情報コストが安 くなり、世界の情報が自由に手に入るよう になった結果、顧客起点でビジネスを考え ないとやっていけなくなっている。
(単にモ ノを販売するだけではなく)顧客のデマンド のプロセス、そこまで入らないと需要をつか めない。
すなわちコラボレーション型のサプ ライチェーン構造を追求しなくてはならない 時代になってきたわけです。
そこで問題になるのが「繋ぎ」の部分で す。
他社や他部門との「繋ぎ」をどうする かということが、当社のコンサルティングの 中でも一番大きなテーマになっています。
最 近、とくに目立つのがディマンド部分の課 題です。
松島先生のお話にあった通り、ま さにボトルネックは営業にあると痛感します。
これまで生産については色々と努力してき た。
日本の製造業の生産レベルは世界的に 見てもかなりの水準にあると思います。
とこ 日本ビジネスクリエイト 安達龍治 取締役ビジネスモデル統括本部長 「ITで生産と営業を繋ぐ」 ろが営業は相変わらず営業マン個人の能力 に依存している部分がかなり大きい。
流通という視点から言っても、エンドユ ーザーの姿が見えないまま営業しているケー スがままある。
サプライチェーンを構成する 代理店や小売店や卸といった流通業者との コラボレーションを考えていかなくてはなら ない時代になっている。
これについては当社 もいくつかのプログラムを開発しています。
モノづくりの視点では、生産と営業の間 の「繋ぎ」の部分が複雑化しています。
顧 客起点にするために、営業組織は顧客ごと の括りに変えた。
しかし、生産はそうはいか ない。
従来通りの工場単位、あるいは技術 単位、製品単位という括りになっている。
顧客の要求するものは一つの工場や一つの事 業部で満たされるわけではありませんので、 結果的に色んなものを組み合わせて提供し ていかなくてはならない。
ところが、組み合 わせる「繋ぎ」の仕組みが上手くできていな い。
そこに多くの人手がかかる。
間接部門 が必要になる。
ロスが生まれるという状況が 起きています。
多くの企業で共通して起き ている現象だと思います。
まとめてみますと、まず営業は顧客起点 であり、特定顧客の固まりに対応して組織 されている。
ところがモノ造りのところは技 術起点・製品起点になっている。
しかし、ご 存じのように、もはや箱だけのビジネスとい うものは成り立たなくなってきている。
必ず 製品のなかにソフトやノウハウが入ってくる。
DECEMBER 2001 72 確にした上で、ビジネス単位で小さくまとま ったほうがいいのか、それとも水平分業の中 に入っていって戦ったほうがいいのかを、各 ビジネス単位で考えながらやっていく。
こう したことが当社では今、課題になっていて、それに対応していこうと考えています。
(談) 日本ビジネスクリエイト 安達龍治 取締役ビジネスモデ ル統括本部長 73 DECEMBER 2001 そうなるとソフト・ノウハウの部分はどうす るのか。
さらには販売した後のサービスの領 域。
業務改革をし、メンテナンス、回収を 上手くやってあげる等々、色んな領域でサ ービスの話が出てきます。
こうしたものをイ ンテグレーションした上で顧客に提供しなく てはならない。
そこで営業と製造の「繋ぎ」 が非常に問題になるわけです。
営業ゾーンであるディマンド領域、モノを 作るサプライ領域、それからソフト・サービ スの領域、さらには本社のコーポレート機 能、情報や物流や会計・総務といった領域、 当社はこれらの四つの領域を上手くつなぐ 仕掛けを作っていくことが、今後のコラボレ ーション時代の仕組みの在り方だと考えて います。
その一つとして、現在、導入に取り組ん でいる最中のソリューションを紹介します。
「ビジネス・プレース」と呼んでいますが、企 業の各プロセスに必要なビジネスの場所を IT的に作り上げようという取り組みです。
ビジネス・プレースの上で、サプライヤーと カスタマー、そして自分たちがコラボレート して仕事をしていく。
そういう仕掛けです。
具体的には真ん中に情報倉庫となる「ビ ジネス・プレース」を置きます。
そこにイン テグレーターとサプライヤーの双方がパソコ ンを通じて入り込んでいく。
パソコン一台あ れば自由に入り込めるわけです。
必要なや りとりは全て、このビジネス・プレースの上 で行われる。
全てのプレーヤーが必要な情 報をそこに書き込んでビジネスを進めていき ますので、ビジネス・プレースの中には常に最新の情報がたまっていくことになります。
それを見ながらコラボレーションの関係者は 一緒に仕事を進めていく。
こうした仕組みがコラボレーションのソリ ューションの一つになると考えています。
現 在、当社ではこうしたコンセプトにもとづく 仕組み作りのコンサルティングを進めていま すので、それが実際に完成した時には改め てご紹介したいと思います。
このように今日、ビジネスモデルを作って いくには、ITの助けがないとできない時代 になっています。
ITの中には世界中の企 業のノウハウが入り込んできているわけです から、それを利用しない限り、有効なモジュ ールはできなくなっている。
企業戦略をビジ ネスモデルに落とし込み、業務プロセスを考 えていくためには、今のITで何ができるか を分かっている必要があるわけです。
(談) SCM、そしてB2Bのソリューション・ プロバイダーという立場からお話させて頂き ます。
昨今のデフレ時代における経済モデル の変革は、企業の経営モデルの変革へとつ ながっています。
従来の計画生産から、より ディマンドチェーンにフォーカスした受注生 産型へ。
また仕組みとしてはさらなるスピー ドアップが求められています。
さらにオフラインからオンラインへ。
供給 企業型からネットワークを重視した仕組みへ、 という転換が起こっている。
つまりディマン ドチェーンとサプライチェーンを統合したダ イナミックなバリューチェーンの仕組みを構 築していくことが、今日の非常に重要な課 題の一つになっていると当社はとらえていま す。
バリューチェーンにおける一般的な課題と しては、まず企業内における組織横断的な 課題、サプライヤー、また販売チャネルの相 互間における可視性や情報シェアに欠ける ことなどが、結果として過剰在庫や機会損 失につながっている。
それがソリューション を提供する立場で顧客からよく耳にする、最 も重要であり、また直面している課題です。
こうしたバリューチェーンにおける課題に 対して、当社がキーワードとしてお伝えして いるものが「三つのV」です。
一つが「ベロ シティ(Velocity )」。
これは方向性を持った スピードです。
具体的にはサイクルタイムの 短縮や、意志決定支援のスピードアップに 当たります。
もう一つが「ビジビリティ(Visibility )」。
i2テクノロジーズ 西本広之 ソリューション営業本部 本部長 「経営スピードを一六〇倍に」 二時間ごとに行われた計画情報はプロキュ アメントの仕組みを通して、VMI倉庫を 中心にしたサプライヤーに伝わっていく。
一方、このニア・タイムのプランニングと は別に、サプライチェーン全体を統合するマ スタープランも動いています。
こちらは向こ う二六週間について、世界二五〇のサプラ イヤーとプランそのものを共有している。
デ ィマンドが変化した場合、供給が変化した 場合のビジビリティというものを、ニア・タ ームとミッド・タームの双方に対して維持し ているわけです。
このように今日のテーマである「ITコラ ボレーション時代の次世代SCM」は、デ ルを始め当社の多くの顧客で既に展開され ています。
しかもプランニングの仕組みやコ ラボレーションというものがサプライヤー側 だけでなく、ディマンド側でも展開されてい る。
つまりデルに納品するサプライヤー、C PU、ディスク、モニターといった部品メー カーも、二時間サイクルに呼応している。
こ れによってバリューチェーン全体で最大限の ベロシティ、ビジビリティを実現し、相互に バリューを最大化しているわけです。
月に一回の計画ですと年間で一二回。
こ れに対してデルは一八〇〇回ですから、スピ ード感は約一六〇倍になります。
一六〇倍 のスピードで意志決定を繰り替えすことによ るディマンドへの呼応、この柔軟性が当社の ソリューションであり、また顧客が必要とし ている最大の課題だと思っています。
(談) 社の顧客であるデルコンピュータの事例をも とに確認していきたいと思います。
デルはハイテク業界におけるベストプラクティスの一 つとされています。
実際、マーケット自体が 苦しい状況のなかでも、デルは確実にシェア を上げている。
業績も他社と比較して安定 しています。
当社はデルとは既に長いお付き合いをさせ て頂いています。
サプライチェーンの構築を お手伝いさせて頂いているわけですが、デル が掲げているサプライチェーンの目標とは 「サプライヤーから顧客までのエンド・ツー・ エンドのビジビリティ」、「一日複数回のプラ ンニングの達成」です。
デルは世界二〇カ所に工場を配置してい ます。
受注生産型ですので、そこに顧客から ダイレクトにオーダーが入ってくる。
それに 対して、デルは実に二時間のプランニングサ イクルで四時間先の計画を確定しています。
日本企業では月次であったり週次だった り日次だったりするわけですが、それがデル では二時間ごとのプランニングサイクルで生 産計画、調達計画、納期確約を進めている。
DECEMBER 2001 74 可視性です。
リアルタイムのコラボレーショ ンを進めていくために、ディマンドからサプ ライヤーまで、相互に関連するプレーヤーの 中での可視性を高めていく。
その結果として 「バリュー(Value )」、価値というものを最大 化していこうというのが当社のソリューショ ンのキーワードです。
簡単にその具体例をご紹介します。
一つ は在庫の問題です。
これはベロシティ、つま りスピードですが、計画のサイクルを最大限 スピードアップすることにより、結果として 安全在庫、基準在庫のミニマイズが達成さ れていく。
一方のビジビリティですが、その効果は機 会損失の最小化です。
ちょうど先日、当社 のソリューションを展開されている顧客とお 話をしたところなんですが、機会損失という ものを分析していった結果、その顧客では約 三〇%がビジビリティの問題だったそうです。
実オーダーに対して、別の倉庫に在庫がある といったような、納期回答の仕組み、情報 の共有化がうまく進んでいないために機会損 失を起こしていた。
もちろん、そのクライアントも様々なレガ シーシステムをお持ちなわけですが、昨今、 販売チャネル、あるいは企業間においても非 常にサプライチェーンが複雑化してしまって いる。
そこで可視性を、少し強化するだけで も大いなる機会損失の削減が可能になると いうわけです。
このベロシティとビジリティについて、当 i2テクノロジーズ 西本広之 ソリューション営業 本部 本部長

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