ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2006年1号
メディア批評
コマーシャルが日常生活に忍びこむ不気味テレビを覆う有力スポンサーの広告戦略

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 47 JANUARY 2006 いま、メディアの大スポンサーとなったト ヨタ自動車のことは、絶対と言っていいほど 批判的には書けない。
それどころか、テレビ のドラマに「タイアップ広告」的に踏み込む 例がふえているという。
谷村智康の『CM化するニッポン』(WAV E出版)は、広告の現場からの内部レポート だが、そこにはSMAPの木村拓哉が主人公 となって話題を呼んだ『エンジン』が、いわ ばトヨタが?買い取ったドラマ〞だと書いて ある。
キムタク演じるレーサーは、本格的な レーシングドラマという割りにはレースシー ンが少なく、なぜ、レーシングドライバーに したのか、疑問に思われた。
しかし、谷村によれば、これはあくまでも レーサーが主人公でなければならなかった。
トヨタが自社のイメージアップのために「作 らせた」ドラマだったからである。
では、な ぜ、レースシーンが少なかったのか? もし、そのシーンのリアリティを増そうと すれば、他のメーカーのマシンも写さなけれ ばならないし、トヨタ傘下の富士スピードウ ェイ以外のサーキットも舞台としなければな らなくなる。
それでは、トヨタがスポンサー になる意味がなくなるので、もともと、レー スシーンの撮影など不可能だったのだ、と谷 村は解く。
これまでは、トヨタがスポンサーの『太陽 にほえろ!』で、石原裕次郎たち警察が使う自動車はすべてトヨタ製で、悪役の犯人が使 う車はライバル会社の中古車といった色分け だった。
しかし、もっと貪欲にトヨタは自社 宣伝を始めたわけである。
『エンジン』のヒロインが小雪なのも偶然で はないという。
「数ある人気女優の中から彼女が選ばれたの は、演出の都合で決まったことではありませ ん。
小雪はトヨタ・アイシスのCMキャラク ターです。
トヨタがメインスポンサーのドラ マだから、主役はトヨタのCMに出ている木 村拓哉でなければならなかったし、ヒロイン はやはりトヨタのCMに出演している小雪で なければならなかったのです」 このルールはきびしく、三菱電機提供の 『テレビ探偵団』にレギュラー出演していた山 瀬まみが、他の家電メーカーのCMに出演し たため、番組を降板させられた例があるとか。
しかし、人気タレントほど多くのCMに出 ているから、話はさらにややこしくなってく る 。
それで、二〇〇五年の春に黒木瞳が日立 のプラズマテレビのイメージキャラクターに なった時には、各局のドラマ担当プロデュー サーが頭を抱えた。
いま、ドラマ枠には、日立を含む、松下、 東芝、ソニーなどがプラズマや液晶テレビの CMを大量に流している。
だから、日立の?専 属〞となった黒木は、東芝、ソニー、松下が スポンサーのドラマには登場できなくなった のである。
ライバル企業のCMタレントと共 演させることもできない。
その分、CM契約 金は破格値だったそうだが、そんなに企業の 縛りが強いなら、ドラマの際に、たとえば黒 木には日立の印、他のタレントにはその企業 の印をわかりやすくつけたらどうだろうか。
NHKでは逆に、「他人の営業に関する広告 の放送をしてはならない」という放送法によ って、おかしなことが出てくる。
山口百恵が歌ってヒットした『プレイバッ クPart2』には「真っ赤なポルシェ」と いう歌詞があるが、商品名は出さないという ことで「真っ赤な車」と変えさせられた。
最近ではaikoの歌に「テトラポット」 という商品名が出てくるとして、NHKでは 歌えないという議論になった。
結局、商品名 が「テトラポッド」で、歌詞の方は「テトラ ポット」だからと、そのまま歌われたという が、唖然とするような話である。
『CM化するニッポン』を読むと、いささか ならず恐ろしくなってくる。
コマーシャルが日常生活に忍びこむ不気味 テレビを覆う有力スポンサーの広告戦略 ・ ・

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