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JULY 2006 86
いるが、医薬品市場ではまだ対応できていない。 SCMを普及支援する
仕組みとして、医療情報システム開発センターが、医療機器データベ
ース(製造販売業者が登録し内容の責任をもつ)を無料で提供してい
るが、普及のスピードは速いとは言えない。
医薬品のバーコード表示は今年3月に厚生労働省から「医療用医薬
品へのバーコード表示の実施について」が発表され、パブリックコメ
ントが募集されている。 バーコードの標準にはUCC/EAN-128が採
用された。 商品コード(メーカーと製品を特定)、有効期限/使用期
限、数量、ロットナンバーを記録し、読み取れる。 外箱と中箱だけで
なく、個装も表示を取り決めている。 RSS14、RSS14スタックドも選
択でき、小さなアンプルまでも表示可能としている。
今年7月にガイドラインができ、2007年から表示するよう予定され
ている。 これにより医薬品・医療材料の両市場でバーコードによる標
準化が整うことになり、医療現場のIT化・SCM・トレーサビリティシ
ステムの普及が期待される。
薬事法改正により2003年7月から生物由来製品(特定も含む)につ
いては、メーカー・卸で最長30年間のデータ保管義務が発生した。 ト
レーサビリティシステムが必須となり、「生物由来製品譲渡報告書共
同整理システム(MeBiTS)」が開発・運用されている。 大手5社参加
で70%対応、医療機関・取引先コードを一元化して確実なトレーサビ
リティを実現、卸も無料で利用でき、使い勝手の良いシステムとなっ
ているが、バーコード・RFIDを利用している訳ではない。
RFIDの活用例には、患者のリストバンド・投薬ラベル・看護師ラ
ベルで患者取違いミス・投薬ミス防止がある。
6. 加工食品・生鮮品市場の自動認識表示の現状
この市場は、原材料メーカー・加工食品メーカー・卸・小売と企業
間が複雑に関係しており、表示の標準化が出来ていない。 原材料メー
カー・加工食品メーカーでは「履歴情報遡及システム調査検討委員
会」を発足させ、2004年に「ガイドライン」で表示標準を示した。 必須
表示項目は、商品コード14桁・製造日6桁・賞味期限6桁・ロット番号
最大14桁とバーコードUCC/EAN-128で可能にしている。
生鮮品市場は、ITが普及していない市場で、「食品流通構造改善促
進機構」が「物流標準ラベルガイドライン」を定め、推進している。
その表示は、UCC/EAN-128を基本としており、加工食品メーカーと
の連携が可能である。 この市場でもRFID実証実験が行われているが、
費用対効果・表示標準/SCMの現状から実用化していない。
7. RFIDが使われている現場、使える特徴
RFIDは汚れに強い、遮られてもデータが読めるという特徴が活か
されて、小売店で販売確認処理・返品処理・店間移動・棚卸処理・入
荷処理など繰り返し使用できる仕組みで使われ始めている。 そのほか
実証実験で小売の現場で販売促進の効果が認められ実用化され、偽造
防止機能使用例でチケット、RFIDとラベルの組み合わせ例で通い箱
管理、繰り返し使用でコストが下げられるリライトペーパーへのRFID
の組込み組み合わせなどの普及が考えられる。
講演から認識を新たに!
バーコードは、使い方の蓄積・工夫・低コストからまだ十分使える
領域がある。 RFIDは特徴をよく見極め、RFIDでなければ改善できな
い領域・効果が大きい領域がある。 バーコードとRFIDの特徴をうま
く組み合わせたSCM・トレーサビリティシステムの構築・推進が大切
と認識を新たにした。
2006年7月度のフォーラムは7月13日(木)「ロジスティクス施設の見
学」として、全日空・羽田整備工場の見学を予定している。
このフォーラムは年間計画に基づいて運営しているが、単月のみの
参加も可能。 1回の参加費は6,000円。 ご希望の方は事務局(sole-joffice@
cpost.plala.or.jp)までお問い合わせください。
SOLE報告
The International Society of Logistics
次回フォーラムのお知らせ
SOLE日本支部フォーラムの報告
SOLE日本支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス
技術、ロジスティクスマネジメントに関する活発な意見交換、議論を
行い、会員相互の啓発に努めている。 シリーズ第7回となる5月17日
のフォーラムでは、電子タグ(RFID)の現場の取り組みに焦点をあ
て、社団法人日本自動認識システム協会・医療自動認識委員会委員
長の白石裕雄氏を招き、講演を聞いた。
1. 安全と安心が求められる、メディカル市場と食品市場
白石裕雄氏は「食品トレーサビリティシステム標準化推進協議会
(農業情報学会)」の幹事でもあり、「安全と安心のためのトレーサビ
リティと自動認識表示」の視点から、メディカル市場と加工食品市
場に深くかかわり、活動している。 以下、講演の概要を紹介する。
2. RFIDは次世代バーコード?
RFID関連製品としては、インレット・RFラベル・RF値札・それ
らを作成する値札/ラベルプリンターなどが2年ほど前から開発、販
売されている。 価格はRFラベル約100円、プリンター約60万円であ
るが、導入が進んでいるとは言えないのが実情である。 RFIDとバー
コード・2次元コードの性能を比較すると、RFIDは大きさが比較的
大きいことと価格が高いこと以外、データ量、データ書替えができ
る、対環境性(汚れ)が強い、遮蔽物を透過、複数同時認識などの
点で優っている。 それにも係わらずRFIDの導入が進んでいないのは
何故か? SCM(サプライチェーンマネジメント)とトレーサビリテ
ィの視点から整理し両市場の現状を述べる。
3. SCMとトレーサビリティ
SCMでは、原材料メーカー・セットメーカー・卸・小売業の“商
品・情報・お金の流れ”を、全体最適・企業間パートナーシップ・
消費者の視点で進め、在庫削減・売上予想精度向上・的確な情報伝
達・効率向上・利益率向上・資金有効活用などの努力がなされてい
る。 トレーサビリティシステムでは、メーカーは何処にどれだけの
在庫があるのか見えるようになり、SCMの効率を上げる。 また、問
題発生時、市場に出回った同じロットを特定し、迅速に回収し、被
害拡大を防止できるほか、問題ロットの生産工程を特定でき、原因
が早く明確に突き止められる。 メディカル市場・加工食品市場とも
このニーズは強い。
4. トレーサビリティ必須の背景とその実現
薬害エイズ問題…1981年にエイズの報告があり、血液製剤の危険
性が危惧され、1997年10月末で死亡者485人を含む発症者628人、累
積感染者1,495人の被害がある。 狂牛病…1996年3月に英国政府発表
以来、2001年9月現在英国で107人の症例が報告されている。 鳥イン
フルエンザ・豚コレラ・偽装表示・異物混入・O-157・未認可添加
剤使用・残留農薬野菜等の事件・事故の多発。 血液製剤フィブリノ
ゲンによるC型肝炎汚染…1980年以降29万人に使用され、納入医療
機関は7,004カ所に上るが、在庫調査等で把握できた医療機関は500
カ所(7%)に過ぎなかった。
これらの問題に対処するには、トレーサビリティの実現が必須と
認識された。 その実現には情報の連携が不可欠であり、標準化され
たコードを、自動認識可能な表示にして、サプライチェーンの上流
で製品に表示する必要がある。
5. メディカル市場の自動認識表示の現状
メディカル市場は、医薬品と医療材料(医薬品以外で治療に使う
もの)に分けられる。 それぞれの市場の特徴は、医薬品は約1万5000
アイテム・箱もの主体・大手メーカー集約であること、医療材料は
約30万アイテム・形状や包装形態が多種多様・メーカー数が多いこ
とである。 バーコードの導入は、医療材料市場では約70%普及して
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