ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年10号
特集
激安物流 無料の一時保管サービス――JR貨物

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

トラックへの対抗策としてスタート 「料金は無料です。
一度、倉庫の代わりとして使っ てみてください」 CO 2 (二酸化炭素)など環境負荷の軽減を目指す モーダルシフトの受け皿として、再び脚光を浴びてい る鉄道貨物輸送。
その担い手である日本貨物鉄道(J R貨物)には、業界内でもあまり知られていない物流 サービスが存在する。
コンテナ輸送の付帯サービスの 一環として、発着駅でコンテナ貨物を五日間だけ無料 で保管するというものだ。
同社ではコンテナ輸送のユ ーザー各社に対して、貨物駅のヤードを一時保管のス ペースとして積極的に活用することで、倉庫費用の削 減や在庫調整などに役立ててほしいと訴えている。
サービスの詳細を説明すると、まず発駅では集荷し た日とその翌日から五日間について保管料(留置料) が無料となっている。
一方、着駅では列車が到着した 日とその翌日から五日間が無料だ。
ただし、着駅から の持ち出し予定日が到着日、またはその翌日から四日 間以内に到来する場合には、その翌々日から留置料 が発生する。
ちなみに留置料はコンテナ一個につき一 日一〇〇〇円(十二フィートおよび一五フィートのJ Rコンテナの場合)、もしくは二〇〇〇円(十二フィ ートおよび一五フィート以外のJRコンテナの場合) に設定されている。
このサービスの歴史は意外に古い。
コンテナ輸送が 本格化した昭和四〇年代初頭には、すでにスタートし ていた。
しかし、これまで認知度が低かったのは大々 的なPR活動を展開する機会がほとんどなかったため だ。
コンテナ貨物の集配を担当している通運会社を通 じて荷主企業に対してサービスの存在を知らせる程度 にすぎなかったという。
無料の一時保管サービス ――JR貨物 JR貨物には旧国鉄時代から続いている便利でお得なサービ スがある。
コンテナ貨物を発着駅のヤードで5日間ずつ計10 日間無料で保管してくれるというものだ。
全国180カ所で提 供されているこのサービスをうまく利用することで、倉庫費 用の削減などに成功している荷主企業も少なくない。
(刈屋大輔) OCTOBER 2006 22 昭和三九年に開催された東京オリンピックを機に、 日本では高速道路をはじめとした道路網の整備が一 気に加速した。
それに伴い、トラック輸送が台頭する 一方で、鉄道貨物輸送は徐々にシェアを失っていった。
貨物駅での無料保管サービスは、トラックへのシフト による輸送量減少に歯止めを掛けるための具体策の一 つとして、当時の国鉄が発案したものだった。
現在、同サービスの対象となっているのはコンテナ 貨物を取り扱う全国の約一四〇駅と、レールを持たな い貨物駅であるオフレールステーション(ORS)約 四〇カ所だ。
ユーザーは計一八〇カ所のどの施設でも コンテナ貨物を預かってもらえる。
繁忙期など貨物駅 のスペースに余裕がない場合には引き取りを求められ るケースもあるが、基本的には預かり個数に制限はな い。
コンテナ貨物をいくつでもヤードに留置すること ができる。
顧客に内緒で利用する通運会社 例えば、ある製紙メーカーではJR貨物の無料保管 機能を上手に利用することで、大きな成果を上げてい る。
紙は重量や容積が大きい割に単価が低く、物流 費負担力のない製品が多い。
そこで、新聞社や印刷 会社、商社といった需要家に製品を供給する前の一 時保管場所として全国各地で貨物駅のヤードを活用。
それによって全社的な倉庫スペースの削減に結びつけ ている。
紙の場合、市況の関係で最終的な供給先がなかな か決まらず、五日間という無料保管期限を過ぎてしま うケースも少なくない。
そのため、JR貨物とは「一 日一〇〇〇円」ルールではなく、保管延長に関して別 途契約を交わすことで、追加費用の上昇を抑制してい るという。
第2部物流アイデア商品の使いみち ` W 23 OCTOBER 2006 荷主だけではない。
通運会社にとっても同サービス を利用することのメリットは大きい。
例えば、顧客か ら指定されていた配達日が急遽、変更になったとしよ う。
その場合、無料保管サービスがないと、通運会社 はいったん自社の拠点にコンテナ貨物を持ち帰ったう えで、後日配送を行う必要がある。
貨物駅からコンテ ナ貨物を集荷して、そのまま配送する通常のオペレー ションに比べ、横持ち輸送が発生する分だけコストが 掛かってしまう。
もっとも、このサービスのユーザーの中には決して 感心できない企業も存在している。
ある通運会社の営 業マンは「コンテナ貨物をそのまま貨物駅のヤードに 置いているにもかかわらず、お客さんには『すでに引 き取って自社の倉庫で保管している』と説明して保管 料をもらっている。
五日間無料のルールを知らないお 客さんはまだまだ多いので、このやり方が通用する」 と打ち明ける。
このように一部の企業の間では無料保管サービスが 有効的に利用されている。
しかしJR貨物によると、 最大で五日間という無料保管期間を設定しているも のの、実際にはコンテナ貨物の約九割が到着から三日 以内にヤードから引き取られていくという。
その背景 には、サプライチェーンマネジメント(SCM)など の普及に伴い、短納期要求がより一層強まっているこ とがある。
そのため、同社では今後五日間無料サービ スの利用が拡大しても、ヤードのスペースが足りなく なるといった事態に陥る可能性は低いと見ている。
問われる在庫管理能力 現在、物流分野におけるCO 2 削減を目指して組織 された「グリーン物流パートナーシップ会議」でモー ダルシフトのモデル事業として認定を受けると、国か ら補助金が交付されるなど鉄道貨物輸送を利用しや すい環境が整いつつある。
また、多くの企業において 環境対策は避けて通れない経営課題の一つとなってい ることも、鉄道貨物輸送にとって取扱量増を目指す 上で追い風だと言える。
さらに近年は輸送モードとしての利便性が向上して いることもトラック輸送からのシフトを後押ししてい る。
高速走行が可能な機関車の投入によってトラック 輸送に比べ遜色のないリードタイムを実現。
複合一貫 輸送商品の開発にも積極的で、RORO船と鉄道を 組み合わせて中国・上海〜日本間を輸送する「上海 スーパーエクスプレス」を提供しているほか、来年一 月には韓国・ソウル〜日本間を結ぶ新サービスをスタ ートする予定だ。
こうした相次ぐ新商品と今回紹介した貨物駅での 無料保管サービスをうまく融合させれば、日・中・韓 でローコストなサプライチェーン管理を展開できる可 能性もある。
例えば、上海で生産された製品をROR O船で博多港まで輸送し、陸揚げ後はJR貨物の福 岡貨物ターミナルや北九州貨物ターミナルに「無料」 で一時保管しておく。
そして納品先が決まった段階で 鉄道を使って日本各地に向けて出荷するという流れだ。
この体制なら、ストックポイントとして機能させるた めの物流センターを日本に用意しなくてもいい。
もっとも、コンテナ駅とORSの計一八〇カ所で 提供されている無料保管機能をフルに活用するスタ イルでロジスティクスを動かしていくためには、需要 予測精度や在庫管理能力の向上が絶対条件となる。
言 うまでもないが、タダより安いものはない。
JR貨物 が旧国鉄時代から続けてきたという知られざるサービ スを利用した物流改革を一度検討してみては如何だ ろうか。
JR貨物では発着駅で5日間無料の保管サービ スを提供している(写真は東京貨物ターミナル) 複合一貫輸送で使用するフラットラックコンテナ。
40フィート海上コンテナと同じサイズのフレー ムで12フィートJRコンテナを3個積載できる

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