ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年3号
特集
インターネット物流 韓国のラストワンマイル事情

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2006 24 韓国の宅配便市場はeコマースの発展とともに急拡大して きた。
その勢いは一向に衰えを見せない。
IT先進国は物流IT でも日本を一歩リード。
宅配便各社はあの手この手で他社と の差別化を図っている。
日本とはひと味違う、お隣韓国の宅 配事情を現地取材した。
(森泉友恵) 3 百貨店に迫るネットショッピング市場 「ウリホームショッピング」、「GS eShop.com 」、「Gマ ーケット」――ソウルを地下鉄で移動する間、駅構内 や車内でインターネットショッピングの広告が随分目 につく。
道を歩けば宅配便各社の配送車両がせわしな く行き交い、ビル街の路地裏には配送車両が駐停車 している。
三年ぶりにソウルを訪れた私には見慣れな い光景だった。
「とにかく最近は何でもインターネットで買う。
カ メラを買うにしても、店舗で品物を見て、そこでは買 わずに家に帰ってきてからインターネットで注文する。
その方が安いし便利だからね。
ちょっとした小物でも インターネットで買うよ。
妻にス トッキングを買って あげたこともある」と、韓国の友人は言う。
実際ここ数年、韓国のネットショッピング市場は著 しく伸びている。
韓国政府の資料「主要流通業者の 売上動向と見通し」によると、二〇〇五年のネットシ ョッピングモールの市場規模は前年比二七%増の一 〇兆四〇〇〇億ウォン(約一兆二六〇〇億円)に上 った。
〇六年も二六%増の一三兆二〇〇〇億ウォン (約一兆六〇〇〇億円)が予想されている。
小売業態別の売上額で見ると、一位の量販店(二 三兆六〇〇〇億ウォン)、二位の百貨店(一七兆三〇 〇〇億ウォン)に次ぐ規模だ。
韓国の小売市場規模 は全体で推定一五〇兆ウォン。
ネットショッピングが 七%を占 めている計算になる。
一方、経済産業省が 発表した日本のB to CのEC市場規模は〇四年で五 兆六〇〇〇億円。
商業統計によれば同年の小売市場 規模は一三三兆円だから、構成比は四%だ。
ネット通販の普及と歩調を合わせて宅配便の市場 規模も拡大している。
〇五年は前年比二四%増の二 兆六〇〇〇億ウォン(約三二〇〇億円)。
〇六年は三 〇%増の三兆四〇〇〇億ウォン(約四一〇〇億円)の 見込みだ。
年間取扱数量は〇六年に五億個を突破す ることが予想されている。
宅配大手CJGLSのイ・ドンス経営戦略チーム 課長は「もはや宅配が無くて は、通販ビジネスは成り 立たない。
逆にネット通販やテレビ通販がなければ 我々の成長もなかった。
卵が先か鶏が先かの話ではな いが、韓国では宅配と無店舗販売が大切なパートナー としてともに成長してきた」と語る。
韓国の宅配便は、もともとは日本がお手本だった。
九二年、大韓航空や韓進海運を傘下に持つ韓進グル ープが韓国で最初の宅配便を開始した。
訪日経験の 豊富な当時の会長が、日本の宅配市場を参考に事業 化に踏み切った。
ほぼ時期を同じ くして現代グループ も、やはり日本をよく知る創業者一族の肝いりで現代 物流(後に現代宅配に社名変更)を設立した。
二社に加え、元国営会社で陸運最大手の大韓通運 も九〇年代前半に宅配事業をスタートした。
この三社 が?先発組〞だ。
大韓通運もまた業務提携を結んで いる日本通運から、宅配便の運営ノウハウを学んでい る。
ただし日本のヤマト運輸が郵便小包に代わるC to Cの消費者物流サービスとして「宅急便」を開発 したのとは異なり、韓国の宅配便は通販業者向けのB to C物流の担い手として設計 されている。
先発組三社の宅配事業は、カタログ通販やテレビシ ョッピングをはじめとする無店舗販売の伸びを受けて、 数年で軌道に乗った。
九四年に四二〇〇万個だった 国内宅配便の取扱個数は九五年には八八〇〇万個、翌 九六年には一億三〇〇〇万個に急拡大した。
急激な需要増に対応するため、韓進と現代宅配の 二社は自社で配送車両を抱えるのではなく、フランチ 韓国のラストワンマイル事情 第4 部 現代宅配/韓進/大韓通運/CJ GLS eコマース先進国 25 MARCH 2006 での小荷物で概ね六〇〇〇ウォン。
だが、企業顧客へ の実勢価格は二〇〇〇ウォンを割るレベルにまで下落 してきている。
現代宅配のヤン・ソンイク宅配マーケ ティング部長は「これ以上単価が下がったら、みんな 一緒につぶれるしかない」と熾烈な価格競争の行く末 に危機感を募らせている。
今や韓国の宅配市場は転換期を迎えている。
現代 宅配のヤン部長は「来年末までに業界再編が起こる」 と予想する。
韓進のキム・ギソン宅配事業本部長も 「淘汰は既に始まっており、数年以内に一部の大手だ けでシェアの九割以上を占めるようになるだろう」と 見 ている。
生き残りのカギを握るのがITだ。
佐川急便コリア の服部良浩理事は、「情報のリアルタイム性に関して は、現状でも日本よりも進んでいると言えるかも知れ ない。
通信環境も非常にいいし、通信コストも安い。
それに韓国の人はITが大好きですからね」という。
実際、配達時の受け取りサインをPDA(携帯情報端末)の画面上に入力してもらったり、「スキャン フォン」と呼ぶ携帯電話取り付け型のスキャナーで配 達データをその場で送信したりと各社差別化には躍起 になっている。
ソフ ト面も進化している。
後発組のHTHは、シス テム開発の際に先発組の抱えていた問題を意識し、デ ータ管理の利便性を高めて企業顧客の取り込みに成 功している。
このシステムを使えば、ネットショッピ ングモールの運営者は取引先と顧客のデータ管理が可 能。
しかも契約すれば利用料は無料だ。
自前で情報シ ステムを構築しなくともデータを管理できる。
ITで差別化を図ろうとすれば、それに伴う資本が 必要だ。
もはや中小には対応できない。
淘汰と上位集 中は避けられそうにない。
顧客直送のロジスティクス ャイズ制によって配送ネットワークを整備した。
車両 五〜二〇台ほどの中小運送会社と代理店契約を結び 末端の集配を委託。
集配した貨物の運賃に一定の比 率をかけた金額を手数料として代理店に支払う。
もと もと陸運専業だった大韓通運だけが、代理店への委 託はネットワークの届かない地方に限って、直接運営 制をとっている。
宅配便戦国時代 九〇年代後半から始まったネット通販の普及で、宅 配便市場の規模拡大にはさらに拍車がかかった。
ただ し競争条件は一変した。
九八年に韓国政府は、通貨 危機の煽りを受け七%にも達した失業者の就業支援 策として、「自動車運輸事業法」を改正。
物流業の規 制緩和を実施した。
従来の許可制が登録制に移行し、 最低車両保有台数の制限も緩和された。
ネット通販の拡大と規制緩和をチャンスと睨んだ新 興勢力が相次いで宅配便市場に参入を始めた。
大手 食品メーカーCJの物流子会社CJGLS、サ ムスン 系のHTHを始め、それまで貨物自動車業や引越業を 営んでいた中小物流企業も?ドル箱〞を前にじっとし ていなかった。
〇三年時点での宅配便事業者数は九四。
うち五割を超える五一社が九八年以降の設立だ。
これに加えて〇三年には、全国にきめ細かい集配ネ ットワークを持つ韓国郵政が宅配事業に本腰を入れた。
郵便物の減少で悪化してきた収益の穴を宅配便で埋 めようという狙いで、ターゲットも民間と同じだ。
テ レビ通販やネット通販の運営企業が主な荷主で、宅 配事業の売上 の八割をB to Cが占めている。
市場規模が順調に拡大する一方で、今や韓国の宅 配便市場はダンピング合戦の様相を呈している。
各社 の一般消費者向け料金表を見ると、重さ一〇キロま 現代宅配 韓進 大韓通運 CJ GLS HTH 郵政事業本部 宅配開始 2004年宅配売上 2005年宅配売上 宅配用車両台数 ターミナル数 年間取扱個数 配達時間帯指定 決済代行 貨物追跡 1993年1992年1993年1999年1999年1999年 2240億ウォン1815億ウォン1607億ウォン1390億ウォン791億ウォン1019億ウォン 2500億ウォン2205億ウォン1756億ウォン1400億ウォン933億ウォン1429億ウォン 4000台2600台2500台2500台1700台1850台 15カ所62カ所50カ所37カ所5カ所23カ所 7500万個5300万個7000万個5000万個3400万個5000万個 × × × × ○ × × ○ × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 韓国宅配大手の概要 注)聞き取り調査により編集部が作成 受け取りサインをPDAの画面上でもらう MARCH 2006 26  収支が悪化する従来の郵 便事業に代わる新しい収益 源として、2003 年から宅 配事業と国際スピード郵便 (EMS)を集中育成する方 針をとってきました。
従来 型の郵便物は年々減ってき ていますが、宅配とEMS は順調に伸びています。
 宅配事業運営の4 本の 柱は、?インフラの拡充、?ITの活用、?顧客不満補 償制度、?顧客五大満足運動です。
?インフラの拡充 としては、小包の全集配員にPDA を行き渡らせました。
そして、今年4 月には東ソウル物流センターをオープ ンし、3PL 事業を展開します。
同様の物流センター を中長期的に地方にも建設していく計画です。
 ? IT の活用としては、SMS という文字情報サービ スを行っています。
これは、荷物のお預かりからお届 けまでのステータス情報を最低3 回、最高5 回、携 帯メールに送信するサービスです。
どんなにいいイン フラを持っていても、場合によってはお客様の望むサ ービスを提供できないことがあります。
 その場合、?顧客不満補償制度があります。
これは 遅配や破損が生じた場合に、ある一定の額を補償する という制度です。
この事後補償に関しては、民間より も制度が整っていると自負しています。
 そして重要なのは?顧客五大満足運動です。
荷物 を大切に扱い、大切に届ける職員の気持ちが無くては、 どんなに立派な施設も意味がありません。
ですから職 員はもとより、3 割を占める委託業者への教育も徹底 しています。
教育したのに問題を起こした業者は以降 の公開入札から除外します。
それだけ顧客満足という のは大切なんです。
(談) 「“総合物流企業”として顧客満足を追求」 郵政事業本部 ファン・ジュンヨン 本部長 現代宅配  宅配マーケティング部 ヤン・ソンイク 部長 「ドライバーの負担考え“スキャンフォン”を導入」  当社が宅配便市場でシェ ア1 位を守り続けている第 一の要因は、現代グループ の企業文化です。
真面目 でひたむきな企業文化によ るところが大きいですね。
それから、フランチャイズ 制を他社に先駆けて完全導 入したこと。
これにより原 価競争力で勝負することが できました。
衣類の扱いに強みを持っているところも 評価されています。
衣類は宅配事業の売上の2 割近 くを占める重要なアイテムですから。
 これからはやっぱりIT ですね。
宅配はITがなかった らどうにもなりません。
当社はPDA の代わりにスキャ ンフォンというツールを新たに導入しました。
PDA は 大きいとか重いとかいった理由でドライバーたちが嫌 がったんです。
データを入力する手間もかかりますしね。
スキャンフォンを使えばバーコードをピッと読み取るだ けで済みます。
スキャンしたデータはすぐにデータセ ンターに送信されるようになっていて、情報のリアル タイム管理に役立っています。
(談) ウリホームショッピングの配送を行う現代宅配の配送用トラック 郵便局宅配の配送用ト ラック ドライバーの顔写真の横 には「お客様のために 誠意を尽くします」のメ ッセージが書かれている 27 MARCH 2006 顧客直送のロジスティクス  これからの時代を勝ち抜 くためには、まずはサービ スです。
サービスをよくし て売上を上げ、その売上 の相当の部分を再投資する。
それで、さらにサービスの 質を高めて売上を伸ばす。
これを繰り返すしかありま せん。
サービスを語る上で 重要なのは、顧客に約束で きるかどうかです。
現在の基本は各社とも翌日配達で すが、これからは当日配達や時間帯指定サービスが求 められるようになります。
その実現にはやはりIT が不 可欠。
当社はIT を活用して今年から時間帯サービス を始める計画です。
 また、企業顧客の獲得策として特殊商品の開発に注 力しています。
例えば衣類など、宅配には扱いにくい 商品があります。
そうした商品を扱いにくいと避ける のではなく、それを他社と差別化する競争力だと考え るんです。
衣類なら衣類、化粧品なら化粧品にあった 集配のやり方があります。
商品特性や顧客の事情を考 慮した上で、ニーズにあわせた集配送を考えなくては なりません。
 こうした地道な努力を重ねてシェア1 位を狙ってい きます。
これは顧客の多角化を進めるという意味でも 非常に重要です。
1 社への依存度が高ければ、商品開 発を一生懸命やって、よその物量を取ってこようとい う意欲が低下しがちです。
それに取引をやめると言わ れたときのリスクも大きく望ましくありません。
(談) 「ニーズに合わせた商品開発でシェア1 位狙う」 韓進 宅配事業本部 キム・ギソン 本部長 CJ GLS 経営戦略チーム イ・ドンス 課長 「 3PLとの融合図る」  当社は食品メーカーCJ の物流子会社ですが、98 年に分社化する前から社外 の物流コンサルティングを 行うなど、一つの物流会社 として独立しているような 状態でした。
実は、韓国 で3PL を最初に始めたの は当社なんですよ。
当時 は通貨危機の影響や市場の グローバル化を受けてどの企業も事業の選択と集中を 迫られる時期でしたから、ちょうど物流の担い手として 3PL の需要に恵まれていました。
 
toCの宅配事業は事業の多角化を図る目的で99 年にスタートしました。
当時は社内でも意見が分かれ ていましたが、今になって考えてみれば参入して正解 でしたね。
いずれにしてもB to B とB to C、C to C の宅配はお互い重なり合うものであって、まったく の別物ではありません。
当時成功していた3PL との シナジー効果が望めると考えて宅配事業への参入に踏 み切りました。
 現在当社では3PL と宅配は事業部も使う施設も分 かれています。
同じ場所にある施設でも、建物が2 棟に分かれています。
これは宅配と3PL の性質の違 いによるものです。
3PL はストック(在庫)の概念で、 宅配はフロー(流れ) の概念。
役割が違えば求めら れるオペレーションも違ってきます。
現段階では多く の課題がありますが、2 つを融合すれば本当のシナジ ー効果が得られるはずです。
現在その方法を模索して いるところです。
(談) 韓進の 配送用トラック CJGLS が配送を 手がけるC J ホー ムショッピングのホ ームページ

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