ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年1号
keyperson
刈屋武昭明治大学ビジネススクール教授

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2007 2 に過ぎない。
農業や鉱業のように直 接土地から価値を生み出している場 合は別として、不動産それ自体は価 値を持たない。
ただそこにあるだけだ。
それをデザインし、機能性を持たせる のは人間の知恵だ。
オフィスであれば 労働生産性を高めるための働きやす い快適な空間作り、商業施設であれ ば集客力のある街作りなどが価値化 するわけだ」 「物流施設も同じだ。
同じ倉庫でも違 う企業が使えば、そこから生み出さ れる価値も違ってくる。
つまり物流 施設の価値は、そこにいる従業員の 能力や仕事ぶりなど、組織のケイパ ビリティによって生み出される。
そう したインタンジブルな価値を生成する 能力が、不動産の価値を決める要素 として、今日どんど重要になってきて いる」 ――このままファンドは物流施設の所有者として日本市場に定着するの だろうか。
「それについては結局のところ投資 家次第だ。
物流施設を所有するリス クをとっているのはファンドではなく、 資金を出している投資家だ。
それで も既に欧米の商業施設や物流施設は ファンドが大きなシェアを握るように なっている。
日本もその方向に進む 可能性はある」 既存倉庫の陳腐化 ――外資系の物流不動産ファンドが 日本市場で事業を急拡大させている。
「彼らに言わせると、日本の既存の 物流施設の大部分は陳腐化している そうだ。
ロケーションや建物の形態が 現在のロジスティクスに合致していな い。
そこにビジネスチャンスを見出し て日本市場に参入している。
物流施 設を開発する自分たちのノウハウや 技術には優位性があると認識してい るのだろう。
私自身は倉庫施設の専 門家ではないため、それを評価する立 場にはないが、少なくとも彼らはそう 考えている」 ――倉庫施設の開発や運用のノウハ ウに、それほど付加価値があるとは 思えない。
それより、むしろ不動産 の証券化や低金利などの金融的な環 境の整ったことが、参入の主要因な のではないか。
「金融スキームの整備されたことが 重要であることは確かだ。
ただし、い くら投資環境が整っても、施設運営 でキャッシュフローが生み出せなけれ ば彼らは事業が成り立たない。
利回 りを確保できなければ、ファンドの資 金も集まらない」 ――自己資金を三〇%程度に押さえ、 残りを銀行から一%程度の金利で調 達できるのであれば、安く貸しても リバレッジが効くのでリターンはとれ る。
ここ数年の物流用地の高騰によ る投機的な利益も大きい。
「早い段階で日本市場に参入した物 流不動産ファンドが先行者利益を得 たのは事実だろう。
しかし短期的に 荒稼ぎして逃げてしまうつもりで彼ら が参入したとは思わない」 「ファンドは事業を継続しようとす る限り、投資家に対して安定的にキ ャッシュフローを生み出す仕組みを見 せる必要がある。
物流施設の場合に は、テナントとなる荷主の長期的な 確保が問題になる。
すなわち荷主に コミットメントさせる能力、信頼性 などのブランド力などが重要な要素 になってくる」 ――そうした物流ファンドの能力の 違いは、外部からは把握しにくい。
「その通りだ。
企業のバランスシー トには、資金さえあれば手に入る汎 用資産としての不動産の評価が記載 されているに過ぎない。
そこにはイン タンジブルな(無形の)価値は反映 されていない」 ――物流不動産のインタンジブルな 価値とは何か。
「企業にとって不動産は、支援資源 刈屋武昭 明治大学ビジネススクール教授 「物流不動産の価値は荷主が決める」 土地や建物の値段だけで物流不動産の価値は計れない。
同 じ物件でも利用の仕方によって生み出される価値は違ってく る。
それは物件の賃貸料にも影響を与える。
企業のロジステ ィクスのノウハウが、物流施設に無形の価値を与えている。
(聞き手・大矢昌浩)

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