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親会社以上にコストに敏感
――ヤマトパッキングサービスの前身である千代田梱
包は一九四七年の創業と歴史が古い。
「千代田梱包は大型機械などを木枠で固定する、い
わゆる輸出梱包を請け負う会社としてスタートしまし
た。 創業から間もない頃の得意先は戦後日本に駐留
していた米軍で、主に彼らの軍事物資輸送に関連する
梱包業務を手掛けていました。 米軍に従事する軍人
家族が日本から米国に引き揚げる際の引越貨物の梱
包も引き受けていたそうです」
「創業以来、朝鮮特需などもあって、千代田梱包の
業績は順調に伸びていました。 ところが、しばらくす
ると梱包材として段ボールが広く普及してきたことな
どが影響して、たちまち経営難に陥ってしまいました。
そこで手を差しのべたのがヤマト運輸です。 一九五七
年に千代田梱包の全株式を取得してグループ傘下に
収めました。 当時のヤマトの商売は国内のトラック運
送がメーンでしたが、いずれは国際物流の分野にも進
出したいという意向があったようです。 国際物流を展
開するには輸出梱包というメニューも必要だろうと判
断し、買収を決めたと聞いています」
――七〇年代半ばになると、輸出梱包だけでなく、包
装資材の開発・販売を手掛けるようになりました。
「この事業はヤマト運輸の『宅急便』とともに成長
しました。 宅急便は一九七六年にスタートしたのです
が、その後取扱個数が拡大していくにつれて、宅急便
用の段ボールなどヤマト運輸向け包装資材の販売が増
えていったわけです。 従来通り、輸出梱包の仕事も続
けていましたが、この頃になると、サービス内容に変
化が見られるようになりました。 単にメーカーから梱
包作業のみを請け負うのではなく、工場に当社の作業
員を派遣して構内物流を一手に引き受けるといった仕
事が増えていきました」
――九〇年代には、この二つにラベル貼りや封入とい
ったメール便に付随する流通加工業務を請け負う事業
が加わりました。 現在、三事業の収入比率は?
「大雑把にいうと、それぞれ三割ずつです。 構成比
としては年々、梱包事業の占める割合が低くなり、代
わって流通加工が高まりつつあります」
――ここ数年、売上高、利益ともに順調に伸びていま
す。 好業績の牽引役は?
「包装資材と流通加工はヤマト運輸の宅急便とメー
ル便の取扱個数の伸びに合わせて、売り上げが増えて
います。 もう一つの梱包事業ですが、こちらは日系メ
ーカーが海外での現地生産を加速させていることが追
い風となっています。 現地の工場で使用する機械を日
本から送り込むケースが増えており、それに伴い輸出
梱包のニーズも高まっています」
――高い利益率を維持できている理由は? 「すごく儲かっているという認識はありませんね。 な
ぜ上位にランキングされるのか不思議なくらいです
(笑)。 利益率が高い要因を一つ挙げるとすれば、仕事
量に応じて作業員を適正に配置するなど生産性向上
のための努力を現場で続けていることが寄与している
のだと思います」
「当社は千代田梱包の時代に何度か経営危機に直面
しています。 東南アジアの通貨危機では日本の輸出企
業がダメージを受けて、その煽りで当社の業績は低迷
した。 しかし、そうした厳しい時代を何とか乗り越え
てきたことで、社内にコスト意識が根づきました。 私
はヤマト運輸の出身ですが、当社はヤマト運輸以上に
コストに対して敏感だと言えるかもしれませんね」
――輸出梱包は収益性の高い商売なのですか?
FEBRUARY 2007 24
メール便市場の拡大で、流通加工と包装資材の開
発・販売事業が伸びている。 流通加工の単価動向は
厳しいが、現場改善などコスト削減策に取り組むこ
とで、高い収益力を維持している。
(聞き手・刈屋大輔)
ヤマトパッキングサービス
――メール便付帯サービスで波に乗る
江頭哲也ヤマトパッキングサービス社長
注目企業トップが語る強さの秘訣
「決してそんなことはない。 ただし、輸出梱包の場
合、お客さんはトラック運送と違って業務委託先を短
期間で何度も見直すことをしない。 輸出梱包の作業に
は特殊なノウハウが必要になるからです。 お客さんと
の結びつきが強くなる分、価格競争に晒されにくいと
いう側面はあるでしょう。 もっとも、バブルの頃に比
べれば、輸出梱包の作業単価は下がっています」
――流通加工の収益性は?
「ラベル貼りや封入といった作業のマージンは一個
当たり数円です。 当社はメール便の配送をヤマト運輸
に委託しています。 彼らに荷物を渡す際にあらかじめ
方面別仕分けを済ませておくなど作業負担を軽くして
あげることで、その分運賃の値引きをお願いしていま
す。 流通加工の仕事というのはそうやって数円のマー
ジンをコツコツと積み上げていく地味な商売です」
「流通加工が伸びているのは、アウトソーシングの
進展で市場そのものが膨らんでいるからです。 もとも
とお客さんはラベル貼りや封入といった作業を自前で
処理していましたが、これをアウトソーシングするよ
うになりました。 もっとも、市場が伸びているため、
新規参入も増えている。 ライバルとの受注競争は年々
激しくなっており、それに伴い取り扱い一個当たりの
利幅が小さくなりつつある」
包装資材部門を分社化
――昨年秋からグループ会社のヤマトロジスティクス
と共同営業を開始しました。
「例えば、通信販売を展開しているお客さんは、ユ
ーザーにメール便でカタログを配布し、注文を受ける
と宅急便を利用して商品を配送しています。 従来は当
社がメール便の付帯業務の部分で、ヤマトロジスティ
クスが宅急便の付帯業務の部分でお客さんにアプロー
チするといった具合にバラバラに対応していました。
共同営業はお客さんに対してワンストップで物流サー
ビスを提供する体制を整えるのが目的です」
――昨年十二月には包装資材部門を分社化し、新た
にヤマト包装技術研究所を立ち上げました。
「包装資材の開発・設計に関する技術やノウハウを
持っているにもかかわらず、これまではそれを十分に
生かしきれていませんでした。 包装資材部門が目を向
けてきたのは当社の輸出梱包部隊やヤマト運輸で、彼
らのために梱包の新技術や包装の新素材の開発に取
り組んできました」
「分社化の狙いは外販の拡大です。 包装資材部門の技
術やノウハウを外部の企業にもどんどん利用してもら
おうというわけです。 ここ数年、環境対策の一環とし
て梱包の簡素化や環境負荷の小さい資材の活用を進
める企業が増えている。 そのような企業に積極的にア
プローチしていき、包装資材の開発・設計といった業
務をアウトソーシングしてもらう。 それによってビジネスを拡大していこうと考えています。 この分野に特
化した会社は少ないだけに、チャンスがありそうです」
――二〇〇七年三月期の業績見通しは?
「包装資材部門を切り離したため、単純に売上高は
三分の一減ります。 約五〇億円の減収です。 仮に研
究所の分を加算しても、二〇〇七年三月期の業績は
あまり良くない。 前年比で横ばいといったところです。
メール便の付帯業務の取扱量は伸びています。 ただし、
他社との競争で単価が下落している。 梱包事業も需
要は回復基調にありますが、単価は厳しい。 昨年八月
末に立ち上げた大宮センターの償却費負担もあります
ので、全社的な利益は落ち込んでしまいます。 来年の
物流企業番付で当社が上位にランクインすることはな
さそうですね(笑)」
25 FEBRUARY 2007
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