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それまで地域別・機能別に分かれていた物流子
会社九社を合併した。 情報システムやオペレーシ
ョンは各地でバラバラだった。 経営の仕組みをゼ
ロベースで見直した。 WMSを活用した現場の?見える化〞とオペレーションの標準化によって、
年間数十億円規模のコスト削減を実現した。
物流子会社九社を合併
現場の実態が見えない――そのことに松下ロジ
スティクスの経営陣は悩まされていた。 同社は二
〇〇一年一〇月に松下電器産業の物流子会社九
社を合併する形で発足した。 工場から自社物流
拠点までの生産物流(一次物流)を担う松下物
流、そして自社物流拠点から顧客までの販売物
流(二次物流)を手掛ける地域別物流子会社の
松下ロジスティクスマネジメント八社を統合した
(
図1)。
松下ロジの年商は九二〇億円(二〇〇五年三
月期)。 従業員数約一七〇〇人。 保管倉庫面積は
国内だけで延べ約六五万平方メートルに上る。 そ
のうち約半分が自社物件だ。 配送網は自社車両
三五〇台を含む一二〇〇台のトラックを使って全
国約一二〇拠点をネットワークしている。
この家電業界最大の物流インフラを、グループ
に対するさらなる貢献とともに、松下グループ以
外の荷主にも開放して3PLとして自立させるこ
とが、子会社を統合した目的だった。 外販比率は
それまでの一〇%を三〇%に拡大する目標が掲げ
られた。
そのためには割高だった労働条件を一般の物流
専業者と競争できるレベルまで改善する必要があ
り、労使関係に大きくメスを入れた。 合併に先立
ち早期退職制度で計六二四人の人員削減を実施。
合併後は九社バラバラだった労働条件を一本化し
た。 それまで松下物流はメーカーの労働条件、地
域子会社は販社の子会社という位置付けだったた
め流通業に準じた労働条件になっていた。 それを
物流業のモデルに統一した。 これと並行して各社
に計九つあった労働組合も一つに集約された。
次の課題がマネジメントの統合だった。 合併に
よって法人格としては一つの会社になったものの、
経営の実態は依然として九社に分断されたままだ
った。 入出庫や在庫管理などのオペレーションは、
各現場が独自に決めた従来通りのやり方をそのま
ま踏襲していた。 現場によって作業品質や効率に
大きなバラツキがあるのは明らかだった。
しかし具体的にオペレーションのどこが割高な
のか。 なぜそうなっているのか。 判断する材料が
なかった。 現場の実績情報は翌月も半ばにならな
いと経営陣まで届かない。 しかも報告されるのは月締めの結果だけ。 現場ごとの効率や品質を比較
する共通の尺度がない。 それぞれの日々の仕事の
採算も把握できない。
グループとして見た時の松下は国内最大手の家
電メーカーであると同時に、電気部品メーカーと
しても実質的な最大手で、また大手情報システム
ベンダーの顔も持っている。 それを反映して、松
下ロジの扱う物流領域も材料や部品の調達から
完成品の納品まで極めて多岐に渡っている。 管理
方法も多様にならざるを得ない。
同じ松下電器でも事業部によって、荷物の形
状やハンドリングをはじめアウトソーシングの範
囲、情報システムの仕組みまで全く異なる。 一方
WMSを活用して現場を“見える化”
全国統合した物流子会社の経営再構築
2005年11月2日、東京・新宿で「マネジメントセミナー
『企業経営とロジスティクス』」が開催された(主催:ヤマトシ
ステム開発、共催:フレームワークス、AIT、IBMビジネスコ
ンサルティングサービス、日本IBM)。 同セミナーの内容を元
に弊誌が作成した松下電器産業のケーススタディとフレームワ
ークス・田中純夫社長の講演抄録を報告する。
《情報システム》松下電器産業
Case Study
43 MARCH 2006
で合併までの物流子会社九社は、各社独自でホ
ストコンピュータを持ち、それに付随するサブシ
ステムを整備して、それぞれの荷主に対応してい
た。
それを合併した松下ロジの情報システムは、基
幹系のホストコンピュータが二つの系列に分かれ、
拠点別、機能別に九〇ものサブシステムが全国に
乱立している状態だった。 各現場の実績を地域ご
とにまとめて本社で集約するまでには、何度もバ
ッチ処理を繰り返す必要があり、大変な手間と時
間がかかった。
ERPの再構築やサプライチェーン計画ソフト
の導入による需要予測精度の強化など、松下電
器は在庫削減を狙ったSCMを推進するため、比
較的早い時期からシステム整備を進めてきた。 し
かし、それらは主に上流系のシステムで、実行形
と呼ばれる物流システムは後回しにされた格好だ
った。
その結果、経営と現場の間で情報が分断されて
いた。 松下ロジの経営に支障をきたすだけでなく、
松下グループのSCMにとっても大きな課題だっ
た。
ABCでボトルネックを見極める
松下ロジの河上英二社長は、過去にとらわれず
業務の仕組みをゼロベースで新たに構築すること
で、子会社九社の経営統合を進めようという意向
を持っていた。 そのためには、しがらみのない社
外の人間が必要だ。 その相談相手となったのは松
下電器で物流ソリューションを手掛ける現パナソ
ニックソリューション社ソリューション本部第2
グループの増森毅参事兼SCMソリューションチ
ームリーダーだった。
増森参事は「現場の実態が見えない限り経営
などできないという、トップの悩みは相当に深刻
だった。 それでもやるべきことはハッキリしてい
た。 可視化、見える化だ。 見えるというのは数字
に置き換えられるということ。 拠点での効率や品
質を比較できるレベルまで数値化する。 経営が一
気通貫で見えるようにならなければ、松下グルー
プのサプライチェーンには貢献できない。 ボトル
ネックも分からない。 意見は一致していた」と振
り返る。
全ての現場のオペレーション情報を共有する統
合データベースと、在庫のステータスをリアルタ
イムで把握できる物流情報システムを構築する必
要があった。 調達から納品までのロジスティクス
全体をカバーするシステムだ。 「LMS(ロジス
テイクス・マネジメント・システム)」と名付け
た。
ただし、システム構築に取りかかる前に、松下ロジは会社としての目標を定め、それを実現する
ための業務モデルを設計しなければならない。 松
下ロジの役員を中心としたメンバーで会社のある
べき姿の検討に入った。 同時に増森参事たちは現
場の実態調査を行うことにした。
拠点を視察し、なぜそのオペレーションなのか。
どういう運用ルールなのか。 訊ねて回った。 しか
し、「前からそうしている」、「そう言われたからや
っている」と誰もオペレーションの妥当性を説明
できない。 手の打ちようがなかった。
ボトルネックを見出そうと簡易的なABC(活
動基準原価計算)分析を実施することにした。 部
品を扱う物流センターにストップウォッチとビデ
パナソニックソリューション社
ソリューション本部第2グループ
の増森毅参事兼SCMソリュー
ションチームリーダー
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オレコーダーを持ち込み、オペレーションを観察
した。 処理量に対して、どれだけのアクティビテ
ィが投入されているのかを数値化し、ボトルネッ
クについての仮説を立てる。 それを元に、現場メンバーとのミーティングを何度も繰り返しながら
新しいオペレーションの叩き台を作っていった。
全国のオペレーションを標準化
役員が検討した松下ロジの「グランドデザイ
ン」は二〇〇二年七月にまとまった。 これに合わ
せて全社的な改革プロジェクトチームが組織され
た。 従来の地域別組織を改め、輸送部会、業務
改革部会、商品管理部会などの機能別に十二の
分科会を設置した。 社外からも社長直轄のオブザ
ーバー的な立場で、増森参事ら数人が改革に参
加することになった。
各分科会ではグランドデザインを具体的な行動
計画に落とし込んでいった。 業務モデルを設計す
るだけでなく、改革後の組織体制、責任と権限、
運用ルールまでをそれぞれの分科会で検討し、他
の分科会とのトレードオフを調整した。 こうして
二カ月後の九月に具体的な改革項目を掲げた「革
新計画」が完成した。 これを受けて一〇月から本
格的な取り組みがスタートした。
そのうち庫内作業の効率化では、?予測に基づ
く庫内作業人員配置と進捗管理、?庫内作業品
質・生産性の向上、?庫内マネジメントシステム
の導入などが、改革項目として設定された。 それ
をサポートする情報システムの構築は、WMS
(倉庫管理システム)パッケージを活用すること
にした。 大阪の南港にWMSのサーバーを設置。
国内四七カ所の主要拠点と松下のイントラネット
回線で結ぶ形で、全国の現場の状況をリアルタイ
ムで把握できる体制を整えた。
パッケージは基幹システムとして利用するER
Pの物流モジュールではなく、専門ベンダーのフ
レームワークス製を選んだ。 物流管理システムは
常に修正が発生する。 しかしERPのモジュール
は修正のたびに、かなりの額のカスタマイズ費用
が発生してしまう。 そのため基幹系と実行系は切
り離して考えた。
フレームワークス製を選んだのは、「どのパッ
ケージもカタログに書かれている機能自体には大
差ない。 しかしフレームワークスのWMSは様々
なテンプレートが用意されていて運用の柔軟性が
高い。 松下ロジのように多様な荷物を扱う現場に
馴染みやすいと評価した」と増森参事はいう。
WMSに加え、現場にはバーコード・ハンディ
ターミナルと車載端末を配備した。 これによって
現場の管理方法は一変した。 ABCに必要なオ
ペレーションのデータは作業端末で自動的に捕捉できる。 これを元に誰でも効率良く簡単に作業す
ることのできるオペレーション方法を設計し、拠
点ごとにまちまちだった業務プロセスを統一した。
検品のミス率は〇・〇〇〇一九%を達成した。
翌日の人員配置や配車も事前出荷情報(AS
N)などに基づいて前もって計画できるようにな
った。 日々の作業の進捗状況はパソコン上で、ひ
と目で分かる。 作業に遅れが出ているフロアがあ
る場合には、他のフロアの人員を振り分けるなど
の柔軟な対応が可能になった。 さらに拠点ごとの
効率や生産性、品質をベンチマークしたり、生産
性の推移やプロセス別の課題を分析してボトルネ
ックを発見するなど、日々の現場管理を超えたレ
実在庫やオペレーションの“見える化”を進めた
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ベルの庫内マネジメントが実現した。
もっともWMSの稼働は二〇〇四年一〇月、改
革のスタートから数えて丸二年が経過していた。
社内の風土を改革し、各部門の意見を摺り合わせるのには時間がかかった。 オペレーションを標
準化するには、「在庫引当」や「格納」といった
各プロセスの言葉の定義やルールを明確にしなけ
ればならない。 それを決めるのはシステムではな
く、人だ。
現場で使っている定義には、その現場のオペレ
ーション事情が反映されている。 変更を強いられ
るのは抵抗がある。 「今回のプロジェクトに限ら
ず松下のSCMが難しいのは、たくさん事業部が
あること。 その数だけ意思決定者がいる。 一番手
間取ったのはそうした意思決定者との意見調整だ
った」と増森参事は振り返る。
改革プロジェクトの効果
一連の改革には、具体的な金額は公表していな
いものの大規模な投資も伴った。 しかし、それに
見合う成果は得られたようだ。 新体制に移行した
初年度となる二〇〇五年度の結果集計はこれか
らだが、導入直後で既に一六%以上のオペレーシ
ョンコスト低減という効果が出ている。 現場作業
のパート社員比率は七〜八ポイント向上した。 今
年度末時点では一四ポイント以上の向上を見込
んでいる。
改革を進めていく過程で現場の意識も変わって
きた。 現場スタッフやパート社員が自発的に改善
のアイデアを提案するようになった。 全社的にオ
ペレーションを標準化する取り組みを通して、自
分たちが何の仕事をしているのか認識するように
なった。
新システムの稼働によって、情報システムのメ
ンテナンス関連費用も大幅に削減できる。 その結
果、トータルの人件費は一七%程度圧縮できそう
だ。 見える化による在庫の削減効果を除いても、
物流現場のコストダウンが進んできている。 今後
はこれが毎年効いてくる。
同社の改革はまだ第一フェーズを終えたばかり
だ。 さらなる生産性向上と品質向上のためには絶
えざる革新が必要だという判断から、一時的なプ
ロジェクトではなく恒常的な組織として、新たに
業務プロセス革新本部を立ち上げた。 SCMロジ
スティクス領域における最適業務プロセスの追求
がその役割だ。 次のステップではTMS(輸送管
理システム)とWMSとの連携強化などが検討さ
れている(
図2)。
一連の改革によって競争力が強化されたことで、
外販比率は既に二五%近くまで上昇した。 最終
的には外販比率三〇%を実現することが当面のゴールになる。 それと並んで親会社向け事業にもまだまだ拡大
の余地がある。 松下電器の連結売上高は八兆七
〇〇〇億円にも上る。 その物流費は決算書の販
売管理費に記載された運送保管料だけでも一四
〇〇億円以上。 生産物流を始め、決算書に記載
されていない費用を含めれば実際にはその何倍も
の物流費が発生している。
そのうち松下ロジがシェアしているのは、八〇
〇億円程度に過ぎない。 そのほかは一般の物流専
業者に流れているのが現状だ。 その刈り取りに成
功すれば松下ロジは日本屈指の大手物流企業に
変身することになる。
(
大矢昌浩)
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トップから変わろう!
情報と物流が分からないと経営はできない。 この
ところ機会があるたびに、そう主張しています。 経営
と物流の接点はどこにあるのか。 もちろん物流コスト
は利益に直結するのだから立派な経営問題です。 し
かし従来は物流の生産性が上がったとか、ピッキン
グのミスが減ったと言われても、経営者にはなかなか
実感が湧かなかった。 物流が、あまりにも現場に近
いところにあり過ぎたせいだと思います。
一般的な企業の経営を単純化すると、戦略を打ち
出す経営層、その実現をマネジメントする管理層、現
場を担う実務層の三つの層に分けられると思います。
また物流は生産と販売を結びつける一種のライフラ
インとして位置付けることができます(
図1)。
従来の物流システムというのは、このうちの実務
層を支援しているだけでした。 在庫管理や運輸管理
といっても、あくまでコントロールであってマネジメ
ントと言えるものではありませんでした。 ライフライ
ンを下から支えているに過ぎなかった。 それを経営者
が見ても何のことなのかまったくわからない。 その結
果、物流は担当者にお任せになってしまっていた。
本来は実務層に対して、その上に現場と経営を結
ぶ管理層がある。 しかし、そこをカバーするかたちで
当社は九八年に現在の主力商品となっている「iWMS
(インテリジェント・ウエアハウス・マネジメント・
システム)」という製品を開発しました。 ちょっと視
点を変えてみたわけです。 それが評価されたことによ
って、当社はこの分野で初めて株式公開することが
できたのだと考えています。
今やモノの動きを正しく把握して指示することが
できないとビジネスの流れに乗っていけなくなってい
ます。 他人任せではなく、経営者が自らロジスティ
クス改革の音頭をとっていく必要があります。 経営
者自身が現場に立つ必要はなくても、CLO(チー
フ・ロジスティクス・オフィサー)と呼ばれるような
軍師を育てていく必要がある。 既に欧米ではCLO
の経験が、CEOになるための前提条件となってい
ます。
歴史を振り返ると日本でも、かつてはCLOが活
躍した時代がありました。 戦国時代には竹中半兵衛
や黒田官兵衛といった軍師が大将の側に控え、配下
に忍者軍団を抱えて情報と物流を統括していました。
そうした日本の良き伝統を改めて取り戻す必要があ
ります。 そのために、まずは「トップから変わろう!
物流は経営の基盤である」と呼びかけています。
その一方で物流に携わっている人も、自分の行動
が経営にどんな意味をもたらしているのかを理解しな
ければなりません。 とりわけキャッシュフローと物流
をどう結び付けていくのかは大きなテーマです。 そこをうまく紐解くことができれば、物流から出発して経
営の階段を上っていく人達が、もっと出てくるよう
になると思います。
会社が儲かる、儲からないというレベルの話と物
流は、どこでつながるのか。 そのポイントとなるのが
キャッシュフローです。 極論すれば、ロジスティクス
戦略とは、在庫回転率を上げてキャッシュフローを
改善することだと言っても過言ではありません。
これまでキャッシュフローの改善とは、手形や現金、
売掛金を管理することだと一般に考えられてきまし
た。 しかし在庫を、棚卸資産を上手に管理すること
によっても同じ効果の得られることが、はっきりして
きました。 その手法として自分の会社が抱えている
在庫と買掛金、そして売掛金のバランスを見る「キ
広域在庫とキャッシュフロー経営
経営と物流現場が分断されたままでは、今日のビジネス環
境を生き抜くことはできない。 両者を結びつけるカギがキャ
ッシュフローだ。 優れた在庫管理はキャッシュフローの改善
をもたらす。 そのために、まずは物流の「見える化」に着手
する必要がある。
田中純夫フレームワークス社長
講演
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ャッシュ・ギャップ・マネジメント」と呼ばれるテク
ニックも開発されています。
キャッシュギャップは通常、「(在庫回転日数+売
掛金回収日数)―
買掛金支払日数」で計算します。
自分の持っている在庫日数に、販売後に売掛金が現
金化されるまでの日数を足した数字から、在庫の購
入資金を実際に支払うまでの日数を引く。 この数字
が小さくなるほど運転資金は少なくて済む。
キャッシュギャップがマイナスになると、運転資金
が全く不要になるだけでなく、その分だけ自由に使
えるお金が生まれます。 キャッシュギャップがマイナ
ス一〇日であれば、在庫一〇日分の手元資金が生ま
れる。 それを使って有利な調達をしたり、新たな拠
点を作ったりできる。
これに対してキャッシュギャップがプラスになって
いる会社は、まず資金の調達に力を使わなくてはな
らない。 一例として家電量販店の大手三社のキャッ
シュギャップを分析してみたところ、ある量販店のキ
ャッシュギャップがマイナス三四日だったのに対し、
他の二社はプラス一五日とプラス三五日でした。 同
じ業界のライバル企業でもキャッシュギャップには大
きな開きがある。 これは大きな差別化要因です。
そして従来は売掛金の回収を早めたり、手形を使
って買掛金の支払いを引き延ばしたりすることで資
金繰りを改善していたわけですが、キャッシュギャッ
プは「(在庫回転日数+売掛金回収日数)―
買掛金
支払日数」ですから、同じ効果が在庫回転を早める
ことでも実現できる。 つまり在庫削減によって財務
を改善できるわけです。
「見える化」から始める
こうして物流を現場からだけでなく、経営側から
もアプローチしていく。 そのために何から手を付けれ
ば良いのか。 初級編は実在庫のリアル化です。 まず
は経営者が実在庫を把握する必要がある。 あらゆる
ものを「見える化」する。
カネボウの事件でもそうだったように、経営者が実
態を把握しないでいると、現場では不正が始まって
しまうことさえあり得ます。 そうなれば改革どころか
法律の問題です。 アメリカのSOX法にならって日
本でも近く内部統制法が施行されます。 「見える化」
はもはや必須条件です。
そして中級編。 次に現場を変える。 オペレーショ
ンを改善して生産性を上げ、誤出荷やミスを減らす。
本来自分たちでやるべきでない仕事はアウトソースす
る。 物流センターを集約したり、DC(保管型セン
ター)をTC(通過型センター)に移行させる。 こ
の辺りの施策は、極論するとお金で買うことができ
る。 システム投資をしても在庫削減やコスト削減な
どの即効性が得られる領域です。
さらに上級編では、在庫の所有権の問題を考える。
売れる直前まで在庫を所有しない。 VMI(ベンダ
ー主導型在庫管理)の導入を検討する。 それと並行
して在庫を拠点単位ではなく広域で管理していく。 サ
プライチェーンのネットワークを最適化する。 そのた
めに中央倉庫やTCなどに分散した拠点間で情報の
同期化をとるといった整備が必要になります。
こうした上級編ともなると、施策に高度な戦略性
が伴ってきます。 しかも環境は常に変化する。 完成
はない。 それでも、物流を経営の基盤として位置付
け、それによって他社と差別化をしていくためにはそ
こまで進む必要がある。 当社もまた従来のWMSの
領域を超えて、そうした取り組みを支援していきた
いと考えています。 (談)
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