ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年7号
管理会計
トラック運賃体系を工夫する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SCM時代の 新しい 管理会計 JULY 2006 62 いろいろある運賃体系 トラック運賃の料金表(タリフ)は輸送 原価を元にして検討され、決定される。
我 が国のトラック運賃は、規制緩和により、当 初の認可制から届出制に変わり、さらに原 価計算書の添付を不要とする範囲も拡大し ている。
それでも各種のタリフが輸送原価を ベースにしていることは変わらない。
当然ながら、荷主が支払う運賃は、輸送 原価と同じではない。
基本的に運賃には輸 送事業者の利益が上乗せされている。
輸送 事業者が儲けすぎているのであれば、荷主と しては運賃の値下げを図りたいところだ。
し かし、実際には支払い運賃が原 価よりも低 いことも珍しくない。
荷主と実運送事業者 との間に3PL事業者等の仲介業者が介在 するケースでは、なおさらそのようなことが 起こり得る。
荷主の多くは3PL事業者に対して、発 生する支払い物流費を可能な限り平準化す ることを求める。
そのため3PL事業者側 では時に、荷主から収受する運賃と、実運 送会社に支払う運賃との間で逆ざやの発生 することがある。
もちろん、それが恒常化す れば3PL事業者はトータルでも赤字にな ってしまう。
その結果、荷主は運賃の値上 げを受け入れるか、あるいは3PL事業者 の撤退というリスクを覚悟しなければならな いことになる。
運賃 体系にはいろいろな種類がある。
しか しながら運賃体系についての荷主の認識は 驚くほど低い。
もちろん自社で実際に使用 しているタリフは知っている。
同業種であれば運賃体系も類似していることが多いため、 同業他社についても分かっている。
しかし、 他業界で使用されている運賃体系について は、ほとんど知識がない。
運賃の相場についても、実運送事業者は 詳しいが、荷主になると知らない企業が多く なる。
荷主の多くは決まった顔ぶれの輸送事 業者と長期にわたり固定的に付き合ってい る。
そうした荷主のほとんどが、ずっと昔に 契約を結んだタリフをもとにして、その後の 運賃交渉を行っている。
荷主にとって運賃体系は、作り方次 第で 輸送事業者の効率化努力を促すことのでき る、有力なツールになり得る。
物流を効率化 トラック運賃体系を工夫する 日本企業のロジスティクスコストの過半は、トラック運賃が占め ている。
その相場については、従来から多くのマネジャーが関心を 寄せてきた。
しかし運賃体系そのものについての理解となると、は なはだ心許ないのが実状だ。
運賃体系は工夫次第で協力輸送会社に 効率化の努力を促す有力なツールにもなり得る。
第16回 梶田ひかる アビーム コンサルティング 製造事業部 マネージャー 63 JULY 2006 するための取引条件の適正化に向けた、営 業部門のモチベーションアップにも利用でき る。
また物流コスト管理を簡素化することも できる。
規制緩和の進んだ今、極端な言い方をす れば、運賃体系はどのような形にでもできる。
輸送事業者側も、それで安定的に利益を確 保できるのであれば荷主側のニーズにできる だけ応えようとしている。
そのようなことか ら、各所でいろいろなタイプの運賃体系が考 案され、独自タリフが使用されている。
本稿の前号で解説したように、荷主企業 の物流部門、あるいは3PL事業者は、ま ず輸送原価の構成を知った上でコスト低減 のための仕組みを 考える必要がある。
そして 仕組みの改変による輸送原価の変化を把握 し、それを元に適切な運賃体系を検討し、輸 送事業者と合意する必要があるのだ。
運賃相場を理解する 運賃体系の検討に先立って理解しておく 必要のあるものに運賃相場がある。
原価を 知れといいながら相場も理解しろというのは 奇異に感じられるかもしれない。
しかし矛盾 はしていない。
現状の輸送の多くは、傭車を 使用している。
独自のルート便や共同配送 便を構築するとしても、ほとんどの場合、傭 車の調達が必須となる。
その調達価格の目 安となるのが運賃相場である(図1)。
輸送コスト管理のために運賃相場を常に 把握しておく必要があるということは、従来 から指摘されてきた。
だが運賃になぜ相場が あるのか、それはどのようなものなのかとい うことを解説した資料は少ない 。
OJT(オ ン・ザ・ジョブ・トレーニング)によって経験から学んでいるのが実態であろう。
あまり ご存知ない方のために、ここで簡単に説明し ておく。
トラック運賃のうち、相場が成り立つのは、 汎用的なタリフのあるサービスと、需要の多 い幹線輸送である。
トラック運賃の汎用的 なタリフとは、国土交通省に届け出された一 般貨物貸切の「距離制・時間制運賃」と、混 載輸送用の「積み合わせ運賃」である。
い ずれも相場は基準となる届け出タリフ(何年 度)の何パーセントというように表すのが一 般的だ。
ただし東京〜大阪、東京〜名古屋 のように特に需 要の多い幹線輸送の一般貨 物貸切は、タリフベースではなく実額で相場 の値を表すケースことが多い。
相場の基準となっているタリフは、輸送原 価をベースに作られている。
ドライバーの人 件費や車両費、運行費などの個々のリソー スのコストと、実車率、積載率などの予測 に基づいて、タリフ上の個々の値を決める。
仕組みを工夫することで、実車率や積載率 を高めることができれば当然、輸送原価は下 がる。
しかし、輸送業者にいきなりコストの開示 を求めても反発される恐れがある。
そうでは なく荷主側で運賃相場と、想定されるリソ ー スコストや現状の仕組みから原価を試算し、仕組みの改変によるコストの変化を分析 した上で、輸送業者と交渉を行う。
そのよ うなアプローチの方がスムーズにかつ短期に 効率化を実現できる。
独自タリフが存在する理由 独自タリフを望むのは荷主側であり、その 理由は先述のようにいくつもある。
荷主にと って、基本的に物流コストは可能な限り売 り上げと比例する形になっているほうが望ま しい。
実際の対売上高物流コスト比率は、繁 忙期に下がり、閑散期には上がる傾向があ 図1 運賃と原価 荷主ニーズ、3PLニーズを考慮して決定 積み合わせ、往復実車、高度な運行管理等の 仕組みを含めた輸送原価 自らの利益・相場を考慮して運賃設定 車種単位等の輸送原価 荷主(メーカー・卸・小売) 3PL事業者 輸送原価 実運送事業者 輸送原価 運賃 運賃 JULY 2006 64 る。
これを改め、売上高対比を平準化でき れば、予算作成と実績管理が容易になる。
運賃請求のチェック業務を簡素化したい という狙いもある。
時間制貸切運賃では、 日々変動する使用車両台数や車両ごとの使 用時間を集計し、その妥当性を検証する必 要がある。
売上高に対比した形の運賃体系 を採用することで、そうした管理の手間が軽 減される。
同様に、常に価格が変わる長距 離のスポット運賃の場合も、出荷伝票に直 接的に紐付く形の運賃にすることで、検証 が容易になる。
荷主が独自タリ フを望むこれら二つ の理由に加え、一九 九〇年代からは新 たに、納品条件によ るコスト差を反映す るような運賃体系を 望むケースが散見さ れるようになってき ている。
注文をまと めて車両単位で納 品することで、どれ だけのコスト低減に なるのか。
あるいは 納品先での付帯作 業条件によって、コ ストがどう変わるの か。
そうした条件の 違いを、支払い運賃にダイレクトに反映させ る体系だ。
そのような運賃体系を採用することで、荷主側の改善努力を、そのまま輸送コスト低 減に結びつけることができるようになる。
納 品条件変更に伴う納入価格変更のシミュレ ーションも容易になるため、納品先となる取 引先との交渉にも役立つ。
以降に、代表的な独自タリフの作り方と そのメリット・デメリットについて、簡単に 紹介しよう。
「重量・距離制」独自タリフ 食品や鉄鋼など、製品特性上、物流コス ト負担力が弱く、大量に輸送が発生し、か つ近距離、複数個所降ろしを行うような業 界では、古くから多くの荷主が「重量・距 離制」の独自タリフを作成し、それを使って 運賃請求・支払いを行ってきた。
その具体 的な体系は、業種・企業により重量区分や 距離区分、金額の違いはあれど、概ね図2 のようになっている。
このタリフのメリットとしては、?出荷指 示と運賃がダイレクトに紐付けされること、 ?売上とほぼ比例する運賃になること、? コストに比較的連動した形の運賃となるこ とな どがあげられる。
実際、?の特徴を活か して、これらの業界では昔から運賃チェック 業務の簡素化を実現している。
具体的にはまず、各納品先についてデポ からの距離を調べておく。
そして独自に作成 したタリフに基づき、日々の出荷データから 輸送事業者が請求するであろう運賃とその 明細を作成する。
輸送事業者側では日々荷 主から送付されるそれらの運賃明細をチェッ クし、間違いがないかを確認する。
月締めの 時には、それらを合計した金額で請求書を 作成し、荷主に送付するという方法である。
この運賃計算プロセスは、後にマイケル・ ハマーが「リエンジニアリング」の成功事例 として取り上げたフォード社のサプライヤー に対する請求支払業務の抜本的改革(ERS: Evaluated Receipt Settlement )と似通っ ている。
日本の方がはるかに昔からプロセス 図2 重量ー距離制運賃体系(例) ケース区分A (〜5kg) ケース区分B (5〜10kg) ケース区分C (10〜15kg) ※業種により重量区分の作り方、距離区分の方法などは異なる。
※個々のセルにある運賃はあくまでイメージであり、実際のものとは異なる。
ケース重量区分 〜5km未満 5〜10km未満 10〜15km未満 15〜20km未満 100 120 140 180 130 160 190 220 150 200 250 300 図3 通過金額制運賃の作成手順 輸送事業者 荷主事業者 年間輸送 商品価格 推計 年間運賃推計値 運賃体系合意 輸送件数・ 重量推計用 基礎データ提供 販売計画 必要台数見積もり 年間商品通過金額 年間輸送コスト推計 運賃を商品通過額の○○%とする 65 JULY 2006 の抜本的改革を行ってきたのである。
もっとも、輸送管理の有効な方法の一つ として広まったこの「重量・距離制」の運 賃体系も、現状では?のコストとの連動の 点で問題を抱えている。
一つは、輸送原価 と運賃との乖離である。
このタリフは元々、 輸送事業者との間でコストを完全にオープ ンにすることにより作られた。
その時点では コストと運賃はほぼ連動していた。
しかしそ の後、各種コストの上昇に合わせ、一律何% ずつの値上げという改訂を繰り返してきたた め、現時点では個々の料金に着目すると原 価との若干の開 きが出ている。
二つ目は、輸送ロットの違いによるコスト の変動が反映されないことである。
多頻度小 口配送を是正しても運賃に変化が生じない のである。
そのため、この運賃体系を用いて いる各社では、ロットの違いによるコスト差 を反映するような小口貨物のタリフに作り変 える、あるいは量の多い輸送については別の 運賃体系を新たに導入するなどの工夫を行っている。
通過金額制運賃の功罪 運賃が売上高と完全に比例しているので あれば、輸送コストの管理は対売上高輸送 コスト比率だけを見ていれば済み、月次予算 も組みやすくなる。
輸送コストについての予 実分析も不要となる。
流通業では、このよ うな運賃体系を採用しているケースが多く見 られる。
運賃を商品価格で割り、商品価格の何% を運賃とするという方法である(図3)。
荷主はその輸送により運ばれる商品の価 格を試算し、輸送事業者に提示する。
輸送 事業者はそれに基づき物量を細かく試算し、 年間にか かる運賃の総額を見積もる。
この運賃体系が、九〇年代の低価格化進 展に伴い、輸送事業者に大きなしわ寄せを 与えている。
低価格化が進展すると、運ぶ ものの重量・容積が同じでも、その商品価 格は低下する。
本来であればこのような運賃 体系は、実際のコストを基準にして定期的 に見直す必要があるが、残念ながらそのよう な契約になっているケースは少ない。
そのた め運ぶ量は増えたのに運賃収入は変わらな いという現象が起きている。
それでも、この運賃体系は定期的な見直 JULY 2006 66 しさえ行えば、むしろ利便性は高いといえる。
輸送事業者は年単位等の長期の契約を前提 として、実際のコスト波動と荷主の売上波動 の間で、金額的なバッファーとしての役目を 担うことができる。
また輸送事業者は自ら効率化を進めることで、自分の利益を増やすこ ともできる。
すなわち通過金額制運賃は、輸送事業者 にコスト低減へのモチベーションが働く、3 PL的運賃体系の一つであるともいえる。
契 約書上に毎年の見直しを明記すること。
それ がこの運賃体系を用いる場合の留意点である。
「ABC運賃」の可能性 物流ABC(活動基準原価計算)を活用 して、輸送原価を回転数、積載率、積込時 の条件、荷卸時の付帯作業条件などの活動 別コストまで分解し、それを組み合わせるこ とで運賃体系を作成することもできる。
「A BC運賃」とも言われる。
(図4)物流AB Cを使うことで、宅配便や路線便、共同配 送便等の混載輸送についても、経路毎にコス トを計算することができる。
ただし、この場合でも個々の輸送コストと タリフは、必ずし連動するというわけではな い。
実際にABCで分析する と、近距離輸 送であっても、積載率をはじめとした輸送条 件の影響で、往復実車・高積載率の確保が 望める遠距離輸送より、コストが高くなるこ とがある。
しかしながら、コスト構造につい てよほど荷主に理解がない限り、近距離の方 が長距離より高いという運賃体系は受け入れ られない。
またいくら輸送事業者側でコスト がかかっていようとも、一般の相場と乖離し た運賃は認められ難い。
従来から取引のある荷主と輸送事業者と の間で、既存の輸送について料金体系を変更 する場合には、ABCの分析結果をそのまま 反映させるだけでなく、総額で既存の取引と の差があまり出ないように調整するなどの工 夫が必要になる。
それでも、これらの点さえ 気を付ければ、コストにほぼ連動する運賃体 系が実現する。
このようにトラック運賃の体系にも、様々 な工夫ができる。
アウトソーシング時代を迎 え、ロジスティクスコスト管理にお ける「アウトソーシングの価格体系の決め方」の重要 性は増している。
今号ではそのうち運賃体系 について、代表的なものを取り上げた。
ほと んどの業種で輸送コストは、ロジスティクス コストの半分以上のウェイトを占めている。
それを管理するために今一度、望ましい運賃 体系を検討してみるのは有効である。
かじた・ひかる 一九八一年南カリフォルニア大学大 学院
錬匳せ亮萋澄
同年日本アイ・ビー・エム入社。
一九九一年日通総合研究所入社。
二〇〇一年デロイト トーマツコンサルティング(現: アビーム コンサル ティング)入社。
静岡県立大学非常勤講師。
ロジステ ィクスABC、ロジスティクス中長期計画策定、在庫 削減プロジェクトなど、ロジスティクスの企画・管理 に関するコンサルティングと研究を中心に活動中。
図4 輸送条件の違いを反映した個々の輸送のコスト(例) 例:10トン車による貸切輸送(10トンを200km輸送) 人件費 運行三費 車両・保険・ 税・一般管理費等 計 待ち 積込 輸送 荷下ろし 35万 / 8時間・20日 35万/5000km (平均積載率80%) 40万/月(28日 ・1日16時間稼動) 36円/分 8.8円/トンキロ 13円/分 540円 −− 195円 735円 720円 −− 260円 980円 6,480円 17,600円 2,340円 26,420円 1,080円 −− 390円 1,470円 15分 20分 30分 10t 200km 3時間 月間コスト 単位当たりコスト 輸送コスト:29,605円

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