ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2006年8号
SOLE
海上自衛隊航空補給処を見学補給システムで十一万品目を管理

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2006 80 隊の航空機および航空機に装備され ている機器等の補給・整備を行って いる。
航空部隊(大湊・八戸・下 総・館山・厚木・舞鶴・小松島・ 徳島・岩国・小月・大村・鹿屋の 十二ヵ所)、艦艇部隊(大湊・横須 賀・舞鶴・呉・佐世保の五ヵ所)、 航空機搭載の護衛艦二〇数隻への 補給活動を二十四時間態勢でバッ クアップしている。
十一万にも及ぶ取扱品目 海上自衛隊保有の二〇種・三〇 〇機以上の航空機の運用に必要な 機器や部品の調達・修理(国外修 理を含む)・在庫管制・保管を行 う。
複雑なシステムである航空機は 構成部品点数が多く、耐用命数(製 品寿命)が長い。
その維持用部品に は、使用頻度の高い短期消耗部品 から、使用頻度は低いが保持しなけ ればならず保管期間が長くなる部品 まで、多種多様の部品供給が必要で ある。
海上自衛隊の航空機は多様な任 務(哨戒・救難・輸送・掃海等)に 携わるため、少数・多機種である。
航空機への部品補給規模は、使用 する航空機の数ではなく、機種の種 類に応じて増大する。
したがって、 毎年の所用量算定(管理対象)は 約十一万品目に及び、そのうち、保 管対象は四万八〇〇〇品目に及ん でいる。
また、航空機の耐用命数に 応じて新機種の導入があるので、そ の移行を踏まえて部品補給を計画し なければならない。
回転率の高い部品の保管は全国 の各航空基地の補給隊で行っており、 航空補給処は比較的使用頻度の低 い部品を保管している。
当然のこと ながら航空機の運用は海上であり、 塩害の影響があるため、これらを見 越した修理などを実施している。
機 器・部品の修理・調達については、 外注修理が基本で、製造/修理会 社(約二〇〇社)との契約業務とし て計画的に実施している。
各民間会 社の技術を有効に活用しつつ、製 造/修理の基盤を確保している。
情報システムを活用 全部隊で使用している航空機や機 器の機種別に必要な補給部品のデー タベースの整備更新を行い、各部隊 で必要とする部品・機器を整え、必 要なときに必要な場所へタイムリー に供給している。
これらの航空後方 支援業務を少ない人数で行うため、 システム化を進めている。
現在、機器修理・補給を円滑に 行うため、補給本部―航空補給処 ―部隊/契約会社を結んだ「補給 システム」を稼動している。
契約会 社は航空機/エンジンメーカーと主 要機器メーカーである。
しかしなが ら、現在の状態で十分とは思われず、現在進行中の新機種プロジェクトの 進展に合わせて効率化・迅速化・ 確実性向上・スペースの有効活用の ため、種々の新しいシステムの導入 が望まれる。
輸送は航空機/車両を 用いるが、現状は安くて速い民間の 運送会社の利用が進んでいる。
各部隊で補修できない部品・機 器の補修・再生並びに廃棄品処分 は補給処が行っている。
廃棄品処分 SOLE日本支部では毎月「フ ォーラム」を開催し、ロジスティ クス技術、ロジスティクスマネジ メントに関する活発な意見交換や 議論を行い、会員相互の啓発に努 めている。
シリーズ第八回にあた る六月十四日のフォーラムでは、 今年度のテーマ「サービスパーツ のロジスティクス研究」の一環と して海上自衛隊航空補給処を見学 した。
海上自衛隊の艦艇及び航空 機に装備されている機器等の補 給・整備の概要を紹介する。
二十四時間態勢で後方支援 海上自衛隊航空補給処(千葉県 木更津市)は、昭和十一年に木更 津海軍航空隊として発足。
昭和三 十七年、海上自衛隊木更津航空補 給所に改称し、平成一〇年、海上 自衛隊航空補給処に改称した。
現 在、海上自衛隊の中枢補給基地と しての役割を果たしている。
海上自衛隊補給本部(東京都北 区十条)の直轄組織で、海上自衛 SOLE日本支部フォーラムの報告 海上自衛隊航空補給処を見学 補給システムで十一万品目を管理 The International Society of Logistics 81 AUGUST 2006 に関しては、最近は環境への配慮か ら細かく分解・分別しなければなら ず、負荷が増加している。
廃棄物取 扱資格を有する要員の補充および教 育が重要となっている。
入出庫指示と在庫品管理は、小 さな物から大きな品まで各々保管方 法を定め、棚番管理で行っている。
一般的なロケーション管理で、棚や 保管箱には物品番号のみが表示され ている。
建物は旧海軍時代(昭和十二年) に建てられた航空機大型格納倉庫を 補修しながら使用している。
歴史的 なもので、広く天井が高い。
小部品 は人の身長程度の高さの棚で保管さ れており、スペースの立体的活用が 必要と感じた。
航空機という、ライフサイクルの 長いシステム製品の部品・機器の供 給を保証しなければならない当補給 処は、特に使用頻度の低い部品を保 管するので、保管が長期にわたる。
必要になるまで機能を維持すること が重要である。
また、必要になった 時点で確実・迅速にピッキングでき るように、いかに保管するかも重要 視している。
これらのために保管梱 包材・梱包方法にも苦労と工夫が あると感じた。
ハイレベルな補給・保全業務 防衛システムの近代化・高度化に より、予算範囲内で新規の艦艇・ 航空機が投入されてきた。
投入され てきた機種毎に補修部品を持ち、全 部隊の艦艇及び航空機を常に運用 可能な状態に保てるように補給シス テムを整えている。
まさにPLM (プロダクト・ライフサイクル・マ ネジメント)システムを常にレベル アップしてゆく努力がなされている。
膨大な部品点数と棚番管理がな されている中で、バーコード使用や RFID活用の実験もなされている。
我が国の海上自衛隊の活動能力は 非常に高いと評価されており、補 給・保全まで含めて、どのような業 務プロセスで質の高い活動がなされ ているのか、学ぶことは多い。
RAMSの構築に向けて 今回は、航空補給処(木更津)の 現場見学のみであったが、補給本部、 補給処、全部隊の補給・保全業務 も学び、我々が扱う対象・システム の規模に応じた保全システム構築に役立てていきたい。
SOLE日本支部は昭和五十三 年の設立以来、約三〇年にわたって、 SOLE本部(米国)との連携でロ ジスティクス技術やマネジメントに ついて学習を続けてきた。
幸い、メ ンバーに自衛隊が参加しており、こ れまで、横須賀・厚木・下総などで、 補給・整備の見学を行ってきた。
米国SOLEは膨大な軍事産業 に関わる多くのメンバーで構成され ている。
我が国では、我が国なりの 対象規模に応じたRAMS: R e l i a b i l i t y(信頼性)・ Availability(運用・利用性)・ Maintainability(保全・支援性) のSystem(しくみ)を編み出して ゆきたい。
自衛隊の補給・保全業務 をきっかけとして、鉄道・海運・エ ネルギー(原子力)など、大規模シ ステムを支える保全システムの研 究・再構築につなげたい。
海上自衛隊航空補給処の全景

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