ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年8号
大学院体験記
それぞれの道を進んでいく

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2006 76 それぞれの道を進んでいく 世界各国からの留学生たちは、アメリカで学んだことをどの ように生かしていくのでしょうか。
さわちゃんのクラスメート たちが卒業後の計画について語ってくれました。
(本誌編集部) S ゆきちゃん、暑い日が続くけど、元気にしてる? OSU(オハイオ州立大学)では6月に卒業式があって、フィ ッシャーカレッジ内のMBAを含む大学院では約200人、OSU 全体としては約7600人の門出となったよ。
新設プログラムの MBLE(ビジネスロジスティクス工学修士課程)でも2人の卒業 生を送り出したんだ。
Y 写真を見たけれど、スタジアムでの卒業式のスケールは圧巻 だね。
アメリカで勉強するインターナショナルの学生が卒業後 にどんな進路をたどっているのか、とても興味があるよ。
S まず簡単に説明しておくと、MBLEの第1期生は、春学期(3 月末〜6月)で修了する学生と、夏の間をバケーションやイン ターンで過ごし、秋学期(9月〜12月)で修了する学生に分か れるの。
Y なるほど。
さわちゃんは、秋学期の卒業だよね? 夏の間は 何をしているの? 現地企業でインターンシップ S DSC Logisticsという3PL企業が運営するコロンバスの倉庫 で、エンジニアリングインターンをしている。
あるシステムを導 入するプロジェクトの一員として、毎日8時から夕方5時までフ ルタイムで働いているよ。
倉庫にこもって、現場の人と話をしながらデータを集めて分 析したり、作業動態を観察したりしてベストプラクティスを追 求するプロジェクトなんだ。
私のインターンは、プロジェクトが 完結する9月中旬までの予定。
春学期に履修したシックスシグマのクラスでDMAIC (Define, Measure, Analysis, Improve, Control)を勉強したから、測定の心構え 第9 回 Sawako Yuki Sawako Yuki 総勢7600人を送り出した、OSU春学期 の卒業式 Sawako 77 AUGUST 2006 や注意点など、授業で身につけた知識がインターンの土台になって いるのは確か。
授業のありがたみを実感しているの。
Y インターンシップが見つかってよかったね。
私たちの目的の ひとつである、実務からみた米国企業と日本企業のロジスティ クス比較にもヒントになりそうだし、さわちゃんが学んだことを 実務に応用してみるチャンスでもあるね。
ところで、MBLEの他の学生も、やはりロジスティクスプロ バイダー関係のインターンが多いの? S 人によってさまざま。
製造業の需要アナリストをやっている 人もいるし、ロジスティクスプロバイダーでも、本社のオフィス で新顧客を発掘するためのリサーチをしている人もいるよ。
Y 学生達は、インターンシップ先をどうやって探すの? S 基本的に、フィッシャーのキャリアサービスが窓口となり、仕 事を探している学生と、仕事内容に適した人材を探している企 業の橋渡しをするの。
キャリアサービスセンターには企業の担 当者が面接で使用できる小さな部屋がいくつも用意されていて、 一次面接はそこで行われることもあるんだ。
Y インターンシップは日本でもメジャーになりつつあって、大 学の授業の一環として選択できるところもあるみたい。
他の日 本人学生は、どんな所でインターンをしているの? S 現在、フィッシャーのMBAには日本人学生が6人いるのだけ ど、そのうち2人の方は、日本にある外資系企業でインターン をしているようだよ。
Y アメリカで学ぶことの面白さは、やはりいろいろな夢や希望 を持った多国籍の学生達と勉強することだよね。
みんな、母国 であるいは異国で、未来に向けてどんな夢を持っているの? 留学生たちの将来設計 S MBLEだけでなく、同じ授業を履修するMBAやIE(Industrial Engineering:産業工学)の学生と接することで、彼らの夢や 抱負に感化されることも多かった。
今回は、ナイジェリア、イ ンドネシア、中国からの友人に、将来の抱負について語っても らったよ。
Yuki Yuki Yuki Sawako Yuki Sawako Sawako Sawako AUGUST 2006 78 CHIDI 私はアフリカのナイジェリア出身。
大学からヨーロッパに留 学しました。
フィンランドの大学を卒業後、ヨーロッパの医薬 品流通業界で実務経験を積むうちに、大学院進学を意識するよ うになりました。
大学時代に使用したロジスティクスの教科書 がOSU教授のDr. Lambertのものだったことが強く影響し、OSU のMBLEプログラムに入学したわけです。
現在はコロンバスで 需要アナリストとしてインターンシップをしています。
夢は、アフリカ大陸でモノを横断・縦断させるインフラ作り に関わることです。
祖国ナイジェリアのために、勉強したロジ スティクスのアイデアや大切さを、大学や政府系機関にも唱え ていきたいです。
Y とても素敵な夢。
ロジスティクス未開の地のプラットフォー ムを構築していく沢山の人のうちの1人として、母国のためにも 活躍してほしいね。
それにしても、どこの国においても、OSUのDr. Lambertの 本がロジスティクスの教科書として広まっていることはすごい ことだね。
さすがロジスティクス研究の先進国、アメリカ。
この教科書のように、典型的な学問としてのロジスティクス と同時に、各国の産業の業態によって異なる商習慣や仕組みを 織り込んだ教科書も必要だね。
CHIDIがナイジェリアのロジス ティクスリーダーを目指す中で、アフリカのロジスティクスの 教科書をつくる日が来るかもしれないね。
ARIE 私はインドネシア出身。
OSUのエンジニアリングを卒業後、 コンピューターのプログラミングの資格(Aプラス)を取得し、 Pitney Bowesというメールサービスの会社に勤務していました。
インドネシアの海運会社、Meratusline(従業員約1500人)と いう会社を経営する父親のすすめもあり、MBLEに入学しまし た。
現在はインターンとして、ロジスティクスプロバイダーでリ サーチャーの仕事をしています。
将来の夢は、祖父の代から続いている、父の会社に貢献する ことです。
また、もっと勉強して、内国物流が多いインドネシ アのロジスティクスの発展にも寄与することが私の目標です。
Y 有人島だけでも4000弱あると言われるインドネシアで、国内 最大の内航船専業の船会社だね。
アメリカで学んだ体系的なロ ジスティクスを、資源豊かな母国の海運業の発展やロジスティ クスの仕組みづくりに、現地の商習慣やローカルルールに合わ せた形で役立てられるといいね。
S MBAのクラスメートも話に参加してくれたよ。
Yuki Yuki ナイジェリア出身のCHIDI(左)とインドネ シア出身のARIE(右) 中国出身のWILL(左)とYONGYI(右) Sawako CHIDI ARIE 79 AUGUST 2006 ONGYI & WILL 私達は中国出身。
春にMBAを卒業しました。
私(YONGYI) はもともと、中国でITを軸としたコンサルティングの会社を起 こすことを念頭においてOSUのMBAに入学しました。
MBAの 授業のディスカッションの中で、WILLが実際に行っていたコン サルティングの話を聞き、それに感銘を受けて共同出資の話を 持ちかけたわけです。
フィッシャーはビジネスのパートナーとめ ぐり会うきっかけまで与えてくれたことになりますね。
政府にネットワークを持つ共同出資者がいるので、企業の設 立はスムーズにいきました。
StreamLineという新会社で、現在、 走り出しながら、いくつもの案件を抱え、忙しい日々を送って います。
私は中国に戻って経営に関わり、WILLはアメリカから プロジェクトベースにて仕事をすることになります。
中国では、政府とのネットワークを持っているのがビジネス 成功の鍵です。
コンサルティングは、中国ではまだ浸透しきれ ていない領域なので、苦労することもあります。
しかし、ロジ スティクスは中国で大変ホットな分野であるので、今後ビジネ スは成長していくと確信しています。
Y 中国政府とのネットワークをベースに持ち、アメリカのロジ スティクス体系を理解した上で、自分の国に合ったロジスティ クス政策を提案する、という彼らのニーズはとても大きいだろ うね。
中国に進出している外国企業にとっても、中国国内のロ ジスティクスや、加工貿易特有の免税の為の「貿易手冊」の管 理、物流園区の利用、「香港遊」による増値税の早期還付など の貿易上の施策は、常に悩みの種だからね。
MBLEは、プログラム内にとどまらず、いろいろな夢を持っ た学生と関わることで、自分自身の目標を見直すことができる んだね。
同じ志を持った仲間との、全世界に広がるネットワー クは、将来的にも大きな財産だね。
S うん。
インターンにしても、学校の外でインターンシップを 体験することで、学問と現実のビジネスの領域の境界を意識し、 それを学問にフィードバックするのは大事なこと。
私達は、あ る意味でビジネスと学問(アカデミア)のコミュニケーション の架け橋である、そんな使命があることを実感するよ。
(以下、次号に続く) 日本の大学に在学中、米国ワシントン州ゴンザガ 大学、中国北京大学に短期留学。
大学卒業後、日 本通運に入社。
通関士を取得。
米国・サンフラン シスコ支店で1年間研修。
帰国後、メーカー物流 に携わる傍ら、昨年4月、多摩大学大学院経営情 報学研究科修士課程ロジスティクスコースに入学。
小林由季(こばやし・ゆき) オハイオ州立大学マーケティング・ロジスティクス 専攻を卒業後、OTEC, Inc. (米国)、フレームワ ークス(日本)で働いた経験を持つ。
フレームワー クスでは、新工場・倉庫建設プロジェクトにかかわ った。
昨年9月、オハイオ州立大学大学院ビジネス ロジスティクス工学修士課程に入学。
岩田佐和子(いわた・さわこ) Yuki Sawako WILL & YONGYI

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