ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年2号
特集
物流企業番付 平成18年版 郵船航空サービス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2006 16 アセットはいらない ――近年の業績拡大をどう自己分析していますか。
「当社自身のシェアも多少は伸びていますが、航空 貨物市場自体の規模拡大の影響のほうが大きいでし ょうね。
グローバル化の恩恵を受けている」 ――日本の航空フォワーダー市場は、御社のほか日本 通運と近鉄エクスプレスの大手三社で半分程度のシェ アを握っています。
そうした環境下で売上規模の拡大 とシェアでは、どちらを重視しますか。
「一番は利益です。
売上規模やシェアももちろん重 要ですが、わずかなシェアの違いが競争に大きな影響 を与えるということは、実際にはほとんどありません。
むしろフォワーダーというビジネスは、マーケットシ ェアがたとえ一%であっても、しっかりと荷主をつか んでいれば、やっていける商売なん です。
スケールメ リットが確保できないと商売が成り立たない輸送キャ リアの世界とは全く違います」 「実際、我々を含めた大手三社以外の約五〇%のシェ アには、たくさんのフォワーダーがひしめいている。
こ のことがフォワーダーというビジネスの特性をよく表 しているように思います。
それほど規模がなくても商 売が成り立っている。
アセット(資産)もいらない。
何より人のビジネスなんです」 ――今後も淘汰は進みそうにはない? 「少なくとも日系フォワーダーについては、それほど 急速に淘汰が進むとは考えられません。
ただし、その 先の将来となると話は別です。
情報システムなどのイ ンフラ整備やセキュリティの確保に、巨額の投資 が必 要になれば規模の小さなところは不利になる」 ――既に欧米市場では、インテグレーターがフォワー ダーを吸収する方向で動いています。
日本だけが特殊 なのでしょうか。
「確かに日本の特殊性も影響しているのかも知れま せん。
もともと日本の産業界は買収や吸収という手法 にあまり馴染みがない。
日本でフォワーダーを買収し ても人や商権が付いてくるかは分からない。
それに対 して欧米は、会社も人もM&Aに慣れている。
他の会 社に買収されたからという理由で転職する人は日本に 比べて少ない。
商権 もたいてい付いてくる。
また欧米 市場はスケールを活かして仕入れ値を叩くという傾向 が強い」 ――そこは日本も一緒でしょう。
「いや、日本は欧米ほどゴリゴリはやらない。
それ と、近年のM&Aは仕掛け人の顔ぶれが決まっていま す。
株式公開によって資金を調達した一部の大手企 業が支配欲を見せているだけで、業界再編の必然性が あってM&Aが進んでいるとは思えない。
欧米は身売 りするほうも完全に資本の論理で動いています。
つま り高い値段をつける会社があるから身売りしている。
安 ければ売らない、ということだと思います」 ――それでもインテグレーターと市場で競合する場面 は増えているのでしょう。
「徐々に増えています。
実際、インテグレーターの シェアは伸びていますし、彼らの扱う荷物のサイズも 従来のスモールパッケージから重い荷物へと拡がって いる。
我々と重なってきている」 ――フォワーダー同士の競争とインテグレーターとの 競争は勝手が違いますか。
「基本的なところは変わりません。
ただし私から見 ると、インテグレーターのマインドはフォワーダーよ り輸送キャリアに近い。
販売戦略も自分たちの持つア セット、オペレーションを背景にしている。
実際、イ ンテグレーターは自分たちのアセットが厚い部分は強 日本郵船系の航空フォワーダーとして自動車 部品やハイテク産業に強みを持つ。
生産の海外 シフトや販売のグローバル化で急増する航空貨 物を取り込み、順調に売り上げを伸ばしている。
競合と比較しても収益性に優れ、財務体質も健 全だ。
(聞き手・大矢昌浩) 注目企業トップが語る強さの秘訣 郵船航空サービス ――日系企業のグローバル化で追い風続く 総合4位 総合7位 総合11位 総合15位 矢野俊一 社長 「インテグレーターとは 事業モデルが違う」

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