ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年1号
特集
物流不動産バブル 倉庫用地はどこまで上がる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

ファンド相場の拡大 ?倉庫転がし〞が始まっている。
不動産ファンド間 の転売に加え、キャピタルゲインを狙って直接、物流 不動産の取得に乗り出す機関投資家も現れている。
こ こ数年の物流用地高騰の恩恵を受け、現状では各社 とも購入価格に二割以上を上乗せして転売できている 模様だ。
今後も二〇〇八年までは相場の上昇は続く と目されている。
〇四年から〇五年にかけ、外資系物流不動産ファ ンドは首都圏の物流用地を対象に、激しい取得合戦 を繰り広げた。
〇四年四月、AMBブラックパイン (現・AMBプロパティジャパンインク)は、東京港 湾局の競争入札で、東京都大田区東海の一万九五四 二平米を一〇六億八七〇〇万円で落札。
坪単価約一 八〇万円は当時の相場の二倍と言われた。
同年十二月、今度はプロロジスが東京ディズニーラ ンドに隣接する千葉県浦安千鳥地区の工業用地三万 三六五三平米を五五億一五〇〇万円で落札した。
こ の土地に千葉県企業庁が設定した入札予定価格は三 〇億円だった。
さらに翌〇五年三月にはラサールイン ベストメントマネージメントが都市再生機構の入札で 川崎市川崎区池上新町の六万四二〇〇平米を一六三 億一一〇〇万円で落札している。
外資系ファンドによる一連の高額落札を、国内の 不動産関係者および物流業界関係者は、かなり冷や やかな目で見ていた。
しかし、ファンドの取得攻勢に 引きずられるかたちで首都圏の物流用地の相場自体が その後に急騰したことで、常識外れだった入札も、振 り返ってみれば必ずしも?高値掴み〞とは言えなくな っている。
物流用地の相場動向に詳しいシービー・リチャード エリスの小林麿物流営業部企画推進グループシニアコ ンサルタントは「〇六年に入って以降は湾岸部の過熱 ぶりもおさまり、極端な高値が付くことは少なくなっ た。
しかし旺盛な需要は内陸部に波及している。
仮に 国道一六号線の内側でまとまった土地が出てくれば、 数社が高値で競い合うことになるのは必至だ」という。
さらに現在は北関東の高速道路IC周辺、地方都 市では大阪、名古屋のほか、福岡、仙台など八大都 市にまで、ターゲットが広がっている。
これらの地域 には過去の取引実績に乏しく評価の難しい物件が多 い。
そのため「収益還元的な考え方から、結果的には 路線価の何倍というかたちで取引されているが、どこ に天井があるのか、誰もまだ見えていない状況だ」と、 小林シニアコンサルタントは説明する。
〇二年以降、国内の物流不動産ファンドの資金力 は毎年倍々ゲームで拡大している。
その規模は証券化 したものだけを数えても〇五年時点で一八六〇億円に 上っている。
〇六年はその倍近い数字に達した模様だ ( 図1)。
バブル崩壊以降、買い手のつかなかった空き 地が物流不動産ファンドの登場によって突如として動 き出している。
世界的なカネ余りの矛先が、日本の物 流施設に向かい、新たな相場を作り出している。
みずほ総合研究所の泰松真也調査本部経済調査部 主席研究員は「今後一〜二年は今のトレンドが続く だろう。
ただし〇八年以降は相場が反落する可能性も 否定できない。
それでも短いスパンで成果が求められ る外資のファンドマネジャーたちは物件価格が上がり 過ぎたので買いませんでは仕事にならない。
一物件当 たりの利幅が少なくても、数を買い漁ることで全体の ボリュームを大きくし、利益を積み上げる手法をとっ ている」と解説する。
土地取引の活発化と連動して倉庫の新規着工面積 倉庫用地はどこまで上がる 物流不動産用地の高騰が続いている。
首都圏の湾岸エ リア周辺では、ここ数年で地価が2倍に跳ね上がった物件 も珍しくない。
あまりの過熱ぶりに一等地の相場にはさす がに天井感が出てきたものの、旺盛な需要は関東内陸部や 地方の中核都市などに波及している。
(大矢昌浩) JANUARY 2007 12 も急ピッチで伸びている。
〇八年には年間一二五七万 平米が新規に着工される見込みだ(図3)。
国内倉庫 会社約四〇〇〇社の普通倉庫の所管面積は全て合わ せて〇四年度で三七二七万平米。
その三分の一にあ たる規模の倉庫が一年間で新設されることになる。
物流業界の二極化進む 供給は増えても国内の物流需要に大幅な伸びは期 待できない。
物流不動産ファンドの制約条件は必然 的に物件の取得からテナントの確保へ、近くシフトす る。
ファンドのほとんどは自己資金をはるかに上回る 規模の借金を銀行から引き出し、投資にレバレッジを かけている。
その金利は毎月支払う必要がある。
テナ ントが確保できない場合には、自己資金を削るしかな い。
いずれババを掴まされる投資家も出てくる。
既にその兆候は現れている。
「一時はオフィスや住 居向けREITに物流施設を組み込もうとした動き も少なくなかった。
しかし実際に手をつけてみて、物流施設は管理が意外に難しいと気づいたようだ。
今後 はオフィスと住宅、商業施設、物流施設といった具合 にファンドも専門化する傾向が強まるだろう」とみず ほ総研の泰松真也主席研究員は見る。
一方、新設した倉庫が埋まった場合は、その分だけ 他の倉庫が空くことになる。
ファンドが新設する倉庫 の大部分は延べ床面積三〇〇〇平米以上の大型倉庫。
荷主の拠点集約ニーズに対応したものだ。
そこに荷物 が移れば地方の中小型倉庫が空く。
これに伴い中小 型倉庫の資産価値と賃料が下がる。
同時に物流オペ レーションの担い手も変わる。
地方の中小型倉庫を運 営してきた倉庫会社や地場の運送会社から、荷主企 業の在庫集約を支援する3PLに委託先は集約され る。
物流業界に格差が広がっていく。
13 JANUARY 2007 みずほ総合研究所の泰 松真也調査本部経済調 査部主席研究員 シービー・リチャード エリスの小林麿物流営 業部企画推進グループ シニアコンサルタント

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