2001年12月号
SOLE

「システム」とは何か

DECEMBER 2001 76 ロ ジ ス テ ィ ク ス 学 会 ( S O L E - T h e International Society of Logistics )では技 術専門の季刊誌「LOGISTICS SPECTRUM 」 を発行しているほか、月刊のマネジメント ニュースレター「SOLEtter 」、技術関連ニ ュースレター「SOLEtech 」を発行している。
今回は「SOLEtech 」の新シリーズのなか からロジスティクス関連の基本的な小論文 を紹介する。
論文の著者は、当学会の公認 専門ロジスティシャンで特別会員でもある バージニア工科大学名誉教授のブランチャ ー ド 教 授 ( Ben S. Blanchard, CPL, Fellow, Professor-Emeritus, Virginia Tech )、 原 題 は 「 Systems, Systems Engineering, Logistics and Product Support 」である。
本論文では、最初にいくつかの定義をもと に「基本」とされる用語や概念を見直す。
続 いて、システムエンジニアリングプロセス、シ ステム分析、全体プロセスにおけるロジステ ィクス支援活動の統合などについて論じてい く。
システムの定義 あまりに基本的なことではあるが、我々は 何を?システム〞として捉えるべきなのだろ うか。
例えば、次のような議論の場に居合わ せることがよくある。
一人が飛行機について 話しているのに、別の人は航空機エンジンに ついて話し、他にも航空隊について話す人や、 電子的能力について話している人がいる。
に もかかわらず、誰一人としてロジスティクス やライフサイクル全般にわたる製品支援の問 題については考えていない。
我々は?システム〞という言葉をかなりい い加減に使っている。
その結果として、シス テムの要求を最初からきちんと定義し、確立 しないままに結論づけてしまっていることは、別に驚くべきことではないだろう。
SOLEのウェブサイトにある「参考文献 一覧」のセクションBには、「システム、シス テムエンジニアリング、システム分析」に関 する二二の参照文献が登録されている。
これ らは利用できる代表的な文献である。
こうし た資料を改めて読み直せば、「システム」や 「システムエンジニアリング」に対する定義 (そして学術語)として、また違ったものを 見出すことになるのかも知れない。
しかし、私は「システムエンジニアリン グ・プロセス」、すなわちシステムの開発・ 運営におけるトップダウン、統合化、ライフ サイクルアプローチなどに関して、すでに定 着している同様の基礎原理や概念から、あな たが共通の糸口を見出すものと信じている。
第9回 「システム」とは何か 77 DECEMBER 2001 「システム」や「システムエンジニアリング」 の定義はさまざまだ。
かつてINCOSE (国際システムエンジニアリング協議会)の リーダーは、二一人の「特別会員」に対して、 共通認識できる定義を作り出すように要求し た。
彼らが何回かのやり取りの末に導き出し た定義は、次のようなものだった。
「システムとは、単独では結果を得られない が、一緒になって結果を産み出す異なる要素 の構成物または集合体である。
要素または部 品としては、人々、ハードウェア、ソフトウ ェア、施設、方針、文書が含まれる。
これら はシステム全体として結果を生み出すのに必 要なすべてである。
結果にはシステム全体と しての品質、特性、特質、機能、活動、性能 が含まれる。
システム全体としての付加価値 は、パーツ独自の価値を越えるものであり、 主としてパーツ間の関係によってに産み出さ れる。
すなわち、いかに相互連結しているか である」 このINCOSEの定義は究極のものでは ないにしろ、よい出発点にはなる。
この定義 のなかにはニーズに応じて設計された機能を 実現するという共通目的や、いくつかの「ミ ッション」の達成についての重要なポイント が述べられている。
私の見解では、自動車やコンピュータ、建 物などの独立した実体は、ミッションの達成 に必要な人や関連インフラストラクチュアを 伴っていないため、システムとは言えない。
通常、与えられたミッションの達成には、必 要なときにしかるべき場所で利用できるロジ スティクスの存在が欠かせない。
こうした支援のためのインフラストラクチュアについて 議論することなしに、システムについてどの ように語ることができるというのか。
今日のチャレンジの一つとして、図1に示 したように「システム」とそれらの各要素を、 全体ライフサイクルの見地から思考させるよ うにしている。
一つのシステムにはミッショ ン関連の主要要素だけでなく、メンテナンス やサポート・インフラストラクチュアの要素 も含まれている。
さらに私は、ここにサプライチェーン業務、 輸送、流通、継続的なメンテナンスサポート 活動に関係する要素や活動も、すべて含めて 考えている。
個人的な経験からいえば、あら かじめ認識されている障害をいくつか排除し て、上記のアプローチで思考した場合、次に 起こるべき要求や活動はしかるべき場所(適 所)におさまる可能性が高いと思われる。
システムエンジニアリングの定義 INCOSEの「特別会員」は、「システ ムエンジニアリング」の定義に関しても?共 通認識できる〞ものを開発するように求めら れた。
そして次のように定めた。
「システムエンジニアリングは工学であり、 その目的は顧客、利害関係者のニーズをシス テム全体のライフサイクルを通して高品質で、 高信頼度で、かつコストやスケジュール面で も充分満足させための、学際的なプロセスを 創出し、実行することである。
このプロセス は通常、次の七つの課題で構成されている。
問題提起(State the problem )、代替案調査 ( Investigate alternatives )、システムのモデ ル 化 ( Model the system )、 統 合 化 ( Integrate )、システムの立上げ(Launch the system )、性能評価(Assess performance )、 再評価(Re-evaluate )(SIMILAR)。
シ ステムエンジニアリングのプロセスは直列で はなく、並列的・反復的に進められる」 基本的に私たちは、メンテナンスやサポー トインフラが重要なシステムの、調達や購買 に適用するプロセスを問題にしている。
そこ には新たな要求が定義されるたびに繰り返さ DECEMBER 2001 78 れる一連のステップがある。
「要求分析と定 義」、「機能分析と割付け」、「トレードオフと 最適化設計」、「システムテストと評価(検 証)」といったトップダウン・プロセスを通じ て、初期のニーズを明らかにしていくといっ たステップである。
支援性設計に関する活動は、この全体プロ セスを構成する必須の部分であり、そこには 各ステップで必要なフィードバック機構が組 み込まれている。
全体ライフサイクルの視点 からシステムを論ずる場合には、システム設 計と開発(すなわち概念設計、予備設計およ び詳細設計と開発)、生産と建設、システム運用と継続的メンテナンスとサポート、シス テム・リタイアメントなど様々な段階につい て考慮する必要がある。
図2はライフサイクルの広がりを示してい る。
ここではいくつかの重要機能が強調され、 そのうちのいくつかは活動段階でオーバーラ ップしている。
新しいシステムのニーズが発 生したときには、システムの主要ミッション に関わる要素の設計(すなわち一番目のライ フサイクル部分)、生産能力の設計(二番 目)、サポートインフラストラクチュア(三 番目)、資材の段階的廃止やリサイクルもし くは処分する能力の設計(四番目)、を通し てライフサイクルを展開していく必要があ る。
さらに、そこにはフィードバック効果があ る。
第二、第三、第四番目のライフサイク ル設計が、最初のライフサイクル活動に悪 影響(もしくはプラスの影響)を及ぼすの である。
言い換えれば、トップダウンアプロ ーチ(必要なフィードバック機構を伴う)を 想定し、全体プロセスの過程で多数の相互 作用が発生することを理解する必要がある。
図2に示した四つのライフサイクルの各々 にロジスティクス関連活動が存在している。
次のステップとして、図2で示した統合 されたライフサイクルについて、図3を使っ てトップダウン/ボトムアップ・プロセスを 説明する。
最初の段階から、全体システム とその構成要素の全てに狙いを定めることの 必要性を強調するためである。
これまで我々は、特に「システム要求」と 「機能分析と要求割付」という二つの機能を 満たすことに熱心ではなかった(図3のV字 の左側二つのブロック)。
しかし、有効で能 率的なシステム設計を行い、顧客やユーザー の要求に応えたいのであれば、この最初の要 求定義から始めるべきである。
そして、ここ での要求は、システムを「ロジスティクス要 素」と「メンテナンス」、さらに「支援インフ ラストラクチュア」を含めた「全体」的なも のとして捉える必要がある。
79 DECEMBER 2001 SOLE東京支部フォーラム報告 SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開 催し、ロジスティクス技術、マネジメントに関する 会員相互の情報交換に努めている。
フォーラムで は十一月から以下の日程で新しいシリーズをスタ ートする。
(カッコ内は担当もしくはスピーカー) 全体を通しての参加が理想だが、特定テーマの みの参加も可能。
詳しくは事務局にご相談を。
S OLE東京支部についてのお問合せ、ご意見など は sole_consult@jmac.co.jp まで。
Q1 クリティカルパス分析ネットワークにおけるクリティカ ルパスについての記述で正しいのはどれか? a. クリィティカルパスは連続的な相互に関連するイベント の連鎖が消費する時間の最大値として定義される。
b. クリィティカルパスはプロジェクトが完了する最短期間 として定義される。
c. クリィティカルパスは連続的な相互に関連するイベント の連鎖であって、おのおののイベントには余裕時間がない。
d. a.、b.、c.のいずれも正しい。
Q2 商業界で在庫計算の単位として一般的に用いられる関 連用語は次のうちのどれか? a.SKU b.EOQ c.JIT d.SKUL 前月号でご紹介したCPL模擬試験問題は「取得と製品支援」 からの出題でした。
いかがでしたか? Q1の正解は、解答表によれば「d」。
クリィティカルパス は作業ネットワーク中の最も長い期間を要する一連の経路で す。
したがって、「a」は当然です。
「b」の最短期間とは「a」 を言い換えたものです。
クリィティカルパス以外のアクティビ ティは最長期間の中で処理されますので、なにがしかの余裕を 持っています。
したがってクリィティカルパスを構成する各イ ベントは余裕時間を持たないということ。
つまり「a」「b」 「c」はいずれも正しいため、正解は「d」ということになり ます。
Q2の正解は「a」。
SKUはストックキーピングユニット の略で、在庫管理を行うための最小単位です。
「b」のEOQ は在庫管理に関係しますが、発注量に関わる用語で経済発注 量(エコノミックオーダークオンティティ)のこと。
「c」のJ ITはもちろんジャストインタイムの略であって、在庫計算の 単位ではありません。
「d」のSKULは“SKU by Loc ation”の略で需要予測に関わる用語です。
第8回 CPLの試験問題に挑戦 今回は第4領域「流通と顧客支援」からの出題です。
Q1 マーケティングミックスとは次のどれを指すか? a.製品、販売促進、支払い、場所 b.製品、生産、価格、場所 c.製品、販売促進、価格、場所 d.製品、生産、価格、場所 CPL(Certified Professional Logistician)の試験問題に挑戦 前回のおさらい ※今回の設問の答えと解説は、本誌2002年1月号の当コーナーでお読みいただけます Q2 輸送モード別に遂行度合い(ディペンダビリティ) のランクをつけると、高い順に言うと次のどれか? a.航空、ハイウェイ、鉄道、水運、パイプライン b.水運、鉄道、ハイウェイ、航空、パイプライン c.パイプライン、ハイウェイ、鉄道、水運、航空 d.ハイウェイ、航空、鉄道、水運、パイプライン 2001年 2002年 11月13日(火)「フォーラムオリエンテーション」 (SOLE東京支部役員) 12月17日(月)「ヨーロッパ物流動向の研究」 (ベルギー・フランダース企業誘致局) 1 月16日(水)新春特別研究「日本のシーレーンとロジスティクス」 (元空将・佐藤守氏) 2 月21日(木)ロジスティクス技術の研究「在庫管理論」 (日通総研・湯浅和夫氏) 3 月20日(水)SCMの研究「物流学会報告」 (システム化研究所・曽我部旭弘氏、横浜商科大学・橋本雅隆教授) 4 月15日(月)ロジスティクス現場見学 (パーツセンター、整備工場、など) 5 月14日(火)ロジスティクス事例研究 (フォーラム参加者企業) 6 月19日(水)ロジスティクス現場見学  (リサイクル関係施設、など) 7 月18日(木)情報技術研究「ITコーディネーター制度」 9 月20日(金)SOLE2002(訪米ロジスティクス視察)報告 ※8月はアリゾナ 州フェニツクスで開催予定の第37回国際シンポジウムに参加するためフォーラムは休み

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