*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
三年で四九〇億円の売上増を計画
――二〇〇六年四月にスタートした新中期経営計画
「パワーアップ三カ年計画」では二〇〇九年三月末ま
での三年間で3PL事業の売上高を従来比で四九〇
億円増やすという目標を掲げています。 かなりのハイ
ペースです。
「もちろん真水(新規案件の受注)だけで3PL事
業の売り上げを伸ばしていこうとすれば、難しい数字
なのかもしれません。 しかし、輸送や保管といった単
機能サービスの提供にとどまっている既存の業務を、
もう一段グレードアップさせて3PL化できれば、ク
リアは可能だと見ています」
「今まで通り頼まれた仕事をただこなしていくだけ
ではなく、当社からお客さんに対して改善提案などを
積極的に行う。 そうやって結びつきを強くして、その
結果お客さんから任される業務の範囲を少しずつ拡げ
ていく。 既存の業務を3PL化していくわけです。 営
業マンたちには『現在、任されている仕事の内容や範
囲を整理してみろ』と指示しました」
――整理するとは?
「顧客ごとに業務内容を棚卸ししてみるとよく分か
るのですが、現在当社が受託しているのは単機能の業
務が圧倒的に多い。 そうした仕事は、ある日突然、運
賃や料金の値下げを要請されたり、契約を打ち切られ
る恐れがある。 しかし、お客さんとの結びつきが強け
れば、そうした事態も回避できる」
「具体的には、荷主の物流を商品と地域の二つの軸
で整理し、その荷主企業の特定部門あるいは特定事
業部の仕事を地域限定で受託している仕事を第一ス
テップ。 対象商品を広げたものを第二ステップ。 一方、
地域を拡大したものを第三ステップ。 そして商品・地
「全ての事業を3PLに塗り替える」
10月、3PL部とグローバルロジスティクス部を統合し
て、新生「3PL部」を発足させた。 同時に3PLという視
点から既存の全ての受託事業を洗い直している。 荷主企
業のサプライチェーン全体を視野に入れることで、従来
の事業部門別・縦割りの営業体制を改め、自らの役割を
拡大する狙いだ。 (聞き手・大矢昌浩)
日本通運久保田博取締役常務執行役員
DECEMBER 2006 30
域とも包括的に受託しているものを第四ステップ、究
極の3PLとして、顧客ごとにステップを上げていく
という考え方です」
――日通が考える3PLの定義とは?
「お客さんの目指すサプライチェーン・マネジメン
トに寄与するための物流改革を提案し、かつ継続的に
改善・改革を積み重ねていくことによって顧客の物流
業務を包括的に受託する機能ととらえています」
――「提案営業」や「総合物流」という言葉は一〇年
以上も前から使われてきました。 現在の3PLと違い
はありますか。
「もっとも大きな違いはITでしょう。 ITの話を
抜きにした3PLなど、今では考えられません。 一〇
年前の提案営業は、そうではなかった。 また『総合物
流』という言葉も、当時は自社でアセットを持ちフル
ラインのサービスを手がけているという意味に過ぎま
せんでした」
――3PL事業の売上高を伸ばしていくための特効薬
の一つにM&A(企業の合併・買収)があります。
「当社はこれまで基本的には自前で事業規模の拡大
を進めてきました。 しかし、今後はM&Aについても
前向きに検討していきます」
――3PLが一種の流行で終わってしまう可能性はあ
りませんか。
「今後、日本で3PLのマーケットが拡大するかど
うかは、3PLである我々自身が荷主企業に、どうア
プローチしていくかで決まってくると思います。 荷主
企業の物流アウトソーシングに対するニーズは極めて
旺盛です。 ただし、お客さんに言われて初めて我々が
アクションを起こすというやり方では、3PLという
ビジネスもいずれ頭打ちになってしまう。 そうではな
く、3PL側から積極的にソリューションを提案して
Interview
31 DECEMBER 2006
いく。 それによって3PLのカバーする領域が広がっ
ていくことで、自然と3PLの市場規模も膨らんでい
くと考えています」
――今年一〇月の組織改正で、従来の3PL部とグ
ローバルロジスティクス部を統合して新生・3PL部
を発足しました。
「日通として3PLの受注窓口を一本化しました。 こ
れまでは日通に3PLを任せたいが、どこがその窓口
なのかよく分からないという声が少なくありませんで
した。 今回の組織改正でこの問題を解消しました」
3PL部を花形部門に
――3PL部はどのようなメンバーで構成しているの
ですか?
「情報システムの専門家や海外事業の経験者など多
部門から社内の精鋭メンバーを集めて組織を構成して
います。 部員は現在二三人で、コンペへの参加など営
業活動がメーンとなります。 3PL部は基本的にシン
ボリックな案件、例えばグローバルロジスティクスの
一括管理など比較的規模が大きく、広域的な対応が
求められるプロジェクトを担当する部隊という位置づ
けになります。 日通の営業マンたちが『いずれはあの
部署に籍を置いて大きな仕事を手掛けてみたい』とあ
こがれるような組織を目指しています」
――3PL部のほかに3PL的な営業活動を展開する
営業マンは現在どのくらいいるのですか?
「日本国内だけで五〇〇人程度です。 当社全体の社員
数は絞る傾向にありますが、3PLの営業マンの数は
年を追うごとに増えています。 国内五〇〇人の内訳は、
本社営業が約半分。 残りの半分が支店・営業所の営
業マンと、海運や航空といった事業部に所属する営業
マンです」
――営業部隊の中心的な年齢層は?
「三〇〜四〇代です。 役職でいえば、課長、次長、
専任部長クラスが中心的なプレーヤーとして活躍して
います」
――日通の組織は伝統的にモード別や業務別の縦割り
の色が強い。 それに対して、3PLの営業マンには、
幅広い物流の知識が求められます。
「そのために3PL人材の育成を強化しています。 毎
年約二五〇人を対象に社内で大規模な3PL研修を
行っています。 基礎講習一年、実践講習一年の計二
年間のコースを設定しています。 通信講座が基本です
が、スクーリングも実施しています。 スクーリングは
基礎と実践が年にそれぞれ四回ずつで、一回当たり二
〜三日を要します。 講師は、国交省の3PL講習会
の講師を務めている日通総研のメンバーと外部の専門
家にお願いしています」
「こうした座学のほかに3PLのモデル拠点にスタ
ッフを派遣することで現場経験も積ませています。 新設した3PL部も人材育成には格好の組織となりま
す。 3PLのコンペには訓練を積んだスキルの高いス
タッフが必要ですが、彼らをコンペ専門要員として貼
り付けおくわけにもいきません。 受託が決まって運用
が始まった後も、コンペを担当したスタッフを、お客
さんはなかなか手離してくれない。 一人のスタッフが
担当できる案件数は限られてきます」
「経験を積んだスタッフはむしろ現場に返し、3P
L部門を卒業させるべきなのかも知れない。 従って新
規案件を開拓していくために、3PL部には常に新し
い人材を投入していく必要がある。 また今後は社内育
成だけではなく、当社の社員とは違う目線を持った外
部の血もどんどん採り入れていく必要があると考えて
います」
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