*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
携帯電話事業のウミを出し切る
││収益の柱だった携帯販売事業から撤退し、物流ビ
ジネスに特化して以降も業績低迷が続いています。 二
〇〇六年一月期まで六期連続の赤字でした。
「残念ながら赤字は今期(二〇〇七年一月期)まで続
きます。 しかし来期は黒字化できる。 単月ベースで早
ければ今年十一月に黒字転換できる見通しです」
││これまで赤字が続いた原因は?
「携帯電話ビジネスからの撤退に伴う諸費用の発生
が大きな痛手となりました。 当社は携帯電話の販売と、
メーカー〜販売店間の物流を手掛けていたわけですが、
二〇〇二年一月期に両事業から撤退する際に必要と
なった販売店や携帯電話向け倉庫の閉鎖に掛かる費
用が、これまで足を引っ張り続けてきました」
「二〇〇一年一月期の売上高は約四四億円です。 この
うち物流事業(軽トラ事業)の収入は一〇億円程度
で、残りはすべて携帯関連で稼いでいました。 携帯ビ
ジネスから撤退して売り上げが激減したのですが、拠
点や車両といった物流事業のインフラを維持するため
のコストは固定費なので変わらない。 携帯ビジネスか
ら手を引いたことによって、携帯の稼ぎで物流事業の
赤字を埋めるというモデルが続けられなくなった」
││累損は二〇〇五年一月期に約一七億円まで拡大
しました。
「しかし昨年六月の時点で累損を解消しています。 資
本と累損を相殺して一気にきれいにしました。 それに
伴い減資に踏み切っています。 約一六億円だった資本
金は現在、九七五〇万円に減額しています」
││よく株主たちから同意を得られましたね?
「減資に反対する株主がいなかったわけではありま
せん。 しかし、株主の大半は当社が提示した再建策に
「250円宅配便に再起をかける」
軽トラベンチャーのジャパンブリッジが業績不振に喘いで
いる。 累積赤字は一時、約17億円にまで膨らんだ。 しかし、
昨年6月の減資によって一気に累損を処理。 現在は1個250
円の宅配便サービスに特化して会社再建を目指している。
(聞き手・刈屋大輔)
ジャパンブリッジ山崎隆社長
OCTOBER 2006 18
理解を示してくれました。 再建策の具体的な中身は
『今後は宅配便事業に経営資源を集中させる』という
ものです」
││これまで物流事業の収益を支えてきたのは、アス
クル向けのカタログ・商品配送や、金型商社ミスミ向
けの簡易梱包配送といった業務でした。 携帯事業だけ
でなく、こうしたビジネスからも撤退して今後は宅配
便一本に絞り込むという戦略ですか?
「大手荷主から物流を一括で受託するビジネスにつ
いても今回、思い切って手を引くことにしました。 長
年にわたってお付き合いをさせてもらったミスミさん
との取引も昨年いっぱいでほぼ終了しています。 今後
は二〇〇四年一月にスタートした宅配便サービス『2
50EXPRESS』に特化していくつもりです」
││さらなる売り上げ減は免れませんね。
「ええ。 二〇〇七年一月期の売上高は前期比十二億
円減の約一四億円で落ち着きそうです。 構成比は宅
配便事業が一〇億円で、その他事業が四億円。 このうち、その他事業というのは今期前半まで一部残って
いた特定顧客向け物流サービスによる収入です。 翌二
〇〇八年一月期は宅配便事業で二三億円、その他事
業で一億二〇〇〇万円を見込んでいます」
サテライトの出店でコストを抑制
││来期には宅配便事業を倍増させる計画です。 かな
り強気ですね?
「それだけ『250』には勢いがあります。 『250』
の収入は初年度が四三〇〇万円で、昨年度が三億五
〇〇〇万円。 そして今年度が九億九〇〇〇万円を予
定しています。 取引企業数は現在、約二万四〇〇〇
社で、一日に八〇〜一〇〇社ずつ新規の取引先が増
えています。 売り上げや取引先の推移を見て、『25
第1部掟破りの価格破壊を検証する
` W
19 OCTOBER 2006
0』にビジネスを一本化しようと決意しました」
││『250』はその名の通り、運賃が一個二五〇
円とかなり割安です。 肝心の利益をきちんと確保する
ことができるのでしょうか?
「二五〇円でペイさせるため、できるだけインフラ
にコストを掛けないように工夫しています。 『250』
はスタートした当初、軽四(軽トラック)を活用して
集荷・配達を行っていましたが、現在ではこれを徐々
に自転車やバイク、リヤカー、台車などを使う仕組み
に切り替えつつあります」
「さらに今年に入って集配拠点の配置も見直しまし
た。 従来は都市部から少し離れた場所に広いスペース
を確保した拠点を構えていましたが、現在はオフィス
街などに一〇〜二〇坪程度のサテライトと呼ぶ店舗を
数多く配置していくスタイルに改めています」
││ヤマト運輸と同じ戦略ですね?
「東京では今年だけで新たに七カ所のサテライトを
オープンしました。 宅配便ビジネスを展開していくう
えで重くのし掛かってくるのは拠点と車両のコストで
す。 これをいかに低く抑えることができるかで収益性
が決まってくる。 現在でも全国で約三〇〇台の軽トラ
が動いていますが、売り上げが拡大してもその数は今
後それほど増えていかないと思います」
輸送品質の改善がカギ
││「250」のユーザーからは「確かに安いが輸送
品質は悪い」という指摘があります。
「未着に対する問い合わせが一日につき一二〇件ほ
どあります。 これは一日当たりの取り扱い個数に対す
る割合からすると、かなり悪い数字です。 ヤマトさん
や佐川さんとは比べものにならない。 輸送品質の改善
は今後の大きなテーマです。 さらにお客さんからは
『問い合わせの電話がつながりにくい』というお叱り
も受けています。 この問題については大阪の本社にコ
ールセンターを集約し、そこで問い合わせを一括で処
理する体制に改めることで、きちんと対応できるよう
にしました」
││現在、「250」はサービスの対象エリアを東京、
大阪、名古屋など大都市圏に限定しています。 全国
展開のメドは?
「当面、対象エリアを広げる予定はありません。 サ
テライトの数を増やして集配網の密度を上げるととも
に、各都市間を結ぶ幹線輸送を太くしていくことに重
点を置くつもりです」
││「250」の今後のターゲットは?
「とくにネット通販系の貨物と、スモールオフィス
から出荷される貨物を攻めていきたい。 このうちスモ
ールオフィスからの貨物には、現行では郵便や民間の
メール便が利用されている書類関係も含まれます」
││いずれも競合相手の多い分野です。 ヤマト、佐川、郵政といった大手と互角に渡り合っていけますか?
「二五〇円という価格で運んでもらえることはお客
さん、とくにスモールオフィスにとってはかなり?お
得感〞があるはずです。 出荷ボリュームのある大手は
一個当たり二五〇円に近い料金でヤマトさんや佐川さ
んの宅配便サービスを利用できます。 これに対してス
モールオフィスは定価もしくは定価の数%引きでの利
用を余儀なくされています。 実際、二五〇円という料
金に魅力を感じて大手から当社に切り替えてくれるお
客さんも少なくない。 もっとも、安かろう悪かろうで
は、お客さんは再び大手のサービスに戻ってしまう。
約束した時間通りにきちんと荷物を届ける。 この基本
を徹底できれば、自然と取り扱い個数は増えていくは
ずです」
集配インフラを軽くして収益性を高めようとしている
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