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一つ先のプレーヤーまで視野に
このプレゼンテーションのポイン
トは次の三つだ。
?ビジネスのフォーカスを製品その
ものからチャネル(流通経路)に
シフトした、全社的な取り組みに
ついて
?変革を導くための手段として、組
織の戦略やメトリクス(評価指標)
を部門ごとのイニシアチブや個別
のタクティクス(戦術)に段階的
に落とし込んでいく方法について
?サプライヤーから顧客配送までの
プロセスをいかに統合するかにつ
いて
当社ウィリアムズは、空調設備メ
ーカーだ。 どのくらいの出席者の方
が、当社をご存知であろうか?
昨
日、五つ星、または四つ星のホテル
に泊まった方で、クーラーがとても
静かだった方。 それらのクーラーは
私どもが供給するクーラーである可
能性が高い。 私どもは、主に商業施
設向けに、クーラー、ヒーターを供
給している。
創業は一九一六年。 カリフォルニ
ア州ロサンゼルスで誕生した。 一九
五八年にコンチネンタルマテリアル
ズコーポレーション(CMC)に吸
収された。 その後、親会社のCMC
はフェニックス・マニュファクチャ
リング・インク(PMI)も傘下に
収めた。
現在、ウィリアムズはCWPグル
ープ(CMC、ウィリアムズ、PM
I)の一角を占め、カリフォルニア
州コルトンに本社と製造拠点を置い
ている。
ウォルマートの店舗は七〇%が当
グループの空調設備を使用している。
また、ヒルトンコンベンションセンタ
ー、百貨店のサックスフィフスアベニ
ュー、大規模な病院のほか、大統領専
用機であるエアフォースワンにも納入
実績がある。
ケーススタディに入る前に、CWP
JANUARY 2007 58
各種のメトリクスで吸い上げた情報をもとに課題を見極め、
戦略を決定する。 従来のプロセスを見直して、具体的な戦術に
つなげていく。 業務用空調設備メーカー、米ウィリアムズ社の
オペレーション担当バイスプレジデントが、現在進行中のパフ
ォーマンス管理プロジェクトを紹介する。
戦略・戦術・メトリクスの統合
ウィリアムズのジェイ・
ウォッシュボーンオペ
レーション担当バイスプ
レジデント
スピーカー
ウィリアムズ
ジェイ・ウォッシュボーン
オペレーション担当バイスプレジデント
ウィリアムズ
スコット・ハバート
マテリアルズ&ロジスティクス担当ディレクター
Y―Change
アラン・リーズ
社長
司会者
ノーステキサス大学
ロジスティクス教育・研究センター
テランス・ポーレン
ディレクター
グループが抱える課題を整理しておこう。
●空調設備産業が非常に
成熟していること。
●吸収合併によって、フェ
ニックス(アリゾナ州)、
コルトン(カリフォルニ
ア州)、オクラホマシテ
ィ(オクラホマ州)の三
つのオペレーション拠点
を抱えるようになったこ
と。 これに伴い、チャネ
ルの重要性が増した。
●原材料や輸送費用が急
激に上昇していること。
例えば原材料の一つであ
る銅の価格は二倍に跳
ね上がっている。 そのた
め、バイイングパワー
(購買力)の活用が必須
になっている。
●吸収に伴う新しい経営陣
と?成長への道〞の前
に残された従来のマネジ
メント
こうした課題を抱える当
社が描く?成長への道〞の
ビジョンは、ビジネスのフ
ォーカスを製品からチャネルへ、顧
客が欲する製品へと移行することで
ある。
皆さんは、プロセスこそが鍵と言
うかもしれない。 我々は、むしろチ
ャネルこそが成功の鍵だと信じてい
る。 顧客企業のお客様の期待に応え
ることを目指し、サプライヤーに供
給するサプライヤーも意識している。
サプライチェーンのチャネルにおい
て一つ先のプレーヤーまで見据えた
戦略が必要なのである。
悲惨な遅配現状が明らかに
では、変革のプロセスを具体的に
見ていこう。 CWPチェンジプロセ
スの柱は、?メトリクス(評価指標)、
?戦略とイニシアチブ、?タクティ
クス(戦術)の三つだ。
?メトリクス
全体的な指標として「CWPスコ
アカード」と「CWPプロダクトス
コアカード」を、部門ごとには「ロ
ジスティクス&フレートスコアカー
ド」を用い、正確な情報を把握する。
?戦略とイニシアチブ
顧客ごとのマーケティング戦略を
もとに、組織としての戦略とイニシ
アチブを、部門やプロジェクト、タ
スクなどに調整・展開していくこと
で、正しい優先順位付けを行う。
?タクティクス
CWPの組織としてのプロセスと
部門ごとの手順、ロジスティクス&
フレートの戦術を実践する。
これら三つのテーマの結果として、
成長と機会のカルチャー、戦略的な
リーダーシップ、プロセスとシステ
ム、カスタマーのバリューを分析する(
図1)。 このプロセスは、二〇〇六年七月
より展開を開始した。
図2のように
スケジュールを組み、パートナーで
あるコンサルティング会社のY‐C
hangeの協力の下で進めている。
「CWPスコアカード」では、プロ
フィタビリティ(収益性)、レイト
デリバリー(遅延配送)、レイトデ
リバリーディフェクト(遅配要因)
59 JANUARY 2007
ウィリアムズのスコッ
ト・ハバートマテリア
ルズ&ロジスティクス担
当ディレクター
の数値を把握した。 現状を数値化す
ることにより、トップレベルから問
題を把握し解決する体制を築こうと
試みた。
CWPグループ三社は、もともと
全く別々の会社であった。 それぞれ
が独自に構築してきたオプレーショ
ンを把握するのは容易ではない。 だ
が、メトリクスを使って顧客配送状
況(オンタイムかどうか等)を把握
することにより、いかに遅延配送が
多く、悲惨な状態に陥っているかが
明らかになった。
この一因は、会社の古い体質であ
るサイロ中心の考え方、つまり他の
部門との協力がないというという問
題である。 これを解決するため、「注
文管理プロセスマップ」を作成した。
まず、各部門へのヒアリングをも
とに注文管理プロセスを整理した。
これはなかなか困難な作業であった。
その後、各拠点のカスタマーサービ
ス部門、生産スケジュール部門、セ
ールス部門、アカウンティング部門、
エンジニアリング部門からのフィー
ドバックを通じて注文管理プロセス
マップを完成させ、これに従ってオ
ペレーションを行うことを各部門に
徹底させた。
レイトデリバリーディフェクトに
関しては、リードタイムに最も問題
があることが分かった。 調べてみる
と、生産能力を超す注文を受けてい
たために、遅延が生じていた。 この
問題をプロセスマップに反映し、新
たなプロセスを追加していった。
それに次ぐ要因は、サプライヤー
からの部品到着の遅延だった。 そこ
で、サプライヤーの生産スケジュー
ルを共有する仕組みを整え、その情
報を活用して、顧客への正しい納期
を提示するという対策をとった。
このように、新たなプロセスを既
存のプロセスに追加
し、各部門と共有す
ることで、レイトデ
リバリーを五%にま
で減少させた。
「ロジスティク
ス&フレートスコア
カード」では、支払
い運賃区分、TL
(貸切便)での出荷
数とLTL(混載
便)の出荷数、貨物
量の最適化率などの
数値を把握した。
ウィリアムズでは、
現在七〇%の輸送が
LTL、三〇%がT
L輸送である。 把握
した数値をロジステ
ィクス&輸送戦術
(タクティクス)へつ
なげた。
柱の二本目である
「戦略とイニシアチ
ブ」は次のような仕
JANUARY 2007 60
Y-Changeのアラン・リ
ーズ社長
61 JANUARY 2007
組みで機能している。
顧客視点のマーケティング戦略に
従い、CWPとしての目標やイニシ
アチブが、オペレーション、セール
スなどの部門ごとの責任者にリンク
され、更にロジスティクスやシッピ
ングなどの部署に振り分けられる。
最終的にはプログラム、プロジェク
ト、タスクのレベルにまで落とし込
まれる仕組みになっている。 その後、
それぞれの段階ごとのパフォーマン
スが管理され、レポートが上がって
いく。
三本目の柱である「タクティクス」
において、ロジスティクスとフレー
トの分野では次の三点を中心に実践
する計画だ。
?シームレスなモノの流れ
サプライヤー、生産拠点、顧客が
必要とするジョブサイトまでのモノ
の流れを円滑にする。
?部門間の再調整
コミュニケーションを促進するた
め、部門ごとの障壁をなくす。
?キャリアの戦略的な活用
輸送レーン、キャリア能力、要求
サービスレベルを決定する。
?シームレスなモノの流れについ
ては、原材料の調達にかんばん方式
を適用する予定だ。 また、サプライ
ヤーが実際に生産工場の組み立てラ
インに持ってこられるようにするた
めの視覚的な表示板や、出荷に対す
る変更があった際に適切に対応でき
るような表示板を作成する。 システ
ム面と視覚面の両方からのアプロー
チが必要だ。
?
部門間の再調整は二段階で考え
ている。 フェーズ1は、コルトン
(カリフォルニア州)におけるプロセ
スと部門の統合。 異なる部門の人材
を実際に動かすことによって、他部
門でのプロセスを理解し、変化を促
進する姿勢を育てていく。
フェーズ2では、購買部門をかん
ばん方式やVMIなどのより広い範
囲に対応可能にしたいと考えている。
また、現状では各々の製造拠点がロ
ーカルで調達する原材料の価格が一
致せず、事実上、原材料の帳簿が複
数存在する。 これを将来的には統一
していきたいと考えている。
?
キャリアの戦略的な活用も、二
段階で考えている。 フェーズ1は手
のつけやすいところから始める。 具
体的には、トラフィック部門に更な
る柔軟性を与える。 また、全体的な
輸送プロセスに焦点を当て、入荷と
出荷の貨物集約化や、TL活用を進
めていく。 そのほか、既に享受して
いる出荷時の輸送ディスカウントを、
同じキャリアを使うことで入荷時の
輸送にも適用することなどを考えて
いる。
フェーズ2では、特定のキャリア
とプログラムを様式化する。 サービ
ス、能力、価格、ダメージコントロ
ールなどを元に様式を定め、VMI
やミルクラン配送を顧客に提供する
ことも検討している。
データが方向性を示してくれる
取り組みの結果、我々のビジョン
がサクセスフル・カンパニーとして
具現化しつつある。
●変化の風土の創出
プロセス、チームワーク、そして
リーンコンセプトを人々に訓練する
ことができた。 また、指揮するマネ
ジメントの方向性を統一することが
できた。
●変革にツールが貢献
チェンジプロセスのメトリクス、戦
略、戦術を示すパフォーマンスツー
ルはウェブベースで柔軟性に富み、
誰でも他人のイニシアチブを確認す
ることができる。
●変化を通じて人材が成長
成長を可能にする機会が生まれや
すくなった。
最後に教訓を整理しておこう。 ま
ず、変革の前に立ちふさがる高い障
壁を崩していくことが重要だ。 デー
タというものは、得るのは簡単では
ないとしても、確実に方向性を示し
てくれる。 進捗確認と障害を取り除
くための隔週ミーティングに、マネジメント層が関わっていくことも大
切だ。 また、早くから適切な人材を
見定めて雇用することも必要だ。 そ
して、上級役員のコミットメントも
成功に欠かせない。
(
翻訳岩田佐和子)
※このレポートは米CSCMP年次総会で
の講義内容を本誌編集部がまとめたも
のです。
ノーステキサス大学ロジ
スティクス教育・研究セ
ンターのテランス・ポー
レンディレクター
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