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生産管理の視点で合理化提案
――過去五年間で売上高が三倍に伸びています。
「さらに今期(二〇〇七年三月期)は、売上高が前年
比で約二五%増の三三〇億円程度に達する見込みで
す。 理由としては、やはり親会社の業績拡大が大きい。
黙っていても増えた部分はあります。 ただし、私が当
社の社長に就任した二〇〇三年三月期と現在とを比
べると、親会社の売上高が約二倍になったのに対し、
当社は約三倍になっている。 これは当社のグローバル
展開によるものです」
「実際、九九年の当社設立時点では、売り上げのほ
とんどが国内物流でした。 それが現在は半分以上を国
外で売り上げるように変わりました。 海外売上の比率
は毎年増え続け、今期は総売上の約六割に達する見
込みです。 また国内物流であっても、海外から輸入し
た製品を港から工場までドレージ輸送するような仕事
が増えています」
――これまでの急成長は見込み通りですか。
「追い風は予想以上でした。 それでも従来から当社
には大きな可能性があると考えていたのは事実です。
〇三年に当社にして赴任して、私がまず手がけたのが
情報システムの刷新でした。 当時の売上規模は約一
〇〇億円でしたが、三〇〇億円の売上高を前提とし
た新たなシステムを、自分自身がプロジェクトリーダ
ーになって構築しました。 つまり、それぐらいのビジ
ネスチャンスはあると考えていた」
――その時のIT投資額は?
「総額で七億円程度です。 売上高一〇〇億円の会社
としては小さくない投資でした。 また新設した会社だ
けに、既存システムも数年前に作ったばかりのもので
した。 しかし投資効果の計算も無視して、有無を言わ
さずシステム構築を断行しました。 ITが整備されて
いない限り、ロジスティクス・ビジネスなど、やりよ
うがないと考えたからです」
――パッケージを導入したのですか。
「いいえ。 手作りです。 パッケージを導入して、そ
れに業務を合わせるには、社風まで含めた改革が必要
になります。 容易なことではありません。 一方で業務
にパッケージを合わせようとすれば、複雑なカスタマ
イズが避けられない。 しかもロジスティクスは日進月
歩です。 パッケージでは、そうした変化に対応できな
い。 そのため変化に対応しやすいシステム、アドオン
しやすいシステムというコンセプトで、基幹システム
から現場のWMS(倉庫管理システム)まで手作りし
ました」
――手作りのシステムだと、荷主とのデータ交換など
に今後支障をきたしませんか。
「将来、親会社の日立建機がERP(基幹業務パッケ
ージソフト)を導入することも想定しています。 その場合でも、親会社が必要とする情報を提供できるよう
にインターフェースを結べばいい。 親会社に合わせて
同じパッケージを導入する必要はない。 システムは当
社のオリジナリティであり、将来はシステム自体を外
部に販売しようかとさえ考えています」
――グループ以外の荷主向け、外販については。
「現状では売り上げの四%程度に過ぎません。 関連
会社を入れても、その倍程度です。 これは絶対に増や
していかなければならない。 ただし、ターゲットは絞
ります。 日立建機の製品は重量物であり、また油圧シ
ョベルなどは一番売れる製品でも月に数百台程度と、
量産品ではなく、市場変動が大きい。 そうした重量物
かつ非量産品、しかも市場変動の大きな製品のロジス
ティクスをターゲットにします。 具体的には工作機械
FEBRUARY 2007 20
1999年に日立建機の物流部門を機能分社化し、物流関連
の二つの子会社を合併させるかたちで発足した。 親会社の事
業展開に歩調を合わせ、グローバル化を一気に推進。 売上規
模を急拡大させている。 さらに2010年には現在の倍の600億
円を売上目標に掲げている。 (聞き手・大矢昌浩)
注目企業トップが語る強さの秘訣
日立建機ロジテック
――国際物流への本格進出で売上高を3倍に
山内勇二日立建機ロジテック社長
や輸送機などの機械類がそれに当てはまる。 皆が嫌が
る仕事を当社は得意とする。 それ以外には一切手を出
しません」
「もう一つのポイントは、生産管理です。 当社は日
立建機で生産管理に携わってきたスタッフを抱えてい
ます。 私自身もかつては工場で生産管理部長を経験
しました。 生産管理の能力は当社の売りになる、とく
に変化への対応力は武器になると考えています。 つま
り物流だけでなく、生産管理機能までカバーしたソリ
ューションを提供する。 実際、グループ向けではそれ
をやっています」
――生産管理の視点は何をもたらしますか。
「生産管理こそロジスティクスの基本だと思います。
生産管理が下手だと在庫が増えます。 これは物流会
社にとっては嬉しい話でも荷主にとってはマイナスで
す。 つまり生産管理を最適化しない限り、在庫は減ら
ない。 物流コストも下がらない。 しかし一般の物流事
業者を見る限り、そうした発想に立って仕事をしてい
るとは思えない」
――親会社を別にして、そこまで踏み込んだ提案を一
般の荷主が望むでしょうか。
「グループ会社ではありますが、二〇〇五年に日立
建機が子会社化したTCMに対して、実際にそうした
取り組みを進めています。 TCMの内部に我々が入り
込んで改革案を作成し、それを受け入れていただいた。
日立住友重機械建機クレーンとも、同様のプロジェク
トを開始しました。 また中国でも日立コンストラクシ
ョンマシナリーとチームを組んで動いています」
――それらの荷主にも既存の協力物流会社はいたはず
です。 いくらグループ会社でも、既存の協力会社を切
ることには抵抗があったのでは。
「もちろんです。 当社に委託することでコストが安
くならない限り、仕事は回してもらえません。 実際、
当初は親会社の海外現法にスタッフを派遣しても、『お
前ら、何しに来たんだ』という扱いしかされなかった。
しかし、社内の最も優秀な人材を海外事業に投入し、
粘り強く提案を続けることで、頼られる存在になるこ
とができたと自負しています」
既存の物流会社とは一線画す
――既存の協力会社も、それなりに努力はしていたは
ずです。
「実際には、そういう提案をしていませんもの。 少
なくとも私の知る限りはそうです」
――提案の対価は、どういう名目で求めるのですか。
一般的な物流事業とは違う収入モデルが必要なのでは。
「そこは頭を痛めています。 我々は自分たちを単な
る物流会社とは考えていません。 我々はロジスティク
スを提案している。 知恵を売っているわけです。 本来
であれば、その成果に対して報酬をいただきたい。 しかし連結対象となっているグループ会社に対して市価
ベースで対価を求めても意味がない。 そのため現状で
は元請け協力会社として委託を受け、コストに一定の
マージンをもらう通常のスタイルをとっています」
「しかし資本関係のない外部に対しては違ったアプ
ローチをとりたい。 暴利を貪るつもりは毛頭ありませ
んが、適正な対価は当然いただきたい。 それだけの機
能を当社は持っているという自信がある。 それを商品
として見えるかたちで外部にアピールする必要があり
ます。 それが現在の課題です」
――中長期的な目標は?
「日立建機は二〇一〇年に一兆円超という売上目標
を掲げています。 それを考慮すると、当社としては六
〇〇億円程度が二〇一〇年の目標になるでしょう」
21 FEBRUARY 2007
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