ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年6号
特集
ホントの物流IT EU市場におけるICタグ活用モデル

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2005 24 ICタグ技術の概要 ここ数年、企業のサプライチェーンを効率化す る切り札として世界各国で注目を集めるようにな ったRFIDではあるが、それは必ずしも最新の 技術というわけではない。
というのも、RFID の最初の利用は、第二次世界大戦時にイギリス空 軍が飛行機の機体認識に使った時にまで遡るから である。
現在、話題になっているRFID(ICタグ) とは、端的に言えば、リーダー(読み取り機)と、 情報を記録した受信機・発信機との間における無 線周波を利用した情報交換システムである。
タグ またはトランスポンダーに組み込まれたICチッ プの中に情報が記録されており、チップには無線 通信を可能にするアンテナが備わっている。
これ らを総称して「インレイ」と呼び、利用環境の制 約に応じて、ラベル(スマートタグ)、カプセルな ど様々な形態でセットされ、あるいは製品に内蔵 されることになる。
タグには、それ自身が情報を発信する「アクテ ィブ・タグ」と、リーダーの同調回路を利用して 情報を伝える「パッシブタグ」がある。
この装置は、アンテナとリーダー・発信機から 構成され、一方で無線周波数の管理と調整を、他 方でデータの識別と発信を可能にしている。
リー ダーと情報ネットワークは、ミドルウェアによっ て相互接続が可能になる。
タグとリーダーとの交 信を可能にするため、プロトコルと交信周波数が 規定されている。
ICタグには次に挙げるいくつかの基準となる 周波数がある。
●一二五キロヘルツ(低周波) ●一三・五六メガヘルツ(高周波) ● 八六〇〜九三〇メガヘルツ(極超短波=UH F) それぞれの周波数は、動作環境に応じて読み取 りの距離や信頼性の点で固有の性能を持っている。
UHFは読み取りの距離の点では最も高性能であ るが、周囲に液体のある環境には向かない。
低周 波は、動作環境の拘束を受けることが最も少ない が、ICタグが数センチ以内の距離にあるときに しか読み取らない。
周波数そのものの特徴に加え て、各国が定める無線通信関連の規制も考慮する 必要がある。
ICタグの利用分野とその利点 ICタグ技術は、情報サポート、情報交換の面 において新たな可能性があり、既に様々な分野に おいてその経済的実現性が証明されている。
その 適用の「歴史」を遡ると、これまではセキュリテ ィ関係部門(つまりアクセスコントロール、運送 業、建物管理など)での適用ケースが中心であっ た。
しかしICチップ製造コストの低下により、タ グの利用は以下のような分野へと広がっている。
●サプライチェーン ●RTLS(リアルタイム位置特定システム) ●販売拠点  ICタグがサプライチェーンにもたらすメリッ トは少なくなく、大きな可能性を秘めている。
こ EU市場におけるICタグ活用モデル ICタグはヨーロッパの物流業界に明るい未来を約束する だろうか。
現在普及している技術の中に、ICタグをどのよ うに取り込んでいくのか。
それは真の技術革命となるのか。
また、その変革には既存の技術同様に時間を要することに なるのか。
業界の最新動向に敏感なコンサルタントが、ヨ ーロッパのICタグ動向に対して冷静な分析を加える。
リオネル・コンベ Adelante社コンサルタント ジャン=マリー・ル・ビゼック Adelante社共同取締役 兼CSCMP(旧CLM)フランス会長 第4部 25 JUNE 2005 の技術を適用するためには、バーコードに変わる 実務プロセスの変更が必要となるが、複数の企業 が協力関係にあるようなサプライチェーン全体に 対しても利用できる道が開かれている。
この技術 の適用により以下のような効果がもたらされると 考えられている。
●在庫管理、特に在庫の圧縮。
在庫確認の信頼性 向上により貨物がいつどこにあるかがはっきり とわかるようになるため、迅速な商品補充が可 能となる。
タイムリーなクロスドッキングが実 行しやすくなる ●物流センターや車両など設備資源の効果的利用 による作業経費の削減。
より進歩したオートメ ーション化によって作業の生産性向上が期待さ れる(これまで同一システム内で繰り返し必要 だった作業が軽減される) ●サプライチェーンの各段階における顧客サービ スの質の向上。
管理のオートメーション化、シ ステム上での作業精度や作業記録に対する信頼 が高まることで、顧客からクレームが発生する リスクが減少する。
貨物追跡情報の品質が改善 されることで、サイクルタイムおよびリードタイ ムが短縮され、在庫切れが防止できる ●サプライチェーン全体のトレーサビリティ。
情 報の適切なトレースによって、販売キャンペー ンのより効果的な実施が可能となる。
またIC タグは、流通網における非合法活動の監視を強 化し、例えば偽造品を防ぐための新しい商品認 識手段ともなりうる ●万引き防止装置との組み合わせによる販売店の セキュリティ強化 ICタグは、商品やその内容を自動的に認識す ることをサポートする有効な技術として紹介され ている。
その理由は以下の通りである。
●チップはリーダーから直接見える必要はない ●チップは厳しい環境下でも優れた耐久性を発揮 する ●チップは伝達可能な情報量を増やす ●チップや情報システムが搭載する情報は書き換 え可能である ●チップは複数のコードを同時に読み取り、識別 できる ●チップによって作業の生産性の向上が可能とな る。
それぞれの商品を個別に読み取る必要がな くなり、リーダーの下を通るだけで商品の内容 全体について、まとめて迅速に記録することが 可能になる しかし、バーコードのような従来型の自動認識 システムは、技術面での成熟度や普及度に注目す ると、陳腐化したとは言い切れない。
まだ利用価 値があるうちは、バーコードとICタグの技術は 共存することになるだろう。
ICタグ採用への要点 マクロ経済の視点から、ICタグに対する関心 が高まっている。
AMRリサーチによると、ICタグ採用による 経済波及効果は年間一八〇〇〜三〇〇〇億ドル (約二〇兆〜三三兆円)に上る。
またオートID センターによると、工場から販売店に至る経路上 で、一般消費財の二〇%(額にして年間六〇〇億 ドル=六・六兆円、うち欧州においては一八〇億 ドル=二兆円)を紛失しているほか、販売網は偽 造品や非合法流通網による損害に対処しなければ ならなくなっている。
供給ライン上の在庫 切れは売り上げやマ ージンに損失をもた らす。
紛失などが原因で 発生する欠品は、最 終的な商品の売り上 げ全体の三〜六% を占めると予測され ている。
欠品の三分 の一は販売店の知ら ない場所にストック されたままになって いる。
欠品率は、単 品価格の高い商品においてより顕著と なる。
これらの経済的要 因に加えて、トレー サビリティという重 要なポイント、すな わち商品の速やかな リコールのためのル ール作りとローカラ イゼーションの問題 (トレースフォーワ ード)が関わってく る。
実際、FDA 図1 ICタグの周波数別特性 周波数 同調 サイクルタイム 液体 金属 速度 技術的な成熟度 規格化 距離 125kHz 世界共通 100% + + ー ー 産業分野で実用化 規格化済み <0.5m 13.56MHz 世界共通 100% + ー + + 1m UHF 地域別 0.1〜100% ー + + + 発展途上 規格化途上 2m アンチ コリジョン 拡大パイロット試験の段階、 適用製品多数 規格化済み ISO15693 ISO14443A&B JUNE 2005 26 (米国食品医薬品局)の監視下におけるこの種の 商品リコール件数は、一九八八年の一五〇〇件か ら二〇〇一年には四五〇〇件に増加している。
米 国の他の団体、例えば農務省でも二〇〇〇年から 二〇〇一年にかけて、商品リコール件数の二四% もの増加を確認している。
また、欧米では、トレ ースバック(サプライチェーンの各地点において、 単一または複数の基準を用いて、ある商品の素性 や特徴を特定する能力)に関するデータへの制約 を強化する新たなルールを採用している。
これらの課題に対し、小売業や製造業の大手は、 ICタグが有する問題解決能力を分析する目的で、 オートIDセンターという団体を創設した。
主要 参加者によって導き出された結果に基づき、主に 大手小売業者から産業界に対して次のような活動 がなされた。
●米ウォルマート・ストアーズは二〇〇五年一月 から主要納入業者一〇〇社に対し、パレット単 位でのタグを取り付けることを要請 ●英テスコ・ストアーズは二〇〇五年九月にIC タグの実証実験を五店舗に拡大して実施する ●独メトロ・グループはパレット単位のICタグ 導入戦略の第二段階に突入 ●米ジレット・グループは二〇〇三年末から米国 内の主要販売店一カ所におけるすべてのオペレ ーションにICタグを利用 ICタグのスタンダード化 ICタグが産業全体で幅広く利用されるために は、その前提となる各社の情報インフラをスタン ダード化する必要があるという認識を持つことが 不可欠である。
こうした目的意識のもとに一九九九年、ウォル マートやジレットを含む七〇の団体および企業、 三〇のIT関連パートナー企業(SAP、Ali ensなど)、そして二〇の公共機関が、ICタ グ技術の普及に対する主な阻害要因を排除するこ とを目的として結集した。
オートIDセンターと 名づけられたこの団体は、業界全体(技術部門、 情報管理部門、関連組織など)でのICタグ採用 に向けたビジョンを、以下のように焦点を絞るこ とにより提示した。
●商品・荷物の認識および履歴追跡 ●サプライチェーンのシンクロナイゼーション ●在庫管理の精度向上 この枠組みのなかでオートIDセンターは、商 品やカートンの統一的な識別法による認識を通じ て、サプライチェーンが必要とする技術適用のた めの仕様として、EPC(電子製品コード)をリ リースした。
このコードは、次に挙げる標準化さ れたハード、ソフトウェアと結びついて、情報の 収集と共有を可能にする。
●リーダー ●リーダーの統御を行い、データ・フィルターに よる認識能力を保証するソフトウェア「Sava nt」 ●データ通信のための共通言語「物理的マーク付 け言語(PML)」 ●要求された情報を管理する「EPC情報システ ム」 ●EPCをデータ保存されているURLへと導く 「オブジェクト・ネーム・サービス(ONS)」 サプライチェーンに関与する業界全体が、この 世界規模の情報網を通じてコードの追補と参照を 行うことができる。
この環境下においてICタグ は単なる認識装置として機能し、認識された情報 は情報システムが管理することになる。
上記の構成要素はいずれもオートIDセンター によってリリースされた仕様書の対象となってい る。
現在の標準コード(GTIN、SSCCな ど)をEPCのフォーマットに読み換える仕様に ついても、標準化を容易にする目的で作成されて いる。
オートIDセンターは二〇〇三年に活動を終了 し、その後は次の二団体に引き継がれた。
●EPCグローバル:オートIDセンターのスポ ンサーが主導するEAN(欧州標準化団体)イ ンターナショナルとUCC(米バーコード標準化団体)のジョイントベンチャー。
目的はIC タグの実用化 ●オートID LABS:ICタグ技術に関する研 究活動を継続 オートIDセンターの主要メンバーは、現在実 施中のパイロット試験および二〇〇五年以降の段 階的な実用化を見据え、EPC普及のための今後 数年間にわたるプランを策定した。
多数の企業や 団体によってこのスタンダードを適用した技術が 初めて実用化されれば、設備やICチップの価格 が大量生産によって低下し、持続的な投資が可能 となるだろう。
27 JUNE 2005 EPCの標準化に際し、ISO(国際標準化機 構)はタグとリーダー間の情報交換を可能とする 全体的なプロトコル規約の設定を目論んでいる。
こ の作業は、ISO/IEC/JTC1/SC31 委員会が実施しており、ISO・一八〇〇〇シリ ーズとして発表される予定で、そこには以下七種 のプロトコルが含まれる。
●一八〇〇〇――1:語彙および定義 ●一八〇〇〇――2:一三五キロヘルツ未満 ●一八〇〇〇――3:一三・五六メガヘルツ(I SO一五六九三+オプショ ン) ●一八〇〇〇――4:二・四五ギガヘルツ ●一八〇〇〇――5:五・八ギガヘルツ ●一八〇〇〇――6:八六〇〜九二六メガヘルツ (UHF) ●一八〇〇〇――7:四三三メガヘルツ 発表スケジュールは当初の予定より遅れた。
以 上のプロトコルはすべて二〇〇四年一月には発表 を予定されていたが、最後の三つは二〇〇七年七 月に延期された。
また、ISO 一八〇〇〇――5は 取り消しとなった。
なお、この動きによってもたら されるのはEPCグローバルのようなICタグを利 用した情報交換フレームワークではなく、各周波 数に対応する単なる技術規格である。
早晩、IS O 一八〇〇〇とEPCグローバルのマテリアルの 仕様が統一されることになるだろう。
ICタグの実用化 ICタグ実用化は、主に次の五つのステップを 経て行われる。
●第一段階:「ビジネスモデル」を通じて、組織 内におけるICタグの経済効果を予測する。
こ の段階には一〜三カ月を要し、新たなプロセス の確立およびそれによる投資収益率を予測する ●第二段階:第一段階と並行して実施する。
IC タグ利用の馴化期間。
技術とそのオプションに ついて学習し、知識を蓄積する ●第三段階:タグのタイプとその貼付位置、リー ダーとアンテナの相互作用についての評価を行 う。
二〜八週間を要するこのステップでは、ト レース対象となる商品への「理論上の」パフォ ーマンス測定とともに、目的に応じたマテリア ル(タグ、リーダー、エンコーダなど)の選定 基準の確立、パイロット試験計画の策定を行う。
これらのテストは、この技術における主要な問 題、アンチコリジョンの認識にも寄与する。
ア ンチコリジョンとは、相互の交信障害を生じる ことなく、リーダーに複数のタグを同時に読み 取らせるアルゴリズム機能を指す。
現時点では、 同時に四〇〇のタグを読み取ることが可能とさ れているが、商品の成分(液体、金属など)や実行環境によってパフォーマンスに大きな差が 生じる。
これはタグの位置とアンテナのデザイ ンによる影響が大きい。
読み取りにおけるこの ような限界が、現実の作業プロセスへの適用を 制約している ●第四段階:パイロット試験の実施(二〜六カ 月)。
その目的は以下の通りとなる ――さまざまな制約がある現実の作業環境におけ るICタグ技術のパフォーマンスの確認 ――ICタグ用作業プロセスの決定 ――「ビジネスモデル」の策定および投資収益率の 最終確認 ――コアとなるビジネスモデルを展開するための 図2 ICタグの利用 生 産 ??調達 ??保管 ??生産 ??荷受け ??ピッキング・受注管理 ?荷積み ??貨物の位置特定 ??紛失・盗難防止 ??物流センターなどの資産運用 入 庫 輸 送 ??車両などの資産管理 ??流通管理 ?貨物とインボイスの確認 ?配送ルート決め 店 舗 ???荷受け ??万引を防止 ???ライン管理 ??チェックアウト ?リバース・ロジスティクス サプライチェーンにおけるICタグの活用度 ??荷受け ??貨物追跡 ??セキュリティ ?売上高アップ ?コスト削減 ?運転資金の削減 JUNE 2005 28 戦略決定 これらの実用化作業については、ハードウェア 部門(タグ、リーダー)とソフトウェア部門の各 オペレーターの間の調整役である外部の仲介業者 に、外注することが多い。
ソフトウェア部門のオ ペレーターは、インフラを提供し、現行の情報シ ステムにICタグの技術を組み入れる。
一方、ハ ードウェア部門のオペレーターは、タグやリーダ ーを供給するとともに、より高度なパフォーマン スを得るためのアンテナ調整、作業環境に合わせ たタグの調整、マテリアルの加工(パッケージン グ)などを行う。
マテリアルについては、ここ数 年間、十三・五六メガヘルツ用のものが既に出回 っているが、UHF用も生産が開始されたところ である(ICチップ、リーダーを含む)。
実用化に向けた最終段階は、修正されたコアと なるビジネスモデルの展開の中で経営側がとる戦 略によって変化する。
ICタグを戦略プランに組 み込み、市場(EPCグローバル傘下の工場や小 売業者)発展の原動力と位置付けて積極的に取り 組む企業もあれば、成熟度に欠けるこの技術に対 して模様眺めの態度をとる企業もあるだろう。
フランスにおける ICタグ早期普及の限界 サプライチェーンにおいてICタグを導入する ことは、以下の点における世界標準の事前整備が 必要となることを意味する。
●通信用プロトコル ●情報のコード化のための規格 ●コード化、情報サポート、読み取り、データ解 釈などに使用する装置 これらの条件が満たされれば、ICタグは魅力 的で信頼のおける安定した商品として普及し、そ の結果、より多くの企業が経費を削減できるよう になる。
ここでは、特に一部の限定された製造分 野内でのタグ適用については触れない。
その分野 では既にその採算性と付加価値について広く証明 されているからである。
それよりも、段階的に業 界に浸透していったバーコードと同様に、ICタ グが製造および販売業界において一般化するため の条件について見ていこう。
ICタグ導入達成のための重要な要因として、 以下のようなプラスの側面が挙げられる。
●オートIDセンターの研究使命と、ICタグ技 術を公表しPRする機関であるEPCグローバ ルの分割。
製造業者、小売業者、ICタグ技術 を用いたソリューション構築業者、公的機関お よびソリューション構築技術の成熟を目指す研 究者、それぞれの役割の正しい認識 ●二〇〇三年末以降、EPCによる仕様書の発表 により、ICチップの類型およびコード化の規 格に関する基準の採用が容易になり、かつ一般 的になったこと(標準周波数一三・五六メガヘ ルツおよびUHF、読取専用のパッシブタグお よび九六ビット容量のタグ)。
EPCの正統性 を認める業界全体がこれを採用するため、以上 の要素は安定したソリューションへの投資を可 能にする ●UCC、EAN、ISO、EPC、オートID センターなど、主要な標準化機構の歩み寄りと 共同研究 とは言え、フランスにおけるロジスティクス業 界でのICタグの導入のためには、いくつかの変 動要因を考慮すべきである。
●米国でコンテナの物流経路追跡に採用されてい るのはUHFであるが、一三・五六メガヘルツ の周波数は商品識別にはより望ましいものの、 その一方で読み取りの距離が短くなる 問題として以下の点が挙げられる。
●二〇〇三年末に予定されていたISOのUHF 基準の発表が延期されたこと ●この周波数は、フランス軍専用として利用され 図3 EPCスタンダード エレクトリック・プロダクト・コード サプライチェーンにおけるICタグ技術の適用 マーキング 識 別 管 理 解 釈 各商品上の統一的 かつ規格化された認識装置(EPC) サプライチェーン全体における 規格化したタグおよびリーダー EPCの解釈 および情報交換 情報の流れの管理 29 JUNE 2005 ており、民間企業が自由に使用することはでき ない。
特例により使用を認められても、サイク ルタイムと出力の点で、米国や英国、インド、 南アフリカなどの業界で使用されるものよりも はるかにパフォーマンスが落ちてしまう。
公的 部門にこの周波数の利用を拡大するための作業 が現在行われているが、二〇〇五年初めになら ないと具体的なことは分からない ●フランスではまだ、UHFのロジスティクスに おける産業的利用が可能となった場合を見据え て行われた研究成果が公表されていない。
この ようにICタグが一般的になるための経験を広 く共有していないことは、高性能で現行システ ムに適応可能なマテリアルの供給体制が十分に 成熟していないばかりか、一部のロジスティク ス作業への適用にあたっては、それが全く不十 分であることを示している。
その結果、現在使 用している技術に比べて高価になるために、厳 格な作業計画においては採算をとるのが難しくなる。
さらに、研究開発や新たな作業工程の発 案などにおいて、この技術が生み出すメリット を享受するための下準備が完備されたわけもな く、特許として確定したわけでもないことを考 慮しておくべきであろう ●本技術の適用が困難であるとみなされている金 属や液体を含む作業環境に特化したソリューシ ョン構築を行う業者も出てきてはいる。
しかし ICタグを信頼性が高く、スピーディーに大量 の商品を複数のパートナーと処理可能なシステ ムであると判断するには、実際の環境でどのよ うに機能するかを考慮する必要がある ●ロジスティクス業界向けのソリューション構築 図4 物流センターにおけるICタグの活用例 ?輸送 ?荷受け  ゲート型リーダー ●車両から荷降ろしの際の タグの読み取り ●ASNと関連させた荷受け 情報の自動管理 ?在庫の確認  敷地内にアンテナ、リーダー設置 ●リアルタイムの在庫調べ ●在庫情報を把握するためSAPの LESと併用 ?移動  敷地内にアンテナ、リーダー設置  ハンディ型リーダー/情報読み取り端末 ●在庫情報を把握するためSAPの LESと併用 ?ピッキング  敷地内にアンテナ、リーダー設置  ハンディ型リーダー/情報読み取り端末 ●倉庫システムとつながっているオ ペレーターによるピッキングの際 のタグの読み取り ●流通情報の確定および在庫情報を 把握するためSAPのLESを併用 ?仕分け・梱包  トンネル型リーダー  ハンディ型リーダー ●自動読み取りおよび自動仕分け ●梱包管理 ●自動コントロール ?出荷  ゲート型リーダー ●積み込みの際の読み取り ●積み込みおよび出荷管理 ●インボイスの作成 ●EDIデータ送信 ?一時保管  敷地内にリーダー設置  ハンディ型リーダー/情報読み取り端末 ●リアルタイムの在庫調べ ●敷地内を移動するときのICタグの 再読み取り JUNE 2005 30 の提案は始まったばかりである。
WMS(倉庫 管理)ソフトやERPソフトなどのシステムに 組み込む前段階での読み取りデータのフィルタ リングと調整を保証する「SAVANT」に必 要なデータ管理能力や、将来的なEPCデータ ベースの中に膨大な量に及ぶ個々の商品トレー ス情報を確保し、アクセス可能なものとする作 業についても同様である。
ICタグを共同プロ ジェクトとして考えた場合、タグの価格は、プ ロジェクトの予算書において氷山の一角でしか なくなる もう一つ、議論の必要があるのは、セキュリテ ィにかかる費用および個人のプライバシーの侵害 についてである。
現行のバーコードは、商品の個 別認識システムとして、顧客カードや支払い用カ ードにも応用され、日常の消費生活においては既 に馴染み深いものとなっている。
ICチップが一 般化すれば、識別のたびにリアルタイムで製品の 素性や履歴情報をより正確にたどることが可能に なる。
しかし、ローカライゼーションの面では、IC チップは、作動半径が限られるため、特にレジを 通過した時にその機能を停止することもできるよ うにすれば、携帯電話の場合ほどプライバシーを 侵害する危険はないと考えられる。
これを機に、 広く議論を再開することは意味がある。
同時にわ れわれの消費倫理を覆されることにもなるだろう。
将来は、商品や動物そして個人の電子認識カード により、国境の壁は低くなる。
そして最終的に、 電子チップや読み取りのための周波発信が広く使 用されるようになった場合、電磁波による健康へ の影響を予測することができるだろうか。
ICタグに特化した ビジネスモデル策定手順 ビジネスモデルの策定は、社内でプロジェクト の正当性を認めさせることが目的である。
マネジ メントのための意思決定手段であり、次のような 内容が盛り込まれる。
●プロジェクトの目的 ●プロジェクトが創造すると期待される価値 ●時機を得た改善の数量的説明、実用化に向けた 優先分野の特定 ●投資見積もりに対する見返りおよびその正当化 ●売上高の向上、開発費削減、投資最適化などの 点におけるプロジェクトの貢献度 ●厳格な投資収益率見積もりの上で、短期的には 数値として表われない質的な面での利点 ●結果を出すために実施上必要とされる努力 ●一定期間内の変化についての補足プラン ICタグプロジェクトは、純粋に技術的なプロ ジェクトとみなされることが極めて多いが、実際に は一連の全体的なプロセスの変革を意味しており、 企業やそのパートナーを巻き込んだライン上での 作業や方策についても考慮しなければならない。
トレーサビリティの真に有効なプロジェクトと するには、以下の三項目を網羅する必要がある。
●企業内のかかわる部署:購入、供給、生産、販 売、流通、輸送、品質 ●その影響のおよぶ範囲:サプライチェーン全体 ●関連する内外の部門や業者:供給業者、下請け、 工場、倉庫、ロジスティクス業者、輸送業者、 顧客、ユーザーなど よって、商品の広範囲における移動とともにロ ジスティクスの各段階において膨大なデータを対 象とする(アイテム、ブリスター、段ボール、パ レット、コンテナなど)。
作業上の最適化の問題 だけでなく、マーケティング、ブランドの保護、流 通経路の管理、セキュリティ、データの信頼性と 所有権、万引き、最終消費者のセキュリティ、問 題発生時のコミュニケーション対策という面にも 関係する。
また国によって文化的な面や消費活動 に違いがあることにも考慮する必要がある。
ICタグ導入の効果を測ろうとすれば、ロジス ティクスの作業面だけを見るのではなく、営業部 門や経理部門のような企業内の複数部署の協力を 得て、初めて全体が判断できるようになる。
ICタグの適用に関しては、それが月並みなツ ールを使用することとは全く異なるという考え方 が必要である。
普及のためには関係業界全体の協 力が不可欠で、そうでなければICタグの適用は、 現在広く普及し利用されているバーコード技術と は異なり、付加価値のないただの次世代技術とし て、孤立した企業プロジェクトで終わってしまう ことになるだろう。
※本稿は「Logistique Management 」誌の二〇〇四年第一号に 掲載された記事を、同誌の許可を得て翻訳した。
同誌はフラ ンスのボルドー・ビジネス・スクール内にあるサプライチェ ーン・エクセレンス機構が年二回発行しているフランス語に よる専門誌。
英語でも「Supply Chain Forum 」を年二回発 行している。
二誌の概要や同機構については、http://www.isli. bordeaux-bs.edu/ で閲覧可能。

購読案内広告案内