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APRIL 2006 84
プロセスカットは、出荷時のオーダーまとめ、チェック、1次梱包、2
次梱包をなくし、小さなコンテナに入れ、コンテナにバンニングして出
荷するなどの方法が代表的だ。 すでに現在では、全物量の40%をこの方
式で出荷しているが、A社としては将来はこれを70%まで適用したいと
考えている。
構造改革に不可欠な技術要素としてLE(Logistics Engineering)を
体系的にまとめた。 これは物流センターの新設、改革のための標準的な
手順として使われており、全体を通じたプロジェクト・マネジメントの
基本として活用されている。
LEの手順は、(1)現状分析、(2)Design Valueの設定、(3)Value
Structureの作成、(4)改善アイデアの抽出、(5)実現性評価、(6)実行案の
決定、(7)実行後の評価、(8)チューンアップである。
改革を可能にしたデバイス・システム群はバーコード、ハンディター
ミナル、自動クレーン、オートパレタイザー、など。 さらに徹底したプ
ロセスカットや、多くの先進ソフトなどである。
プロセスカットのために、最適物流センター設計のシミュレーション
を行い、センターのラックレイアウト、ロケーション設定を行い、ユニ
ークな配置が実行できた。 また、物流ルートとして日本から米国のディ
ーラーに直送する方法もとった。
プロジェクトの効果として1995年から2003年までに2段階で60%の生
産性向上を果たし、1個当たりの出荷時間が30秒以上になっていたが、1
年後は19秒以下を達成した。
補充品物流を支えるシステム基盤はPシステム:パッケージシステム、
Gシステム:共通基幹システム、グローバルネットワーク:F-Webシス
テムである。
4.SCMに終わりはあるか
A社のグローバルSCMは、第1段階(1989-1998)海外分散生産型・情
報分散システム、第2段階(1998-2002)海外分散型・情報集中システム、
第3段階(2003-2007)地域センター型で構築されてきた。
今年5月に更なるグローバル体制を目指すために新センターをオープ
ンする予定で国内在庫の集約、国内販売店への直送化、世界6極への供
給体制を狙っている。 またアジア、中近東統括センターの設立を予定し
ており、その狙いはLT短縮と供給スピードアップ、物流作業効率向上
であり、部品ビジネスの規模拡大である。
SCMを構築するためには、A社のような絶えることのない改革が必要
だと思われる。
また、グローバルSCMの確立のためには、(1)SCMに耐えうる物流現
場の改革を優先:高頻度・少量・スルー型物流・プロセス改革・拠点
統廃合の実施、(2)ロジスティクス技術とコンピュータの融合:プロセス
改革とコンピュータ化による相乗効果、(3)SCMの最終像を描くなどが
不可欠だと考える。
以上のような講演に続いて、参加者との活発なディスカッションが行
われた。
2006年4月のフォーラムは4月14日に「富士重工業・航空宇宙カンパニ
ーの航空機工場(宇都宮)の現場」を“コンピュータ支援による製造と
部品等の管理等”の視点で見学する予定。
このフォーラムは年間計画に基づいて運営しているが、単月のみの参
加も可能。 1回の参加費は6,000円。 ご希望の方は事務局までお問い合わ
せください。
(SOLE Japan 事務局:sole-j-office@cpost.plala.or.jp)
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE日本支部フォーラムの報告
SOLE日本支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス
技術やロジスティクス・マネジメントに関する活発な意見交換、議論
を行い、会員相互の啓発に努めている。
シリーズ第3回として開催した2月度のフォーラムは、物流システム
開発支援を手掛けるレクソルの宮口孝治代表取締役を招いて「グロー
バルSCM構築とその秘訣」と題する講演を聞いた。 以下、この講演の
内容について紹介する。
1.グローバルSCM構築の経過
これまでにコンサルティングを手掛けてきた案件の中から、輸送用
機器メーカー(以下、A社と表記)のサービスパーツのSCMシステム
の事例を紹介する。 A社の全世界におけるサービスパーツの売上高は、
総売上の10%にのぼり、北米、欧州では過半を占める。 A社は、顧客
満足の向上と、全世界での大規模在庫削減のために、10年以上前にグ
ローバルSCMの構築に着手した。
第1ステージとしてはロジスティクス改革の基礎作りとして、欧州に
おける物流センターの構築や、国内での物流改革などを行った。 また、
海外工場の補修部品部門のレベルアップを図るため、台湾やフランス
に自社開発のパッケージソフトを導入した。
第2ステージは1993年から1997年。 主に本社の物流改革と、用品の
ビジネス改革を行った。 パッケージソフトの導入も東南アジアや南米
や中米に拡大し、第1ステージに引き続きグローバルネットワークの
構築を進めた。
第3ステージは1998年から2002年。 欧州、北米、カナダに「Gシステ
ム」と呼ぶ仕組みを導入して「連結在庫計画」を実現した。 グローバ
ルネットワークの構築は引き続き行った。 またパッケージソフトはベ
トナムやアルゼンチンへの導入を進めた。 グローバル・ロジスティク
ス・ミーティングも実施するようになった。
以前、A社の国内拠点は約100カ所あったが、1993年までに8カ所の
パーツセンターに集約した。 さらに2005年の12月には関東と関西に集
約を行った。 従来、欧州では本社パーツセンターから各国の代理店へ
と製品を送っていたが、改めて設立した欧州の拠点に一括して送り、
そこから各国のディーラーに直送する方式に変えた。
これらの施策により欧州、日本の在庫半減、約30%の物流費削減、
98%の即納率遵守を達成した。
2.SCM構築のための施策
全部で13にわたる施策があり、製品のライフサイクルや需要量に関
連して適用するようになっている。 たとえば「Central Stock System:集
中在庫方式」、「Sell1 Buy1 Stock1:1個販売・購入・保管方式」、
「Frequent Order System:発注点法」、「Initial Order Control:新機
種発注方式」、「Seasonal Products Control:季節商品管理」などが
ある。 これらは、パーツの在庫管理のための技術を整理し、体系づけ
たものである。
需要予測は以前は各拠点、本社が個別に行い所要量を計算し、発注
していた。 だが今では、本社の一括需要予測で全世界の所要量計算を
して発注している。 結果として在庫は今では全世界で半減している。
3.物流プロセス改革のプロジェクト
このプロジェクトの基本コンセプトは、あらゆる物流工程のプロセ
スカット、最新のITを活用した作業の効率化、環境にやさしい物流で
ある。
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