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増収減益企業が増加
上場物流企業五二社(図1:海運を除く
上場物流企業のうち、二〇〇三年九月期以
降、継続的に連結・単独中間業績を発表し
ている企業)の二〇〇七年三月期中間の連
結売上高の合計は、前年同期比五%増の三
兆六七八〇億円となった。 減収企業は六社
で、その数は前回調査に比べてほぼ変動して
いない。
今回、連結売上高の二桁増収を記録した
のは計九社である。 中でも、国際航空貨物大
手の郵船航空サービス(前年同期比十二%
増収)と近鉄エクスプレス(同十一%増収)、
国際物流に強みを持つアルプス物流(同十
一%増)、3PLのトランコム(同一七%増
収)は、相対的に高い増収率を確保した。 ま
た、港湾運送業務や機工事業が好調であっ
た山九(同十三%増収)、電子部品の梱包・
保管・輸送を主力とするサンリツ(同一七%
増収)なども前年同期比二桁の増収となった。
五二社の連結営業利益率は前期同期より
〇・一ポイント悪化し、三・六%となった。
連結売上高が前年同期比で五%増加した一
方で、連結営業利益の総額は一三三六億円
と、前年同期比で二%の増加にとどまったた
めである。 つまり、減収企業は六社と少数で
あったにもかかわらず、増収ながら減益とな
った企業が一九社に達したことが影響してい
る。 営業減益に陥ったのは対象企業五二社
の約五〇%を占めた。
営業増益に寄与したのは、航空貨物の専
業二社である郵船航空サービス(前年同期
比二四%増益)と近鉄エクスプレス(同三
一%増益)、3PLのトップ企業である日立
物流(同二五%増益)、素材産業の設備投資
拡大の恩恵を享受した山九(同三二%増益)、
海外セグメントが好調だった日本通運(同十
二%増益)、港湾運送大手の上組(同十一%
増益)などである。
特別編
2007年3月期中間
物流企業決算ランキング
上場物流企業の二〇〇七年三月期中間決算は、営業減益となった
企業が全体の約半数を占める結果となった。 国際物流を主力とする企
業の業績が堅調に推移したのに対して、国内トラック運送会社は依然
として苦戦を強いられた。 二〇〇七年の株式市場では「港湾」ビジネ
スへの注目度が高まりそうだ。
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一方、最も営業減益額が大きかったのはヤ
マトホールディングスで、前年同期比二七%
の減益となった。 メール便事業で自社の配達
要員を前倒しで大幅に増強したためである。
その他の会社でもトラック運送事業の多くは、
取扱貨物の伸び悩み、運賃の下落基調、燃
料費・傭車費の増加などから、前年同期比
二桁の大幅な減益となった。
五二社の連結当期利益率は二・一%で、前
年同期に比べ三・四ポイント改善した。 当期
利益の総額は七六四億円で、〇六年三月期
中間の四五五億円の赤字から黒字転換を果
した。 大幅改善の要因は、国内トラック運送
会社が昨年、減損損失や土地評価損などに
より、大幅な特別損失を計上したことの反動
であり、本業での業績改善というよりは一過
性の要因と言えよう。
五二社全体の連結ベースの有利子負債は
〇六年三月期末より一七四億円減少し一兆
二六七五億円となった。 増加したのは二〇社
で、減少した三一社(横ばい一社を含む)を
下回っており、全体的には依然として減少傾
向が続いていると推測される。
ただし、住友倉庫の有利子負債はTOB
(株式の公開買い付け)による遠州トラック
の子会社化に伴い、〇六年三月期末比で八
八%増加し、四〇八億円となった。 五二社
の株主資本比率は四七%と、〇六年三月期
末と同水準を維持している。
続いて、輸送モード別に中間決算を振り返
っていきたい。 取り上げる分野は大手トラッ
ク、3PL、港湾・倉庫、航空貨物の四つ
である。
大手トラック
運賃に下げ止まり感が見えない
大手トラック運送会社の〇七年三月期中
間決算は、日本通運とセイノーホールディン
グスが前年同期比で営業増益となり、ヤマト
ホールディングスと福山通運が営業減益となった。 国内の景気回復を背景に、トラック運
送事業の取扱数量は増加基調にあるが、運
賃に下げ止まり感は見られず、国内のトラッ
ク運送業界が構造的に抱えている過当競争
は解消されていないとの見方は変わらない。
日本通運は、前年同期比四%増収、同十
二%の営業増益と予想以上に好調であった。
牽引役は、同三八%の営業増益を達成した
海外セグメントである。 新規連結化の収益寄
与を除いても、同三〇%程度の営業増益を
確保したと推定される。 旺盛な航空・海上の
フォワーディング需要に支えられた。 単独の
営業利益も同八%増益と堅調であった。 航
空貨物や海上貨物のフォワーディング事業に
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加え、石油精製プラント向けの大規模メンテ
ナンス事業や警備輸送事業が利益成長を牽
引した。
セイノーホールディングスは、前年同期比
五%増収、同一%営業増益であった。 ただし、
主力のトラック輸送事業における新規連結子
会社の増加、自動車販売事業における計上
区分の変更などを考慮すると、同二%の増収、
同二三%の営業減益と厳しい内容だったと
言える。 福山通運も売上高が同二%増と伸
び悩む中、道交法改正に伴うコスト負担や原
油高を背景に、同四〇%の営業減益と厳し
い内容であった。
ヤマトホールディングスは、前年同期比
一%の増収、同二七%の営業減益と厳しか
ったが、ほぼ予想通りであり、ネガティブに
捉える必要はない。 むしろ、売上高がやや未
達となる中で、営業利益の目標数字を達成
しており、メール便事業での生産性改善や、
その他の費用抑制策が予想以上に顕在化し
たと判断している。
3PL
トラック運送事業の好不調で明暗
3PL関連企業では、トラック運送事業
の好不調が明暗を分けたと言えよう。 日立物
流は、相対的に利益率が高いと推定されるシ
ステム物流の増収効果と生産性の向上などか
ら、前年同期比二五%の営業増益と好調だ
った。 特積みトラック運送事業を担う子会社
の近物レックスの業績不振が大きかったハマ
確保するビジネスモデルを有するため、「港
湾」に対する評価が高まると思われる。 実際、
〇六年の海外市場を見ると、ドバイポートに
よるP&O買収や香港の海運会社が米国の
年金ファンドに港湾事業を売却するなど、港
湾関連業界では企業買収が活発化した。
航空貨物
海外セグメントが利益成長を牽引
航空貨物の専業二社である郵船航空サー
ビスと近鉄エクスプレスの〇七年三月期中間
期は、予想を上回る好決算であった。 利益拡
大の牽引役は海外セグメントであり、エレキ
関連や自動車関連向けに航空貨物需要が高
いことが主な要因である。
〇七年三月期下期以降、エレキ製品の在
庫調整を主因に、日本発の航空貨物輸出量の前年同月比伸び率はマイナスに転じている。
しかし、海外セグメントの需要動向は米国、
欧州、アジア地域を中心に依然としてプラス
基調を維持しており、日本発航空貨物の不
振を十分吸収できるであろう。
海外セグメントの利益構成比は上昇してお
り、日本発の航空貨物輸出量の動向だけを
見ていると、連結ベースの利益動向を見誤る
リスクが高まっていると言える。 米中や日中
の航空交渉を踏まえ、航空貨物便の供給量
が大幅に増加しており、費用項目の中で最も
構成比の高い航空運賃の原価率が予想以上
に低下する可能性が高く、この点は航空貨物
業界にとってポジティブな材料であろう。
キョウレックスは、同四〇%の営業減益を余
儀なくされた。 トランコムは、事業再構築を
実施している貨物運送事業は前年同期比五
九%の営業減益と厳しかったが、利益成長の牽引役と見ている物流情報サービス事業とロ
ジスティクス・マネジメント事業の増益で吸
収し、前年同期比九%の営業増益を確保し
た。
港湾・倉庫
派手さはないが着実に増益
営業減益決算が対象企業の約五〇%を占
める中、主要な港湾運送企業はアジアを中心
とした堅調な荷動きを背景に好調な決算とな
った。 港湾一体型の倉庫事業の規模が拡大
している上組は、前年同期比十一%の営業
増益と引き続き堅調であった。 特に、習熟度
の高まりから倉庫事業の利益率が改善基調
にあることはポジティブに捉えることができ
る。
三菱倉庫も前年同期比五%の営業増益と
堅調だった。 物流事業が同四六%の営業増
益と好調であり、注力している医薬品向け配
送センター事業の増収基調が確認できた。 ま
た、三井倉庫(同二七%の営業増益)、日本
トランスシティ(同十一%の営業増益)など
も業績は好調であった。
〇七年の株式市場では「港湾」ビジネスに
注目が集まるであろう。 経済のグローバル化
とともに、輸出入貿易の結節点としての重要
性が高まっていることに加え、安定収益源を
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