*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
3PL協会で「大須賀塾」をスタート
││約二年前に発足した日本3PL協会の会員数が
一三〇社を突破しました。 加盟している会員各社は協
会に何を求めているのでしょうか?
「3PL協会の会員は中堅以下のトラック運送会社が
大半を占めています。 会員各社の悩みは、このままト
ラック運送の商売を続けていても、業績の好転は期待
できないので、何か新しいビジネスを立ち上げたいと
いうものです。 そこで目をつけたのが3PLで、聞け
ばトラック運送よりも儲かる商売だという。 しかし、
3PLといっても正直何から手をつければいいのか分
からない。 だから商売のやり方を教えてほしい。 それ
が協会に対するニーズです」
││すでに3PLを事業化している会員も少なくあり
ません。
「ただし、3PLできちんと儲けている会社となる
と、その数は限られている。 見よう見まねで3PLを
始めたものの、収支は真っ赤っかで何ともならないと
嘆いている会員が少なくない。 どうやれば、3PLで
成功することができるのか。 会員同士で知恵を出し合
って、それを考えていくことも協会の役割の一つです」
││3PL協会は「大須賀塾」をスタートしました。
この研修会では協会長である社長自らが講師を務めて
います。 教える側から見て、会員各社には3PLを展
開していくうえで何が足りないのでしょうか。
「まず情報収集力。 お客さんのビジネスに関する情
報を集める力と、その情報を分析する力が欠けていま
す。 3PLでは、お客さんが物流企業に対して過去の
出荷実績データなどの情報を提供するなど、両者がパ
ートナーとしての関係を築くことが成功の条件となり
ます。 しかし、必ずしもお客さんが正確な情報を提供
「儲からないとぼやく経営者は失格」
若手の営業マンを3PL研修に派遣する中小トラック運送
会社が増えている。 しかし、数日間の座学をこなせばノウ
ハウが身に付くほど3PLは甘くない。 3PLで急成長を遂げて
きたハマキョウレックスの大須賀社長は「3PLの本質を学
ぶべきは経営者自身」と指摘する。 (聞き手・刈屋大輔)
ハマキョウレックス大須賀正孝社長
DECEMBER 2006 30
してくれるとは限らない。 3PLで苦戦している会員
の多くは、間違った情報を基にして物流センターを設
計し、マテハン機器を導入し、作業員の投入量を決め
ている。 これでは上手くいくはずがありません。 たと
えお客さんからの情報が間違っていても、それをきち
んと見極めて修正し、逆にお客さんに対して改善を提
案できるくらいの能力が必要になります」
「当社の場合、例えば小売業向けの案件であれば、実
際に店舗に足を運んで品揃えをチェックしたり、店舗
のバックヤードでどのような作業が行われているのか
を確認したり、情報収集にかなりの時間を費やしてい
ます。 そのくらい時間を掛けないと、お客さんが抱え
ている問題点の本質は見えてきません」
││現在、「大須賀塾」に参加しているのは会員各社
の若手営業マンが中心です。 次世代の経営を担う若
手に3PLのノウハウを植え付けておきたいという
のが各社の意向です。
「そもそも、その発想が間違っている。 まず3PL について学ぶべきは経営者です。 経営者は研修会に参
加させた若手に3PLの事業化を丸投げし、その結
果儲からないと『3PLは商売にならない』と不満を
漏らす。 これでは現場がやる気を失ってしまう。 トラ
ック運送会社から3PLへの転身を本気で考えるので
あれば、経営者が自ら率先して研修会に足を運び、
?3PLとは何ぞや〞というのをきちんと理解する必
要があります」
近物レックスの不振で下方修正
││ハマキョウレックスの経営について伺います。 一
〇月末に業績予想の下方修正を発表しました。
「二〇〇七年三月期中間の連結業績について、経常利
益を計画比四八%減の七億八〇〇〇万円に下方修正
Interview
31 DECEMBER 2006
しました。 それに伴い通期予想にも修正を加え、経常
利益は計画比から一〇億円少ない二五億円に設定し
直しました」
││単体ベースでは逆に上方修正を発表しています。
つまり連結子会社が足を引っ張っているわけですか。
「二年前に買収した近鉄物流(現・近物レックス)
の業績低迷が響いています。 燃料費の高騰といったコ
ストアップ要因を吸収できないなど営業面での不振に
加え、監査法人からの指示で同社が抱えていた不良
債権を処理したり、退職金の積み立て不足を解消す
るなど一気に膿を出したことで、黒字予想が一転、赤
字転落となってしまいました。 ハマキョウレックスが
3PL事業で稼いだ利益を、近物レックスの赤字が
食いつぶしているのが実情です」
││近物レックスの再建には時間が掛かる?
「近物レックスの前身である近鉄物流は歴史のある
会社です。 その会社に当社がいきなり乗り込んでいっ
て、『ああしろ、こうしろ』と言えば、会社が本来持
っていた良い面が損なわれてしまう可能性がある。 そ
のため、買収後も近物レックスの自主経営を尊重し、
それをハマキョウがサポートするというスタンスを貫
いてきました。 しかし、今回の下方修正を受けて、こ
のやり方を改めることにしました。 もう近物レックス
の経営陣だけには任せておけない。 ハマキョウから人
を派遣して大改革を断行します」
「当初は、今年度に売上高、利益ともに前年比で
三%アップを達成するという約束でした。 そしてしば
らくは順調に推移しているという報告を受けていた。
ところが、中間決算の近くになって今期は黒字どころ
か赤字だと言い出した。 結局、ハマキョウの現場には
きちんと浸透している日々の収支管理が、近物レック
スではいい加減に行われていたため、こういう結果に
なってしまった」
││ハマキョウ流の経営にシフトする?
「改めて再建計画を策定するにあたって近物レック
スの現幹部たちに面談したところ、それでもまだ自分
たちが主導して再建を進めていきたいという意向だっ
た。 そしてそれを認めることにした。 ただし、十二月
までの目標数字が未達に終わった場合には、?会社を
処分する、?役員を刷新して再出発する、?ハマキョ
ウ流の経営に全面的に切り替える――のいずれかを実
行すると伝えました。 もっとも、?の会社を処分する、
を選択するつもりはありません。 いずれにせよ、今回
がラストチャンスです」
失敗3PLの駆け込み寺に
││ハマキョウの3PL事業自体は順調に拡大を続け
ています。
「近物レックスの赤字幅が一〜二億円程度なら、3
PL事業の増益分で十分にカバーできる。 それだけ3 PL事業は堅調に推移しています。 お客さんからの引
き合いも多く、物流センターの数は来期に五〇カ所を
超える見通しです。 とくに最近は、ある3PL会社に
物流センターの運営を任せたものの、うまく機能して
いないので代わりに引き受けてほしいという依頼が増
えている。 めちゃくちゃな状態になっている現場に当
社の社員を数人派遣し、一〜二週間という短期間で
センター運営を正常な状態に戻す。 いわば失敗した3
PL委託の事後処理的な仕事です」
「ゼロから新センターを立ち上げるよりも、こちらの
仕事のほうが格段に難しい。 ただし、それをうまく乗
り切ることができれば、社員の自信につながる。 そこ
で培った経験やノウハウは、今後センターを立ち上げ
る際に必ず活きてくるはずです」
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