ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年8号
keyperson
フレームワークス田中純夫社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

9 AUGUST 2006 から仕方なく対応している段階。
実 際、今の使い方ではメーカー側には ほとんどメリットはない」 ――日本の家電メーカーは、リサイ クルにタグを使いたいと考えている。
「しかし、現状ではヨドバシでも箱 にタグを付けているレベル。
リサイク ルに使うとなれば製品そのものに貼付 しなければならない。
そのためには技 術面・運用面で課題がいくつも残さ れている。
リサイクルの仕組み自体、 まだキチンとできていない。
現時点で メーカーが何かやるとすれば、トナー のような消耗品にタグをつけて、リサ イクルさせたり、偽物が出回るのを防 止したりする程度だろう」 ――日本でICタグが普及していく シナリオは? ヨドバシだけでは大 きなインパクトを持ち得ないが。
「ヨドバシ以外の日本の量販店も、 そろそろ腰を上げ始めている。
もっともタグの導入はすぐに真似できても、 使い方には圧倒的な違いが出る。
P OSとバーコードでセブンイレブンが コンビニという新しい業態を作ったよ うに、ICタグは単なるコスト削減 や効率化の道具ではなく、事業モデ ル自体を革新するツールになる可能 性がある。
そこに最も近いところにい る会社は、現状ではヨドバシだと私 は考えている」 ――現在、ICタグ活用はどこまで 来ているのか。
「いよいよ実用化段階に入った。
当社 はWMSベンダーとして、アメリカの ウォルマートやベストバイ、また日本 でもヨドバシカメラのRFID導入 に携わっているため、とりわけそれを 実感している」 ――活用方法は日米で同じなのか。
「入り口からして違う。
ウォルマー トがターゲットにしているのは、雑貨 などの一般消費財。
それに対してヨ ドバシでは家電製品やカメラなど、付 加価値の高い製品が対象。
雑貨のよ うに単価の安い製品に単品レベルで ICタグをつけるのは、コスト的に難 しい。
そのためウォルマートでは、ケ ース・パレット単位でタグを付けてい る。
しかし家電製品であれば単品に もタグを付けられる」 ――ICタグの導入効果として、ア メリカではシュリンケージ(流通過 程での在庫の盗難紛失)や、棚卸誤 差などの物流管理精度の向上が挙げ られている。
しかし日本の場合、そ の必要性は低い。
「その通り。
ICタグを入れる前か ら、日本企業は極めて高いレベルで 物流を管理してきた。
しかし、だから といって日本企業がタグを必要とし ていないと考えるのは間違いだ」 「数十年前にPOS(販売時点管理) システムやバーコードが開発された頃 にも同じような議論があった。
アメリ カでPOSが開発されたのは、不正 防止や計算ミスを解消しようというの が当初の狙いだった。
ところが日本は もともと不正も計算ミスも少ない。
そ れでもセブンイレブンは積極的にPO Sとバーコードを活用し、独自の単 品管理の仕組みを作り上げた。
同じ ことがICタグにも言えそうだ」 「アメリカは、タグの導入によって 盗難防止や精度向上を実現した後で、 次のステップに進もうとしている。
と ころが日本は一足飛びに次のステッ プに進む可能性がある。
つまり日本 は、いきなり単品レベルでICタグを 活用することになる」 ――単品レベルのタグの貼付で何が 可能になるのか。
「タグで個体管理ができるようにな れば、例えば販売のスピードが分かる ようになる。
その商品が店頭にどれだ けの期間陳列されていたのか。
それに よって小売業の利益は変わってくる。
それをマーチャンダイジングに活かす ことができる」 ――メーカー側のメリットが見えない。
「現状では、小売りから依頼された フレームワークス 田中純夫 社長 「個品タグが事業モデルを革新する」 ケース・パレット単位でICタグを貼付するウォルマート流 の活用法は、取引ロットの小さい日本には馴染まない。
日本で は、いきなり個品レベルで導入が始まる。
その狙いもサプライ チェーンの効率化や管理精度の向上ではなく、事業モデルの革 新にある。
(聞き手・大矢昌浩)

購読案内広告案内