ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年2号
海外Report
欧州3PL会議訪問記

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2006 82 欧州各地から一六〇人が出席 会議のキックオフとなる司会者あいさつは 刺激的だった。
本業はコンサルタントだとい う長身で細身の司会者は壇上に上がると、「国 際物流の行方」と題名のついた一〇枚ほどの スライドを使ってテンポよく説明を始めた。
世 界地図をITの活用度で四つに色分けして現 状を示し、それが今日の各国の経済力と比例 していると語った。
しかし今後は大きく様変 わりする。
中でも人口の多い中国やインドと いった国々は、世界経済を牽引するようにな るだ ろう、と続けた。
「二〇〇五年には中国経済がイギリスを追い 越すことになる。
二〇一五年にはインドがイ タリアを抜き去る。
二〇三〇年にはロシアが ドイツを、またインドが日本を追い越すだろ う。
そして遂に二〇四〇年には中国経済がア メリカを凌駕することになるかもしれない」 現在、世界人口の八%を擁し、世界のGD Pの三〇%以上を稼ぎ出すヨーロッパは何を すべきか。
ヨーロッパの経済において、ロジ スティクス産業はGDPの一〇%を生み出し、 一〇〇〇万人を雇用している。
しかし業界は 今日 、高速道路や鉄道の慢性的な渋滞や燃料 高、環境対策など難しい問題に直面している。
それらの内なる問題を解決しながら、世界レ ベルで起こりつつある経済の変動にどうやっ て対応していくのか。
「その答えを、この会議を通して皆さんと一 緒に見つけて行きたい」とスピーチを結んだ。
なかなか見事な手際だった。
司会者のあいさ つは通常、その日の新聞ネタを披露したり、 進行の説明で終わることが多い。
高をくくっ ていたため、まだ十分に目 覚めていない頭に カツを入れられたように感じた。
前年に引き続き、二〇〇五年十月下旬にロ ンドンで開かれたヨーロッパ3PL会議(主 催・eyefortransport )に出席した。
会議の 責任者であるクリス・セイナー氏によると、参 加は前年とほぼ同じ一六〇人ほど。
「ちょうど 同時期にアメリカ西海岸でCSCMP(旧C LM)の年次総会が開催されていることを考 えると悪くない数字」だという。
欧州3PL会議訪問記 ロンドンで開かれたヨーロッパ3PL会議に参加した。
前年に続いて二回 目の参加となるこの会議で、ヨーロッパ各国から集まった一〇〇人を超す参 加者とともに、業界の最新トレンドに耳を傾けた。
大手荷主による物流コン ペの詳細に関する発表や、荷主倒産後もロジスティクス業務を提供し続けた 3PL企業の話など興味深い内容が多かった。
83 FEBRUARY 2006 eyefortransport はロンドンに本社を置き、 3PL会議をはじめとするロジスティクス関 連の各種会議の開催と、インターネットと紙 媒体による会員向けの情報提供サービスを主 業としている。
今年の参加者名簿に目を通したところ、日 本通運という社名があり、現地社員と思われ る横文字の名前が記載されていた。
参加の動 機などを聞こうと思い、二日間探してみたが 当人を見つけ出すことはできなかった。
参加 者は3PL企業や荷主企業、ソフトベンダー やコンサルティング企業など様々。
参加者の 声を集約すると「ケーススタディやパネルデ ィ スカッションを中心とした会議内容は、実 用的で役に立ち、参加数が多くないこともネ ットワーク作りには有効だ」といったところ だ(囲み記事参照)。
会議の最初のプレゼンテーションは合併前 のエクセルのCEOで、二つ目はドイツポストにおいてDHLの国際宅配部門を率いるC EOだった。
買収話で業界の注目が集まる二 社の経営陣の登場ということで、聴衆の関心 は高まった。
面白かったのはエクセルの発表のほうだっ た。
ジョンソン・エンド・ジョンソンやトイ ザラスなどの荷主との具体的な取り組みを交 えて3PL業務を紹介した。
ドイツポストの場合、国際宅配部門という こともあり、荷主との取り組みというより、配 達時間をいかに短くするのかという技術的な ことや、どんなサービスメニューをそろえる のかといった話に終始した。
また合併前とい うこともあり、両社とも合併話には触れず、 Q&Aもなく壇上を降りた。
ジレットに学ぶ物流コンペ 初日のプレゼンテーションで一番興味を引 かれたのは、ジレットによる「物流コンペの 実践」だった。
ジレットがスペイン・ポルト ガル地域で物流コンペを開き、新たに3PL 企業を選び出すまでの過程を詳細に報告した。
ジレット・イベリアは二〇〇五年に入り、 在庫と輸送費の削減、それに構内作業の効率 化を目指して物流コンペを開き、六カ月にわ たる選考の末に、エクセルに外注することに決めた。
RFP(提案依頼書)の提出に応じ た一八社の3 PL企業を八社に絞り、さらに 面接や現場施設の見学などを経て四社に絞っ た。
最後に各社のプレゼンテーションを聞い た後で、エクセルに決めたという。
「エクセルは、社の評価基準で一番高く、し かも動きの速い日用雑貨のロジスティクス業 務に関するノウハウをすでに多く蓄えていた」 とジレットの担当者は話す。
その後、業務内 容を話し合い、KPI(重要業績評価指標) を決めて、業務を立ち上げたという。
それまで二カ所あった自社倉庫を閉鎖 して、 8:50 司会者あいさつ 「国際物流の行方」 9:00 エクセル   「3PL企業と国際化の波」 9:30 ドイツポスト 「DPWNの国際宅配戦略」 10:00 ジレット・イベリア 「物流コンペの実践」 10:00〜11:00 コーヒーブレイク 11:00 パネルディスカッション「荷主が3PLに期待するもの」 参加者:IBM、ジレット、In Kind Direct 11:45 パネルディスカッション「3PLの付加価値サービス」 参加者:メンロ、ウィンカントン、バックスグローバル 12:30〜13:30 昼食会 13:30 パネルディスカッション「最先端技術をロジスティクスに生かす」 参加者:TNTロジスティクス、SAP、アクセンチュア 14:15 Aviance 「ロジスティクスにおける人材活用」 14:45 パネルディスカッション 「物流コラボレーション」 参加者:Yara、Teleroute Integrated Solutions、EFT 15:15〜15:45 コーヒーブレイク 15:45〜16:45 ラウンドテーブル セッションA 16:45〜17:45 ラウンドテーブル セッションB 17:45〜19:30 ネットワーキング・パーティー 9:00 Dachser 「ドイツを基点とした物流戦略」 9:30 キャタピラ・ロジスティクス 「荷主倒産後も続く物流業務」 10:00 パネルディスカッション「4PL業務に対する需要」 参加者:クーネ+ナーゲル、シュナイダー、Selectron Reinhard 10:45〜11:15 コーヒーブレイク 11:15 パネルディスカッション 「EU拡大を商機につなげるには」 参加者:ゲフコ、キャタピラ・ロジスティクス、UPS 12:00 キャップジェミニ 「第10回欧州3PL調査」 12:20 パネルディスカッション「3PL市場の未来」 参加者:APL、バックスグローバル、メンロ 〈会議終了〉 ヨーロッパ3PL会議の日程 2005年10月26日 10月27日 エクセルが複数の荷主用に使っている物流セ ンターに在庫を移し、そこで一元管理する体 制に改めた。
さらに自社で行っていたピッキ ング作業をエクセルに外注することで、作業 費を固定費から変動費へと変えることに成功 した。
小売り店舗への配送については、エク セルの物流センターから、各地のエクセルの デポへ横もち輸送した後、トレーラーを使い、 配送ルートごとに届ける。
ジレットの担当者はこう強調した。
「大切な のは3PL企業のパフォーマンスを図ること ではなく、われ われの顧客の満足度を正確に 把握することだ。
KPIレポートを受け取る だけでなく、上位十社のお客さん(届け先) に関しては毎月、ジレットとエクセルの担当 者が顔を合わせて話し合いをしている」 顧客満足度向上の一環として、スペインの 大手量販店向けには、別のロジスティクス体 制を組んで対応している。
エクセルのセンタ ーを出た製品は、各地のデポに横もちをかけ ることなく、量販店のセンターに搬入する。
そ こで自動仕分けされた製品を、エクセルのト レーラーで店舗へと配送する。
「よく言わ れることだが、物流コンペをロジ スティクス部門のプロジェクトと捉えては上 手くいかない。
ロジスティクス部門の最大の 仕事は、物流コンペを全社的な取り組みとな るように社内を説得して回ることだ」と発表 を締めくくった。
「欧州のM&Aが頭痛のタネ」 これまでいろいろなプレゼンテーションを 見てきたが、これだけ率直な発表は記憶にな い。
ほとんどのプレゼンテーションは、聞い た後で多くの疑問が残ったままで消化不良の 状態に陥るのだが、その疑問の数が極端に少 ない。
聞いていてすっきりと頭に入ってくる 内容だった。
昼食はコーヒーブレークの間をぬって、参 加者やスピーカーを見つけては声をかけて歩 いた。
その中で面白いと思ったのは、先述の セイナー氏の話。
「セミナーを主催する立場で一番頭が痛いの は、M&A(企業 の買収・合併)がどんどん 進んでいく現状だ。
企業数が少なくなれば、 スピーカー選びに骨が折れる。
ドイツポスト によるエクセルの買収が決まれば、今年のよ うに、別々のスピーカーとして呼ぶことはで きなくなる」 世界の中でもヨーロッパのロジスティクス 業界は変化のスピードが速い。
会議の参加か らこの原稿を書くまでの間、パネルディスカ ッションに参加していたバックスグローバル はシェンカーを子会社に持つドイチェバーン の傘下に入ったし、TNTはTNTロジステ ィクスの売却を決めた。
小規模のM&Aはま さ に日常茶飯事であり、一時たりとも目を離 せないというのが大袈裟ではないほどだ。
二日目の発表で面白かったのは、キャタピ ラ・ロジスティクスの子会社でイギリスに本 社を置くXパーツによる「荷主倒産後も続く 物流業務」という発表だった。
荷主であるMGローバーが先ごろに経営破 たんした後も、補修部品のロジスティクス業 務を引き続き行っているという異色の内容だ った。
確かに自動車メーカーが破たんしたと しても車の寿命は十年以上あるのだから、補 FEBRUARY 2006 84 中国・深 から参加  会議に参加したのは、われわれの顧客が多く参加 するからだ。
当社は、中国の深 東部にある国際コン テナターミナルで、一九九四年から稼働している。
現在 の顧客としては、エクセルやUPS、APLなどがある。
そうした既存のお客さんにあいさつするだけでなく、 会議の合間に、新規のお客さんにわれわれのターミナ ルを売り込むという目的もある。
アレン・アウポン氏 塩田国際コンテナターミナル 営業部長 フランス・パリから参加  業界の最新トレンドを知るには、この種の会議は 非常に役に立つ。
物流施設の賃貸業であるプロロジ スの顧客は、3PL業者をはじめ小売業、製造業も 含む。
当社は、この会議のスポンサーではあるけれど、 リサ・グラハム氏 プロロジス リサーチ担当 会議 参加者たちの声 修部品は必要となる。
MGローバー破たん後、 荷主不在のままでXパーツが主導権を握り約 八〇〇社のサプライヤーから部品を集め、デ ィーラーなど九〇〇カ所に届けている。
荷主企業という要を欠いた後でも業務が支 障なく続いているのはなぜか。
親会社である キャタピラ・ロジスティクスがフォードやS APなどと共同で補修部品のロジスティクス 業務の雛形を作っており、それをコスト面で も精度の面でも進化させてきたからだという。
「世界で通用するロジスティクスの現場を維持 するには、最新のITと優れ た人材の融合に 尽きる」と担当者は説明する。
続いて4PL(フォースパーティ・ロジス ティクス)に関する白熱したパネルディスカ ッションがあった。
4PLというのは比較的 に新しい概念で、実体が十分に伴っていない 分、人々を熱く語らせるのだろう。
十年ほど 前、日本に3PLという言葉が入ってきたときにも、似たような熱い議論があったことを 思い出しながら聴いていた。
さて、今回で二回目の参加ということで、 ヨーロッパ3PL会議の勝手もだ いぶわかっ てきた。
ヨーロッパでは、他にも同様にレベ ルの高い会議がいくつかあるという。
二〇〇 六年は新しい会議を開拓しようか。
そう思い ながら会議場をあとにした。
( 本誌欧州特派員 横田増生 ) 85 FEBRUARY 2006 ※ eyefortransport が主催する各種の会議やネットに よるニューズレターの申し込みは、http://www. eyefortransport.com/ から行うことができる。
スイス・バーゼルから参加  この会議に出席するのは去年に続いて二回目とな る。
この手の会議は、業界内でのネットワーク作りに 有効だ。
将来仕事につながりそうな荷主企業を探す という実際的な効用もあるが、日ごろ付き合いのない 同業者と顔を合わせて情報交換ができるのがいい。
親会社のドイツポストは、次々と大型M&A(企業の 合併・買収)を仕掛けているので、いつだれと一緒に働 くようになるかわからないからだ。
ただし、日程とし ては一日に詰め込んでもらったほうが助かる。
移動を 含めて三日とられると、通常の業務が滞ってしまう。
オリバー・ランドグラフ氏 DHLソリューションズ 上級副社長 スイス・チューリヒから参加  
釘庁咾魯▲瓮螢に本社を置くコンサルティング会 社で、私はそのスイス事務所に勤めている。
私の専門 は3PL業者に対するコンサルティング業務だ。
会議 を聞いていて興味深かったのは、3PL各社が自ら抱 える問題をかなり率直に語っていることだ。
ドイツポ ストとエクセルは大きくなる経営母体への危惧の念 を持っているようだし、倒産したイギリスの自動車メ ーカーのローバーの部品業務を行っていたキャット・ロ ジスティクスが、倒産後も業務を続けているという発 表も面白かった。
クリスチャン・ナッチェル氏 EDS情報ビジネス部門 アメリカ・テネシーから参加  われわれはアメリカ南部に本社を置くIT企業 だ。
ITシステムへの投資まで手が回らない中小のト ラック企業を対象に、様々なサービスを提供してい る。
この会議に参加したのは今回が初めて。
現在注 目を集めている中国のロジスティクス市場に関する 報告となると、インターネットでも簡単に見つける ことができるが、われわれが次の市場と考えている ヨーロッパとなると案外情報が少ない。
そこで実際に 参加してみた。
これまでの発表で面白かったのは、エ クセルとドイツポストによる、キーノートスピーチだ。
CSCMPの年次総会にも参加したことがあるが、 アカデミックすぎてついていけないところがあった。
それに比べ、この会議の方が地に足が着いている感 じがする。
イギリス・ロンドンから参加  私は、イギリスの調査会社でSCMに関するレポー トを書いている。
二日間の発表を見て、初めて耳にす るような内容のものはなかったが、それはわれわれが 日ごろ書いているレポートが現状に沿っていることが 確認できたということにもなる。
また会議の構成も 発表一辺倒ではなく、参加者同士と昼食や夕食をと もにすることでお互いを知ることができるのが、この 会議のいいところだ。
ロンドン市内にオフィスがあるの で、次回の参加も検討したい。
私は自分の判断で出席することを決めた。
だから参 加費も払っている。
今回の会議で仕入れた情報をも とにリサーチを行い、それをマーケティングにまでつな げていきたい。
クレッグ・フラー氏 トランス・ファンド社 
達釘 マラビカ・スリナス氏 フロスト&サリバン社 
咤達優▲淵螢好

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