ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年12号
特集
3PL白書 日本市場の規模と勢力図

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2006 14 一兆円を超える市場規模 荷主企業のロジスティクス機能を代行するアウトソ ーサーを「3PL(Third Party Logistics:サード パーティ・ロジスティクス)」と呼ぶ。
輸送や保管な ど、物流を構成する諸機能を個別に請け負う従来の 物流業とは異なり、荷主のサプライチェーンを支える ロジスティクス業務を包括的に運営管理する。
一九九 〇年頃に欧米で開花した新しい物流サービスだ。
それ が現在、日本にも広がっている。
このたび本誌は国内の主要3PL企業を対象に、直 近決算における3PL事業の売上高や組織体制、ビ ジネスモデルをたずねるアンケート調査を行った。
そ の結果、二〇〇五年度の日本の3PL市場の規模は 少なくとも一兆円を超えていることが分かった。
日本 の物流市場は現在二〇兆円規模といわれる。
そのうち 五%以上を3PLが占めている計算だ。
しかも過去三年間にわたり3PLの市場規模は急拡大していることがうかがえる。
3PL事業のセグメ ント売上高を従来から開示してきた主要企業の業績 推移を見ると、いずれも3PL事業は増収基調にあり、 その平均成長率は年一〇%を超えている( 図1)。
総 売上の伸びをはるかに上回るペースだ。
米国では九五年以降、〇五年までの過去一〇年間 にわたり3PL市場規模が年率約一五%のペースで 拡大を続けている( 図2)。
米国よりも七〜八年遅れ るかたちで日本市場も同じトレンドに入った可能性が ある。
国内物流市場全体のパイの拡大が期待できない 状況で3PLのシェアが高まっていくことで、物流業 界の勢力図は塗り替えられることになる。
もっとも、3PL事業売上高の定義には今のところ コンセンサスがない。
日本通運では、「契約書ベース 日本市場の規模と勢力図 解説 15 DECEMBER 2006 で複数の物流機能を一括して提供している荷主という 広いとらえかたをすれば、当社の売り上げ全体の六割 程度が3PLだと言っても嘘ではない」という。
〇六 年三月期の業績に当てはめると、一兆円以上を同社 だけで売り上げていることになる。
一方で独大手3PLのシェンカー社と提携を結ん でいるセイノーホールディングスによると、「シェンカ ーでは、単なる保管や輸送のオペレーションではなく、 個々の荷物を製品在庫として品番で管理している業 務を3PL事業として定義している」という。
日本政府の総合物流施策大綱で3PLは「荷主に 対して物流改革を提案し、包括的に物流サービスを 受託する業務」と定義されている。
この「包括的」と いう表現を、どこで線引きするかによって、3PL事 業の売上高は大きく変わってしまう。
そのために市場 規模の算出も、これまでは困難だった。
今回の調査では、3PL事業売上高の算定基準を 各社の判断に委ねた。
物流子会社の場合に親会社やグループ会社向け売り上げを除くという条件だけを提 示して、各社に算定基準を併記するかたちで売上金 額を自己申告してもらった。
売上規模は大きいものの 外部に公表するための社内的な調整がつかなかった企 業で、ヒアリングと各種資料から本誌が金額を推定し たものも含まれている。
その結果が 図3だ。
ここに挙がっている二九社の3 PL事業だけでも市場規模は一兆十二億円。
調査に 漏れた分が他に一〇〇〇億円以上はあると見られる。
市場の概要を把握することを優先し、数字の厳密性に は目をつぶったことは否定できない。
それでも今回の 調査を出発点として本誌は今後継続的に日本の3P L市場の調査を行い、その精度を高めていきたいと考 えている。
関係者の協力を期待したい。
( 大矢昌浩)

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