ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年5号
ケース
新センター--東京インテリア家具

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2006 44 メーカー直取で低価格を実現 東京インテリア家具は東日本エリアで二三 店舗を展開する家具小売りチェーンだ。
二〇 〇五年五月期の売上高は約三〇八億円。
創業以来、増収決算を続けるなど業績は堅調に 推移しており、いまやニトリや大塚家具と並 ぶ家具小売りチェーンの「御三家」と称され るまでに成長している。
同社の母体は昭和初期に創業した家具卸だ。
小売業を始めたのは一九六七年で、宇都宮市 に第一号店をオープンした。
卸として長年に わたって商売を続けてきた同社が、このタイ ミングで小売業に進出した理由を、利根川節 二専務は次のように説明する。
「 卸の商売だけでは限界を感じるようにな っていたため、小売りへの進出を模索した。
当時の家具小売りの商売は、自分たちでは在 庫リスクを一切負わず、必要な時に必要な分 だけ問屋を急かして商品を持ってこさせると いうやり方だった。
きちんとした販売計画を 立案していないため、店頭での販売機会ロス も多かった。
古い商慣習に縛られない新しい 流通モデルを展開できれば、勝負になるとい う自信があった」 一般に、家具はメーカー→卸→小売りとい う流れで消費者に供給される。
卸→小売りの 間に二次卸や三次卸が介在するケースも少な くない。
多段階流通が特徴だ。
商品が店頭に 並ぶまでに複数の中間業者を経由するため、 その分コストが掛かり、トータルの在庫量も 膨らむ。
結果としてそれが販売価格を押し上 げる要因となっていた。
これに対して、東京インテリア家具は自ら が在庫リスクを負うかたちでメーカーから商 品を直接仕入れ、自らの店舗で販売する垂直 統合型のビジネスモデルを展開している。
メ ーカーとの直接取引によって中間マージンを 省くことで、低価格での商品販売を実現し、 消費者から 高い支持を集めてきた。
直接仕入れているのは、国内で生産される 製品ばかりではない。
海外製品も現地メーカ ーから直接輸入している。
とても当初はヨー ロッパから既製の家具を輸入するのがメーン だったが、ここ数年は、自社開発した商品を 海外メーカーに生産委託して輸入する比率を 徐々に高めてきた。
現在では輸入品のほとん どが自社開発商品で、売り上げ全体の約三割 を占めるまでに拡大している。
店舗や物流拠点は自社資産で保有 低価格販売のほかに同社の特徴を挙げると 新センター 東京インテリア家具 卸の視点で家具の流通を垂直統合 28億円投じて物流拠点を新設 家具小売りチェーン“御三家”の一角を占める。
商品 の調達から販売までのサプライチェーン管理を自社で行 い、店舗や物流拠点といったインフラも投資として保有 している。
昨年12月、家具激戦区として注目を集める千 葉県の幕張エリアに首都圏進出第1号店を出店。
それに 先駆けて大型物流センターを新設した。
東京インテリア家具の 利根川節二専務 45 MAY 2006 するならば、その出店スタイルであろう。
競 合他社が、複数のテナント企業が入居する大 型ショッピングセンターなど複合商業施設へ の出店を進めたり、借り上げの賃貸で出店を 加速させたりしているのに対し、東京インテ リア家具では自社投資で大型店舗を手当てす る?自前主義〞を貫いている。
資産の流動化が叫ばれている時代に、敢え て自社物件での出店にこだわっているのは 「借りると利益が出なくなる」(利根川専務) からだ。
長年にわたって店舗を持ち続けるの であれば、割高な賃料を長期間払い続けるよ り も、自社投資で物件を用意したほうがトー タルコストを低く抑えることができると判断 している。
店舗だけでなく、物流拠点もまた資産とし て保有し、自社で運営するスタンスだ。
セン ター内でのオペレーションの設計はもちろん、 配送業者に支払う運賃の計算方法なども自社 で開発している。
商品の金額、移動距離、配達した件数などをポイント化し、それらのポ イントを合算して運賃を算出する独自の仕組 みを導入している。
この運賃ポイント制は、 利根川専務が考案した。
もっとも、同社が物流拠点を自前で用意す るようになったのは九〇年以降のこと。
それ 以前は外部の専門業者に委託する体制を敷い ていた。
同社では出店戦略の変遷に合わせて 過去に数回大掛かりな物流体制の見直しに踏 み切っている。
以下でその歴史を簡単に振り 返ってみよう。
出店拡大に合わせ物流体制を強化 第一号店の宇都宮店がオープンした当時、 同店向けの商品は本社のある東京から供給し ていた。
東京〜宇都宮間はおよそ一〇〇キロ メートル。
その頃は現在よりも道路事情が悪 かったため、同区間の輸送に三〜四時間を要 していた。
また、一店舗のみの展開であった ため、輸送ロットも小さく、トラック一台当 たりの積載効率もよくなかった。
そこで、多店舗展開に切り替えた。
周辺の 小山市や大田原市、栃木市など栃木県内と茨 城、福島に計八店舗を出店。
物量も増えたた め、東京の物流拠点のほかに、現地エリアに 倉庫を用意し、そこからも店舗に商 品を供給 する体制に改めた。
従来、同社は家具を中心に扱っていたが、 九三年頃から住生活全般をカバーする「ホー ム・ファッション」という切り口で、家具フ ロアと雑貨フロアからなる大型店舗を展開す るようになった。
同時に出店スピードも加速 し、仙台、秋田、金沢、新潟など東北・上信 越エリアを対象に、年に一カ所のペースで店 舗網を拡大していった。
ターゲットにしたのは人口三〇万人以上の 商圏。
地域の平均収入や、家具・インテリア に支出する平均額、家のサイズなどを考慮し て出店先を絞 り込んだ。
商圏の大きさを重視 する一方で、母体である卸会社の得意先と商 圏が重ならないよう、埼玉、神奈川といった 首都圏エリアへの出店は回避してきた。
こうした広範囲にわたる出店を支えるため、九〇年に物流と情報の中心拠点となる「本部 情報商品センター」を栃木県鹿沼市に新設し た。
さらに出店に合わせて各地に配送センタ ーを配置。
「本部情報商品センター」でメー カーからの商品を荷受け・保管し、各地の配 送センター経由で客先に届けるという物流体 制を整えた。
また、九七 年には国内委託生産 品の集荷拠点として「九州情報商品センタ ー」を開設し、調達物流体制も強化した。
そして昨年一〇月には新たに約二八億円を 投じて「鹿沼新物流情報センター」を立ち上 げた。
新拠点は敷地面積二万七〇〇〇平方 図1 東京インテリア家具の物流のしくみ 国内 海外 栃木県外 栃木県内 メーカー 店舗 消費者 LOGI-BIZ編集部作成 九州情報 商品センター 鹿沼新物流情報センター 配送センター (秋田・盛岡・仙台・  郡山・つくば・千葉・  長野・金沢・新潟) 栃木県外の店舗 栃木県内の店舗 大川 協力工場 消費者 MAY 2006 46 と利根川専務は説明する。
今回の物流改革を機に、もともと旧センタ ー周辺の外部倉庫に分散していた商品在庫を 新センターに集約した。
それによって在庫情 報を一元管理できるようになったほか、外部倉庫から旧センターへの横持ち輸送が発生し なくなった。
月間数千万円のコストダウンに 成功しているという。
大量の商品を新センターで集中管理 新センターの倉庫スペースは、自動倉庫、 一般倉庫、保税倉庫で構成される。
建物の約 四割のスペースを割いて設置された自動倉庫 の格納数は四三〇〇パレット。
前述した通り、 保管能力は旧センターの約十倍に達する。
自 動倉庫と、荷さばき場に設けられた五カ所の 入出荷ステーションとの間では高速搬送台車 八台が行き来する。
新センターに寄せられる商品は毎日およそ 四〇〇パレット分。
国内外から集まる商品の 入荷から出荷までの基本的な流れは、?鹿沼 の新センターで一括 荷受けし、?新センター で保管、?注文を受けた店舗から出荷指示デ ータを受け、九カ所ある各地の配送センター に出荷、?配送センターから消費者に配送 ――となる。
このうち?に関して、日本有数の家具生産 地であり、同社の自社開発商品の生産を行う メーカー数十社が集まる福岡県大川市で作ら れた製品だけは「九州情報商品センター」を 経由して鹿沼の新センターに送られる。
また、 ?、?に関して、栃木県内の配送先について は、新センターが配送センターの役割 を担っ ているため、新センターから直接消費者に配 送される仕組みになっている。
商品がメーカーから直接店舗に行くことはない。
バラバラと商品が入荷すると、店舗は 荷受け作業に追われ、その分接客の時間が削 られてしまうからだ。
各方面からの荷受けは 新センターでまとめて行い、店舗への配送は 早朝など決まった時間に一括して行う。
店舗 の物流業務を少しでも減らし、販売員は販売 に専念できるようにするのが狙いだ。
在庫管理には独自のバーコードを用いてい る。
家具には業界共通のバーコードがないた め、自社用のコードを作成して 運用してきた。
パレットと各商品にそれぞれバーコードを貼 付して管理に役立てている。
メートル、延べ床面積三万二〇〇〇平方メー トルの二階建て。
鹿沼インターチェンジから 三キロメートルに位置する。
旧センターの約 十倍の保管能力を持つ大型物流拠点だ。
同社はこの年の十二月に首都圏進出の第一 号店で、同社最大の売り場面積を誇る幕張店 をオープンした。
幕張エリアは、大塚家具、 千葉を基盤とする「かねたや」、外資のイケ アなどが相次いで大型店を出店する家具激戦 区として注目を浴びている。
東京インテリア 家具はこの幕張店をき っかけに首都圏への出 店を加速させる方針で、それに伴う物量増に 対応するため、新センターを稼働させた。
「旧センターの保管能力はすでに限界に達 しており、ここ数年は外部倉庫を併用するよ うになっていた。
在庫品の管理には外部倉庫 を利用していたため、旧センターには、もは やトランスファー機能しか残っていなかった。
そこで新センターはストック機能を強化し、 一カ所で両方の機能をまかなえるようにした」 右・自社開発したパレッ ト一体型ラックは、主に 自動倉庫で利用。
クロス した支えの中心を軽く持 ち上げれば折り畳めるよ う設計されている。
左・ドイツ製の大型ラッ クは、一般倉庫と保税倉 庫で利用。
積み重ねが可 能で、倉庫スペースを有 効活用できる。
写真2 センター内では、2種類のラックを保管 場所によって使い分けている。
写真1 昨年12月、首都圏進出第1号 店となる幕張店をオープンした 国内の商品は指定のバーコードが付いた状 態で入荷される。
一方、バーコードなしの状 態で入荷される海外の商品は、入荷予定情報 に基づき事前に発行したラベルを、荷受け時 にアイテムと数量の確認を兼ねて貼っていく。
そのバーコードを入荷時にスキャナで読み取 ると、在庫データが更新される。
バーコード は出荷検品にも利用している。
自動化と省力化を推進 自動倉庫には在庫品のほかに、配送先の店舗別に荷揃えした出荷待機品を格納しておき、 トラックの到着 時間に合わせ出 荷している。
自 動倉庫では、無 人のスタッカーク レーンが該当パレットの出し入 れを行う。
その際、入庫 しようとするもの が大きすぎてセ ンサーに触れる と 作 業 は 停 止 。
異常を知らせる 音が鳴り、担当 者が駆けつけて 対応する仕組み になっている。
倉 庫内のどこで異 常が発生したか は、作業スペー スに設置したコ ンピュータの画 面上で確認が可 47 MAY 2006 能だ。
常時監視しなくても、異常が発生した 時だけ対応すればいい仕組みになっている。
自動倉庫から出庫した商品は、レール全長 四〇〇メートルのループ式高速搬送台車で荷 さばき場まで運ばれる。
その後、自動式のパ レット回転台で方向転換し、ローラー床を伝 って搬出口まで移動する。
搬出台はトラックの荷台に高さを合わせる ことが可能で、段差に悩まされずに積み込み や荷下ろしができるようになっている。
省力 化の工夫は他にもある。
搬出入口手前の入出 荷スペースは、すべて軽く押せば動くように 設計されており、持ち 上げて運ぶという作業 がない。
例えば、高速搬送台車で入出荷スペースの 入り口に運ばれてきたパレットは、そこから 搬出口までつながっているローラー床の上を 走らせれば力を使わなくても移動できる。
また、パレットから下ろした段ボールは取っ手 のない台車に載せて移動する。
自社開発した パレット一体型のラック(写真2・右)は、 背面でクロスした支えの中心を軽く持ち上げ れば、折り畳めるようにもなっている。
同社では首都圏第一号店の幕張店に続き、 東海地区への進出(甲府店と浜松店)、さ ら に栃木県内での追加出店を決めている。
これ らが計画通りに進めば、計二六店舗となり、 当面の目標としている三〇店舗にぐっと近づ く。
店舗数が増えれば、新センターの重要性 はますます高まる。
(森泉友恵) ?ローラー床を伝って搬出口へ ローラー床は搬出口までつながっ ており、大きな家具でもスムーズ に移動できる。
?トラックへ積み込み 搬出台の床にはボールが敷かれ ており、パレットの向きを自由 に変えられる。
また、天井から吊り下げられた コントローラーを使って、トラ ックの荷台と同じ高さに調節が 可能。
?荷さばき場に設けられた5カ 所の入出荷ステーションには、 パレットをそのまま滑らせて 移動できるよう、床にローラ ーが敷かれている。
?高速搬送台車で荷さばき場へ 全長400mのループ式搬送 路を、8台の高速搬送台車が 行き来する。
?自動倉庫から出庫 背高のタンス類も格納できる自動倉 庫。
5台のスタッカークレーンが入 出庫を行う。
?荷さばき場に横付け ?自動式のパレ ット回転台で 方向転換 出庫からトラック積み込みまでの流れ

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