ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年2号
特集
物流企業番付 平成19年版 マロックス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物量の九割をミルクランに乗せる ――二〇〇三年三月期以降、業績が急伸しています。
「一番の理由は、やはり親会社であるマツダの業績 回復です。
もちろん〇四年一〇月のマツダ物流との合 併も業績拡大に寄与しています。
もう一つの理由は、 調達物流の拡大です。
工場で調達する部品価格に含 まれていた物流費を部品自体の価格と分けて最適化 しようという取り組み、日産自動車で『外化(そと か)』と呼ばれた取り組みですが、これをマツダも進 めたことが当社にビジネスチャンスをもたらしました」 ――具体的には? 「ミルクランシステム、我々が『MRS』と呼ぶ仕 組みを導入しました。
それまでは各サプライヤーが独 自にトラックを仕立ててマツダの工場に部品を納入し ていました。
輸送費が調達価格に含まれていたわけで す。
その体制を改めて、物流の主体をマツダ側に移し、 当社がサプライヤーを巡回して取りに行く形に変える ことで、部品自体の価格と物流費を分離しました」 「〇三年に九州から取り組みを開始し、エリアごと に展開していきました。
現在、マツダの工場で調達す る物量の既に九割がMRSに乗っています。
これによ って当社の調達物流事業の売り上げは、導入前の〇 三年三月期と比較して〇六年三月期には約二倍にな りました」 ――仕組み作りに苦労はありませんでしたか。
「大変でした。
情報管理のあり方がそれまでとは全 く違う。
部品物流自体は、サプライヤーの納品代行と いうかたちで当社は従来から手がけていました。
とは いえ、その形態ではサプライヤーからの指示に従う部 分が大きく、主体的な管理はさほど必要なかった」 「ところがMRSではサプライヤー起点がメーカー 起点に変わります。
メーカーが工場着基準で出した納 品指示を我々が受け、そこから物流のリードタイムを 逆算し、サプライヤーを巡回して部品を取りに行くわ けですから、各サプライヤーの出荷場所を管理して、 集荷のルートやタイミングを調整しなければならない。
しかも、取り組み自体の目的が全体の効率化だから、 全体のトラック台数の削減も考慮する必要がある。
こ うした管理を行うにあたり、情報システムへの投資も 必要になりました」 ――現在の売り上げの内訳は? 「調達物流事業が総売上の約三四%を占めています。
ただし、これにはMRSだけでなく、工場間の部品輸 送も含まれています。
国内の完成車輸送が三六%ぐら い。
工場でラインオフした製品を引き取って、船で国 内各地の流通センターに送り、架装や点検を行ってデ ィーラーに納品する。
このほかサービスパーツのオペ レーションなども手がけています」 ――海外展開は? 「ノックダウン(品)の輸出梱包や港湾運送が全体 の二割ぐらいあります。
しかし、あくまでも売り上げ としては国内物流です。
本格的な海外展開は今のとこ ろ考えていません。
それ以前にやるべき仕事が足元に ある。
外販についても同様です。
マツダグループのロ ジスティクスのスペシャリストとして揺るぎない地盤 を築いた上でないと、中途半端に外販に手を出すこと でグループ向けの仕事がおろそかになる恐れがある。
まずは足元を固めたい」 ――国内の自動車市場は既に成熟しています。
「その通りです。
これはマツダだけの話ではありませ んが、日本の自動車メーカーの業績が現在好調なのは 海外事業の拡大によるもので、国内市場は低迷してい る。
台数が減っているのに加え、軽自動車や小型車の FEBRUARY 2007 22 マツダの物流子会社。
フォード主導の改革でグループ内で の位置づけが強化され、事業領域を工場周りの一次物流から サプライチェーン全域に拡大させた。
ミルクラン調達にも着 手。
調達物流事業の売り上げを3年で2倍に伸ばした。
当面は 外販や海外進出より、国内で親会社向けのロジスティクス改 革支援に専念するという。
(聞き手・森泉友恵) マロックス ――マツダの構造改革で商機つかむ 武鑓正勝マロックス社長 注目企業トップが語る強さの秘訣 比重が高まっている。
こうなると物流会社は厳しい。
輸送単価はもちろん、我々の大事な収益源となってい る架装などの仕事も小さなクルマでは需要が少ない」 ――国内物流だけでは成長戦略が描きにくい。
「まだ当社はマツダの国内物流を一〇〇%請け負っ ているわけではありません。
また先ほどの調達物流で も付帯業務が拡大している。
マツダの生産ラインにう まくミートするように、部品を順序づけて工程に合わ せて入れたり、組み立てをしたり。
あるいは輸入部品 の検査といった仕事がどんどん増えている。
そうした 付加価値のある仕事を拡充していきます」 ―――同じ自動車業界でも日産は物流子会社を売却し ています。
「マツダも業績が厳しかった時代にはフォードの資 本が入り、フォードから社長も赴任しました。
マツダ とフォードで協議を行い、関係会社の整理を行いまし た。
あらゆる関係会社が検証されました。
もちろん当 社も例外ではありませんでした」 「しかし検討の結果、当社はグループ会社として存 続することが決まった。
売却どころか、逆に資本が増 強されました。
マツダ物流との合併に際しマツダから 六〇〇〇万円の増資を受け、出資比率は六九・二% から九九・六%に引き上がりました。
従来以上にグル ープ内の位置づけが重くなりました。
実際、当社は現 在、マツダの子会社のなかで最大の規模となっていま す。
その重みと意味を我々は実感せざるを得ない」 ――何が日産とマツダの判断を分けたのでしょうか。
「製造と販売を結ぶパイプを重視したということで しょう。
個人的にも、全く資本関係のない相手を、製 造と販売の間に介在させることにはリスクを感じます。
やはりロジスティクスは製造と一体になった部分であ るべきだと思う。
日本と違って欧米のメーカーはロジ スティクスをアウトソーシングする傾向が強いけれど、 それが上手くいっているかどうかは分からない」 受注生産方式の導入を支援 ――今後の計画は。
「現在、ちょうど中期経営計画の策定に取り組んで いる最中で、その詳細についてはまだ決まっていませ ん。
ただし、それとは別にマツダとは『OTD:Order To Delivery』と呼ぶ受注生産方式の導入に向けた取 り組みを進めています。
今までは在庫がない場合の納 期回答があいまいでした。
それを改め、顧客に対して 契約の段階で納期を確約する。
一方、工場は見込み 生産ではなく、顧客一人ひとりが指定する仕様を反映 しながら生産する」 「OTDを実現するには、サプライチェーンの全体 のプロセスをリードタイムという側面から管理しなけ ればなりまません。
物流サイドでも、工場の調達から 末端の販売にいたるプロセス全体を一元的に管理する体制が求められる。
当社とマツダ物流との合併にも、 そうした背景があります」 「従来、完成車の輸送は工場〜海上輸送〜港までを旧 マロックスが、港〜陸上輸送〜ディーラーをマツダ物 流が担当していました。
そのため、これまでマロック スはメーカー側を向いて仕事をしていたところがある。
一方、マツダ物流はディーラーを向いていた。
つまり 活動が分化していた。
そのパイプを一本にした。
私が 〇六年に当社の社長に就任して、まずやったことが全 国のディーラー巡りでした。
メーカーにとって在庫削 減はもちろん大事ですが、それによって顧客満足がお ろそかになってはならない。
市場と製造を結ぶ重要な 使命を当社は担っている。
ロジスティクスのプロとし て、その使命を全うすべきだと考えています」 23 FEBRUARY 2007

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