ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年8号
特集
ICタグはどこまできたか RFIDが加速するグローバルSCM

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2006 24 検品作業と手待ち時間を解消 HPのサプライチェーンは、軍用を除けば世界で第 九位の規模を誇っている。
部品サプライヤーは世界各 地に散らばっている。
そのため我々はRFIDのテク ノロジーを導入する上で、それが世界のどこであって も実装できるという確認が必要だった。
一部に導入す るだけでは効果が半減してしまうからだ。
二〇〇二年に初めてRFIDの実証実験を行って 以降、当社はRFIDに関する様々な実装プロジェ クトを手掛けてきた。
現時点では第一世代のタグから 第二世代の「Gen2」への移行が行われている。
こ の六月に私は当社の製造現場を訪れ、切り替えが最 終段階に入っているところを見てきた。
これで当社の 使用するタグは、世界一斉に第二世代に切り替わる。
これまでの経験からRFIDがもたらす様々なチャ ンスが見えてきた。
サプライチェーンの効率が上がる。
人間の労働の手間が減る。
サプライチェーンの多くの 段階においてプロセスの数を減らすことができる。
ま たプロセス間の待ち時間を減らすことができる。
それ を具体的に解説しよう。
当社が最初に行ったプロジェクトの舞台はメンフィ スだった。
ウォルマート向けの出荷を想定して、プリ ンターの最終組立センターから配送センターへの物流 に、パレットとケースレベルでEPCの第一世代の九 一五メガヘルツのタグを装着した。
この実験は二〇〇 三年四月に完了した。
同年の六月にウォルマートは、当社を含めたサプラ イヤー上位一〇〇社に対してパレットとケースレベル のタグの装着について要求書を出した。
当社は、その 要請に対応するためにさらに二つのプロジェクトを開 始した。
そして二〇〇四年四月に初めて完全な導入 を実現した。
その結果、二〇〇五年には二三〇万以 上のケースにタグをつけて出荷することになった。
RFIDを導入する以前の当社の従来の拠点におけ る出荷準備作業は、まずフォークマンが出荷する製品 のパレットを選び、携帯端末で製品ラベルをスキャン、 保管棚からピッキングして出荷口に運んでいた。
出荷 準備ができたら、それを倉庫管理スタッフに連絡。
そ れを受けて倉庫管理スタッフは携帯端末でパレットの バーコードをスキャンして検品。
WMSで引き当てを 確定し、印刷した出荷ラベルを貼るという流れだった。
それがRFID導入後は次のように変わった。
フォ ークマンは出荷するパレットを選び、出荷口に移動す る際に、トンネル状の通路を通過する。
その際に通路 に設置したフォトセンサーがパレットとケースに貼付 されたタグを自動的に読み込む。
それを受けてWMS が、すぐに出荷ラベルの発行を指示。
フォークマンは トンネルを通過し終えた時点で出荷ラベルを手にとる ことができる。
それを荷物に貼り付けて出荷口にパレットを運ぶ。
これによって倉庫管理スタッフによる確 認作業とフォークマンの手待ち時間を解消することが できた。
同じパレットに複数の種類の製品を混載して出荷す る場合の処理も変わった。
従来はパレットに混載した 商品一つひとつのバーコードをスキャナーで読み込ん で検品する必要があった。
それに対してRFID導入 後は、シュリンク包装機にRFIDのアンテナを装着 し、混載パレットであってもシュリンク包装して出荷 するようにした。
シュリンク包装機でパレットが回転 する時にアンテナがケースのタグを自動的に読み取る。
その情報がWMSに伝達され、検品が確定すると、W MSの指示でシュリンク包装機に設置したプリンター が出荷ラベルを印刷する。
これによってマニュアルの RFIDが加速するグローバルSCM 米ヒューレット・パッカードグレッグ・エッズ グローバルロジスティクスシニアマネジャー 米HPはICタグの活用に最も積極的なメーカーとして知 られている。
一連の導入プロジェクトの全てに携わってき た同社のロジスティクス担当マネジャーが、これまでの取 り組みと今後の展開を解説する。
25 AUGUST 2006 スキャンが不要になり、処理時間を短縮できた。
このほかブラジルのサンパウロの工場では、「エン ド・ツゥ・エンド」の導入を行っている。
この工場で は、中南米向けのプリンターの組み立てや関連製品の 出荷を行っている。
このプロジェクトでは、タグをケ ースではなく、プリンター製品のシャーシの部分に直 接装着している。
プロジェクトは二〇〇四年の後半に 開始し、今年は全工程での実装が完了する。
この取り組みで重要なのは全ての工程を、プリンタ ーのシャーシに付けた、たった一つのタグで管理して いるということだ。
ケースやパレットにはタグはつけ ていない。
パッケージのタグでもない。
我々は北米で 行っているケース・パレットレベルでのタグの貼付を、 個品レベルでタグを貼付するための前段階としてとら えている。
そのための検証を現在、サンパウロで行っ ているわけだ。
取り組みから得た教訓 一連の取り組みから我々は様々な教訓を得ることが できた。
いくつか紹介しよう。
まずは、実装する拠点 について。
特定の拠点に導入した同じ仕組みをそっく り別の拠点に展開することはできない。
電子的なノイ ズや湿度などの物理的な環境を配慮する必要がある。
RFIDの装置と他のマシンとの距離はどうか。
コン ベアやモーターの配置や配線まで勘案して実装する必 要がある。
RFID関連機器の選択も重要だ。
様々なベンダ ーがリーダーを販売している。
それらは全て違う。
き ちんとした事前評価を行って、まず適切なベンダーを 選択する必要がある。
今日UHF帯が有力だとは言 っても、まだ複数の標準が乱立している。
HF帯が使 われることもある。
そのため複数のプロトコルに対応 したリーダーを購入しておく必要がある。
今後、技術 が進展していっても、ハードウェアの買い換えをしな くてもいいように済ませなければならない。
タグについても、リーダーと同じことが言える。
タ グもすべて同じではない。
ベンダーごとの違いがある。
そのタグがどういった素材で作られているのか。
また 何にそのタグを貼付するのか。
あるいは、どのように 装着するのか。
その結果、機能を果たせるのか。
条件 によって読み取り率は変わってくる。
それを測定して 評価し、さらにどうすれば最も読み取り率が高くなる のかを検証する必要がある。
タグの価格については、最も重要なファクターは購 買ボリュームだ。
量によって価格は違ってくる。
また 価格は「Gen2」の登場でかなり改善されている。
第一世代のタグが一五セントから二〇セント程度だっ たのに対し、第二世代は二〇セントを大きく切ってく るだろう。
「Gen2」の登場は非常に大きなインパクトを持っている。
これはRFIDがスタートしたときよりも、 重要な変化だと言えるのかも知れない。
第一世代のタ グはプロトコルが二つ存在した。
それが「Gen2」 では一つの標準に集約される。
「Gen2」の導入で 価格だけでなく、互換性や読み取り速度、ある一定の 時間内にどれくらいのタグが読み込めるかというリー ドレートが大幅に改善される。
タグを読み取ることの できる距離も伸びる。
実際、当社の実験でも「Gen2」は大きな改善 を見せている。
「Gen2」の登場によって、さらに 多くのタグベンダーが市場に参入するだろう。
そして さらに多くの企業がRFIDを使うようになるだろう。
それが結果としてRFIDの投資効果を高めるチャン スをもたらしてくれると我々は考えている。
シュリンク包装機にIC タグを読み取るアンテ ナを設置した トンネル状の通路をフ ォークリフトが通過す ることで自動的にタグ を読み取る ※このレポートは第1回RFIDソリューションEXPO での講義内容を本紙編集部がまとめたものです。

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