ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年1号
keyperson
独SAPニルス・ヘルツバーグ産業ソリューション担当COO

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

1 JANUARY 2006 KEYPERSON アダプティブが突破口に ――なぜ今、サプライチェーンのビ ジビリティ(可視化)が注目されて いるのか。
「アダプティブ(適応力のある)な サプライチェーンネットワークを作る ためだ。
従来の計画モデルはそろそ ろ終焉に近づいている。
現在のビジ ネス環境は以前と比べて予測がしに くくなってきている。
市場の変化は 急激で、自然災害やテロ、政府規制 の動向などは予測できない。
予測で きないものに対し、どう計画の精度 を高めていくかが課題になっている」 「その突破口となるのがアダプティ ブ・モデルだ。
特徴は需要主導型で あること。
そしてリアルタイムだ。
昨 日の出来事ではなく、今この瞬間に 起きていることを把握する 。
それに Mプロジェクトがムダに終わったこと を意味しているのだろうか。
「ERPの導入はトランザクション のプロセスを明確にした。
それまでの 企業情報システムは個々の部門でバ ラバラのアプリケーションを使ってい たため、ある部門で発生した事象が、 的確な数字で他の部門に伝わらなか った。
ERPによって一つひとつの 取引の数字が、他部門でもリアルタ イムで把握できるようになった。
受 発注や出荷など、取引にまつわる全 ての情報が明確になった。
その次の ステップとなるのが、一般的なトラ ンザクションだけでなく、個々の在 庫の動きまで把握するビジビリティ というステップだ。
つまりERPが ビジビリティの土台 を作ったのだ」 ――変化に迅速に反応するためには、 具体的に何をすればいいのか。
「アダプティブ・サプライチェーン には三つの原理がある。
一つ目の原 理は需給ネットワーク全体の可視化 だ。
パートナーとのコラボレーション が上手く機能しているかどうかを把 握し、それを分析し、問題があれば 改善する」 「二つ目の原理は、需要と供給の同 期化だ。
それに失敗している典型例 が米国の自動車メーカーだろう。
顧 客の求めていない製品を大量に生産 し、在庫がだぶついてしまっている。
その結果、無理な値引 きを強いられ るという悪循環に陥っている」 「三つ目の原理は、アダプティブな ロジスティクス・ネットワークだ。
注 文サイクル時間は、ますます短くな っている。
しかもミスは許されない。
万が一、ミスが起きた時にもそれに 迅速に対応するためにはビジビリテ ィと共に、ロジスティクスの応答性が必要になる」 「そこではRFIDが有効なツール になり得る。
そうした考え方をいち 早く採り入れている先進的企業の一 つが米P&Gだ。
P&Gは顧客主導 型サプライチェーンが今後の経営の 成否を握るという発想に立って 、我々 と共にRFIDを活用したアダプテ ィブなロジスティクスの実現に取り 組んでいる」 よってパートナー企業とのビジネスネ ットワークとして構成される?生態 系(エコシステム)〞を最適化する。
起こった事象や変化に迅速に対応す ることで、最も的確に製品を顧客に 届けるわけだ」 「自動車のナビゲーションシステム に例えると、従来型の計画モデルは 道順を示すだけだった。
道路の混雑 や迂回路については何も示してはく れなかった。
しかし実際に車を運転 するには道順だけでは不十分だ。
希 望の時間に目的地にたどりつくには、 状況を把握するためのビジビリティ と、それに対する迅速な反応が必要 に なる」 ――従来型の計画モデルが破綻した ということは、ERPの導入をはじ め多くの企業が過去一〇年にわたっ て取り組んできたIT主導型のSC THEME 独SAP ニルス・ヘルツバーグ 産業ソリューション担当COO 「従来型の計画モデルは破綻した」 データ分析を駆使した需要予測に基づく中央集権型の計画モデルはも はや時代遅れだ。
それに代わって、市場の最前線にいる現場が自律的に 環境変化に反応する「アダプティブ・モデル」が現在、指向されている。
そこではロジスティクスの応答性が重要なカギを握る。
(聞き手・大矢昌浩)

購読案内広告案内