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63 JANUARY 2006
する。 後者は故障する頻度が修理数を決め、修理期間をカバーする分
だけの部品を持てば良く、その数は製品サポート体制で決まる。
限られたコストで最大の稼働率を実現するために、信頼性、安全性、
整備性を目指した設計による製品の最適化、支援性解析に基づく製品
サポートの最適化、さらにライフサイクル設計による製品運用の最適
化が必要である。
?航空機のパーツロジスティクス
海上自衛隊の川上智氏からSPLを支える基本技術体系であるパーツ
の「類識別」(特性判別)についての考え方が紹介された。
航空機のパーツは連邦法の下、民間航空機には連邦航空局(FAA)
の認可により、また軍用航空機には国防ロジスティクス局(DLA)の
制度により類識別するシステムがあり、各航空機メーカーならびに航
空機ユーザーはこれに基づくナンバーを取得し、用いている。
航空機に限らず、パーツの管理には「類識別」(特性判別)の考えが
必要である。 パーツ一つ一つについて、目的、機能、価格、扱い単位、
供給元、耐用年数、MTTR(平均修理期間)、MTBF(故障率)、整
備範囲(交換/修理)、図面、需給所用期間などの特性を明確にして、
運用段階でのロジスティクスの要素を準備しなければならない。
?サービスパーツコンサルティング
日本能率協会コンサルティング(JMAC)のシニアコンサルタント
である小林俊一氏から、自動車のサービスパーツに関するコンサルテ
ィング事例の紹介があった。
真の顧客満足はアフターセールスで実現するのであり、顧客の信頼
獲得にはサービスパーツマネジメントが必須。 サービス水準の向上と、
サービスコスト低減を図らねばならない。 自動車をはじめ精密機器、建
設機械などの各メーカーはいずれも品種が多く、ライフサイクルが長
いために管理に苦労している。
欧州の自動車メーカーを対象としたSPL改革の事例では、サービス
パーツ一つ一つの特性をP/Qマトリックスという手法で解析。 それぞ
れの特性に合致した管理を行い、在庫を大幅に圧縮しながらサービス
水準を向上させることができた。
また、中国の自動車メーカーの事例ではサービスパーツの将来ビジ
ョンを策定した。 そこではサプライチェーンの全体構造を概観し、物
的流通システムと情報ネットワークシステムの一体化を図り、SPLの
運用実態を評価するサービスパーツKPIを設定した。 これにより、アフ
ターサービスのよさを消費者にアピールすることを狙いとしたパーツ供
給システムの実現に取り組んでいる。
11月からフォーラムの新シリーズがスタートしている。 12月のフォ
ーラムでは、「生産・物流システム設計」と題して文教大学助教授の石
井信明氏に話を聞いた。 次回は2006年1月18日(水)に、?シャープ
の事業戦略とSCM、?携帯情報通信端末の開発と将来展望、と題し
てシャープ株式会社顧問の坂井陽一氏(前常務取締役・IT戦略企画
室長[CIO])にお話いただくことになっている。 好調な液晶テレビ・
アクオス、定評のあるザウルスの背景にある、選択と集中の事業戦略、
それを支えるSCMを学ぶ。
フォーラムは年間計画に基づいて運営しているが、単月のみの参加
も可能。 1回の参加費は6,000円。 参加希望などの問い合わせは以下の
事務局(sole_consult@jmac.co.jp)まで。
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE日本支部フォーラムの報告
SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス
技術やロジスティクス・マネジメントに関する活発な意見交換、議論
を行い、会員相互の啓発に努めている。 今回は新シリーズの第1回とし
て開催したパネルディスカッション「サービスパーツロジスティクス」
の内容を紹介する。
?サービスパーツロジスティクス(SPL)とは
冒頭、司会を務めた伝田晴久支部長から、サービスパーツロジステ
ィクス(SPL)を研究する意義について、次のような解説がなされた。
自動車、航空機、事務機器などライフの長い、複雑な構造を有する
システム製品のアベイラビリティ(稼働率)を保証するには、修理用
部品、交換部品、消耗品などのサービスパーツを必要に応じてタイム
リーに、しかも妥当なコストで供給しなければならない。 新製品を世
に出す時は、製品の供給と同タイミングでサービスパーツを適所に配
置する(初期配備)必要がある。
サービスパーツの供給は設計開発段階から計画する必要があり、供
給活動は長期にわたってなされるので、このサービスパーツについての
研究は非常に幅広いものになり、ロジスティクスの本質を理解するの
に適している。 今後ますますサービスの質の向上が求められ、一方で
コスト低減を厳しく求められるので、このSPL研究は重要である。 今
日はコンピュータ、航空機、自動車のSPLについて、それぞれの立場
から問題提起をしていただく。
?コンピュータのSPL
支部会員の瀬良光弘氏から、コンピュータを対象としたSPLの特長
について説明があった。 企業業務の中核を担うコンピュータのような
システムや機器は、高いアベイラビリティを保持しなければならない。
システムの二重化などがそれを保持する仕組みとされるが、ハードウ
エアは故障から逃れることはできない。 故障が発生すると一刻も早く
修復しなければならないが、部品がなければハードウエアの障害は直
らない。 システムユーザーにとって部品は「保険」、部品補給送達の良
し悪しは後継機種選定の重要な要素である。
あるメーカーでは、この重要なサービスパーツについて、統合的な
製品開発プロセスを設けて対応している。 これは製品開発チームと製
品のライフサイクルマネジメントチームとの協業で、製品戦略、販売
戦略、サービスプランに基づいて、狙いとするシステムのアベイラビリ
ティを維持するための部品供給計画を策定するのである。
この中で保守部品の再利用は重要な役割を演じている。 大切なこと
は均衡の取れたパフォーマンスを発揮することで、サービス性(パー
ツのアベイラビリティ、納入時間)、在庫(適正在庫基準)、コスト(生
産性、プロセス改革)の3つを指標として管理している。
?設計におけるSPL
次に、富士重工業の富田博之氏から航空機のサービスパーツについ
て解説があった。 航空機の部品の特徴は、構成が複雑で、製造上高い
精度を要求され、しかも多種少量生産品であるということである。 従
って、単価は高く、調達期間は長く、メーカーが限定される。 航空機
メーカーは、限られたコストで安全性を確保しつつ、最大の稼働率を
得る補給品の種類と数のリコメンデーションを求められている。
航空機の部品は、(故障時に交換する)非修理品目と、(故障の都度
修理する)修理品目に分けられ、前者は故障する頻度が部品数を決定
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