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佐高信
経済評論家
57 JUNE 2006
阪神電鉄株を取得して揺さぶりをかけてい
る村上ファンドが、取締役候補に住友銀行元
副頭取の玉井英二を挙げて、阪神電鉄側が驚
いている。 現在、玉井は同社の社外取締役と
なっているからだ。
私は玉井の名を聞いて、ここでも住友銀行
が出てくるのかと思った。 民営化された日本
郵政の初代社長に、やはり住友銀行の前会長、
西川善文がなったのに続く住銀OBの登場で
ある。
住銀が主力の三井住友銀行は中小企業への
金融商品の押しつけ販売で金融庁からお目玉
を食らってもいる。
西川の場合は、和歌山出身の竹中平蔵が
?関西人脈〞で強引に西川を郵政のトップに
持って来たことにキナ臭さが漂うが、それに
しても、あの磯田一郎の?申し子〞たちが勝
手放題をやっているものである。 残念ながら、
メディアにその視点から斬り込んだ解説は見
当たらない。
奥村宏と私の共著『揺れる銀行
揺れる証券』
(現代教養文庫)で奥村は、戦後の住友銀行に
は二人の天皇がいたとし、堀田庄三と磯田一
郎という二人の天皇が生まれる基盤、すなわ
ち権威主義的性格が強く存続している、と指
摘する。
人事管理を武器として展開したノルマ経営
効率主義によって行員はヘトヘトになるまで
働かされた。 そして「社会」とか「公共性」を頭の中からなくしていく。
私はそれを「銀行のヤクザ化とヤクザの銀
行化」と称した。 地上げ等でヤクザを使って
いるうちに、銀行はヤクザと見分けがつかな
くなっていったのである。 その象徴が住銀が
深く関わったイトマン事件だった。
住銀が「ヤミの世界の貯金箱」といわれた
平和相互銀行を吸収合併して以来、その過程
での金屏風疑惑とか、名古屋支店長射殺事件
とか、次々とヤミの世界との関係をうかがわ
せる事件が起こった。
「向こう傷は問わない」として、こうしたイ
ケイケ路線をリードした磯田がイトマン事件
で失脚して、住銀に明るさが戻るかと思った
が、一度その色に染められた?申し子〞たち
がまともな路線に復帰できるはずがない。 私
は玉井や西川には、イソダ菌、もしくはスミ
ギン菌が深く体内に入りこんでしまっている
のだと考える。
西
川は、磯田が失脚してから、「(磯田の)
負の遺産が大きすぎて、(住友銀行を立て直す)
経営ができなかった」とコメントしている。
しかし、西川こそが磯田の一番の継承者では
ないか。
私は今度出した『小泉よ
日本を潰す気か!』
(KKベストセラーズ)の第一章で、西川が郵
政のトップになった経緯に触れ、こう言った。
「(磯田は)イトマンのトップに汚れ役の河
村良彦を住友銀行から派遣するんだ。 河村は
何でも手を汚すというタイプでね。 磯田はそ
ういう汚れ役を巧みに使っていた。 それを考
えれば、やっぱり西川も同じようなことをや
るだろうな。 汚れ役を作って、成果が出れば
汚れ役を切って、最後は自分の手柄にする。
(磯田にとって)理念とか社会的責任とか、そ
んなものは全部後回しになる。 そんな環境で
育てられた優等生が西川善文なんだよ。
だから郵政公社に欠かせない社会的責任と
か、過疎の問題とかさ、そんなの西川の頭に
は全然ないだろうな。 郵便局の合理化やリス
トラを強行し、さらに進めて過疎地、地方を
殺すと同時に、社員をも殺していくという、
凄まじい経営が進行していくんだろうね」
ここまで言われて心外だと言うなら、ある
いは、自分は磯田の弟子ではないというのな
ら、パブリックという理念を高く掲げた経営
をやってみせてほしい。 すでに地方では郵便
局等の廃止が進んでいるという。 ダーティで
利己的な住友銀行というイメージは、これで
はますます膨らむだけだろう。
「ヤクザ化した銀行」の典型=住友銀行
イソダ菌まみれの人材が脚光あびる時代
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