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佐高信
経済評論家
57 AUGUST 2006
姑息なことをするものである。 『NHK受信
料拒否の論理』の著者、本多勝一がすでに受
信料を支払うようになったと集金人がウソを
ついて、視聴者をまわっていた。
それが発覚したのは今年の一月。 本多は
『週刊金曜日』の編集委員の一人なので、同誌
編集部に問い合わせがあった経緯を六月二三
日号の同誌が伝えている。 本多のコラム「貧
困なる精神」の拡大版でである。
その人は本多の前記の記事を読んで以来、
NHKに対して懐疑的となり、特に先ごろの
不祥事を知ってから、受信料を払っていなか
った。 ところが、やってきたNHKの集金人
が、こう言ってその人を驚かせたのである。
「本多さんはもう受信料を払っておられます。
滞納分も含めて全額払っていただいたと聞い
てます」
それで、どうして払うようになったのかと
尋ねると、
「あの本(『NHK受信料拒否の論理』)が随
分売れたそうですから」
との答え。
あまりにも人を食った話だろう。 もちろん、
本多は拒否を続けている。 その人は集金人の
名刺を受け取っていたので、本多と連名でN
HK経営広報部に質問状を出した。 さすがに
逃れられないと思ったのか、NHKは事実を
認めて次のように謝罪している。
「本年一月に、地域スタッフが収納活動のため、お客様宅を訪問した時に、お客様から本
多勝一様の名前をあげられ、地域スタッフの
勝手な思いこみでその旨の発言をしたと聞い
ています。 勝手な思いこみでご迷惑をおかけ
して大変申し訳ないと話しています。
当該のお客様には、昨日○○放送局の責任
者が事実関係を説明するとともにお詫びしま
した。 本多勝一様にも本日お詫びと説明の文
書を発送しました」
問題は「地域スタッフの勝手な思いこみ」
だったかどうかである。
同誌編集部によれば、これまでも本多が払
うようになったというデマは流されていたし、
編集部が問い合わせを受けたことも何度かあ
る。 だから、その集金人だけではなく、複数
の集金スタッフがそう言っている可能性は高
いだろう。 問題の集金人は名刺を置いていっ
たから、NHKも認めざるをえなかった。
本多は、現在は絶版になっている『NHK
受信料拒否の論理』の中で、その手順をこう
述べている。
まずNHK本社の集金係に電話して、次の
ように通告する。 「私は○○○の住所の○○と
いう者です。 今後テレビの受信料を払いませ
んので、御社のブラックリストに私の名前も
加えて下さい。 理由――なし」
相談ではなく、一方的通告だから、電話よ
り葉書の方がいいかもしれない、と本多はア
ドバイスする。
そして集金人が来たら、笑顔でこう言えば
よい。
「NHK本社の方に通知ずみで、今度から払
わなくなりました。 ご苦労さまでした。 もし
問題がございますなら、本社の係にお聞き下
さい」
さらに本多は、これについては罰則が一切
ないので、税金などの滞納と違って心配はま
ったくない、と安心させている。 集金人が執拗にからんできたら
「本多さんが払ったら払いましょう」
と言えとも勧めていたが、それを逆手にと
って、NHKはとんでもないことをしたわけ
である。
安倍晋三らの番組内容への「介入」にして
も、NHKにはジャーナリズムに必要な批判
精神が見当たらない。
NHK、つまり日本放送協会ではなく、N
KK、日本広告もしくは広報協会に名称を変
えたらどうだろう。 その方が中身と一致して
わかりやすいと思うが……。
不払いに悩むNHKのなりふり構わぬ手段
受信料拒否の本多勝一が?転向〞とのデマ
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