ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年10号
ケース
ICタグ--菱食

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

日配品をソーターでバラ仕分け 広島市の中心部から車で約一五分。
広島自 動車道の広島西風新都インターチェンジに程 近い新興工業地区「セントラルシティ」内に、菱食が今年三月、広島フルライン物流センタ ー(広島FLDC)をオープンした。
新拠点 は敷地面積約五万二〇〇〇平方メートル、延 べ床面積約一万七〇〇〇平方メートルの二階 建て。
投資額は土地代を含めて約五〇億円だ った。
広島FLDCは菱食にとって初となる多温 度帯対応型のフルライン物流センターだ。
加 工食品や菓子、酒類といった常温商品と、生 鮮三品や日配品などの低温商品の入出荷作業 を一括で処理する。
店舗配送には異なる温度 帯の商品を混載できる二層式トラックを活用 することで、納品車両を大幅に削減。
店舗側 の荷受け業務簡素化に貢献している。
菱食はこれまでピース単位での出荷を処理 するRDC(Regional Distribution Center)、 ケース単位での出荷を担当するFDC(Front Distribution Center)、そして特定小売業向 け一括物流センターであるSDC (Specialized Distribution Center)の三つ のタイプの物流拠点を全国各地に設置してき た。
これに対して広島FLDCは中堅食品ス ーパーである「ユアーズ」向けのSDCとし て機能するとともに、一般小売業向けの出荷 も担当するハイブリッド型の物流拠点だ。
「小売業の一括物流センターに対するニー ズは依然として高い。
ただし、SDCは建 設・運営コストに見合うだけの取扱量がない とペイしない。
そこでSDCに、RDCやF DCの機能を持たせて物流センター全体の稼 働率を高めることで、商品通過額の比較的小 さい中堅クラスの小売業に対しても一括物流 センターを提供できるようにした。
広島FL DCはこのような発想で設計された新しいタ イプの物流センターだ」と跡治永センター長 は説明する。
広島FLDCの年間取扱高は常温商品で 約二一〇億円、低温商品で一四〇億円の計 三五〇億円を予定している(二〇〇七年度)。
このうち在庫型(DC)で処理するのは常温 商品が加工食品、菓子、酒で、年間取扱高は ICタグ 菱食 低温品も扱う初のフルラインセンター ICタグ使って通い箱のレンタルも開始 OCTOBER 2006 32 食品卸の菱食が広島フルライン物流センターで興 味深いプロジェクトを展開している。
ベンダー〜物 流センター〜店舗間を行き来するクレート(通い 箱)のレンタル事業をスタート。
クレートの管理に はICタグを活用し、流出防止に役立てている。
将 来は他のセンターにも同様の仕組みを導入していく 計画だという。
今年3月に稼働した「広島フルライン物流センター」。
投 資額は約50億円。
広島市の中心部から車で約15分に位 置する 計一五五億円。
低温商品がアイス、冷凍食品、 水産物、総菜、チルド商品で計一七億円。
一 方、通過型(TC)の常温商品は日雑、米お よび他社帳合の菓子と酒の一部で、取扱高は 計五五億円。
低温商品は生鮮三品やパン、卵 などが対象で、取扱高は一二三億円という内 訳になっている。
同センターは常温商品で約二三万ケース、 低温商品で約三万七〇〇〇ケースの保管能力 を持つ。
在庫アイテム数は常温商品が計五七 〇〇、低温商品が計一〇五〇。
一日当たりの 出荷物量は常温商品で約二万三〇〇〇ケー スおよび約二万四〇〇〇ピース、低温商品で 約一万八〇〇〇ケース。
納品先は常温商品で 二〇〜三五社の計二〇〇〜五〇〇店舗、低 温商品で四社五〇店舗に達する。
膨大な量の入出荷を迅速に処理するため、 広島FLDCでは各種マテハン機器を積極的 に活用している。
約六万六〇〇〇ケース、約 三〇〇〇パレットを収容できるパレット自動 倉庫をはじめ、最大六万四〇〇〇ケースを格納できるケース自動倉庫、ケース・オリコン 搬送コンベア(一一七〇メートル)、小物用 ソーター(一ライン五〇シュート)などを導 入し、作業の自動化・省人化を図っている。
同センターで展開されているオペレーショ ンの中で、とりわけ目をひくのはチルド・日 配品を対象にしたバラ仕分けのシステムだ。
チルド・日配品の店舗別バラ仕分けは手作業 で行われるのが一般的だが、同センターでは 小物用ソーターを使って処理している。
チル ド・日配品のバラ仕分けにソーターを利用す るのは菱食としても初めての試みだという。
ソーターの投入口で商品のバーコードをス キャンすると、端末の画面に投入個数が表示 される。
作業員がその指示に従って専用トレ イに商品を載せてソーターに流すと、店別の シュート間口に落ちて仕分けが完了する仕組 みだ。
マンパワーによる種まき式のバラ仕分 けに比べ作業処理時間を大幅に短縮できるほ か、誤納など作業ミスの発生を回避できると いったメリットがある。
ソーターは一時間当 たり約六〇〇〇ピースを処理できる。
例えば、デジタルアソートシステムを使っ て手作業で種まき式の仕分けを展開する場合、 カテゴリー数や店舗数が増えるにつれ、大掛 かりな設備が必要となる。
その分だけセンタ ー内にスペースも確保しなければならない。
さらに種まきを行う作業員の増員も余儀なく されるといった課題があった。
「近年は商品の取り扱いアイテム数が増え る一方で、店舗からの発注単位はより小さく なっており、マンパワーによるバラ仕分けが 非効率になりがちだった」と市瀬英司専務は 指摘する。
そこで今回はソーターを使ったバ ラ仕分けのオペレーションを採用することに したという。
ベンダー各社は統一クレートで納品 広島FLDCで今年六月からスタートして いる通い箱(クレート)のレンタル事業も菱 食初の試みだ。
これは同センターに商品を納 める生鮮品や日配品のベンダーに、菱食のグ ループ会社である「流通システムパートナー」 が用意した専用クレートを貸し出し、ベンダ ー〜物流センター〜店舗間で行き来させると いうものだ。
従来、クレートはベンダーごとに仕様がバ ラバラだった。
ベンダーによってはクレート 33 OCTOBER 2006 広島FLDCの跡治永セン ター長 チルド・日配品のバラ仕分け用に導入した小物ソーター。
1時間に約6000ピースを処理できる OCTOBER 2006 34 がきちんと物流センターに戻ってきているか どうかをチェックしている。
ICタグの技術に着目したのはほかでもな い。
ICタグは複数のタグを一括で読み取る ことが可能なため、確認作業の手間を省ける からだ。
例えば、バーコードを一つずつ読み 取って管理する仕組みだと、クレートの貸し 出し枚数が拡大していくにつれ、センターの 作業負担が増してしまう恐れがあった。
「現在、ベンダーへの貸し出し数は広島F LDCで日々やり取りされているクレート全 体の四割程度にすぎない。
しかし、今後はさ らに枚数は増えていくはずだ。
膨大な量のク レートを効率的に管理していくためにはIC タグの技術が有効だった」と市瀬英司専務は 説明する。
ICタグの運用形態は極めてシンプルだ。
まず貸し出し時にはベンダー名を特定するた めのタグ( 写真?)とクレートのタグを読み 取って紐付けし、「どのベンダーにクレートを 何枚提供したのか」というデータを作成、サ ーバーに蓄積する。
ベンダーからの納品時に は、クレートのタグを読み取ってサーバーの 情報と照合し、返却状況をチェックする。
写 真?のように「X枚貸し出しているうちY枚 が返却済み」という情報がパソコン端末に表 示される。
店舗への出荷時には 写真?の専用アンテナ でクレートのタグを読み取って「クレートの 行き先」を特定。
こちらもデータはサーバー に蓄積しておく。
回収後には再びクレートの タグを読み取って「回収枚数に不足がないか」 をチェック。
回収したクレートには洗浄後、 「洗浄済み」という情報を付与しており、ク レートを貸し出す際、そのクレートの中に 「未洗浄」のものが紛れ込んでいると、IC タグの読み取り時にアラームが発信される仕 組みになっている。
ICタグは情報の書き換えが可能なタイプ を使用している。
しかし、広島FLDCでは タグそのものには情報を持たせていない。
タグにはID(個体認識)番号を割り振ってい るだけ。
洗浄履歴などのデータはすべて情報 システムで管理することで、容量の小さいタ グでの運用を可能し、タグの単価引き下げを 実現している。
出荷検品にもICタグを活用 貸し出し枚数が徐々に増えつつあるなど広 島FLDCでのクレートレンタル事業は軌道 に乗り始めている。
これを受けて、菱食では 今後、同様の取り組みを他の物流センターで も展開していく計画だ。
「当社では全国で相 ではなく、カートン(段ボール)で商品が納 品されるケースも少なくなかった。
そのため、 菱食の物流センターでは商品を店舗納品用の クレートに積み替えたり、ベンダー別にクレ ートを分類して返却する作業などが発生して いた。
段ボールの廃棄も必要だった。
これを統一クレートの利用に改めたことで、 同センターでは作業負担を大幅に軽減するこ とに成功した。
一方、ベンダー各社は必要な 時に必要な分だけクレートをレンタルすれば いいため、クレートの購入・管理コストを抑 えることができるようになったという。
統一クレートは以下のように循環している。
まずベンダーが統一クレートに商品を入れて 広島FLDCに納品。
広島FLDCは商品 を店舗別に仕分けした後、統一クレートに商 品を載せて各店舗に出荷する。
後日、配送ト ラックが店舗から統一クレートを回収。
広島 FLDCは回収した統一クレートを洗浄して、 再び各ベンダーにレンタルするという流れだ。
現在、同センターではベンダー約二〇社に対 して一日当たり合計で一五〇〇〜二〇〇〇枚 のクレートを貸し出している。
特筆すべきは大量に流通する統一クレート の管理にICタグを活用している点だ。
統一 クレートにUHF帯対応のパッシブ型ICタ グを貼付。
ベンダーからの納品時(クレート の返却時)、店舗への出荷時、そして店舗か らの回収時にICタグをハンディターミナル や専用アンテナで読み取ることで、クレート 菱食の市瀬英司専務 35 OCTOBER 2006 当なボリュームのクレートを日々動かしてい る。
それだけにレンタル事業を手掛ける物流 センターが一〇カ所二〇カ所と広がっていけ ば、かなり大規模なビジネスとなりそうだ」 と市瀬専務は期待する。
菱食にとって本業である食品の卸売業はも ともと利幅の小さい商売と言われている。
こ れに対してクレートのレンタル事業は卸売業 に比べ利益率が高い。
対象となる物流センタ ーの数が増えていくことで、クレートのレン タル事業は菱食のコアビジネスの一つに成長 する可能性もありそうだ。
現在、実は広島FLDCではICタグを 使った別のプロジェクトも進行中だ。
店舗納 品に使うカゴ車に貼付したICタグの情報 (納品先店舗名)と、クレートに貼付したI Cタグの情報(納品すべき商品とその個数) を紐付けし、出荷ゲートのアンテナでICタグを読み取り、店舗からの納品指示データと 照合。
荷揃えや行き先が間違っている場合に は赤ランプが点灯して知らせる仕組みを導入 している。
出荷検品作業の簡素化を狙った取 り組みだ。
「アンテナの向きを調整したり、試行錯誤 を繰り返した結果、ほぼ一〇〇%に近い読み 取り精度を実現した。
一括検品が可能になり、 出荷作業の効率化につながっている」と市瀬 専務。
今後、菱食ではこちらの仕組みも順次、 他センターに導入していく計画だという。
( 刈屋大輔) ?クレートに貼付したICタグ。
UHF帯対応 で情報の書き換えが可能なタイプ ?店舗から回収したクレートは洗浄機で殺 菌消毒する ?洗浄を終えたクレートには「洗浄済み」と いう情報を付与する(ただしICタグには直 接書き込まず、サーバーにデータを蓄積) ?クレートの貸し出し先を識別するための 「ベンダータグ」 ?クレートの貸し出し・返却状況を表示す るパソコン端末 ?カゴ車に貼付したI Cタグとクレートの ICタグを読み取っ て両者を紐付けする ?貸し出し・返却時に クレートのICタグを 読み取るアンテナ ?出荷ゲートに設置されたアンテナ。
荷揃えや行き先が間違っている場 合には赤ランプが点灯する クレートの貸し出し・返却状況を管理 出荷検品を一括で処理 広島FLDCにおけるICタグ活用術

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