ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年5号
物流産業論
トラック運送業を知ろう?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

フレッシュマンのための MAY 2006 48 乗合バスと貸切バスの違い 一般貨物自動車運送事業は「特別積 み合わせ貨物運送事業(=特積み事 業)」と、特積み以外の「一般トラッ ク運送事業」に分類できます。
特積み は旧路線トラックを、一般は旧区域ト ラックを指しています。
ここまでは前 号のおさらいです。
特積みと一般では いったい何が違うのでしょうか。
今回 はここから整理していきましょう。
特積みと一般の違いは、「乗合バス」 と「貸切バス」の違いを思い浮かべる と理解しやすくなります。
乗合バスに は不特定多数の人々が乗車し、乗客 たちはおのおのの目的地近くの停留所 で下 車していきます。
これに対して、 貸切バスには例えば大学のサークル仲 間や同じ会社の社員(社員旅行をイ メージしてください)といった一つの 集団が乗車し、ある一つの目的地で乗 客全員が下車します。
乗合バスは原則 として定時運行されていますが、貸切 バスは出発時間などを自由に設定でき ます。
特積みは乗合バスになります。
定時 運行しているトラックに貨物を載せる と、設定されている到着時間に目的地 近くの停留所、すなわちターミナルに 到着します。
一方、一般は貸切バスに 相当します。
ある特定の荷主企業の貨 物 を積んで、荷主の希望する時間に合 わせて目的地まで運びます。
現在、日本には「特積み」事業者が 二八二社存在します。
その代表企業は ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、福 山通運などです。
これに対して、「一 般」の事業者数は現在、約五万五七〇 〇社。
トラック運送事業者は全体で約 六万社ですから、そのほとんどが「一 般」事業を展開していることになりま す( 図1)。
大資本=特積み事業者 特積み事業は「不特定多数の顧客か ら集荷した貨物を営業所(ターミナル) で仕分けし、貨物を積み合わせて他の ターミナルへ輸送し、配送に必要な仕 分けを行うもので、営業所(ターミナ ル)間の輸送を定期的に行うもの」と 定義されています。
前述した通り、特 積み事業者は現在二八二社ですが、そ の数は七五年に三七九社、八五年に三 三七社、物流二法が施行された九〇年 第2回 トラック運送業は「特積み」と「一般」に大別できます。
この二つの事 業にはどのような特性や相違点があるのでしょうか? 今回は「特積み」 と「一般」の二つの事業形態について理解を深めていきましょう。
(本誌編集部) トラック運送業を知ろう ? 75 379 28,253 1,127 1,387 31,146 80 356 31,334 1,365 1,578 34,633 85 337 33,201 1,342 1,714 36,594 90 297 36,485 1,434 1,856 40,072 91 292 37,387 1,465 1,909 41,053 92 290 38,569 1,414 2,035 42,308 93 287 39,627 1,369 2,167 43,450 94 286 41,047 1,312 2,370 45,015 95 285 42,501 1,246 2,606 46,638 96 279 44,299 1,191 2,860 48,629 97 279 45,959 1,162 3,081 50,481 98 276 47,437 1,114 3,292 52,119 99 275 49,148 1,106 3,490 54,019 00 272 50,401 1,099 3,655 55,427 01 268 51,732 1,076 3,795 56,871 02 276 52,948 1,070 3,852 58,146 03 280 54,224 994 4,031 59,529 04 282 55,678 940 4,140 61,040 図1 トラック運送事業者数の推移 (単位:社) トラック運送事業者 年度  特 積 一 般 特 定 霊 柩 合 計 資料 国土交通省 49 MAY 2006 に二九七社と年々減少する傾向にあり ます。
特積み事業では競争を優位に進めて いくうえで、より細かな輸配送ネット ワークの構築が不可欠です。
ネットワ ークの整備には膨大な投資を必要とす るため、この事業を展開できるのは資 本力のある大手企業が中心となります。
実際、特積み業界では倒産や企業合併 が進み、中小企業が少しずつ淘汰され てきました。
特積み事業者の経営規模は、保有車 両台数一〇〇台以上が全体の約五割を 占めています(図2)。
一般 トラック 事業者のほとんどが二〇台以下の中小 零細規模であることとは対照的です。
特積み事業者は従業員数も一〇〇人以 上が全体の五八%に達しています。
こ のことからも特積み事業が大資本を中 心としたビジネスになりつつある様子 が窺えます。
宅配便の定義と歴史 われわれにとって身近な存在となっ ている宅配便は、特積み事業者が「宅 配便運賃」を設定して独自の輸送商品 として販売しているものです。
宅配便 は特積みの一部になります。
宅配便は 「貨物自動車運送事業法」では次のよ うに定義されています。
「一般貨物自動車運送事業の特別積 み合わせ貨物運送またはこれに準ずる 貨物の運送および利用運送事業の鉄道 貨物運送、内航海運、貨物自動車運送、 航空貨物運送のいずれか、またはこれ らを組み合わせて利用する運送であっ て、重量三〇キログラム以下の一口一 個の貨物を特別な名称を付し て運送し た貨物」 つまり宅配便は貨物自動車運送事業 法に定められた特別積み合わせ事業の 一部で、特別に名称をつけて商品とし て販売するものだということです。
宅 配便はトラックが中心ですが、輸送モ ードは鉄道、船舶、航空のいずれでも 構いません。
ただし、荷物一個の重さ が三〇キログラム以下であること、荷 物の中身が三〇万円以下であること、 「宅急便」や「ペリカン便」といった 固有の名称がついていること――など が条件となります。
日本郵政公社が販売している商品に 郵便小包「ゆうパック」があります。
宅配便と「ゆうパック」はサービスの 中身にほとんど違いは ありません。
し かし、宅配便が国土交通省の管轄であ るのに対して、「ゆうパック」は総務省 の管轄(郵便法や日本郵政公社法に従 う)であり、法的には別物であると解 釈されています。
宅配便は七六年にヤマト運輸が「宅 急便」の名称で販売を始めたサービス です。
一月二〇日の初日の取扱個数は わずか十一個で、初年度の取扱個数は 三〇〇万個でした。
翌年には日本通運 が「ペリカン便」、西濃運輸が「カン ガルー便」(当初は「ふるさと便」と いう名称)をスタートしましたが、事 業開始から数年間は取扱個数が伸びず、 各社とも 採算ベースに達しなかったよ うです。
ちなみに七七年の宅配便取扱 個数は六〇〇万個。
郵便小包の一億九 〇〇〇万個、鉄道小荷物の五八〇〇万 個には遠く及びませんでした。
しかし、その後は郵便小包や鉄道小 荷物に代わって、民間宅配便業者の取 扱個数が急激に伸びていきました。
取 扱個数で常に先頭を走り続けてきたの はヤマト運輸です。
宅配便におけるヤ マト運輸のシェアは八一年が五九%、 八五年に六一%となり、九一年には七 〇%に達しました。
ヤマト運輸は宅配便のリーディング カンパニーとして新しい商品を次々 と 生み出し、市場に投入してきました。
八三年には「スキー宅急便」、翌年には「ゴルフ宅急便」、八六年には代引 きの「コレクトサービス」、八八年には 「クール宅急便」をスタートしています。
そしてこうした新商品の販売がヤマト 運輸のシェア拡大に大きく貢献してき ました。
二〇〇五年時点で宅配便の事業者は 三四社を数えます。
各社とも宅配便事 業単体の売上高を公表していないため、 正確な数字は把握できませんが、宅配 図2 トラック運送事業の規模別事業者数(2005年3月末) 車両数別 従業員数別 合 計 23 27,364 4,025 851 32,263 52.9% 22 13,984 91 62 14,159 23.2% 13 6,171 18 9 6,211 10.2% 30 4,695 3 15 4,743 7.8% 59 2,676 1 3 2,739 4.5% 61 636 2 0 699 1.1% 51 132 0 0 183 0.3% 23 20 0 0 43 0.1% 282 55,678 4,140 940 61,040 100% 8 23,993 3,750 776 28,527 46.7% 9 15,366 264 116 15,755 25.8% 11 6,828 73 15 6,927 11.3% 24 5,123 22 17 5,186 8.5% 57 3,209 12 11 3,289 5.4% 58 907 5 2 972 1.6% 37 172 5 2 216 0.4% 49 69 7 0 125 0.2% 29 11 2 1 43 0.1% 282 55,678 4,140 940 61,040 100% 一般 霊柩 特定 合計 構成比(%) データ:国土交通省 10両以下 11-20 21-30 31-50 51-100 101-200 201-500 501以上 10人以下 11-20人 21-30人 31-50人 51-100人 101-200人 201-300人 301-1,000人 10001人以上 合 計 一般 霊柩 特定 合計 構成比(%) 特別積合せ 特別積合せ APRIL 2006 50 便市場は現在、およそ三兆円規模と推 定されています。
宅配便は三兆円マーケット 宅配便全体の取扱個数は二八億七四 〇四万個で、このうちヤマト運輸が一 〇億五八九二万個、三六・八%のシェ アを握っています。
第二位が佐川急便 で三二・八%、三位が日本通運で一 二・二%、四位が福山通運で一〇・ 四%となっています。
シェアは上位四 社で九二・二%に達しており、日本の 宅配便市場はすでに寡占状態にあると 言えるでしょう(図3)。
今後、宅配便市場では民間企業と民 営化を控えた郵政公社との競争が激化 することが予想されます。
各プレーヤ ーに求められるのはパイを奪い合うこ とではなく、新商品の開発などを通じ て市場規模そのものを拡大していくこ とです。
一般家庭との接点を活かした 生活支援サービスなどを新たに立ち上 げることはとても有望です。
さらにイ ンターネットなど情報技術を活用して、 既存の宅配便サービスの利便性をより 高めていくこともマーケットの拡大に 寄与するでしょう。
日本国内だけでなく、国際市場に目 を向けることも有力な選択肢の一つで す。
ただし、国際宅配便市場ではすで にドイツポスト、UPS、フェデック スといった有力プレーヤーたちが先行 し、マーケットを支配しつつあります。
国際宅配便市場への参入は、こうした 欧米企業との厳しい競争に晒されるこ とを念頭に置いておく必要があるでし ょう 。
宅配便から派生したサービスの一つ にメール便があります。
宅配便とメー ル便の違いは受領印(サイン)の有無 です。
宅配便では届け先で必ず受領印 をもらうルールになっているのに対し て、メール便では受領印を取らずに郵 便受けなどへ投函することによってサ ービスが完了となります。
ちなみにメ ール便は以下のように定義されていま す。
「書籍、雑誌、商品目録など比較的 軽量な荷物を荷送り人から引き受け、 それらを荷受け人の郵便受箱などに投 函することにより運送行為を終了する 運 送サービスであって、重量一キログ ラム以下の一口一冊の貨物を特別な名 称を付して運送した貨物」 メール便の年間取扱個数は総数で一 七億三六七九万個。
このうちヤマト運 輸の「クロネコメール便」が一四億三 二三九万個で八二・五%と圧倒的なシ ェアを握っています。
次いで佐川急便 の「飛脚メール便」が七・八%。
中越 運送が五・八%と続きます。
メール便 は寡占というよりもヤマト運輸による 独占の状態が続いていると言えるでし ょう(図4)。
トラック運送の九九%が中小零細 続いて一般トラック運送事業につい て説明します。
繰り返しになりますが、 一般トラック運送事業は「物流二法」 が施行される前まで「区域トラック」 と呼ばれていました。
区域トラックは 一車貸し切りで一定の区域内(原則と して都道府県単位)や、区域内で発着 する貨物を輸送する、いわゆる「貸し 切りトラック」です。
以前は「定期ト ラック便」である路線事業と明確に区 分されていましたが、物流二法施行後 は一般トラック運送事業として一本化されました。
従来の旧区域トラックには積み合わ せ輸送が認められていませんでした。
し かし物流二法によって旧区域トラッ クにも積み合わせ輸送が認められるよ うになりました。
かつては制限されて いた営業区域も順次拡大、さらに二〇 〇二年の「物流三法」では営業区域そ のものが廃止され、全国での営業が可 能になるなど規制緩和が着々と進んで ヤマト運輸 佐川急便 日本通運 福山通運 西濃運輸 名鉄運輸 トナミ運輸 中越運送 岡山県貨物運送 第一貨物 その他(24社) 「宅急便」 「佐川急便」 「ペリカン便」 「フクツー宅配便」 「カンガルー便」 「名鉄宅配便」 「ふるさと特急便」 「パンサー宅配便」 「中越宅配便」 「ハート宅配便」 「第一貨物宅配便」     −     − 10億5,892万個 9億4,323万個 3億4,923万個 2億9,752万個 1億3,309万個 2,162万個 1,255万個 1,197万個 832万個 148万個 3,611万個 28億7,404万個 36.8% 32.8% 12.2% 10.4% 4.6% 0.8% 0.4% 0.4% 0.3% 0.1% 1.2% 100.0% 企業名 宅配便名称 取扱個数 構成比(%) 図3 宅配便の取扱個数(2005年3月)上位10社 データ:国土交通省 宅配便業者34社(2005年3月)、郵政公社の「ゆうパック」は、取扱個数2億1,468万個。
宅配便の売上高、推定3兆円 合 計 企業名 「メール便」名称 取扱個数 構成比(%) ヤマト運輸 佐川急便 中越運送 日本通運 福山通運 その他(5便) 「クロネコメール便」 「飛脚メール便」 「中越メール便」 「NITTSUメール便」 「フクツーメール便」     −     − 14億3,239万冊 1億3,558万冊 1億23万冊 2,964万冊 1,882万冊 2,013万冊 17億3,679万冊 82.5% 7.8% 5.8% 1.7% 1.1% 1.1% 100.0% 図4「メール便」の取扱個数(2005年3月) データ:国土交通省 合 計 51 APRIL 2006 います。
九〇年以降、一般トラック運送事業 への新規参入は大幅に増加しています。
九〇年から二〇〇三年までの十三年間 で、一般トラック運送事業者の数は実 に一万七七三九社も増えています。
積 み合わせ輸送が可能になったり、営業 区域が拡大されたことで、事業展開の 自由度が増したことが新規参入を後押 ししました。
ただし、新規参入が相次いだ結果、 一般トラック運送事業者全体に占める 中小零細の割合も高まっていきました。
保有車両台数で見ると、一〇台以下の 事業者が全体の四七%となり、二〇台 以下になると七四%に達 します。
従業 員数は一〇人以下が四二%で、二〇人 以下が七〇%となります。
また、資本 金が一億円超の事業者はわずか二・ 一%にすぎず、大半の事業者が三〇〇 〇万円以下です。
中小企業基本法では「資本金三億円 以下ならびに従業員三〇〇人以下」を 中小企業と規定しています。
これに従 えば、一般トラック運送事業者の九 九・八パーセントが中小企業であると 言えます日本の物流は中小零細が支え ているのです。
中小零細の一般トラック運送事業者 は、大手トラック運送事業者の下請け として事業を展開しているケースが少 なくありません。
また、荷主企業と直 接、輸送契約を交わ している場合でも、 ある特定荷主への依存度が高いため、 対等な関係を築くのが困難な弱い立場 に置かれています。
もり・たかゆき流通科学大学商学 部教授。
1975年、大阪商船三井 船舶に入社。
97年、MOL 
庁 stribution 
韮蹌癸 社長。
2006年4月より現職。
著書 は、「外航海運概論」(成山堂)、「外 航海運のABC」(成山堂)、「外航 海運とコンテナ輸送」(鳥影社)、 「豪華客船を愉しむ」(PHP新書)、 「戦後日本客船史」(海事プレス社) など。
日本海運経済学会、日本物流 学会、CSCMP(米)等会員。
東 京海洋大学、青山学院大学非常勤 講師。
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