ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年11号
特集
調達物流 良いVMI、悪いVMI ロジコム――自動車部品の共同物流で急成長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

依頼を断っている状態 ロジコムは、広島に本社を構える独立系の中堅物 流企業だ。
一九五九年の創業以来、一貫して自動車 部品に特化した物流事業を行ってきた。
業績は好調 だ。
二〇〇六年三月期の売上高は一三四億円。
二〇 〇三年三月期以降、毎年一〇〜二〇%のペースで売 り上げを伸ばしている。
今期は二〇%増の一六〇億 円を見込んでいる。
二〇〇二年に開始した輸入VMIサービスが売り 上げ拡大の原動力となっている。
ヨーロッパや中国か ら日本に輸入した部品を保税状態で保管し、自動車 メーカーからの納品指示に合わせて輸入通関を切り、 生産ラインに納品する。
部品調達の国際化を追い風 にニーズが膨らんでいる。
「国内の扱いも増え続けている。
こちらから営業を かけているわけではないが、口コミで評判が広がって いる。
次々と新規取引の話をいただくが、供給が追い つかずに断っている状態。
拠点を新設すると半年も経 たずに埋まってしまう」と、平田隆保常務業務本部長 は嬉しい悲鳴を上げる。
今年五月に稼働したばかりの三菱自動車水島製作 所(岡山県倉敷市)向けの新拠点も既にいっぱいで、 増設の計画を進めている。
来年の夏にはダイハツ大分 工場(大分県中津市)向けの拠点が稼働予定だ。
海 外にも進出したいが、国内の依頼をこなすのに追われ て手が回らないのが実情だ。
自動車組み立て工場への部品納入は、メーカーごと に詳細な取り決めがある。
大手物流企業であっても簡 単には手は出せない。
海外の部品メーカーが契約を結 んでいる大手3PLであっても、国内の納入オペレー ションはロジコムに再委託しているケースが多い。
タ イと台湾で自動車部品物流を手がける三菱商事ロジ スティクスの現地アドバイザーも務めている。
もともとロジコムは、自動車のサスペンションやシ ートを製造する日本発条の専属会社としてスタート した。
子会社ではなかったが、社名も荷主からもらっ て中国日発サービスを名乗っていた。
日本発条から 出荷された製品を保管し、マツダの広島工場に納品 する仕事だった。
専属会社だけにムダが多かった。
倉庫スペースやト ラックの積載率の問題に加え、午後三時にはその日の 仕事が終わってしまうことなども珍しくなかった。
ア セットの回転率を上げるため、マツダの広島工場に納 入している他の部品ベンダーを日本発条から紹介して もらい、積み合わせ輸送を開始した。
それが現在の共 同物流のベースになっている。
飛躍の契機をもたらしたのは情報システムだった。
導入は一九七六年に遡る。
荷主の増加に伴って取り 扱い部品の点数が増え、人手に頼る紙ベースの処理では追いつかなくなっていた。
荷主への情報伝達のため に夜中まで手作業でテレックスを送るような日々が続 いていた。
処理の効率化と精度向上を狙い、情報システムを 自社開発した。
当時はまだコンピュータが珍しかった 時代。
ハードの購入費用だけで一年分の利益が飛んだ。
「当社にとっては莫大な投資だった。
しかし他社に先 駆けて導入した情報システムが現在の事業の柱になっ ている。
正しい経営判断だった」と、大上正治社長は 実父である先代社長の先見の明を評価している。
組み立てメーカーはそれぞれ独自の物流情報システ ムを構築している。
また同じ部品であっても、メーカ ーごとに管理コードは違う。
複数の自動車メーカーを 納入先に持つ部品ベンダーは、納入先メーカーごとに ロジコム――自動車部品の共同物流で急成長 輸入VMIサービスをキッカケに、広島の中堅物流企 業・ロジコムの売り上げが急拡大している。
半世紀近く 手がけてきた自動車部品物流のノウハウをベースに、金 属加工や組み立てなどの生産機能に業務範囲を拡大。
付 加価値の強化に余念がない。
(森泉友恵) NOVEMBER 2006 22 第4部ケーススタディ:3PLのVMIサービス 受注端末を用意する必要がある。
コードもそれぞれ変 換しなければならない。
そこでロジコムは、組み立てメーカーと部品メーカ ー間のデータ翻訳機能を果たすシステムを開発するこ とで、荷主の多端末化を解消した。
「しかも、データ 翻訳サービス自体は無料。
物流費と込みなので、一度 使ったらやめられないと重宝されている」と大上社長 は顔をほころばせる。
系列に頼れない環境をバネに 特定の系列に頼れない厳しさは常にあった。
営業に 行った先々で、系列以外は必要ないと突き返される ことが珍しくなかった。
物流会社は指示した通りに運 べばいいという風潮も根強かった。
自慢の情報システ ムの効果を説明したくても耳を貸してもらえない。
仕 事を受託した後も身内ではないだけに、ひとたびミス を起こせば叱責やペナルティが容赦なく課せられる。
しかし、特定の系列に属さないことが、逆に強みも 生み出した。
工夫と改善を続けなければ生き残れない という環境は、社内に危機感とノウハウの蓄積をもた らした。
独立系という立場は共同化を進めるにはプラ スに働いた。
バブル期には日本発条をはじめ複数の主要荷主から 子会社化の誘いを受けたこともあった。
輸送需要が逼 迫していた時期で、どこも安定輸送力の確保を望んで いた。
しかしいずれの誘いも断った。
特定の会社の色 がつけば、共同物流のビジネスモデルに差し障るとい う判断だ。
逆に、この一件をきっかけに、社名から日本発条の 看板を外すことにした。
日本発条の占める売り上げ比 率は既に一割にも満たなくなっていた。
荷主数は四二 〇社にまで拡大していた。
社員から新社名を募集した。
パート社員の提案した「ロジコム」を新社名として採 用することにした。
生産領域も取り込む ロジコムの経営層は全員が現場からの叩き上げだ。
荷主からの天下り等はいっさい受け入れていない。
ま た全国に一六カ所ある営業所の所長の半数以上は三 十代だ。
若手でも能力があれば責任のある仕事をどん どん任せる。
現場主義は創業以来の伝統だ。
「厳しい事業環境を工夫と改善で乗り越えてきた歴 史が、今も当社の現場には根付いている。
自動車部 品物流は、部品ベンダーと自動車メーカー両方の要求 をいかに満たすかがカギ。
その要求に応える現場力が 当社にはある」と梶原瑠美子常務管理本部長は胸を 張る。
梶原常務自身、一経理社員から現在の地位に 至っている。
愛社精神は人一倍強い。
サービスの一領域として工場機能を備え、部品の製 造や組み立ても手がけている。
プレス設備や工作設備を持ち、マフラーやシートといった自動車部品の一部 となるパイプやワイヤーの曲げや溶接の加工製造を行 う。
また、新たに始めたサブアッシー(アッセンブリ) サービスでは、部品ベンダーから集めた部品を組み合 わせてモジュール化した状態で納品している。
自動車部品以外に手を広げるつもりはない。
「自動 車部品物流の市場規模は大きい。
国内だけでも、まだ ほんの少ししか手がけていないというのが実際のとこ ろ。
シェアはまだ数%に過ぎない。
他に目を向けるど ころではない。
納入先の自動車メーカーで行っている 部品の組立工程を代行するなど、物流付帯業務を積 極的に取り込んでいく。
国内のネットワークを拡充し ながら、海外展開も進めたい。
やるべきことはまだま だある」と大上社長は意欲を見せる。
23 NOVEMBER 2006 ロジコムの 大上正治社長 複数ベンダーの部品を積み合わせて積 載率を高める 納入先メーカーの部品組立工程も取 り込んでいる

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