ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年3号
大学院体験記
理論を実践で身に付ける

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2006 84 理論を実践で身に付ける 日本 米国 アメリカの大学院では、理論を応用して学ぶ実践型のクラス が充実しているようです。
企業から依頼を受けて問題を解決す るプロジェクトでは、学生といえども甘えは許されません。
プ ロ並みのコンサルティングプロジェクトとはどのようなものな のでしょうか。
(本誌編集部) 期末の追い込みで目の回るような日々 S> ゆきちゃん、こんにちは。
日本の大学はそろそろ期末だと思 うけど、調子はどう? Y> どうにかこうにかやっているよ。
多摩大大学院に入学してか らあっという間にもうすぐ1年。
後期の授業は2月4日までだか ら、今はラストスパートをかけて頑張っているところ。
各科目 のグループプレゼンやレポートで大忙し。
大学院のない平日の 夜と日曜日はもっぱらレポートの作成に追われているよ。
レポートのスタイルは様々で、HBS(ハーバード・ビジネ ス・スクール)で使われているケーススタディやNewsweekの 特集など、英語の資料を4、5ケース読んだ上でテーマに沿った 課題を提出するものや、実際にある企業の経営者になったつも りでその会社が取るべき戦略を考えるものなど。
ちょっと考え 込むとあっという間に何時間も経っているから、ふと時計を見 て驚くこともしばしば。
授業時間内に課題や作業が終わってし まうクラスもあるから少し助かっているけどね。
さわちゃんも相変わらず忙しいの? S> 秋学期が無事に終了してほっとしたのも束の間。
1カ月の冬 休みもあっという間に過ぎて、1月3日から冬学期がスタート。
また忙しい毎日が始まったよ。
OSUはクォーター制(1年4学期制)をとっていて、1つの授 業は10週間単位。
今学期登録したのは、工学2つとビジネス2 つの計4クラス。
今学期に入ってから、毎週出される課題に追 われて工学部棟のラボで過ごす時間が多くなってきた。
工学のクラスは「オペレーションリサーチ」とArenaという ソフトを使った「シミュレーション」。
ビジネスのクラスは、企 業のコンサルティングプロジェクトを行う「フィールドプロブ レムズ・イン・ロジスティクス」とケーススタディ中心の「ロ ジスティクス・ディシジョン・メイキング」。
第4 回 Sawako Yuki 多摩大学大学院のレポート資料 Sawako オハイオ州立大学大学院 ビジネスロジスティクス工学修士課程 Sawakoが2学期目に履修しているクラス 科目名 ディスクリートシステム・シミュレーション 概要 テキスト 形態 課題 備考 シミュレーションソフトArenaを使用した実践 型のクラス。
テキスト付属のアカデミック版ソフ トを使ってモデルを構築し、その結果を統計の 視点で解析する。
また、シミュレーション、エク セルのVBA(ビジュアルベーシック)について の講義もある。
工学部学生との混合クラス Simulation with Arena 3rd edition (W. David Kelton, Randall P. Sadowski, David T. Sturrock著) レクチャー(講義)とラボ(研究室での実技) グループプロジェクト、モデル構築テスト(指定 時間内にモデルを構築)、統計テスト ディスクリートシステム(離散型システム)とは、 イベント(例:製造工程で部品が到着する、去る、 機械が故障するなど)の変化が特定した時間に 起こるシステムのこと。
対してコンティニュアス システムとはシステムが連続的に変化をするこ と(例:石油など) 85 MARCH 2006 工学のクラスは、読み物が多かった1学期目と違って、実際 に手を使ってシミュレーションを行うのが今学期の特徴。
エラ ーを何度も出しながらモデルを構築している。
ビジネスのクラ スでは企業とディスカッションしながらプロジェクトを進めて いくのが大変。
でも創り上げていくことを実感しながら充実し た日々を送っているよ。
Y> 面白そう! サプライチェーンの学問的な部分を、机上の勉 強だけでなく実際にシミュレーションできるクラスがあるとい うのは素晴らしいね。
多摩大大学院にはまだそのようなクラス がないけれど、これから必要になってくると思う。
ブック・ス マート(頭でっかち)にならないためにもね。
企業の担当者の様々な事例を聞いて学ぶだけでなく、それを 実際にケースやシチュエーションで試してみるという体験は今 後すごく役に立つはずだよね。
企業としても、そこで学生の意 見や構築されたモデルを事業に反映できれば、まさに学問と産 業が近づいていくと思うし、学生のモチベーションも向上して いくと思う。
ロジスティクスやサプライチェーンは日本の学生 にとってまだまだ馴染みのない分野。
だから、そのような交流 の仕組みをつくることは、人材育成のためにも、その分野の発 展のためにも、非常に大切なことだよね。
S> うん、本当にそう思う。
それからね、今学期の目標として、 これまでに学んだ領域を新しいクラスで応用して発展させよう と思っているの。
例えば、1学期目で履修したリニアプログラミ ングの知識は、オペレーションリサーチを勉強するための基礎 となっているし、コンサルティングプロジェクトのクラスにも適 用することができると考えているんだ。
Y> なるほど。
そういう面で、クォーター制というのはとてもい いね。
科目ごとに、基礎から実践、応用へと発展して、最後に は1本の線になるような構成だね。
多摩大大学院も、次の4月か らカリキュラムが大幅に変更になるみたい。
1年2学期制は変わ らないけれど、隔週授業になる関係で科目の選択肢が広がり、 履修できる科目数が増えるのだとか。
具体的な内容はそのうち またメールするね。
ところでコンサルティングのプロジェクトとは興味深いけど、 いったいどんなことをするの? プロ顔負けのコンサル実践クラス S> 学校のプロジェクトとは言っても、かなり本格的。
12月に各 企業からのRFP(Request For Proposal:依頼書)が届いて、 その中から興味のあるプロジェクトに手を挙げてチームを編成 していくところから始まったの。
クラス全体が集まる授業は最 Sawako Yuki Yuki Sawako 複雑性理論 (Complexity Theory)、 PERT(Program Evaluation and Technique)やCPM (Critical Path Method)などのネットワーク問題、整数計画 法、在庫理論、非線形計画法などを学んだう えで調査を行う。
工学部学生との混合クラス Introduction to Operations Research, 8th edition (Frederick. S. Hillier, Gerald. J. Lieberman著) レクチャー グループプロジェクト、ジャーナルペーパー (論文) ジャーナルペーパーとは、学会などに出版す る目的で作成されるペーパーのこと。
Abstract, Introduction, Keywords, Conclusion (Summary), Citation (参考文 献)などの項目を含む。
科目名 概要 テキスト 形態 課題 備考 科目名 概要 テキスト 形態 課題 科目名 概 要 テ キ ス ト 形態 課題 オペレーション・リサーチ 1学期目で習得したロジスティクスの基礎を 応用。
ケーススタディメソッド(事例ごとの 方法論)を用い、ディスカッション、分析を 行う。
グループプロジェクトでは、企業が抱 えるロジスティクスの問題、例えば在庫管理 政策、購買機能管理、返品管理、サプライチ ェーンリスクなどからトピック1つを選択し 詳細な調査を行う。
学部生との混合クラス テキストではなく、HBS(ハーバード・ビ ジネス・スクール)の使用教材を中心とした コースパケット( プリント類) を使用。
Excel社、P&G、Zara社などの事例が盛り 込まれている ディスカッション 中間テスト、グループプロジェクト、ジャー ナルペーパー ロジスティクス・ディシジョンメイキング (意思決定) 本格的な実践クラス。
グループがコンサルテ ィングチームとなり、担当企業の問題解決に 取り組む。
クライアント企業は、Campbell 社、Hexion社、Honda Transmission社、 Schneider/Exel社。
クライアントと密接な コミュニケーションをとり、必要なデータの 収集や分析を行う。
MBAコース学生との混 合クラス なし プロジェクトマネジメントのワークショップ の他、担当教授(Dr.Zinn Walter)とグルー プ単位での打ち合わせを週1回。
中間と最終 のクラス発表を経て、クライアントへの最終 プレゼンを行う クライアントとの(電話)会議、クラスでの 中間・最終発表、クライアントへの最終プレ ゼン フィールド・プロブレムズ・イン・ロジスティクス MARCH 2006 86 初と中間と最終の3回しかなく、それ以外は週1回教授とチュ ートリアル(個別指導)を行うという珍しい形態。
企業にProject Charter(Proposal)を提出してゴール(最終目的)やスコー プ(対象領域)、方法、期間を確定し、必要なデータを送って もらってこちらで分析するのがプロジェクトの一般的な流れ。
この間クラスで中間発表があったばかりなんだけど、他のプ ロジェクトの内容もなかなか面白いものだったよ。
それぞれの グループがどのように問題を解決していくのか、1カ月後の最 終発表が楽しみ。
私のチームは、北米で最も規模の大きいTL(Truckload)プ ライベートキャリア1位のSchneider Nationalと12月に正式に DHLの一員となったExelの双方とプロジェクトを行っている。
NDA(Non Disclosure Agreement:秘匿協定)を結んだから 詳しく話せないのが残念。
定期的にカンファレンスコール(企 業とのミーティング)を行い、進捗管理をしながら10週間とい う短期間で完結できるようにプロジェクトを進めているよ。
Y> NDAまで締結するとは驚き。
まさに大学院が企業のシンクタ ンク的役割を果たしているという感じだね。
私が会社で実務上、 顧客である法人企業の情報やデータの守秘義務があるのと同じ でしょ。
大学院のプロジェクトでそこまで本格的にできるのは 素晴らしいね。
日本にそういう仕組みがあるのかは分からない けれど、これから増えていくのかな。
だとすれば、ルールの整 備など考えるべきことがたくさんあるね。
ところでケーススタディのクラスでは、どんなオリジナルコ ースパケットを使っているの? S> ゆきちゃんと同じく、私もHBSを使っている。
授業の進め 方は、ZaraやExelなどのケースを読んで、問題に対するアクシ ョンをディスカッションしていくスタイル。
限られた時間と情 報の中でどう決断するか、そしてその根拠をいかに伝達するか がポイントだね。
グループで行う課題では、ミーティングのた めのスケジュール調整や合意に達するまでのプロセスは人数が 増えるほど大変。
でも、個人プロジェクトよりもグループプロ ジェクトのほうが創り上げる実感が持てるから私は好き。
自分 の得意分野か否かにより、自分のスタンス(イニシアチィブを とるか、追随するか)を変えることができるから、内容によっ てフレキシブルに対応できるしね。
これらの課題1つ1つが異 なるウェイトで最終的な成績に反映されてくるんだ。
Y> アメリカの大学院では、成績はどのように評価されるの? こちらはご存知のとおり、参加率や積極性、レポート、試験、 日々の課題提出度をもとに、優、良、可、不可の4段階評価。
S> こちらはGPAという評価システムで、その計算式の基にな Sawako Yuki Yuki 「私たちは、米国内に位置する13の 陸運キャリアを駆使し、オーシャン キャリアとも密接にかかわりを持ち ながら仕事を進めている。
日々のオ ペレーションでは、これらキャリア との交渉を電話で行っている。
 リミテッドは3つのリージョナル DC(Distribution Center)を、ニ ュージャージー(東海岸)、ロサン ゼルス(西海岸)、ここオハイオ州 コロンバス(中東部)に持っている。
5年前、コロンバスDCでは海外から のシッピングを100%扱っていた。
現在でも海外から来る商品の80%は コロンバスDCから全米にある倉庫 や3PLに委託する倉庫に出荷され ている。
主な取引国は、中国、香港、 スリランカなど。
   Sawakoの課外活動報告 リミテッド・ロジスティクス・サービス にインタビュー  
錬咤佞離咼献優好好ールには、 いろいろな学生団体があり、その活 動を通して企業の方と接触する機会 が持てる。
私が所属するTransportation and Logistics Association が主催する セミナーに先日、リミテッド・ロジ スティクス・サービスのシニアマネ ジャーがゲストスピーカーとして参加。
プレゼン内容と私がした質問への答 えは次の通り。
ゲストスピーカー:リミテッド・ロ ジスティクス・サービス 
味味咼 ショナルロジスティクス シニアマ ネジャー シャーン・ニューツ氏 現在、3、4年がかりのITプロジ ェクト"Project Insight"の最中。
リ ミテッドはさまざまなブランドを吸 収してきた経緯があり、ブランドご とに異なるシステムを使用していた。
それらを統合し、ERPシステムは SAP、ロジスティクスプラニング はマニュジスティックスのシステム にまとめているところだ。
システム 統合で期待している効果は、サプラ イパイプラインを通じた商品のビジ ビリティ(可視性)向上だ。
これは 我が社の人材配置計画、輸送計画の 予測、生産の予測に役立つと考えて いる。
現段階では我が社の回収物流 は決して効率的とは言えないが、シ ステム統合によりこうした部分も改 善されると期待している」 Sawako 87 MARCH 2006 るのはA、B、C、Dの4段階にそれぞれ+と−を加えた計11 段階評価。
最高はAで最低はD−。
これを数字に置き換えて、 単位数をかけ、平均した結果がG P A (Grade Pointed Average)。
ちなみに満点は4.0点。
学校にもよるけど、成績が優秀な学生は大抵、GPAの点数 を履歴書に書いて学業が優れていることをアピールするんだ。
奨学金の応募資格で「GPA3.5以上」といった制限があった り、GPAがある一定の基準以上だと自動車保険が安くなった り、成績がいいと意外なところで得をすることもあるみたい。
以前ニュースで「子供を賢く育てましょう。
すると色々なとこ ろでセービングがあります」という特集を見た時は、びっくり した。
Y> 面白い仕組みがあるんだね。
さすがアメリカ。
大学や大学院 が充実した教育機関であるためにはお金がかかると思うけれど、 アメリカの教育機関が資金調達をする仕組みは興味深い。
ロジスティクスの授業ではないけれど、別の授業のグループ ワークで「日本の経済・企業の構造における問題の本質とその 処方箋」というテーマに取り組んでいるところ。
ここにはもち ろん教育の大切さや、今後の日本の教育のあるべき姿とシステ ム、今後急速に進む労働人口減の処方箋としての移民推奨の 提案が出てくるのだけれど、いずれにしても教育は重要なテー マだと思うんだ。
人材の流動化という観点では教育の場でも官・民・国を超 えた流動化が必要。
日本の対応が遅れている移民対策にしても、 世界中から大学や大学院に優秀な人材が集まってきて、卒業後 も国に居続けられる仕組みが整うといいなと思う。
アメリカは そういう仕組みがしっかりしているからね。
S> 確かに、OSUでは修士や博士になればなるほど留学生の比 率が高くなっていると思う。
特に博士号過程にはTA(ティー チング・アシスタント)などとして学校のために働き、授業料 を免除してもらい、Stipendといわれるお給料で生活している 学生が多い。
そういう点でも外国人を受け入れる体制が整って いると言えるね。
外国人の学費が高くても人材が入ってくる魅力と仕組み、選 択や機会の幅を、日本なりのやり方で取り入れられるといいよ ね。
(以下、次号に続く) 日本の大学に在学中、米国ワシントン州ゴンザガ 大学、中国北京大学に短期留学。
大学卒業後、日 本通運に入社。
通関士を取得。
米国・サンフラン シスコ支店で1年間研修。
帰国後、メーカー物流 に携わる傍ら、昨年4月、多摩大学大学院経営情 報学研究科修士課程ロジスティクスコースに入学。
小林由季(こばやし・ゆき) オハイオ州立大学マーケティング・ロジスティクス 専攻を卒業後、OTEC, Inc. (米国)、フレームワ ークス(日本)で働いた経験を持つ。
フレームワー クスでは、新工場・倉庫建設プロジェクトにかか わった。
昨年9月、オハイオ州立大学大学院ビジネ スロジスティクス工学修士課程に入学。
岩田佐和子(いわた・さわこ) Sawako Yuki プロジェクトのグループミーティング Yuki シミュレーションのグループワーク

購読案内広告案内