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米3PLの日本市場参入をサポート
――米有力3PLのキャタピラーロジスティクスサー
ビス(CATロジスティクス)が、三菱重工と新キャ
タピラー三菱を荷主として日本国内に本格参入するこ
とになりました。 神奈川県相模原市に専用拠点を構え、
二〇〇八年二月に業務を開始する予定です。 約二五
〇人のスタッフを投じる本格的なプロジェクトになる
と聞き、注目しています。
「その物流拠点を当社が開発します。 二〇〇七年一月
に着工し、一〇月末に完成させる予定です。 延べ床
面積は約五万平米。 屋上まで車両を運転して上れる
ランプウエイを併設した二階建てで、投資総額は約一
〇三億円を見込んでいます。 完成後はCATロジステ
ィクスと一五年の長期リース契約を結ぶことで合意し
ています。 CATロジスティクスはご存じのように世
界有数の3PLであり、当社のターゲット顧客の一つ
です。 他社との比較審査の結果、当社が選ばれたこと
を非常に誇りに思っています」
――これまでの日本市場における投資をどう評価して
いますか。
「エクセレントだと評価しています。 他の国と比較
して日本は調達金利が低いため、レバレッジが効く。
日本の物流施設に対する投資家の意欲も旺盛です。 現
状では良い物件を探すことが日本市場における最大の
ポイントになっています」
――入札の過熱によって高掴みした物件もあるのでは。
「〇六年の春に私は米国から日本法人に赴任して購入
物件をチェックしましたが問題は見あたりませんでし
た。 もっとも競合が増えたことで入札が過熱気味にな
っているのは事実です。 当社の入札落札率は今や一
〇%から一五%に過ぎません。 高く買い過ぎているフ
ァンドは少なくない」
――〇五年六月に組成した「ジャパン・ファンド」の
二四六〇億円は現在、どこまで消化したのでしょう。
「はっきりした数字は公表できませんが、約半分で
す。 今後二年以内にすべて投資します。 その後『ジャ
パン・ファンド2』を組成する計画です。 そしてさら
に『ファンド3』と事業を拡大していきたい」
――購入した物件を他のファンドや投資家に転売する
ことはありますか。
「我々は仲介業者ではないので短期で転売するよう
なことはありません。 長期投資が原則です」
――しかし長期では手放すこともある?
「その通りです。 ただし単なる物件の売却だけでは
なく、出口戦略には様々なオプションがあります。 市
場環境の変化に対応して適切なタイミングで適切なオ
プションを選択し、投資家に最高のリターンを提供す
ることが我々の使命であり強みです。 その結果、投資
家を満足させることで、さらに大きな資金を集めることができるようになるわけです」
――日本市場に参入した〇三年当初、AMBは日本
人の不動産専門家チームと五〇:五〇の共同出資で
AMBブラックパインを設立して事業を開始しました。
ところが〇六年六月にAMBがブラックパインを吸収
するかたちで合弁を解消しています。 その理由は?
「狙いの一つは『AMB』ブランドの統合です。 ブ
ラックパインはあくまで日本におけるビジネスの可能
性を探るために設立した会社でした。 その後、日本に
おける組織や投資規模が大きく拡大してきたのに伴い、
二重になっていた『AMB』のブランドを統合する必
要が高まりました。 誰が投資家で誰が何の専門家なの
か、混乱を解消する必要がありました」
「また一般に投資ポートフォリオが一定のサイズに
AMBプロパティジャパン――
物流アセット戦略に柔軟性を提供する
JANUARY 2007 20
マイケルA. エヴァンズAMBプロパティジャパンインク
シニアバイスプレジデント
三菱重工と新キャタピラー三菱の部品物流を、米3PLのキ
ャタピラーロジスティクスサービスが一括受託した。 物流拠点
はAMBプロパティが約103億円をかけて神奈川県相模原に新
設する。 外資系の有力3PLと不動産ファンドがタッグを組み、
日本国内の3PL市場に本格参入する。 (聞き手・大矢昌浩)
日本の物流資産を始末する
なるまでの段階では、開発事業が重要です。 しかし、
その後はアセットマネジメントの重要性が増していき
ます。 それはAMBが直接コントロールすべきだと判
断しました。 プロパティマネジメントについても、そ
こから一定の収入が上がる規模になるまでは外部にも
アウトソーシングしますが、最終的には日本でも自社
でコントロールしていきます」
――物流不動産相場はまだ上がると予測しますか。
「徐々には上がるでしょう。 ただし、過去二〜三年
ほどではない。 日本市場の将来については楽観的に見
ています。 日本企業が中国に生産を移管する動きが続
く限り、物流拠点の再編ニーズは続きます。 これまで
日本国内で生産していた製品を、中国や東南アジア
諸国で生産して輸入するようになれば当然、ロジステ
ィクスのフローを全く変えなければなりません。 そこ
から新たな物流施設のニーズが生まれます。 実はアメ
リカでもかつて全く同じ現象が起きました。 米国の工
場を国外に移すというトレンドが続いたのです。 それ
が当社の発展の原動力になりました」
――しかし日本企業の土地の所有に対する考え方は、
欧米企業とは全く違います。
「その通りです。 しかも変化のスピードはとても遅
い。 しかし、日本企業も変わらなければなりません。
米国ではロジスティクス企業が自国内の拠点を整備す
る場合であっても不動産を所有しようとは全く考えま
せん。 自社で不動産を保有している割合は、利用して
いる物件のうちおそらく五%以下だと思います」
「物流不動産は誰もが賃貸から検討します。 理由は
もちろん他の重要な投資に資金を振り分けることがで
きるからです。 情報システムや効率的なマテハン機器
への投資、従業員の確保などです。 当社はロジスティ
クス企業ではありませんが、物流施設をリースするこ
とでロジスティクス企業に対して、柔軟性を提供する
ことができます」
物流不動産は賃貸が常識
――日本企業が物流施設を所有したがるのは、物流不
動産市場に流動性がなかったことも大きいのでは。
「需要に比べて供給が常に制限されている環境にあ
ったのでしょう。 文化的な特性かも知れません。 しか
し、それが日本特有であるとは思いません。 土地の所
有に対する執着はアジア諸国の大部分に共通していま
す。 アメリカでさえ例外ではありません。 しかし、効
果的に利用していない土地を所有しているぐらいなら、
それを売って得たお金を、より付加価値の高い投資に
振り分けたほうが有利であるのは明らかです」
――米国企業の意識が変化したのはいつ頃ですか。
「七〇年代の後半からでしょう。 その頃からアメリ
カで生産拠点の海外シフトが進み、アセットを持つ会
社の不利がはっきりしてきました。 さらにその後、3 PLの台頭によって、物流をアウトソーシングしない
荷主企業の高コスト体質が浮き彫りになりました。 そ
して3PLもまた、変化の激しい環境では自社でアセ
ットを持つよりリースのほうが有利であると考えるよ
うになりました」
――日本企業の物流アセット戦略は二〇年以上遅れ
ている?
「しかし変化には二〇年もかかりません。 既に日本
国内にも手本は存在しています。 例えばDHLは日本
市場に参入してわずか数年で彼らがドメインとする市
場の一〇〜一二%のシェアを握りました。 彼らは日本
に不動産をほとんど所有していません。 必要な物件は
全てリースしています。 日本企業はその事実をよく知
っているし、また十分に賢明です」
21 JANUARY 2007
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