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APRIL 2006 20
トラック運送サービスには
どんな種類があるのか?
荷主の立場からトラック運送のサービスを見ると、
トラック一台を専用で使う「貸切便」と、トラック一
台を貸し切るには満たない貨物を対象とする「積み合
わせ便」の二つに大別することができる。 このうち
「積み合わせ便」は複数の荷主の貨物をトラック一台
に混載することから、そう名付けられている。 貸切バ
スと乗合バスの違いによく似ている。
「貸切便」には、引っ越しのような身近なサービス
から、企業が自社の製品だけを運んでもらう専用車や、
タンクローリーを使った石油やガスの輸送
などが含ま
れる。 一方、「積み合わせ便」で最も身近なサービス
は、ヤマト運輸や佐川急便が手掛けている「宅配便」
や「メール便」だろう。 企業間の共同物流も「積み合
わせ便」の一つに数えられる。
このほか「積み合わせ便」には、「特別積み合わせ
便」といって「宅配便」で運ぶには量が多過ぎる、あ
るいは荷物が大き過ぎるけれど、トラック一台を貸し
切るほどでもない中ロットの荷物を対象にしたパッケ
ージ商品もある。 鉄道路線と同様に、ターミナル間を
定時
に発着する幹線輸送を運行してネットワークを組
んでいることから「路線便」とも呼ばれる。
どうやって使い分けるのか?
トラック運送サービスは、運ぶ荷物の量によって使
い分けるのが基本だ。 荷物の重量当たりの単価は、「貸
切便」しかも大型車になるほど安く、「積み合わせ便」、
「宅配便」、「メール便」と、荷物のロットが小さくな
るほど割高になる。 このため、荷物の量や動きをきち
んと把握することが大事になる。
貸切運賃の仕組みは?
貸切の運賃は大きく「距離制」と「時間制」の二
つに分かれている。
距離制の基本計算式は「車種(二トン車、四トン
車…)×距離帯(二〇キロメートルまで、五〇キロメ
ートルまで…)」だ。 例えば、東京から大阪までの輸
送で二トン車を貸し切ったら、二トン車×六〇〇キロ
メートルまでの運賃が適用される。
ただし、二トン車で六〇〇キロ走る場合の運賃の額
はすべてのトラック運送会社で共通しているわけでは
ない。 運賃は事業を展開する地域や業者によって差が
生じ
る。 人件費や燃料費といった運送に掛かるコスト
が地域や業者ごとに異なるからだ。
貸切運賃に限ったことではないが、運賃には条件に
応じて割増分や実費が上乗せされる。 条件や割増率
の設定は事業者によって異なるが、割増の例としては
悪路(三割増)、冬期(二割増)、休日(二割増)、深
夜早朝(三割増)があり、実費の例としては有料道
路利用料、フェリーボート利用料、荷役作業料が挙
げられる。
一方、時間制の運賃は「車種×時間帯(八時間ま
で、四時間まで)」で算出される。 八時間は一日、四
時間は半日(午前もしくは午後)に相当する。 三時
間制や五時間制を設定しても構わないが、分かりやす
さと管理のしやすさから、大半のトラック運送事業者
が八時間制・四時間制を採用している。
時間制貸切では、基本料金で走行する距離に制限
が設けられている。 八時間制なら三トン車までは上限
八〇キロで、三トン車を超えるものは上限が一〇〇キ
ロだ。 四時間制なら三トン車までは上限四〇キロで、
三トン車を超えるものは上限五〇キロ。 走行距離がこ
ゼロから学ぶ運賃の仕組み
トラック運賃の仕組みは意外に複雑だ。 国土交通省の管
轄する事業法上のルールと、市場の実態が全く乖離してい
て素人には分かりにくい。 しかし、運賃交渉の相手となる
協力物流会社にそれを教えてもらうわけにもいかない。 物
流マンなら知っておくべき最低限の常識を整理した。
(森泉友恵)
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Q3
第4部
21 APRIL 2006
の範囲を超える場合は一〇キロごとに追加料金が加
算される。 また、貸切時間が時間制の枠を超える場
合にも、一時間までごとに料金が加算される仕組み
になっている。
積み合わせ運賃の仕組みは?
積み合わせの運賃は「重量帯(一〇キログラムま
で、二〇キログラムまで‥‥)×距離帯」で算出す
る。 荷物の箱数に関係なく、発地・荷送り人と着地・
荷受け人が同じであれば、それが一つのまとまりとし
て扱われる。 重量は、容積を換算した重量と実際の
重量のうち、大きいほうで計算される。
容積の重量換算は、一立方メートルを二八〇キロ
グラムとして行われる。 例えば一〇〇キログラムで
二・五立方メートルの貨物があるとする。 容量を重
量換算すると七〇〇キログラムに当たるから、実際の
重量は一〇〇キログラムでも七〇〇キログラムとして
運賃が計算
される。
一方、積み合わせ便の一つである宅配便の運賃は
「どの地域ブロックから、どの地域ブロックに行くか×
荷物のサイズ(大きさ・重さ)」で決まる。 荷物のサ
イズや重さが同じであれば、東京から大阪までと千葉
から兵庫までで実際には距離が違っていても、どちら
も関東ブロックから関西ブロックという扱いになり、
同じ運賃が適用される。
運賃は誰が決めるの?
一九九〇年まで日本ではトラック運賃を建前上は
運輸省(現・国土交通省)が一律で決めていた。 当
時の運輸省がトラック運送会社の所属しているトラ
ック協会と協議を行い、経済情勢などを踏まえたう
えで、数年おきに認可運賃を改定(値上げ)してき
た。
認可制である以上、本来、荷主とトラック運送会
社は認可運賃で取引を行わなければ違法となる。 しか
し市場では認可運賃とは大きくかけ離れた水準で運賃
がやり取りされていたのが実情だ。 認可運賃とは名ば
かりで、実際に取引される運賃はト
ラック運送会社と
荷主の話し合いで決まっていた。 これは今と同じだ。
九〇年の規制緩和でトラック運賃は認可制から事
前届出制へと移行し、〇三年には事後届出制へと移
行した。 だが、規制が緩和されたとはいえ、どんな申
請でも通るというわけではない。 国土交通省には運賃
を監督する権限があり、利用者に不利益をもたらす恐
れや市場を乱す恐れがある場合には、変更命令を出せ
ることになっている。
現在の事後届出制のもとでは、運賃の設定・変更
ともに事後三〇日以内に届け出ればよい。 申請の窓
口は管轄の運輸局などだ。
各運輸局は平
成十一年に設定した基準運賃を参考に、届け出された運賃が著しく不適切なものでないか
を確認する。 現在は基準運賃に対して上下各三〇%
を超える運賃についてはどのように計算しているかを
ヒアリングし、そのような届け出があったことを中央
の国土交通省に知らせる体制をとっている。
だが、実際のビジネスで運用される運賃は、届け出
どおりとは限らない。 トラック運送会社と荷主が交渉
によって運賃を決めているからだ。 それでも国土交通
省の基準運賃は、一つの目安としては市場でも利用さ
れている。 平成十一年の基準運賃だけでなく、昭和五
七年
認可運賃、昭和六〇年認可運賃、平成二年基準
運賃の料金表(タリフ)などを叩き台として、どのタ
リフを使うのか、そのタリフの何%の水準にするのか
といった交渉を行っている場合が多い。
特集
トラック運送の事業区分とサービス商品
トラック運送
自家用
営業用
実運送
貨物自動車
運送事業
一般貨物自動車運送事業(許可制)
荷主を特定しないトラック運送事業
特定貨物自動車運送事業(許可制)
荷主を特定したトラック運送事業
貨物軽自動車運送事業(届出制)
軽トラックなどを用いた運送事業
港湾貨物
運送事業
一般港湾運送事業(免許制)※
港湾におけるトラック運送事業
運賃は
事後届出制
貸切
路線便
共同配送
専門輸送
引っ越し
宅配便
メール便
貨物利用
運送事業
運賃は
事後届出制
複合一貫輸送以
外のフォワーデ
ィング
運賃は
認可制※ 港湾運送
利用運送
第一種貨物利用運送事業(登録制)
幹線輸送の前後にトラックによる集
荷・配達を行わない利用運送事業
第二種貨物利用運送事業(許可制)
幹線輸送の前後にトラックによる集
荷・配達を行う利用運送事業
貨物自動車運送事業法
港湾運送事業法
貨物利用運送事業法
複合一貫輸送
※主要9 港については、事業:許可制、運賃:事前届出制
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