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物流脅庵の情調とは大迎い
ロジステイクスの手引き
ー川」一
avコールドラット憾士の教え
「ザ・ゴール」に学ぶ
ロジスティクスのTOC =制約管理
不況にあえぐ日本の各企業は必死に生き妓りを
かけて、経営のあり方を綴索している。 今、必裂
なことは変化に対するスピーディな対応と重点を
絞った改革である。 そのためには、企業が抱えて
いる経省課題の中から問題を絞り込んで、何を改
革すべきかを明確にすることが大切だ。
現状の様々な状況は、企業内外の様々な「制約
条件」によって引き起こされている。 この制約条
件を正しく理解し、抱擁してこそ効果ある改革が
可能となるのだ。 TOC2 ,FEミO『わき巳E5Z)
は「制約条件の周一論」、「制約管理」、「コンストレ
インツマネジメント」などと呼ばれている。 文字
通り制約条件をどう見つけて解決していくかの経
営手法なのである。
-TOC はどのようにして生まれたか
TOC はイスラエルの物思学者である、
ールドラyト博士によって生み出された。 一九七
0 年代、博士は製造業のスケジューリング理論を
工夫し、OPT(OE25 包早急Z2一03
→2 一言。 一08、)のソフトウエアを作り、ボトルネッ
ク工程の計蘭を中心にした生産計画のあり方を発
表した。
当時、このソフト自体も評判になったが、さら
に崎町士はTOC の基本的な考え方を、企業小説
「ザ・ゴlル」に託して発表した。 この小説は全米
で二五O 万郊のベストセラーになり、小説の中に
含まれる考え方を、体系的にまとめ、産業界に発
表し大きな反響を得たのである。
一九八0年代にはTOC の内容を進化させ、開
A
ゴ
取締役
発・設計部門、販売・マーケティング部門、戦略
経営企画部門などあらゆる領域に、また、流通・
サービス産業、公官庁や学校・病院などの諮問体
にも適m されるようになった。 「ザ・ゴl ル」は今
や多くのMBA( 経営大学院)で製造関係のサプ
テキストとして川いられている。 TOC が今では
SCM の基本的な考えカとなっているのである。
世界中でベストセラーとなった「ザ・コール」。 そこで展開されて
いるfToeJ は今日のSCM の基礎理論となっている。 日本能率協
会コンサルテインタでは現在、Toe をロジスティクスに活用する方
法の確立に取り組んでいる。 その責任者がロジステイクス管理にお
けるToe を解説する。
日本能率協会コンサルテインク
企守備け値明けるための方法愉
TOC は「現在から将来に渡って儲け続ける」
ことを狙いとしている。 これに「市場を満足させ
る」こと、そして「従業貝に対して、安心して満
足できる環境を与える」ことを加えて、企業のゴ
ールとしている。
「儲け続ける」ためのカギは制約Hボトルネyク
にある。 日恥終的な儲けを地やすための改普は、そ
れを阻害しているボトルネツクに集中しなくては
効栄がない。 各部分を最適化しても、全体段通と
はならない。 企業の経営資源を問題の部分に集中
して改普を行うことで、全体段通化を迷成し、メ
イクマネーが可能となるのである。
TOC ではそのために、まず「スループット」の
向上を図る。 スループットとは売上高から兵の変
動曲目(代表的なものは材料貸)を差し引いたもの
だ。 TOC はこのスルl プYトの向上を第一とす
る。 スループット向上には限界がない。 工夫の伯
方によって売り上げ向上の余地は無限だからであ
る。
23 LOG 卜BIZ JUNE2003
小林俊一
第二に行うことは布陣の削減だ。 言うまでもな
く布州削減はキャy ンユフロl の改普のためにも
リl ドタイム短縮のためにも赤裂なテl マとなるか
らだ。 そして第三が業務賀川(OE一。 zozzz
開討一司22) の削減だ。 スループットの向上に限界
がないのに対して、在庫削減やOE 削減はゼロに
は出来ない。 そのため、このような優先順位がつ
いている。
-v独曲帽のテクニック
TOC の基本はその言葉通り、制約条件
(nsaEZZ)を正しく認識することである。 具体
的には制約条件を「物理制約」、「方針制約」、「市
場制約」に区分する。 そして、その重要性、全体
関連性から優先順序を付け、ブレイクスルーとな
るアイデアを出し、集中して改善する。
制約条件を正しく把握するためには、発生して
いる問題を洩れなく抽出し、原因結果の関係を
相互に閃迷付けして、共有化する必要がある。 そ
のツl ルとして、TOC では「思考プロセス
QFEr- 口問3・02E)」と名付けられた五つのツリ
ーが用意されている。 後に解説するが、論理的か
つシステマティァクに閉店開できる、優れた手法で
ある。
またTOC の製造現場における代表的な手法と
しては「DBR 」が挙げられる。 ドラム(ロE ヨ)、
バッファlaz 同司)、ロープ(問。 唱。 )の頭文字をつ
なげたものだ。 ボトルネック工程の能力にあわせ、
初工程に物を投入する。 ボトルネック工程のを初
工程までロlプでつないで、ドラムを鳴らすように
してその進捗を知らせ、投入賞をコントロールす
る方法である。 ボトルネックとなっている工程を
能力一杯に稼働させることで全体は最適化される。
そのためボトルネァクとなる工程の前にバッファ!
となる在庫を必要な分だけ用意するというアプロ
ーチである。
DBR では「五つの重点化ステップ」の方法で、
制約条件を見つけ、制約条件を徹底活用すること
を目指す。 まず制約条件以外を制約条件に従わせ
る。 その後、制約条件を強化する。 さらに情性に
注意しながら再び、新たな制約条件を見出して、問
じサイクルを繰り返す。
大型製品の受注生産や開発・設計などのプロジ
ェクト管理には「クリティカルチェーン」の手
法がある。 また、企業の意思決定を正しく行うた
めに、スル1 プyト会計もTOC の中に手法とし
て含めている(図1)。
。 TOC によるロジステイタス改革
ロジステイタスは、製品・商品・サービスを顧
客に供給するプロセスを改革の対象とする。 その
目的は単なるコストダウンではない。 企業戦略に
基づいている。 以下にTOC によって顧客に満足
を与え、儲けを生み出すロジステイタス改革の特
長を挙げてみよう。
-スループット最大化が図れる製品・商品の供給
プロセスを梅築する
・事業戦略上のボトルネックに重点を絞り、供給
プロセスを改革する
-全体最適化の観点で、在庫・仕掛を集中管理し、
大幅に削減する
・市場制約を追求し、売り上げ向上に直結する物
流サービスを確立する
・方針制約を打破し、大幅に物流コストを削減す
る
繰り返すが、TOC は「現在から未来にかけて
企鎌内の根深い対立の解消、
プレイヲスルーアイデアで
市場を開拓する
思考プロセス
TOe手法の構成
方針制約条件の解消
市場制約条件への対処
図1
ボトルネッヲに曹自した
E童書5のステッブ
/ \ ボトルネッヲに
周期させる生産計霞
フロジェフ卜期間
OBR
を短縮させる
(ドラム・バッファー・ロープ) /
ヲリテイカル・チェーン
\
キャッシュフローを
盟大化する
Toe;!.}レ司プット会計
JUNE2003 LOG トBIZ 24
.
儲け続ける」ことを企業のゴlルにしている。 儲
けるとはスループットを増やすことであるげから材料費を差引いた額を増やす。 しけ続けるには顧客に満足を与えながら、ればならない。 そのために、なすべる。
個別の原価計鈴で儲かっていないとものでも、TOC に基づいた判断では別の結なり得る。 生産能力が余っているのな生産して販売した方がスループットは性がある。 つまり儲かる。 こうした判断
物施管理の協調とは大迫い
ロジステイタスの手引き
lb
めには正しいスループットの理解が前提となる。
TOC の最大の特徴は、重点となる制約条併を
徹底的に追及し、改革することだ。 制約条件は数
多くある。 その中から段も問題に影響を与えてい
るものをボトルネックと見なし、関係者が共通認
識し、集中して改革する。
制約条件・ボトルネックを次の五つの観点で見
てみよう(図2)。
-機能(ボトルネYク・ファンクション)
図E 5つのボトルネッヲ
--•.ュh
--
•
ポトjレネッヲ?
才一ガニぜーシヨン
-部門間(ボトルネ7 ク・イン歩l フェース)
.システム(ボトルネy ク・システム)
・管理(ボトル、平yヲ・マネジメント)
・組織(ボトルネック・オガニゼlション)
ロジステイタス改革の課題とボトルネァクの種
類をマトリァクスで整理してみると、制約の内容
が浮き彫りになってくる。 在庫削減のためには?
リl ドタイム短縮のためには?コスト削減のた
めには?欠品防止のためには?などのロジス
テイタス改革テ17 が、五つの制約のどこで、何
によって阻害されているかを明確に把握すること
が必要なのだ。
TOC では制約条件を物理制約・方針制約市
場制約に区分しているが、昨今の状況は市場制約
が最も問題となっている。 しかし、物が売れない、
競争が激しい、顧客の要求が厳しいと市場を酬明い
ても始まらない。
売れている製品・顧客には、それなりの理由が
あるだろう。 むしろ、問題は市場制約より方針制
約ではないだろうか。 疑ってかかる必繋がある。 尖
際、自社で決めた販売チャネル、販売体制、販売
価格、使用用途など今までの長い潤慣、実績が制
約となっていることが多い。 方針制約は企業の風
土・社風を作り上げている。 方針制約で活動内容・
システムを回定的なものにしてしまっている場合
が多いのだ。 方針制約の改革には経営トップ自ら
取り組む必要がある。
AVTOCの思考プロセス
ロジステイタス部門は、社内のほとんどの部門
と関連している。 生産・販売・物流、場合によっ
ては設計・開発部門とも共同で取り組む必要があ
る。 さらに、社外が重要になる。 顧客、調達先、協
力会社、外注先、協力業者と述携し、一つの目的
に向かってまい進しなくてはならない。
このためには関係する全組織体が問題を共有し、
進むべき方向性と危機感を一つにすることが重要
だ。 そのための方法がTOC の「思考プロセス」で
ある。 思考プロセスには以下の特長がある。
・論理的、客観的に問題を知ることができる
・コミュニケーション手段、コンセンサス作りの道
具として便利
-直感と論理の融合を図り、ブレイクスルl案を
抽出できる
・定められたステップを踏んで実施するため見落
しゃ抜け落ちを防ぐことができる
・論理性、客観性により感情的対立を回避するこ
とができる
TOC の思考プロセスは、「現状問題構造」、「対
立する課題解消」、「将来問題構造」、「目標達成の
前提条件」、「改善移行」の五つステップをツリー
によって表現していく。 ツリl作成は関係者参加
型の方法をとる。 ワークショップスタイルで行
うことが多い。 一部のスタッフの独断独走とは
輿なる。 場合によっては経営者自らも参加して竹
り上げる。 この点は日本流であり、改革を成功す
るための鍵とも言えよう。
。 ロジステイタス改革の手順
25 L唾G トBIZ JUNE2003
TOCによるロジステイタス改革は、問題を正
しく把握し、改革方向を関係者で共有化すること
が第-段階である。 これは課題発掘の段階であまずは対象とする事業を正しく位蹴づけることで
ある。 事業を市場・顧客と製品商品で区分し、ピ
ジネスの単位を明確にする。 そして、そのビジネス
単位の現状の概要・市場の状況・自社の強み弱
み・現状のロジステイタスの課題を掴む。 これら
のビジネス単位ごとの情報から対象を絞り込んで
いくのである。
絞り込まれた対象事業・製品群の中にも、いく
つかの製品群や顧客群が含まれているであろう。 そ
の場合には、製品群、顧客群ごとのスループット
の分析が必要になる。 スループット総額と品目別
のボトルネック工程の時間当たりスループット金
額が、戦略立案上のカギになる。
これらの情報に基づいて、TOC の思考プロセ
スを行う。 ワークショップで問題を話し合い、問
題をツリ1化し、制約条件・ボトルネックを見つ
け、改革の計画を立案していくのである(図31
第二は問題解決の段階である。 ロジステイタス
改革では、何より顧客が原点になる。 顧客の要求
に応じてDBR を回す。 消費財では製品在庫を適
正に維持する。 生産財は顧客に応じたBTo
at--ιzoEq)・MTO(ζ 呉mgoE 耳)が
必要だ。 すなわちロジステイタスの課題を解決す
るには製造・調達まで瀕らなければならない。
TOC ロジステイタスのDBR は「De 巳ぞ再三」
「A( 〉20EFq)」「C( わ。 呂田uoロOロ円)」「P
9222 ヨ自門)」を備えている。 このDBR 群が
改革を成功に導く。
「DBRD( ロ色話ミ)」は消費財の場合は中心
になる部分だ。 顧客の要求する時間・場所に要求
されたものを適切に納入する活動は、物流の改革
そのものである。 拠点構造、在庫の持ち方、作業
方法、輸配送のあり方を検討していく。
(〉ω招自立可)」は必要な製品在庫の「DBRlA
...セタメント化
.市場顧生客産特特性性分分析析
置点'績に対しての
.製晶
思噌ブロtス
限置の盤理
.ビジネスユニット化
問題寝業
eSBU毎の分析つ口
対車思難に関して
問題顧客
(売土スループット)
{経営者曹理者W町k/Shop) 口問題製畠
対量事業
対車顧客に対して
日対車製品
{対醤車業製管畠理に者倒・W町k/ShOp) 改革値先
して順序づけ
Step-2 対車顧客
(股針生産曾韓合同Work/ShOp)
スループット分析D の明確化I1l1lRlblllltllilliザ
現状群細分析
.製畠別スループット把担
i 対立解消図
.ボトルネッヲ工程時間担廻U
ecc円)
.ポトIvネッヲ時間当た口
スループット鱒出(CPM)
標眉の
定置鈎抱掴
Step-3 Step-4
課題発組の手順
Step-l
図3
ロジスティヲスとDBR (見込み集産の場合)
印璽E
口BR-D
顧客自裏1Ilに置づいて
納期通りに
関連い草く
安いコストで物を届け
る方法を確立する
阻害要求に対応するために
理適1;>在庫の持ち方
生産計聞のあり方を
確立する
図4
団盃面
迅週に組み立てるた曲に
車適草部畠の持百万
部品加工計画のあ口方
を確立言る
迅速に組み立てるために
置適忽部品の持ち方
llIl dil 加工針薗のあり方
在確立する
JUNE2003 LOGI-BIZ 26
物擁管理の需踊とは大遣い
特集ロジステイクスの手引き
設定と、その補充生産システムの構築である。 D
BRIDで要求される製品在庫は作り方との関係で
決まる。 組立方式の適切な選択が必要だ。 コンベ
ア方式、混流ライン化、セル方式などを検討する。
「DBRlC( のoヨ司0202 円)」は部品製造のあり方
である。 ここに本来のDBR の考え方を適用する。
同時に、部品の量・繰返し性を考慮し生産のあり
方を考えるべきである。
「DBRtp 宅322Eg 門)」は部品生産、組立
てに同期化していなければならない。 同時にバッ
ファl在庫のあり方を検討し、調達のあり方を検
討していく(図4)。 ロジステイタス改革は物流
生産に止まらず、販売のあり方、流通チャネルの
あり方まで総合的に関連してくる。 それに合わせ
て情報システムの検討が不可欠になる。
企守スループットで僻値する
ロジステイタスが正しく企業戦略に合致し、有
効に機能しているかの評価は容易ではない。 一般
にロジステイタスの評価は顧客納期遵守率、欠品
率、在庫回転率、クレーム率、誤出荷率、一件当
りのピッキング時間などで評価される。
TOC ではこれらの他に、以下のような評価を
加える。
-スループット綴(売上'原材料費)
一人当りスループット
(スループット/従業員数)
・制約資源での時間当りスループyト
OEH 業務費用
-R01(税前利益/在庫)
・生産性(スループット/業務費用)
各企業で行われている財務会計をベl スにした
従来の管理会計では、企業の意思決定の際に間違
った判断を下してしまうことがある。 在庫を作っ
て製造原価が安くなっても、それが売れ残ってし
まえば企業は儲からない。 高額な設備は外注より
商くなる。 だからといって社内生産を止めるとい
う判断が正しいとは限らない。
スループットには、全体の業絞の評価と個別の
怠思決定の評価の二つの使い方がある。 いずれの
場合も、スループットの導入は従来の原価計算に
よる判断を見復すことにつながるのである。
-TOC はSCM の武器になる
全体最適化の実現にはTOC の考え方がどうし
ても必要となる。 TOC の基本的な手法は、あら
ゆる分野で役立つ。 当然、ロジステイタスの確立
のためにも、TOC の考え方、手法は優れたガイ
ドとなる。 SCM の確立はロジステイタスが前徒
である。 そしてロジステイタス確立のためにはTO
Cが不可欠なのである。
5CM の必要性が叫ばれて久しい。 しかし実際
に効果あるものを作り上げている企業の例は少な
い。 その理由は、部門開会社聞が従来と変わら
ず個別段適に走っているからである。 全体最適と
は何かを追求してみよう。 そのための制約条件を
明らかにしてみよう。 それを関係者で共通認議し、
重点を絞って改革してみよう。 そのガイドをTO
C が示している。
TOC の考え方・手法は簡潔である。 巷には数
多くの経営管思手法が氾濫している。 しかし本質
を突いた考え方はTOC に凝縮されている。 筆者
はそう確信している。 因
こばやし・しゅんいち側日本能率也会コンサ
ルテインク· TOC 推進室長、シ二アコンザル
タント.担当役員。 昭和43年入社以来生産
管理物流ロジスティヲスの分野で約80社
の企業を指導.平成7年より4年間、イヲリア
の子会社で社長を勤めた.日本能率協会グルー
プで推進しているToe の筏術の責任者として
活躍中。
27 lOG 卜BIZ JUNE2卯3
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