ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年6号
管理会計
3PL料金の妥当性を評価する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2006 60 SCM時代の 新しい 管理会計 料金は妥当なのか 物流の外部化が言われて久しい。
すでに 多くの企業が倉庫内業務を含めた物流のア ウトソーシングを行っている。
一九九〇年代 後半からはサードパーティ・ロジスティクス (3PL)が効率化の手段として挙げられる ようになった。
さらに最新の物流施策大綱 では、地球温暖化対策の手段の一つとして も、この3PLが位置づけられている。
しか しながら実際には、うまく活用できていると 言える事例はそう多くはない。
3PLを利用している荷主からは、その 料金が妥当かどうか、効率的に作業が行わ れているのかといった疑問があがり、3PL 事業者からは、儲からない、もしくは赤字で あるとの不満があがる。
不思議なことにお互 いがWin ―Winではなく、Lose―L oseだと感じている。
また別に、外部から 見て明らかに高いと思われる料金であっても 満足している荷主がいる一方、明らかに安 すぎると思われる料金で満足している3PL 事業者もいる。
このような関係性の問題は、物流コスト についての認識がいまだ3PLという外部委 託の形態に対応していないことに起因する。
アウトソーシングを前提とした、アウトソー シング活用のためのコスト管理が求められる ようになってきている。
比較の困難な3PL料金 荷主にとって委託物流のコストとは、物 流事業者に支払う料金を指す。
問題は、そ の妥当性が必ずしも正確に判断できないことにある。
従来型物流業の機能別料金であ れば、比較的容易に妥当性を判断すること ができる。
たとえば坪当たり単価、保管料、 作業要員の一日あたり料金、スポットの傭 車などは、類似する場所や作業内容を行っ ている他社の料金をベンチマークすることに より比較検討できる。
だが、3PLにおいて最終的に提示され る料金を他社とベンチマークするのは難しい。
その理由としてまず、作業内容が顧客固有 の業務に強く依存した、手作 りのサービスと なっていることが挙げられる。
仮に同一業界 の物流サービスがほとんど同じであるのなら、 もっと共同化が行われてしかるべきである。
3PL料金の妥当性を評価する 3PLは個別企業のニーズに合わせた複合的なサービスを提供す る。
その事業範囲は日常のオペレーションの管理運営だけでなく、 パフォーマンスの把握や生産性向上にまで及んでいる。
それだけに 荷主が3PL料金の妥当性を評価するのは容易ではない。
第15回 梶田ひかる アビーム コンサルティング 製造事業部 マネージャー 61 JUNE 2006 共同化が往々にして頓挫するのは、同一業 界の荷主同士で、サービスも類似しているよ うに見えても、実際には異なるサービスが求 められるからである。
3PLにおいては料金体系そのものも顧 客ニーズに応じてカスタマイズされたものと なっている。
入出庫料であっても、ケースあ たり、キログラムあたり、通過金額あたりと まちまちである。
さらに複雑なのは流通加工 や事務処理の料金である。
値札付け、袋詰 めなどの個別サービスについては、一つの物 流会社の社内であっても、センターによって、 あるいは荷主によって、業務の範囲、料金 とも異なることが多い。
このような問題の解決策として、これまで 様々なアイデアが考案され、試行されてきた。
その一つに生産 性のベンチマークがある。
た しかに、委託料金が人日あたり、残業一時 間あたりという契約の場合であれば、荷主、 物流事業者の双方が生産性の把握を行うべ きである。
しかし倉庫の面積、レイアウト、使用荷 役機器の種類、貨物の形状などにより、一 人時あたりの入庫ケース数、出庫ケース数は大きく異なる。
多くのセンターで複数の業 務を行っている物流事業者側であれば、類 似する作業の生産性を比較することもでき るが、荷主には難しい。
ABC(活動基準原価計算)を活用した 料金体系も試みられた。
普遍性のあ るアク ティビティをベースにコストを把握すること で、仕組みの違いを考慮する必要がなくなる ため、ベンチマーキングが可能になる。
しか しながら、それを算出する物流事業者には多 大な負担がかかる。
荷主側でも料金計算の 負荷が増すことから敬遠されるケースも見ら れる。
3PLの場合、基本的にオペレーション の管理は3PL事業者側の役割であり、荷 主が自らオペレーションの生産性やコストの 実態を調査する必要はない。
コスト低減の ための各種活動も3PL事業者に依存せざ るを得ないし、また依存できるからこそ3P Lを使うわけである。
それだけに、いったん 稼動したシステムについて、荷主が物流コス ト の妥当性を検証するのはかなり困難である。
コストは見積もり段階で決まる それでは荷主はどこで3PLにおける物流 コストの妥当性を判断すれば良いのであろう か。
そのチャンスは委託決定時にある。
さら にいえば、委託料金の大枠は、リソースの見 積もり段階でほぼ決まってしまう。
一般的なカスタムメイドのシステムの料金 決定の流れは、図1のようになっている。
ま ず作業条件を明確にする。
通常のサービス は何か、イレギュラーなケースとしてはどの ようなものがあるのかなどを見極める。
次に、 ここで洗い出された作業のそれぞれについて、 どれくらいの量が発生するのかを算出する。
保管は何アイテムでそれぞれ何ケースか、ケ ースピッキングは何ケースでバラピッキング は何個かなどを、各種データを分析して導き 出す 。
サービス内容と作業量が固まると、それを 元にシステムが設計される。
その設計に基づ いて、それぞれのプロセスの作業量を整理する。
それを個々のプロセスの生産性数値で割 る。
この生産性数値には類似する作業を行 っているセンターの計測値を持ってくる。
そ の結果、必要なリソースが導き出される。
坪 数はいくら、ピッカーは何人時、フォーク運 転者は何人、ラックは何個といったように、 人物別に必要量を算出するのである。
リソース別の必要量にリソース単価を掛 け合わせば、それぞれのリソースの提供金額 が算出される。
そしてリソース別提供金額を 合算したものが、システム全体の推計委託 金額になる。
ここまでの計算結果に基づ いた 図1 見積もりの手順 作業詳細条件の明確化 作業別作業量把握 リソース別必要量算出 リソース別月間費用見積もり 管理・情報その他リソース見積もり 料金体系設定 JUNE 2006 62 料金が通常、委託先を選考する段階で荷主 側に提示される。
つまり、ここまでの数字で 委託先は決定されてしまうのである。
最終的な料金体系は委託先決定後の詳細 見積もりの後に決定するのが一般的だ。
た とえば荷主が通過金額制を希望すれば、シ ステムを詳細に詰めていく過程で、先に算出 したリソース金額をベースに見積もりの精度 を高め、最終的な推計委託金額を通過金額 で割って率を算定する。
このように3PL事業者にとっては、提 案時の金額こそが入札の合否を決めるカギ となる。
さりとて見積 もり金額を抑えすぎる と赤字になる。
また荷主の提示した作業条 件のデータが粗過ぎる場合にも、赤字になる リスクは高まる。
そのため習熟した3PL事 業者は提案書に見積もりの根拠となる生産 性とリソース単価を提示し、条件が異なる 場合は最終的な金額が変動する可能性があ ることを明記する。
条件の詳細が見え、見 積もりの精度が高まった段階で最終的な契 約を結ぶ形に持って行く。
一方、荷主にとっては、提案 を受けて委 託事業者を決定した時点で、そのシステム の稼動後のコストがほぼ確定してしまうこと になる。
自らの提示した条件が粗過ぎれば、 委託先決定時点での想定金額と実際の契約 金額に大きな差が出てしまう。
条件が粗い まま契約に持っていけばシステムトラブルの 発生するリスクが高まる。
3PL事業者の 見積もり精度が低いのにそれを見逃してしま うことでも、同様のリスクが生じる。
どの3PL事業者であっても必要となるリソースの単価には、それほど大きな違いは ない。
先述のように、リソースは生産性と処 理量から導き出される。
したがって荷主が処 理量の前提となる条件を明示できている限 り、想定される生産性がシステムのコストを 規定する最も重要なファクターになる。
3PLの場合、荷主が物流コストをコン トロールするために必要になるのは、コスト についての知識以上に、提案時に見積もら れた生産性についての妥当性を検証する能 力なのである。
そして3PL事業者にとって も 、収支を決定する重要なファクターが、こ の見積もりであることはいうまでもない。
コストを均す 3PLにおいて考慮すべきもう一つの点 として、コストをどう平均化するかというこ とが挙げられよう。
コストを均すことは、荷 主が3PLを活用する意義の一つでもある。
物流システムのライフサイクルコストを見 てみよう(図2)。
3PL事業者は提案まで にシステムの企画や見積もりを行うためにコ ストを費やす。
さらに受託決定後から稼動 までの間も、情報システムの整備、センター 内の詳細設計、作業者用マニュアルの作成、 移転の準備、テストなど、さまざまなコスト が発生する。
また稼動したシステムは、当初は想定した 生産性が確保できないのが常である。
その場 合、レギュラーの作業要員に加え、生産性 向上のための要員がそのセンターに投入され ることになる。
期待される生産性を実現する までには、一般に稼働から数カ月はかかるよ うである。
こうしてシステムが安定しても、その後の 出荷量の変化、納品先からの要求サービス や入荷元の変化、商品の形状変化などのさ まざまな環境変化により、数年後には対応 が限界に近づく。
そこでまた新たなシステム が検討され、開発され、そして移行され、一 図2 物流システムのライフサイクルコスト 入出庫条件変化に システム改善 よるコスト上昇 △移転 △移転  検討開始 △稼動後一年 △稼動 △提案 費用累計 稼動直後 システム安定化活動 移転 機器類導入 63 JUNE 2006 つのシステムが終焉を迎えることになる。
ここであげた物流コストは3PL事業者 側で発生するコストである。
それは必ずしも 荷主の物流コストと同じではない。
荷主にと っての物流コストとは、あくまで3PL事業者に支払う料金である。
実際、稼動までに 3PL事業者が負担するコストは、移転の 費用を除いてこれまでは荷主に請求されない ことが多かった。
情報システムのアウトソーシングにおいては、システムの計画から稼動までにかかるコ ストを開発費として、稼働後の運用費とは 別に請求するのが既に一般的となっている。
情報システムの場合、運用時のコストよりも むしろ開発費の金額のほ うが大きい。
そのた めアウトソーサーは、リスク回避のために開 発費と運用費を分けた料金体系にする必要 があり、それを委託者側も認識している。
物流システムのアウトソーシングも、情報 システムと類似する点が多い。
いずれも委託 者側の大きな狙いは、それまで固定費として 負担していた費用を、処理量に連動するよ うに変動費化することにある。
両者の違いは 物流システムの場合、少なくとも従来は、稼 動までの費用と比べて稼動後の費用の方が 圧倒的に大きかったことである。
それが開発 費を稼動後の料金に上乗せして回収すると い う商慣習を招いた要因と考えられる。
それらの費用は3PL事業者側の一般管 理費の中に吸収され、本社経費として、見 積もり、あるいは請求料金に載せられてきた。
だが物流システムの複雑化が進んでくるにつ れ、今では一般管理費のウェイトが目立つ ほど大きくなってきてしまっている。
そのこ とは物流事業者の費用構成についての各種 調査でも経年変化として現れている。
事業として3PLを行う以上、3PL事 業者は物流システムのライフサイクルの中で 利益を得る必要がある。
利益を得るための 仕掛けとして現在、?稼動前の導入 費用に ついての荷主への請求、?契約期間の明示 化が行われてきている(図3)。
情報システ ムと同様、物流システムも稼動までにかかる コストを別料金化する時代に来たのである。
そのコスト根拠を明確にするために、3P L事業者においては、一般管理費の直接費 化、つまりその荷主に対して、提案から安定 稼動までの移行期に、どれだけのコストがか かったのかを明確化しようという動きが目立 ってきている。
3PLの進展に合わせて、物流コスト管 理も進化させていく必要がある。
そのうち今 回はシステムおよび生産性検証力の向上、システムライフサイクルコストの考慮 、コスト の均し方を取り上げた。
そこで見たように従 来とは明らかに異なる知見が求められるよう になってきているのである。
図3 ライフサイクルコストと費用回収 輸送料 保管料 荷役料、等 輸送料 保管料 荷役料、等 設備・機器等導入 ・設置料金 設備・機器等導入 ・設置料金 移転費用 移転費用 導入サポート料 金額累計 △移転 △移転  検討開始 △稼動後一年 △稼動 △提案 △移転 △移転  検討開始 △稼動後一年 △稼動 △提案 金額累計 契約期間を規定する 稼動までにかかった 費用は設備・機器等 料金を高めに設定し て一部回収、残りは一 般管理費として料金 に上乗せして回収 売上累計 売上累計 費用累計 費用累計 稼動までにかかっ た費用の一部を導 入サポート料金と して回収 従来型費用回収パターン 費用回収パターンの見直し かじた・ひかる 一九八一年南カリフォルニア大学大 学院
錬匳せ亮萋澄
同年日本アイ・ビー・エム入社。
一九九一年日通総合研究所入社。
二〇〇一年デロイト トーマツコンサルティング(現: アビーム コンサル ティング)入社。
静岡県立大学非常勤講師。
ロジステ ィクスABC、ロジスティクス中長期計画策定、在庫 削減プロジェクトなど、ロジスティクスの企画・管理 に関するコンサルティングと研究を中心に活動中。

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